桜散る頃-紅櫻花- 

 

 月下の舞姫と誓いの宴 14

 

 

 

チリン……

 

「ありがとねー!また、宜しくねー!」

 

店を出ようとすると、店主の元気のよい声が聴こえてきた

趙雲が、軽く頭を下げる

紗羅も、それに続く様ににこりと微笑んで頭を下げた

 

「紗羅殿、段差がありますから気を付けてください」

 

そう言って趙雲が扉を押し開けると、すっと自然に手を差し出した

紗羅は「ありがとうございます」と応えながら、その手を取って店の扉をくぐった

 

外に出ると、むっとした熱気が押し寄せてきた

 

ああ…そうだわ……

 

ここは呉の圏内で、蜀や魏よりも南に位置する

紗羅が今までいた魏は、ずっと北に位置しており、今の季節でもあまり暑さを感じなかった

蜀に来てからも、山間の国なせいか、それほど暑さが籠る事は無かった

 

だが、ここは大陸南部に位置する呉・江夏

季節も、春から夏へと変わろうとしている

暑くて当然だ

 

今の今までは気が張っていた為、そこまで気が回らなかった

だが、今はすべてを打ち明け、心なしか身体が軽く感じる

勿論、すべての問題が解決した訳ではないが……

それでも、ここへ来た時よりは、ずっと楽だった

 

これも全て、趙雲様のお陰ね……

 

趙雲が受け入れてくれたから

こんな自分を追い掛けて、ここまで来てくれたから……

それだけで“嬉しい“と、思ってしまう

この瞬間が、止まってしまえばいいとすら思えるほどに――――

紗羅が思わず笑みを浮かべると、趙雲が不思議そうに首を傾げた

 

「紗羅殿?どうかしましたか?」

 

趙雲の問いに、紗羅はふわりと花の様に微笑んだ

 

「いいえ、何でもありません。少し……思っただけです」

 

「思った?」

 

「ええ……、趙雲様が居てくださって良かった―――と」

 

紗羅のその答えに、趙雲が一瞬面食らった様に目を瞬きさせる

が、次の瞬間、かぁぁと頬を朱に染めた

 

それから、照れ隠しの様に笑みを浮かべながら

 

「あ、その……、わ、私も―――紗羅殿が居てくださって良かったです」

 

その言葉に、今度は紗羅が驚いた様に目を瞬かせた

そして、はにかむ様に笑みを浮かべ

 

「……ありがとうございます」

 

どちらからともなく視線を交わすと、二人して微笑んだ

いつの間にか重なった手が熱を帯び

 

お互いに、言葉を交わす事もなく

ただ、ゆっくりとした時間が流れていた

だが、不思議とそれが心地よい

こうしている時間が、何よりも珠玉の時だった

 

「……紗羅殿」

 

不意に呼ばれ、紗羅が少しだけ上を向く

 

「はい、何でしょうか?」

 

そう言って、にこりと微笑むと

趙雲は少しだけ頬を染め、前方を指さした

 

「露店、少し見てから帰りましょうか?」

 

それは、夕餉を取る為に店を探していた時、並ぶ露店に興味を示した紗羅に、趙雲が言った言葉だった

この人は、本当に………

 

何だか、温かい気持ちになる

紗羅は少しだけ小首を傾げて

 

「それは嬉しいですけれど…趙雲様は、お疲れでは?」

 

趙雲からの申し出は嬉しい

だが、その反面申し訳ない気持ちになる

 

自分は自業自得なので、良いとしても

趙雲は、ここまでずっと紗羅を探していた筈だ

行先も、目的も何も教えていない

そんな状況の中、趙雲は紗羅を探し出してくれたのだ

 

何の情報もない所から、身一つで追い掛けてきてくれたのだ

ここまでの道のりは、紗羅以上に険しいものだっただろう

それに、心配も大分掛けてしまった……

紗羅以上に、心身共に疲弊している筈である

 

確かに、珍しい品が流通する江夏の露店は魅力的だ

だが……

 

そんな趙雲を、少しでも早く休ませてあげたい―――

 

という気持ちの方が、今は勝っていた

反面、趙雲の心配りをないがしろにしてしまうのではないかという懸念も捨てきれなかった

 

すると、その意を汲んだ様に趙雲が微笑んだ

 

「私なら、鍛えていますから大丈夫ですよ。これぐらい、大した事ありません。それよりも、紗羅殿が露店を見て、少しでも楽しんでくだされば、私はそれだけでいいのです」

 

「趙雲様……」

 

心が、じん…と音を立てる

 

自分を想ってそう言ってくれる趙雲の言葉に、嬉しさが込み上げてくる

だから、紗羅はそれに応える様にふわりと微笑み―――

 

「ありがとうございます」

 

そう言って、触れる手に力を込めるのだった―――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

   ****    ****

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

―――ことん

 

宿に戻ってきた後、湯浴みを済ませた紗羅は部屋に戻って一息付いていた

昨日から、色々な事があった

 

趙雲にすべてを打ち明け

一緒に帰路に付き

露店も見て回った

 

そして―――

 

 

『愛しています。―――傍に居てください』

 

 

そう言われた時、どれほど嬉しかった事か

 

傍にいて良いのだと―――

想って良いのだと―――

 

そう言われて、どれだけ心が救われた事か

 

ずっと、望んではいけないと思っていたものが、

今、この手の中にある

 

趙雲が、傍にいる

傍に―――いてくれる

 

「……………」

 

紗羅は、熱くなる頬を両の手で押さえて息を吐いた

その吐息すら、熱を帯びている

 

嬉し過ぎて、死んでしまいそうだ

 

ふと、視界に台の上に置いていた飾り紐が入る

趙雲が、今日 露店で買ってくれた物だ

 

紗羅は、そっとその飾り紐を取ると、目の前に垂らしてみた

 

蒼色と碧色の紐を玉房結びしており、そこから垂れる先には小さな七宝焼き

そして、先端に白い下地に蒼い花と金の流水の模様が描かれている陶器の小珠珠が二つぶら下がっていた

 

紗羅はその飾り紐を手に乗せると、ゆっくりと撫でた

 

一本一本、丁寧に結われたのがよく分かる

決して、高価な物ではないけれど、

紗羅にとっては、以前貰った簪同様、宝物の一つだった

 

嬉しいのと反面、申し訳ない気持ちになる

 

趙雲から、貰った物は沢山あるのに、

未だに何一つ返せてない事が引っかかった

 

「何か、お返しが出来れば良いのだけれど……」

 

折角、流通の盛んな江夏にいるのだ

ここで何か、趙雲に贈る物を見つけられないだろうか……

 

ふと、先程の店の店主の言葉が脳裏を過ぎる

 

『そ、指輪があるだろ?それを2人で交換すると、永遠に結ばれるっていうんだ!』

 

彼は、それを“お守り”だと言っていた

 

交換まではしなくてもいいと思う

でも、“お守り”になるなら、あっても困らない筈だ

 

曹操の事もある

この先、何か趙雲を“護る”ものがあれば、少しは助けになるかもしれない

 

ただ、店主は“おまじない”と言った

江夏の恋人たちが、遊び心に交換する品だ

実質的な効果は得られないかもしれない

 

でも、気休め程度にはなるだろう

と、思案すると同時にある事に気付いた

 

紗羅はおもむろに立ち上がると、荷物の置いてある方へと向かった

中を開いて、目的の物を取り出す

 

「やっぱり……」

手の中に転がるのは、少しだけの銀と銅銭だった

 

これは、紗羅が身に付けていた物を売って作った銭だった

流石に曹操が好んだ品なだけあり、それなりの価格で買い取ってもらえた

が、それはあくまでも必要最低限の銭を工面したに過ぎない

 

元々、帰る予定の無かった旅だ

ので、“行き”のみで“帰り”は想定していなかった為、それほど必要としていなかったのだ

だが、思ったよりも距離があった為、かなり消費してしまった

 

とてもじゃないが、これでは大した品は買えそうにない

 

「多分、足りない…わ、よね……」

 

だが、一度その指輪のお守りの事を考えてしまったら

それ以外に、いい物が浮かばなかった

 

かといって、ここで趙雲に頼る訳にはいかない

それでは意味がない

 

紗羅自身の手でないと、意味がないのだ

それでなくとも、趙雲には色々と迷惑を掛けている

今日の食事代だって、全部趙雲持ちだ

 

飾り紐まで、買ってもらってしまった

何か、代わりになる物はないかしら……?

 

紗羅は、何かを探す様に部屋の中を見渡した

 

「あ………」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

紗羅はそれを持つと、趙雲に気付かれない様にこっそりと宿を抜け出した

 

宿の外に出ると、昼と見間違うかと思う程の街燈に照らされた街並みが視界に入った

もう、夜も遅いというのに、それぐらい江夏の街は人がひしめき合っていた

 

紗羅は一度だけ宿の方を振り返ると、趙雲が泊まっているであろう部屋の窓を見た

ちらちらと明かりが見える

 

もしかしたら、まだ起きているのかもしれない

何かの拍子に、紗羅の部屋に訪ねて来られた場合

きっと趙雲のなら、戸を開けなくとも気配で中が無人な事に気付くだろう

それまでに戻ってこなければならない

 

急がないと……

 

紗羅は、纏っていた外套を深く被ると、持って来たそれをぎゅっと抱きしめる様に力を込め、足早に人ごみの中に消えて行った

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

   ****    ****

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……こんなものか」

 

趙雲は、剣の手入れをしていた手を止めた

磨いた刃を、燭台の光にかざしてみる

 

曹操が造ったといわれる双子剣の片割れ―――青釭

 

以前、紗羅から長坂の地で受け取ったものだ

もう片方の倚天は、彼女が持っている

 

流石に、曹操がわざわざ造らせた品だけあり

最高の斬れ味と、質を有する

 

普通、剣などの武器は

使えば使う程、斬れ味が落ちていく

ある程度は、定期的に手入れをする事で緩和出来るが、それにも限度がある

斬れば斬る程、血は斬れ味を落とし、刃を痛め、耐久性を落とし、錆を進める

斬り過ぎた剣が使い物にならなくなるという話は、よくある話だ

 

だが、この青釭はどうだろうか

何度使っても、曇る所か刃こぼれ一つしない

最高の一品だ

 

基本的に、普段は槍を武器として使う趙雲だが

今回は違った

 

戦場に赴く訳でもなかったのもあるし、鍛錬に行く訳でもなかった

つまり、槍など持っていなかったのだ

 

槍は、常時携帯する武器には向かない

よって、必要時以外は室に保管してあるのだ

 

考える間もなく、馬を駆って紗羅を追い掛けた

その時持っていた武器は、普段から携帯している青釭だけだった

 

お陰で、今回はこれに随分助けられた

 

彼女は、これを“母の形見”だと言っていた

つまり、大切な物なのだろう

いつかは紗羅に返さなければ―――とは思う

だが、今の所その機会が巡ってこなかった

少なくとも、今返しても彼女は受け取ってくれそうには無い

 

趙雲は小さく息を吐くと、青釭を台の上に置いた

 

窓を少しだけ開けて、外の風を室の中に入れる

外の街並みは、相変わらず賑わっていた

街燈の灯りで辺り一面輝き、人がひしめき合っている

 

もう、夜も遅いというのに……

この街は、“夜”を知らないのだろうか?

 

ふと、そんな考えが浮かんでしまう

 

趙雲は、台の上に置いてある“それ”に少しだけ視線を向けた

“これ”の事を考えると、今から緊張してしまう

 

深い意味は無いのだ

無いのだが……

 

「……………」

 

趙雲は、恥ずかしさを紛らわす様に頭を掻いた

 

「少し、夜風にあたって来るか……」

 

そう呟くと、寝台から立ち上がり、室の戸に手を掛けた

ふと、隣の部屋にいる紗羅が気になった

一目、眠る前に姿が見たくなったのだ

だが、一瞬だけ隣の部屋の戸を見ると、小さく首を振った

 

この時間だともう寝ているかもしれない

 

そう考えると、邪魔をしてはいけないと思った

 

「……自制しなければ…」

 

どうも、告白を受け入れてもらえて以来、抑制が効かない

逢いたい―――とか

触れたい―――とか

話したい―――とか

色々と、欲が出てくる

 

それを何とか、必死に押さえているのが現状だ

 

いつから自分はこんなに欲深くなったのだろう―――と、思ってしまう

彼女が微笑んでくれるだけでいいと思っていたのに

気が付けば、触れて、感じて、確かめたいと思ってしまう

彼女のもっと心の奥へと踏み込みたいと思ってしまう

 

だから、気付いてしまった

気付かされてしまった

 

彼女のすべてが知りたい

彼女のすべてが――――“欲しい”

 

そう―――“欲しい”のだ

 

彼女の―――紗羅の、身も心もこれから先の時間も―――すべて

 

自分の物にしたい―――

 

ずっと―――ずっとずっと、隣で微笑んでいて欲しい

ずっと、傍にいて欲しい

ずっと、その愛おしい声で自分の名を呼んで欲しい

 

絶対に、手放したくない

手放す事など、考えられない

考えたくもない

 

 

――――曹操などに、渡せるものか――

 

 

 

 

趙雲は、ぐっと唇を噛み締めた

 

紗羅殿は、私が守る―――絶対に

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

   ****    ****

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

紗羅は、江夏の中心街で途方に暮れていた

何店舗か店を除いてみたが、目的の物は見当たらなかった

 

恋人たちが遊びで交換する程度の指輪なら、いくらでもあった

それこど、安い物から高い物まで

だが、紗羅が探している物は、それらとは異なる物だった

 

紗羅が探している物は“本物“

 

“本当の力”を持った石を有する指輪

 

店先で何組もの恋人達を見た

皆、思い思いに交換し合っていた

だが、それは所詮“遊び”の品だ

そうではない

 

これだけ噂が広まるという事は、それだけ“効果があった”という事に他ならない

つまり、“本物”が存在するのだ

 

恐らく、何処かにその“本物”を取り扱う店がある

 

問題は、その“本物”を有する店が何処にあるか……なのだが

 

何人かに訊いてみたが、それらしい情報は得られなかった

もしかしたら、宝飾を取り扱う店ではないのかもしれない

もし有名な店なら、もっと噂が出回っているだろうし、情報も直ぐに引っかかる筈だ

だが、実際は違う

 

まったくと言っていい程、引っかからないのだ

この場合、可能性として高いのは――偽装

つまり、宝飾の店ではない可能性が高い

 

恐らく、裏情報なら引っかかるのだろうが…

生憎、紗羅にそんな情報網は無かった

 

一瞬、この事を教えてくれた酒場の店主なら知っているかもしれないとも思ったが

直ぐに、それは無いと気付いた

もし、店主が知っていたなら、あの場で教えてくれた筈だ

 

でも、“店”なのだ

店は客があっての店なのだ

と考えると、何処かに必ず目印となる物がある筈…なのだが―――

 

そう考えながら十字路に差し掛かった時、ふと真ん中に露店を構えている武器屋が視界に入った

何の変哲もない、武器屋だ

店主であろう中年の男が、呑気に書を読んでいる

だが、それと同時に何か違和感を感じた

 

何かしら……?

 

何か、普通の武器屋とは違う様な―――

 

不思議に思い、そっと近づいて見る

支柱に掲げられた剣を交差した印に真紅の旗

 

「…………?」

紗羅は首を傾げながら、その店先を覗いた

その瞬間、はっとある事に気付く

 

「これ……」

 

並べてある短剣を手に取り目を瞬かせた

刃こぼれしそうなぼろぼろの短剣に、法外な値段が付けられている

と思うと、隣の宝玉がふんだんに使われた高そうな剣に、馬鹿みたいな安い値段が付けられている

どう見ても、商売する気がある様に見えない

 

「あの……?」

 

紗羅は思い切って、そのやる気の無さそうに書を読んでいる店主に話し掛けた

紗羅が声を掛けると、店主は一度だけ紗羅を見た後、また書に視線を戻した

 

「何?」

 

「……………」

 

何だか拒まれた様で躊躇ってしまうが、それでは先へ進まないので、紗羅は意を決してもう一度口を開いた

 

「どうして、この様な値段……いいえ、状態で売りに出すのですか?」

 

その言葉に、若干興味を示したのか…

店主がゆっくりとこちらを向いた

紗羅は、二本の剣を手に取り

 

「こちらの宝石が散りばめられた剣は、一見高価そうですが、実際は大した品ではありませんよね?逆に、こちらのぼろぼろの剣は、脆そうですが磨けばかなりの品とお見受けしますが」

 

そう―――値段は間違っていない

間違っているのは、商品の状態なのだ

 

紗羅の言葉に、店主が驚いた様に目を瞬かせた

そして、書をぱたんと閉じると、こちらへ身体を向きなおした

 

「へぇ……?お嬢さんには見る目がある様だね。ああ、そうさ。そっちのきらきらしたやつは草も斬れないナマクラさ。逆に、そっちの錆びてそうな短剣は、それ一本で鉄をも砕く剛剣だよ」

 

「……どうしてこの様な状態で?売る気がある様に見えませんが…?」

 

素直に疑問を打ち明けると、店主は豪快に笑った

 

「そりゃそうさ!売る気なんて、これっぽっちもないからな!!」

 

がはははは!と笑うと、店主は紗羅の持つそれを見てにやりと笑った

 

「お嬢さんの持つ“それ”もかなりの値打ちもんだと見受けるが?どうだい?売る気は無いかい?言い値で買ってやろう」

何の事を指されているか直ぐに分かり、紗羅はにこりと微笑んだ

 

「申し訳ありません。これは売れないのです」

「そうかい!そりゃ、残念だ」

と言いながら、まったく残念では無さそうにまた笑った

 

だが、それで“気付いた”

この商人は“裏”の人間なのだと

表に出ている品物は目くらましで、本当の商品は別にあるのだ

そして、恐らくそれは“本物”

 

もしかして……

 

紗羅は少し考えた後、口を開いた

 

「実は、探している物があるのですけれど…ご存じでしょうか?」

 

紗羅のその言葉に、店主がにやりと笑う

 

「へぇ?何だい?話によっちゃぁ聞いてやらんこともない」

 

にやにやと笑いながら店主が、片手で丸印を作った

お金次第という事ね……

 

だが、ここで払うのは取引としては間違っている

彼の情報を持っていなければ、無駄金を払う事になる

紗羅はにこりと微笑んで

 

「それは、貴方のお話次第…という事で如何ですか?」

 

「そいつは駄目だね。“情報”が欲しければ、先に払うもんは払ってもらわねぇと。こっちはそれが“仕事”だからね」

 

「……………」

 

どうやら、これは“本物“と見ても間違いなさそうである

この男は、間違いなく“情報屋”だ

 

紗羅は小さく息を吐くと、懐から財布を取り出した

中から銀貨を一枚取り出し、店主に渡す

 

店主は、受け取った銀貨をぴんと指で弾くと、空中で回転させた

 

「銀貨一枚ね…大した情報はあげられねぇな」

 

「構いません」

 

紗羅がきっぱりそう答えると、店主ににやりと笑い、その銀貨をパシッと手で取った

 

「いいだろう。で?何をお探しで?」

 

「………“本物”の石です」

 

「石……?」

 

店主がそう呟いた後、「ああ……」と、何かに納得した様に声を洩らした

 

「あんたも、あの噂の犠牲者かい?それなら、そこら辺の宝飾屋にいっぱいあるじゃねぇか」

 

店主がにやにやと笑いながらそう言うが、紗羅が小さく首を振った

 

「そういう“遊び”の品ではなく、私が探しているのは“本物”です。貴方も、情報屋なら払ったお金分はきちんと情報を提示するべきでは?情報屋は信用第一でしょう?」

 

紗羅のその言葉に、店主の笑みが消えた

 

「悪いな、試しただけだ。あんたの探している“本物”に会いたければ、この道をまっすぐ行けばいい」

 

そう言って、店主は十字路の先を指した

 

「まっすぐ行けば、そのお店があるのですか?」

 

「さぁ?そこまでは教えられねぇな」

 

どうやら、銀貨一枚ではこれが限度の様だ

紗羅は小さく息を吐くと、スッと立ち上がった

 

「分かりました、ありがとうございます」

 

小さく頭を下げると、その場を去ろうとする

が、その時後ろから店主の声が聴こえてきた

 

「分からねぇな。あんた程の美人なら、本物に頼る必要ねぇだろう?」

 

店主のその言葉に、紗羅はゆっくりと振り返った

 

「想いを叶える為に必要な訳ではないので」

 

紗羅がそう答えると、店主は「ふぅん」と呟いた

 

「訳あり…って感じだな」

 

「……それはどうでしょう?」

 

にこりと紗羅が微笑むと、店主がくっと喉の奥を鳴らした

 

「いいねぇ~、食えない所が俺好みだ。特別におまけしてやるよ」

 

そう言って、店主はひらひらと支柱に飾ってある旗をはためかせた

 

「手がかりは、“これ”だ」

 

旗……?

 

旗が何か意味があるのだろうか……?

 

何はともあれ、もう一つ情報を得た事によって見つかる可能性は増えた

 

紗羅は、頭を下げると「ありがとうございます」とお礼を言い、その場を後にした

 

店主は、「今日は盛況だなぁ~」とぼやきながら、ひらひらと手を振っていた

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

あらあら…

未だに、江夏に居ますわよー(笑)

この人達、一体いつになったら蜀に帰るの??

もう少しですw

 

しかし…告った後の二人って…

書いてて、ハズいいわ~~~~(-_-;)

何の拷問かと思ったww

これなら、濃厚チュー書いてる方がマシ←え?

や、多分 趙雲ではないと思うけどねー奴には性格的に無理だろうww

ほほほほほほほほ:*:・( ̄∀ ̄)・:*:

 

2011/09/08