◆ 黎明の雫 永久の詠吟:2

 

 

彼女は、ゆっくりとした所作で軽く膝を折ると 礼の姿勢を取った

さらりと、彼女の艶やかな漆黒の髪が流れた

 

「荀 玲琳と申します。どうぞ、玲琳とお呼びくださいませ」

 

透き通る様な美しい声音でそう挨拶すると、にこりと微笑んだ

 

 

「――――し、て………っ」

 

 

郭嘉が、声にならない声を上げると、ふと荀彧がこちらを見た

 

「どうしたのだ?奉孝」

 

ふわりと柔らかく微笑み、そう尋ねてくる

瞬間、郭嘉はハッとして、慌てて頭を下げる

 

「い、いえ……っ、何でも…ありません」

 

息を飲み、失礼の無い様に言葉を発した

 

自分は臣下の位だ

主である曹操やその嫡子の曹丕より先に、彼女に対して言葉を発する訳にはいかない

 

だが、驚きのあまり今はそれを隠せそうにない

 

彼女だ

 

彼女だった

 

数か月前に見かけてから、ずっとずっと逢いたいと願ってきた、“彼女”だった……っ!!

 

見間違うはずがない

 

あの艶やかな黒髪も、透き通る様白い肌も、月の様な蒼銀の瞳も、迦陵頻伽の様な美しい声も

全て、あの日の“彼女”そのものだった

 

ずっと、恋焦がれてきた“彼女”が、今、目の前にいる

 

荀彧殿の従妹……?

じゃあ、あの日 曹操殿の邸にいたのは――――

 

荀彧に連れて来られていたのか

 

流石に、その可能性は考えていなかった

だが、荀家の者なら納得いく

 

荀家は名門中の名門だ

彼女の身に付けていた衣や簪などが高価な品だという事も、所作が美しいのも当然と言えば当然だ

 

荀彧は“女人としてはいささか欠ける”と言っていたが、きっとそれは普通の家から見れば十分な程の教養など持ち合わせているのだろう

それは、彼女の所作を見れば一目瞭然だった

あれは、間違いなく良家の子女のものだ

それも、かなり上の

 

恐らく、“荀家の姫“として、求められるものが高かっただけではなのだろう

 

だが――――………

 

ぐっと、郭嘉は曹操に見えない様に左手を握り締めた

 

そんな郭嘉とは対照的に、曹操は歓喜の声を上げて立ち上がった

 

「おお!これ程の娘を隠していたとは……っ!!」

 

そう言って、今にも彼女―――玲琳に触れるかのように手を伸ばした

瞬間、それは間に割って入った実の息子・曹丕によって遮られた

そして、鋭い眼光で曹操を視線だけで見ると

 

「父よ、勘違いしないで欲しい。“これ”は、“私”の妻になる女なのであろう?」

 

「ぐ……っ」

 

曹丕からのあまりの冷淡な問いに、曹操が一瞬たじろぐ

だが、もともと“その予定”でここに来させられているのだから、曹操といえども反論は出来なかった

 

「や……しかしだな、ま、まだ“候補”であってだ――――」

 

「玲琳」

 

何やら曹操がもそもそと言っていたが、それは曹丕によってサラッと遮られた

 

「と、言ったか?」

 

問われ、玲琳がにこりと微笑んだ

そして、鈴の様な声で「はい」と答えた

 

すると、曹丕は一度だけその蒼紫の瞳を伏せ

 

「秋風起りて白雲飛び 草木黄落して雁南に帰る 蘭に秀有り菊に芳有り 佳人を懐いて忘るる能わず」

 

何かの詩を読んだ

すると、それに気付いたのか、玲琳が一度だけその蒼銀の瞳を瞬かせると

透き通る様な美しい声音で

 

「楼船を泛べて汾河を済り 中流に横たわりて素波を揚ぐ 簫鼓鳴りて悼歌発す 歓楽極まりて哀情多し 少壮幾時ぞ 老いを奈何せん」

 

と、まるで続きを詠うかの様に続けた

それで通じたのか、曹丕はゆっくりと瞳を開けると、スッと彼女の艶やかな美しい黒髪に触れた

さらりと、曹丕の指に絹糸の様な髪が絡め取られる

 

瞬間、微かに曹丕の口元に笑みが浮かんだのを 郭嘉は見逃さなかった

 

――――あ

 

それだけで、郭嘉には“分かって”しまった

曹丕が“彼女”を“気に入った”事に

 

「―――いいだろう」

 

曹丕は、短くそう言うと、不意にぐいっと玲琳の腰を抱いた

 

流石の玲琳もそれには驚いたのか、「あ……」と声を洩らすと、戸惑いの色を見せる

思わず助けを求めるかのように荀彧を見るが、それを見た荀彧はにっこりと微笑んだ

 

「……………」

 

それで通じたのか、観念したかの様に玲琳はすっとその色を消した

 

「父よ」

 

不意に呼ばれ、曹操が顔を上げる

 

「私はもう退出するが、宜しいか?」

 

「………………」

 

渋った様な曹操が、曹丕と玲琳を見比べながら、あからさまに はぁ~~~~と大きく溜息を付いた

 

「よい、許す」

 

そう言って、手をひらひらとさせる

すると、曹丕は軽く一礼し

 

「では、失礼する。行くぞ、玲琳」

 

そう言って、彼女の腰を抱いたまま室を退出していった

扉をくぐる間際、一瞬彼女が郭嘉を見た

その瞳は驚いた様に見開かれたが、それは直ぐに元に戻った

そして、小さく頭を下げると、そのまま曹丕と出て行ってしまった

 

「おやおや、やはり若君は玲琳が気に入られた様ですね」

 

荀彧が、微笑ましそうにそう呟く

が、郭嘉には最早どうでもよかった

 

「………………っ」

 

あれほど、逢いたいと願っていた人なのに

結局、会話どころか 挨拶をする事すら叶わなかった

 

郭嘉は、そのまま玲琳の姿を目で追う様に ただただ彼女の出て行った扉を眺めていた

 

と、その時だった

 

「じゅ~~ん~~~い~~~く~~~~~~~」

 

と、何やら恨めしそうな声が後ろから聴こえてきた

ぎょっとして声のした方をみると、曹操がじと目で荀彧を睨んでいた

 

「あのような美しい娘が従妹にいながら、子桓に紹介する前に何故もっと早くにわしの元に連れて来ん!?」

 

そう怒鳴りながら、バンッと傍の手摺を叩いた

それを見た荀彧は、いかにも予想していた通りという様ににっこりと微笑むと

 

「それは勿論、可愛い従妹殿を主公の毒牙に汚される訳にはいきませんから」

 

と、悪びれもなく言い切る

それを聞いた曹操は、がっくりとうな垂れた

 

「それでは、わしが手を出すようではないか…」

 

曹操がぽつりと呟いたその言葉に、荀彧はわざとらしく驚いた様な表情をみせた

 

「おや、違うのですか?これでも、私は主公の忠実な臣。主公の性格も好みも熟知しているつもりですが?」

 

「ぐ……っ!」

 

曹操が、荀彧の言葉に言葉を詰まらせる

すると、荀彧はますますにっこりと微笑み

 

「ご安心下さい。生憎と、玲琳は主公のお好みの“若い人妻”では“まだ”ありませんので、きっと主公のお好みには合われないかと」

 

「うぐぐぐ……っ」

 

こうまで言われては、ぐうの音も出ないらしく…

曹操は、ついに押し黙ってしまった

 

確かに、曹操の女の好みは“若くて美人の人妻”だ

勿論、美人は好きであろうが、中でも特に若くて人妻である女性に魅力を感じるらしい

逆に未婚の娘や、生娘などは論外などと以前語っていた

そんな曹操ですら、彼女を―――玲琳を見た瞬間、“欲しい”と思ったのだろう

それほど、彼女に“魅力”があったという事だ

 

「奉孝」

 

不意に呼ばれ、郭嘉はハッとして顔を上げた

声のした方を見ると、荀彧がにっこりと微笑んでいた

 

「お前は、どうだった?」

 

「え……」

 

一瞬、何を問われているのか分からず、思わず気の抜けた返事をしてしまった

だが、荀彧は気にした様子もなく、にこりと微笑んだ

 

「“え?”ではない。玲琳は奉孝から見てどうだった?」

 

「……………っ、そ、れは―――……」

 

そこまで言い掛けて、言葉に詰まる

 

 

逢いたかった

 

 

「あーそう、ですね……やはり、美しい女性には華がありますね」

 

 

言葉を交わしたかった

 

「そうか」

郭嘉の言葉に、荀彧が微笑む

 

 

声を聴きたかった

 

「お前も、興味があるかと思ったんだが…違ったかな?」

 

 

あの髪に………

 

ふと、脳裏に先程 彼女の髪に触れていた曹丕が過ぎる

 

 

触れたかった――――

 

「…………っ。―――申し訳ありません、執務がありますのでそろそろ退出しても宜しいですか?」

 

それだけ言うのが、精一杯だった

 

一瞬、荀彧が瞬いたが

次の瞬間、にっこりと微笑み

 

「ああ、構わないよ。わざわざ、手間を掛けさせたね」

 

「いえ……では、失礼します」

 

それだけ言い終わると、郭嘉はその場から逃げる様に室を後にした

がっくり肩を落としている曹操とは裏腹に、荀彧は笑みを浮かべながら小さく息を吐いた

 

 

「おや、少々いじめ過ぎたかな?」

 

と、呟いていた

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

郭嘉は、息が切れるのもお構いなしに走った

途中、廊下で侍女にぶつかり掛けたが、謝る余裕すらなかった

走り込む様に、自身の執務室に駆け込むとバンッと勢いよく扉を閉めた

 

「はぁ……はぁ………」

 

走ったせいか、肩が上下に揺れて呼吸が乱れる

だが、そんな事どうでもよかった

 

 

彼女だった

 

 

玲琳が現れた時の姿が脳裏を過ぎる

 

 

彼女だった……っ

 

 

『是非、一度若君にお会わせしたい者がおります』

 

 

彼女だった…………っ!!

 

この何か月も、ずっと恋焦がれた

ずっと逢いたかった

もう一度、その声を聴きたかった

あの蒼銀の瞳を見たかった

 

 

で、も――――

 

「な、んで―――………」

 

 

『荀 玲琳と申します。どうぞ、玲琳とお呼びくださいませ』

 

 

ずるずると、そのまま扉にもたれ掛かったままずり落ちる

頭を抱え、前髪をぐしゃりと握った

 

「どうして、若君の奥方候補なんだ―――………」

 

 

 

 

 

初めて惹かれた人は――――もう既に手の届かない存在だった

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

   ****    ****

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……殿」

 

彼女と“再会”(と呼べるかは定かではないが)してから、一週間が経とうとしていた

 

「……嘉殿」

 

彼女と曹丕の噂は瞬く間に城内に広まっていた

なんでも、あの曹丕が執務の時以外 片時も離さないらしい

それほど、彼女の事を気に入ったのだろう

 

「……郭嘉殿」

 

城内では

「あの、曹丕様にもついに奥方が…」

という言う声と同時に

「曹丕様も、あのようなお綺麗な方を娶れるとは羨ましい」とか

「あの曹丕様に見初められるなんて、なんて幸運な方」とか

双方から羨ましがられている様だ

 

「……郭嘉殿!」

 

正直、聴きたくもないのに勝手に耳に入って来て嫌になる

 

「………はぁ」

 

思わず、溜息が出てしまった

いっその事、破談になればいいんだ

などと、不敬な事まで考えてしまう

 

私の方が先だったのに……

 

そうだ、自分の方が先だったのだ

彼女に―――玲琳に出逢ったのも、見初めたのも、郭嘉の方が先だった

なのに、曹丕は曹操の息子というだけで、彼女を手に入れてしまった

 

なんとも、恨めしい話だ

 

自分は、触れる所か、声を掛ける事すら叶わなかったというのに……

曹丕は、あっさりそれをやってのけてしまった

 

「はぁ………」

 

やっぱり、溜息が出た

 

「……郭嘉殿!!」

 

だからといって、曹丕を恨むのはお門違いだ

曹丕だって知っていた訳ではない…筈なのだから

 

もう、このもやもやをどこにぶつけていいのやら分からない

郭嘉が三度目の溜息を付こうとした時だった

 

 

 

 

 

 

「司空軍祭酒、郭奉孝殿!!!!」

 

 

 

 

 

 

けたたましい叫び声と共に、目の前の机をバンッと勢いよく叩かれた

 

一瞬、何が起きたのかと、思わず目を瞬かせる

すると、目の前に仁王像の様な怒りの形相の陳羣が立っていた

 

「……長文?どうしたんだ?」

 

何故か陳羣はわなわなと震えながら、郭嘉を睨んでいた

 

「“どうしたんだ?”じゃないです!!何度も呼んでいるのに、何ぼけっーとしてるんですか!!貴方は!!!」

 

「……………」

 

どうやら、先程から何やら声が聴こえると思っていたが、陳羣が呼んでいたらしい

が、そこは郭嘉

まるで何事も無かったかのようににっこりと微笑んだ

 

「そうだったのか?それはすまなかったね、気付かなかったよ」

 

「……………」

 

郭嘉の、あまりにも悪びれもしない態度に、陳羣は諦めにも似た溜息をした

 

「……もういいです。どうせ、また酒か女性の事でも考えていたのでしょう」

 

はぁ…と、盛大な溜息を付きながら嫌味の様にそう言う陳羣に郭嘉はにっこりと微笑むと

 

「凄いね、長文は。当たりだよ」

 

と、言いながらぱちぱちと手を叩いた

その態度に、陳羣がますます呆れた様に溜息を付いた

 

「ほんっっっっっっっとうに貴方と言う人は…っ!期待を裏切らない人ですね!!」

 

「うん、褒め言葉として受け取っておくよ」

 

「まったく褒めていません!!」

 

はぁ……と、やはり盛大な溜息を付いた後、陳羣はばさりと持っていた書簡を郭嘉の目の前の机の上に置いた

 

「うん? これは」

 

「仕事に決まっているでしょう。貴方の判がないと上に提出出来ないんです。急ぎですので、さっさとお願いします。私も手伝いますから」

 

陳羣の言葉に、一瞬面食らった郭嘉だが、次の瞬間にっこりと微笑んだ

 

「長文が手伝ってくれるのかい?助かるよ」

 

「いいえ、これも“仕事”ですから!」

 

何やら、“仕事”部分を強調されたが、ここは流しておこう

 

「大体、こうでもしないと貴方はすぐ何処かへふらふらと行ってしまうでしょう!」

 

どうやら、手伝いと監視の意味合いも含まれているらしいが、どちらかというと前者の理由の方が強いだろう

陳羣の気遣いに、郭嘉はくすりと笑みを浮かべた

 

「長文は優しいなぁ」

 

「なっ……!!?」

 

まさかの、郭嘉からの“優しい”発言に、陳羣が顔を真っ赤にさせる

 

「な、なななな何言ってるんですか!!!ふざけるのも大概にしてください!!」

 

馬鹿馬鹿しい!

と、陳羣は隣の椅子に座って黙々と書簡を確認しだした

 

郭嘉も、くすくすと笑いながら仕方ないので仕事をする事にした

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

―――半刻後

 

「ねぇ、長文」

 

「なんですか?」

 

郭嘉には目もくれず書簡の確認をしていた陳羣に、暇そうにしていた郭嘉が話し掛けた

 

「何か面白い話をしてくれないかな?」

 

「は!?」

 

突然の、郭嘉からの意味不明の要求に陳羣が素っ頓狂な声を上げた

 

「何、馬鹿な事言ってるんですか!!そんな暇があったらさっさと仕事を――――」

 

そこまで言い掛けて、陳羣は固まった

郭嘉の机の上には、決裁の済んだ書類が綺麗に積み重なっていた

 

「もう終わったんだ。後は、長文の確認している書類だけだよ」

 

「………………」

 

あまりの展開に、陳羣はぽかーんと間抜けに口を開けてしまった

 

いくらなんでも早すぎる

あれだけあった、未処理の書類をたったこれだけの時間で片付けるなんて……

 

本気をだせは、こんなにあっさり終わるのに…

どうしてこの人は、いつもさぼろうとするんだ!

と、何やらふつふつと湧き上がってきたが、ちゃんと仕事をこなしているのだから怒鳴る訳にもいかず、陳羣は はぁ…と息を吐くと、書簡を確認しながら

 

「そうですね……今、一番噂になっているのはやはり荀彧様の従妹殿ではありませんか?」

 

陳羣の言葉に、郭嘉の肩がぴくりと動いた

 

「なんでも、曹丕様の奥方候補の方の様で、大層お美しくて才のある方らしいですよ?」

 

一瞬、額から嫌な汗が流れ落ちる

 

「へ、へぇ…そんな人がいたのか、知らなかったなぁ」

 

郭嘉のその言葉に、一瞬 陳羣の手が止まった

 

「……知らなかった?あの郭嘉殿が???ご冗談でしょう!美しい女性とあらば、手当たり次第声を掛けている貴方が!?」

 

「……長文、それ 何気に失礼だよね」

 

「失礼も何も、事実ですから」

 

きっぱりはっきり言いきられ、流石の郭嘉も押し黙る

だが、当の陳羣は気にした様子もなく、再び書簡の確認をしだした

 

「でも、意外です。てっきり、郭嘉殿の所へも来ているかと思っていました」

 

「え?」

 

一瞬、陳羣の言う意味が理解出来ず、郭嘉は首を傾げた

 

来ている?

どこに???

 

思わず、立ち上がり陳羣の肩を掴んで詰め寄る

 

「ちょっと待って長文。その“来ている”って言うのはどういう事だい?」

 

いきなり詰め寄られた陳羣は、困惑した様に首を傾げた

 

「え?だから、玲琳殿の事ですよ?いつも、いらしているじゃないですか」

 

「いらしてるって……」

 

何の話だ……?

話の意図が分からない

 

「だから、玲琳殿は学問や論語・兵法などにもご興味がおありの様で、よく荀攸殿や程昱殿の所にお話を聞きにいらしているじゃないですか。だから、てっきり郭嘉殿の所にも来ているかと――――」

 

「――――なにそれ」

 

知らない

 

彼女が、荀攸殿や程昱殿の元へ通っている?

そんな事実私は知らない

 

荀攸や程昱と言えば、荀彧と並ぶ曹操の参謀だ

勿論、郭嘉もそうだ

 

普通に考えれば、郭嘉の元にも来ていそうなのに…

来るどころか、あれ以降 その姿すら見かけたことが無い

 

「……………」

 

郭嘉は、脱力した様にだらん… と陳羣の肩を掴んでいた腕を離した

 

「郭嘉殿?」

 

郭嘉の異変に気付いたのか、陳羣が心配そうに郭嘉を見た

 

彼女が……自分以外の他の参謀の所には来ていた

 

自分の所にだけ来てないという事実が、予想以上に重かった

 

「本当に、どうしたんですか?郭嘉殿」

 

心配そうに尋ねてくる陳羣にハッとして、郭嘉は何でもないと言う風ににこりと笑みを作った

 

「ああ、長文。残りの書類は自分でやるよ。手伝いありがとう」

 

そう言って、ぐいっと陳羣を扉の外に押しやる

 

「え?あ、あの……!!?」

 

いきなり、追い出されそうになった陳羣は、おろおろしながら郭嘉を見るが

郭嘉は、やはり笑みを浮かべたまま

 

「じゃぁ、お疲れ様」

 

そう言って、ばたんっと扉を閉めた

 

「ちょっ…!!郭嘉殿!?郭嘉殿っ!!」

 

外から、陳羣がどんどんと扉を叩くが、郭嘉はそれには一切返事をしなかった

そうしている内に、諦めたのか

いつしか、陳羣が「ご無理はなさいませんように」とだけ言い残して去って行った

 

扉の外に陳羣の気配が無くなった途端、郭嘉はずるずるとその場に崩れ落ちた

 

「来てるって……なんだ、それは」

 

知らなかった

彼女が、玲琳が執務棟に何度も足を運んでいたなんて

 

しかも、郭嘉以外の人にだけ会っている……?

 

それではまるで……

 

嫌な、考えが浮かぶ

だが、郭嘉自身そうされる原因も理由もまったく身に覚えがない

 

でも、そうとしか考えられなかった

 

「は…ははは………」

 

最早、乾いた笑しか浮かばない

 

「……私は、避けられているの、か……?」

 

それは、絶望的な言葉に聞こえた――――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

まさかの、無視!?

ですよ、奥さんwww

しかも、笑えるぐらい郭嘉と夢主の絡みねぇな

ここまで、まだひとっ言も話すらしていないというwww

郭嘉も、不憫な奴じゃ…ほろり

って、仕組んでるのは私ですけどねー( ̄ー ̄)

 

大丈夫!

理由は、ちゃんとあるから!

むしろ、それより曹丕との絡みシーンをどの程度書くか…だよなぁ

や、だってコレ曹丕夢じゃなくて、郭嘉夢だしー

 

ちなみに、陳羣

あれ、イメージ違っていたらスミマセン…

なんか、小姑っぽいイメージしかなくって…(-_-;)

でも、いい人ですよ!いい人

 

2012/05/21