MARIKA

-Blue rose and Eternal vow-

 

  Act. Ⅱ アーロンパーク 8

 

 

 

その時だった

 

 

「いい加減にして!!」

 

 

ひときわ甲高い声が辺り一帯に響き渡った

魚人達が一斉に、声のした方を見る

 

アーロンがゆらりと立ち上がった

 

コツリ…と、ヒールの音がして姿を現したのは―――……

 

 

「勝手な推測で話を進めないで!」

 

 

それを見た、ウソップは大きく目を見開いた

そこには、ナミが立っていた

 

ナミは魚人達を睨みつけると、ゆっくりと魚人達の方に歩いて来た

 

「口を慎むのね、私が裏切り者ですって?」

 

バシッと、進行方向にいたナミを裏切り者だと言い出したエイの魚人の胸を払いのける様に叩くと、そのままアーロンの前まで躍り出た

そして、左肩のそれに手を当て

 

「私がこの一味である事は、8年前この刺青に誓ってる筈よ!!」

 

そこには、アーロンの魚人海賊団のマークである、ノコギリザメの刺青が掘られていた

それを見た、アーロンはにやりと笑みを浮かべ

 

「ふ…あーすまん、すまん。ナミ、お前が怒るのも当然だ。だが安心しろ、おれはこれっぽっちもお前を疑っちゃいねェ」

 

そう言ったアーロンの表情は、面白いものを見るかの様な目でナミを見ていた

ナミの表情が一瞬、険しくなる

 

背中に、嫌な汗が流れ出てくる

それでも尚、息を飲みアーロンを睨みつけた

 

だが、アーロンは顔色ひとつ変えずに

 

「おれとお前は8年の付き合いだ。おれ達ァ、少し気が立っていただけさ、なァ?そうだろう、ナミ」

 

そう言って、ナミの両肩を掴んだ

そして、ゆっくりとウソップの方を見ると

 

「消さなきゃいけねェのは、ロロノア・ゾロとその一味さ!」

 

その言葉に、ウソップがひぃっ…!と震えあがる

 

「ちょ……っ待て、ナミ~~~何とか言ってくれよォ!ナミぃ~~~!!」

 

「……………」

 

ウソップが懇願する様に、ナミに助けを求めた

だが、ナミはその言葉には答えずに、視線だけで辺りを見渡した

 

いたる所に、死屍累々と横たわる魚人達

ゾロの仕業だという事は、一目瞭然だった

 

内心、心の中で舌打ちしながらナミは息を飲んだ

 

ゾロの奴……! 余計なマネを……!!

 

だが、ここでゾロの時の様にウソップを助けに入れば、全てが終わってしまう

それだけは出来ない

 

今、アーロンに疑われる訳にはいかないのだ

 

ゾロも逃がした後、さっさと逃げてくれればよかったのに

余計な、置き土産を残して行ってくれたものだ

 

分かってはいたが……

こんな事なら、逃がすべきじゃなかったとさえ思ってしまう

 

もう少しで、終わるっていうのに……!!

後、少しなのに……!!

 

ここで、失敗する訳にはいかないのよ……

 

ちらりとウソップを見る

今にも泣きそうな顔で、こちらを見ている

 

だが、ナミはそれには応えなかった

応えない代わりに、ぐっと奥歯を噛みしめて目を瞑る

 

それを見たアーロンは、にやりと笑みを浮かべた

そして、ゆっくりと手を離す

 

その時だった

エイの魚人が、煽る様に

 

「どうしたナミ、顔色が悪いようだが…?」

 

そう言いながら、ナミの横を通り過ぎていく

 

「…………」

 

「しかし、この長っ鼻は――――」

 

そして、ウソップの前に突き刺さっているナイフに手を掛ける

ウソップが、びくりっと身体を震わせた

 

「―――いくらお前でも助けられねェ。アーロンさんに立て付いたからにはな」

 

そう言って、そのままぐいっとナイフを抜き取った

その言葉に、ナミがギリッとその魚人を睨みつける

 

「どこまで…どこまで、私を疑うつもりっ!!!」

 

ナミがカッとなりそう叫ぶと、その魚人はゆっくりとナイフをちらつかせながら

 

「まぁ、お前という人格を踏まえればこその疑いだ。お前は、頭が良すぎるからな」

 

「アーロンとの約束の金額も、もうすぐ溜まるのよ!! 今更、あんた達を裏切るなんて……っ!!」

 

そう―――もうすぐ、全てがうまくいくのに………!!

 

その言葉に、ウソップが目を瞬かせた

 

「約束の金額……?」

 

一体、ナミ達は何の話をしているのだろうか

その時だった、突然エイの魚人がウソップの長っ鼻にナイフを突きつけた

ウソップが、ぎょっとして真っ青になる

 

「知ってるさ…1億ベリーでココヤシ村を買い取るアーロンさんとの8年前の約束…」

 

そこまで言って、その魚人はくっと喉の奥で笑った

そして、ウソップが真っ青なのを無視するかのように、こんこんっとナイフの峰でウソップの長っ鼻を叩いた

 

「……しかし、おれにはそれが解せなくてね…。村人を裏切り、親を裏切り、金以外何も信用出来ねェお前が…何故、そうまでしてココヤシ村にこだわるのか? 何故、あんなちんけな村の為に…」

 

その言葉に、ナミがギリッと奥歯を噛みしめてその魚人を睨みつけた

その時だった

そいつは、とんでもないものを取り出した

 

「実は…お前の部屋で、こんなものを見つけちまったんでね」

 

そう言ってそいつが出したのは、血の滲んだ一枚の古ぼけた地図だった

瞬間、サッとナミの表情が変わる

 

「…………!! そ、それは……私の……っ」

 

ぴくりと、アーロンが微かに反応する

 

「私の……? 何だ…?」

 

にやりと、エイの魚人が笑みを浮かべた

そして、その地図をアーロンにも見える様に広いげると

 

「これは、宝の地図じゃねェのか? この島の全域を示す地図だが、間違いなく“ココヤシ村”を指している様だが…?」

 

瞬間、ざわりと周りの魚人達が騒ぎ出す

口々に、「ココヤシ村に財宝が!?」と口にした

 

ぐっと、ナミが拳を握りしめると、唇を噛みしめた

 

「……その地図は、私の個人的なもの…っ、あんた達には、これっぽっちも関係ないわ!!」

 

そう言って、その地図を奪おうと手を伸ばすが、ひょいっと高く持ち上げられた

 

「おっと…どうした? 随分、形相変えて」

 

にやりとその魚人が笑みを浮かべる

ギリッと、ナミがその魚人を睨みつけた

 

その時だった

 

「な…なんじゃこりゃァ~~~!? 一体、何があったんだァ~~~!?」

 

突然聴こえてきた叫び声に、はっと皆がそちらを見る

すると、タコ壺を持ったハチが目の前に横たわる仲間達を見て、奇声を発していた

 

「“海賊狩りのゾロ”の仕業だ! それにしても、何処に行ってたハチ! お前が居りゃ、こんな事態は防げた筈だ」

 

アーロンの言葉に、タコの魚人のハチはどんッと胸を叩いて

 

「あったりめェよ!! おれさえいれば、こんな事にゃァ! 許す筈ねェぜ!!」

 

顔を真っ赤にしてそう訴えるハチに、エイの魚人が小さく息を吐いた

 

「って事は、ゾロが何処に消えたか知らないって訳か…」

 

「おおー!!!」

 

と、深く頷いた後にふとハチが顎に手を当てて

 

「おれが見たとすりゃ、会った事もねェ少し不審な剣士が1人……あいつかァ!!

 

 

「会ってんじゃねェか、バカ野郎!!!!」

 

 

アーロン以外の魚人が一斉にそう叫んだ

 

「ゾロは、何処へ行ったんだ!!」

 

ハチは、しどろもどろになりながら

 

「アーロンさんに、会いてェって言うから…おれが今、ココヤシ村に送って行った所だ」

 

「送ってやっただと!!?」

 

その言葉に、弁解する様にハチが慌てて口を開く

 

「いや、だってあいつアーロンさんの客だというから…村へ連れて行ったんだ。まさか、こんなに早くあんたが帰るとは思わなくてよ」

 

すると、アーロンはくっと喉の奥で笑うと

 

「―――って、こたァ、慌てて飛び出す事もねェな。あっちもおれを探してるという訳か……」

 

「……………っ」

 

ナミがギリッと奥歯を噛み締める

 

もうこれ以上、余計なマネをされては困る

こいつらに(・・・・・……!!

 

その時だった、ウソップが鞄から愛用のパチンコをそっと取り出そうとしていた

 

「…………っ!」

 

恐らく、ゾロが来るまでの時間稼ぎをしようというのだろう

 

冗談じゃなかった

これ以上邪魔される訳にはいかなかった

 

なんで…何で邪魔するの……っ!!

もうすぐ、全てがうまくいくのに……!!

 

ナミは素早く胸元から根を取り出すと、そのままウソップめがけて―――――……

 

 

 

 

ドカッ!!!!

 

 

 

「うわっ!!」

 

ズザザザザっと、ウソップが後方に吹き飛ぐ

 

もうすぐ……っ!!

 

「てめェ!!! やろうってのか!!」

 

ウソップが、口元の血を拭いながらナミを睨みつけた

 

「……………」

 

ぐっと、根を持つ手に力が篭る

 

「―――邪魔なの。あんたが悪いのよ…魚人(アーロン)に手を出したりするから……」

 

「!!?」

 

ウソップは大きく目を見開くと、ぷっと血を吐きだして立ち上がった

 

「ナミ、お前にはがっかりしたぜ、この魔女っ!!!」

 

ナミがゆっくりとウソップを見る

ウソップは、吐き捨てる様に叫んだ

 

「ルフィはな!! あいつは、お前が船を盗んで逃げた後も、これっぽっちもお前を疑わなかったんだぞ!!! 今だって、完全にお前を信じてる!! そんな奴を、よくも平気な顔してダマせるもんだな!!!」

 

だが、ウソップの言葉にナミは表情すら変えなかった

そして――――……

 

「……それはどーも。だけど、私が信じてるのはお金だけよ。ダマされる方がバカなのよ」

 

「ぬんだと、コラァ!!!」

 

ウソップが、顔を真っ赤にして怒り狂う

だが、ナミは冷静なままゆっくりと目を閉じた

 

「何事もなく、事は運ぶ筈だった……」

 

瞬間、カラカラ…ンとナミが根を床に落とした

そして、エイの魚人が持っていたナイフをもぎ取るとゆっくりとウソップの方に向かって歩き始めた

 

「あんた達は、私の8年間の仕事(ビジネス)を無駄にしかねない…だからせめて」

 

ゆっくりと、ナイフをウソップに突きつけると

 

 

「――――私の手で消してあげる」

 

 

キラリと、ナイフが光った

それを見たアーロンは嬉しそうに笑みを浮かべ

 

「ホゥ…しばらく見ねェうちに、あいつも大分海賊らしくなってきたじゃねェか…」

 

瞬間、周りの魚人達がオオオオ!!!と叫んだ

 

「ブッ殺せ、ナミ!!!」

 

「やれー!!!!」

 

口々にそう叫ぶ

 

だが、ウソップは違った

きょとんと、目を瞬かせた後

 

「消す…? お前が、おれを……???」

 

瞬間、ぷっと吹き出し始めた

 

「はははははは! お前がおれを消す!? 笑わせんな!!」

 

そう笑い飛ばしたウソップだったが、ナミは違った

すっと、人でも殺しそうな位鋭い目つきでウソップを見ると、その口元に笑みを浮かべた

 

「私を…あんまり舐めない事ね」

 

「!!!?」

 

ナミの尋常でない雰囲気に、ウソップの笑い顔が凍る

 

ナミは本気だ

本気で、自分を消すつもりなのだ

このままここにいては、100% 助からない

 

そう思ったウソップは、素早く鞄からそれを取り出すと

 

 

 

 

「――――必殺!! “煙星”!!!!」

 

 

 

 

 

思いっきり、煙玉をナミに向かって弾きだした

瞬間、ボウン!!と辺り一面が煙で真っ白になる

 

モクモクと煙が充満した広場は、何も見えなくなった

 

魚人達がけほけほと、咳き込みながら手で煙をどかそうとする

 

「野郎!! 煙玉を!!」

 

「取り囲め、逃がすな!!」

 

そう叫ぶが、視界が遮られて誰も動けない

その隙に、ウソップはプールに向かって駆け出した

 

と、その時だった

 

コツリ……

 

ヒールの音が聴こえたかと思うと…

 

「あんなの考えそうな事よね」

 

「え……!!?」

 

プールの前には、ナミが立っていたのは

そして、持っていたナイフを構えると―-――

 

「わ…わわわ、やめろォ!!!」

 

 

 

 

 

 

「……………!!!!」

 

 

 

 

ドスッ!!!!

 

 

「て……」

腹部に、痛みが走る

血が、ポタ…ポタ…と滴り落ちた

 

煙玉が晴れ、魚人達の目に映ったのは

ウソップをの腹をナイフで刺しているナミの姿だった

 

「私の仕事(ビジネス)の為よ…こうするしかなかったの」

 

「ハァ……ハァ……」

 

ウソップが、血まみれになった自身の手を見る

その手は真っ赤に染まっていた

 

それを見た、アーロンがにやりと笑みを浮かべる

 

「ナミ…てめェ………」

 

瞬間、ドシュッとナイフが血まみれのナイフが抜き出された

 

 

 

「おとなしく、死んで……!!!」

 

 

 

ぐらりと、ウソップの身体が揺れる

そして、そのままプールに落ちたのだった

 

それを見た、魚人達は一斉にわっと歓声の声を上げた

 

「よくぞ、復讐を果たした!」

 

「それでこそ、アーロン一味の幹部だ!!!」

 

だが、見ていたのは魚人達だけでは無かった

アーロンパークの外からその様子を見ていたジョニーは、信じられないものを見た様に震えあがっていた

 

「は…あ……ああ…………あ!! た…大変だ……」

 

 

ガタガタと身体が震える

声がかすれる

 

ナミが……

 

 

「ウ…ウ…ウソップの兄貴が…ナミの姉貴に…殺されちまった!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

やっと、ウソップの回終了ですね!

次回から、夢主側の話ががっつり入りますよ

 

※今回、名前変換ありません すみません… 

 

2014/04/12