MARIKA

-Blue rose and Eternal vow-

 

  Act. Ⅱ アーロンパーク 9

 

 

 

――――ココヤシ村

 

「何だとォ! ウソップが捕まった!!?」

 

ダンッという音と共に、ゾロの声が村中に響いた

ゾロに詰め寄られた青年は、こくこくと頷きながら

 

「ああ…! さっき、アーロンパークに連れてかれちまったよ!」

 

「あの若者は、勇敢にもアーロンに逆らったんだ。 きっともう、殺されてる!」

 

集まっていた、村の連中がゾロにそう言い聞かす様に叫んだ

 

ゾロは、ギリッと奥歯を噛みしめて拳を握りしめた

 

「くそ……っ、よりにもよっておれの暇つぶしの後に捕まっちまうとは…」

 

きっとあの惨劇をみればアーロンとやらは激怒しているだろう

そこに、アーロンに逆らったというウソップが捕まれば……

 

想像しただけで、ヤバいのは明白だった

 

「くっ……!」

 

ゾロは、村人たちが驚いているのを無視して駆け出した

 

 

ウソップ! 生きてろよ!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

      ◆      ◆

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「本望でしょ? 海で死ねて……」

 

ナミは、ウソップの沈むプールを見ながら静かにそう呟いた

その時だった

あれだけ散々疑っていたエイの魚人が手のひらを返した様に笑顔で手を差し伸べてきた

 

「ナミ、疑って悪かったな。お前は、おれ達の仲間だ」

 

瞬間、ギロリとナミがその魚人を睨みつける

 

「仲間? 私に、“仲間”なんていないわ!」

 

そう言って、差し出された手に自身の手ではなく

血がべっとりと付いたナイフをくるりと回すと差し出した

 

「私がこの一味に入った理由は一つ!」

 

バシッと、魚人から村の地図を奪い取る

 

「一億ベリー稼いで、あんた達からココヤシ村を買い取るため。いわば同盟よ」

 

魚人達が、顔を見合わせる

ナミはそんな魚人達をジロリと睨みつけると

 

「妙な疑いはもうたくさん!! 別に信じて欲しくないけど、問題は村の売買。今更ナシなんて言わないわよね?」

 

それだけ言うと、そのままアーロンの横を通り過ぎた

 

「約束は守って! 一億ベリーはもうすぐ溜まるわ!」

 

ナミのその言葉に、アーロンはくっと喉の奥で笑った

 

「当然だ、金の上の約束を破るぐらいなら腹切って死ぬ方がマシだ。おれはそういう男だぜ……!!」

 

「……さすが、アーロンね。話が分かるわ」

 

そう言い残すナミは、一度も振り返る事をしなかった

その様子を見ていた、エイの魚人はナミに渡された血の付いたナイフをじっと見つめ

 

「…不気味な女だ………」

 

そう呟いていた

だが、アーロンは違った

楽しそうに笑いながら

 

「シャハハハハハ!!! まったく、いい女になったもんだぜ!!」

 

そんなアーロンたちを無視して、ナミはそのままアーロン・パーク内へと消えて行ったのだった

その様子を外から見ていたジョニーは、ガタガタと震えながらその場に、尻餅を付いた

 

「……ゾロのアニキに知らせなきゃ……!! あいつは…あの女は、魔女だったんだっ!!」

 

そう叫ぶと、慌ててその場から駆け出した

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

      ◆      ◆

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

一方、その頃……

 

「うほおおおおお~~~~~!!!」

 

ルフィは、眼前に迫る建物を見て、奇声を発していた

 

「見えたぞ! アーロン・パークだ!!!」

 

巨大なカバとも牛ともいえる海王類に船を引っ張らせて、物凄いスピードでルフィ達を乗せた船はアーロン・パークへ向かっていた

だが……

 

 

「モ“ウッ~~~~~~~」

 

 

牛は目を回してフラフラ状態だったのだ

それもその筈

 

ルフィのパンチを食らい、サンジの蹴りを食らい、トドメにレウリアの風を食らったのだ

海王類じゃなければ、大参事になっている所である

 

牛は、一応必死に泳いではいるが…

もう、意識も遠のきそうなのか…完全に、目が逝っていた

 

「コラ!! 疲れるな、牛!!」

 

無茶振りもいい所である

 

「やっぱりアレっすよ。サンジのアニィの蹴りと、リアの姉御の攻撃が効いてるんですよ」

 

ヨサクが、うーんと唸りながらそう言う

 

サンジは、知らぬが存ぜぬ素振りで、優雅に煙草をふかしていた

レウリアはその横で、当然という顔をしているから始末に負えない

 

しかし、どんどん遅くなる牛にルフィが喝を入れるが…

どうにもこうにも、限界らしく…

 

徐々に、アーロン・パークの建物からずれていく

 

「おい! 違うぞ! あの建物だぞ!!」

 

そう言うが、牛はもう本当に目を回しており……

 

「ウ“モオオオオウ~~~~~~」

 

妙な鳴き声と共に、どんどん どんどん逸れていき

 

「ちょっ、ちょっと!!」

 

レウリアが慌てて叫ぶが―――――

 

「だめだー岩にぶつかるゥ!!!!」

 

 

ヨサクがぎゃー!!!!と、叫び声を上げた

 

 

「おい! もっと左だ!!」

 

 

サンジも声を大にして叫ぶが――――……

 

 

「ウ“モオオオオウ~~~~~~~~」

 

 

どんどん、牛はアーロン・パークとは離れた岩場に向かって――――

 

 

 

 

「「「「あああああああああ!!!!」」」」」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ギィ……と、ゆっくりと扉が開けられた

見慣れた、机

見慣れた、ペン

見慣れた、海図――――

 

そこには、ナミが8年間ずっと書き続けてきた海図がびっしりと埋め尽くされていた

 

「せっかく…ここまで来たのよ……」

 

あの日から、8年

ずっと、耐えてきた

 

8年前、アーロンに連れられて来たのはこの部屋だった

アーロンは言った

 

「さァ、今日からここがお前の部屋だ。お前の机。お前のペン。必要な物は全て揃っている」

 

ぎゅっと、血の滲んだ包帯の巻かれた左手を握り締める

 

「ずっと耐えてきたのに……っ。だから、ああするより他に――――」

 

その時だった

ズズズズズズ…と、地鳴りの様な音が聴こえたかと思うと轟音と共に建物全体が大きく揺れた

 

「な、何…!?」

 

ナミが揺れに耐える様に、思わず柱にしがみ付いた時だった

外ではとんでもない事が起きていた

 

「うほ――――――――――――!!!!!」

 

岩に激突し沈没していく牛と、その勢いで上空に投げ出されたルフィ達を乗せた船だった

ヨサクとサンジとレウリアが声にならない叫び声をあげている中

ルフィだけが楽しそうに笑っていた

 

 

「うほ―――――っ、まるで空飛んでるみたいだ―――――!!」

 

 

と、間抜けな事を言っているが……

 

 

 

「みたいじゃないっす――――――!!!」

 

 

 

 

「ブッ飛んでんだよ、バカ!!!」

 

 

 

 

「いやああああああああ!!!!」

 

 

事実、空飛んでいるのである

が、羽根がある訳でもなく、空飛ぶ船でもないので…ずっと飛んでいる訳もなく…

どんどん、高度が落ちていっていた

 

 

 

「落ちる――――――――――っ!!!!!」

 

 

 

目の前の林に向かって船は加速していった

 

「おい! 林に突っ込むぞォ!!」

 

 

「うわああああああああ!!!」

 

 

サンジがそう叫んだ瞬間、ズボォォォォォォ!!!!と凄まじい音と立てて、林の中に真正面から突っ込んでいった

が―――――――

 

 

「ちょっとぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!!!!」

 

 

 

船は止まらず、そのまま林の中をガガガガガと物凄い音を立てて走り始めた

 

「すげー着地した!!」

 

ルフィの感動した様なその声に、思わずレウリアが

 

「そういう問題じゃないから!!」

 

と、突っ込んだのは言うまでもない

 

「でも、止まりやせェん!!!!」

 

ヨサクがそう叫ぶ通り、船は止まる事を知らない様にどんどん加速していくではないか

レウリアがもう、半分泣きそうになりながら必死にマストにしがみ付いていた

 

流石のサンジも、レウリアに声を掛ける事すらままならないのか…

あまりの、状態に叫び声にもならない様だった

 

楽しんでいるのは、ルフィだけである

 

その時だった

 

「ん?」

 

ルフィが何かを見つけた様に、目を瞬かせた

瞬間、ぱぁっと嬉しそうに満面の笑みを浮かべ――――

 

 

「よォ!! ゾロ!!!」

 

 

 

「え!?」

 

 

ぎょっとしたのは、レウリア達だ

ルフィの声を聴いて前を見ると、船の進行方向にゾロの姿が――――

 

 

「マリモさん、避けて――――――!!!!」

 

 

 

「アニキィ!!!!」

 

 

 

それにぎょっとしたのは、ゾロだ

が、ぎょっとする間もなく、船がゾロを押し潰した

かと思うと、そのままザザザザザザ!!!と林を抜け田んぼの方へ行ったかと思うと、その先の岩場へ向かって―――――

 

 

 

 

 

 

 

ドッゴオオオオオオオオオオン

 

 

 

 

 

 

もうもうと土煙が舞い上がる中

ルフィは呑気に、麦わら帽子の土をぱんぱんと叩きながら

 

「あー着いた着いた」

 

と、満足気に頷いている

サンジはレウリアの手を取りながら

 

「大丈夫ですか? リアさん」

 

「……全然、大丈夫じゃないわ……」

 

よろよろと、残骸の隙間からレウリアが出てくる

どうやらネフェルティのお陰で怪我などはしていない様だが、かなり酷い目にあった

ちなみに、ヨサクは残骸の中に埋もれて足をぴくぴくさせている

 

その時だった

ゾロが、船とおぼしき残骸の中から這い出て来て

 

 

 

「てめェら……一体、何やってんだ!!!!」

 

 

最もな意見である

激怒するゾロを余所に、ルフィはさも当然の様に

 

「何って…ナミを連れ戻しにきたんだよ。まだ見つかんねェのか?」

 

と、服をぱんぱんと叩きながら言った

 

「ヨサクさん、大丈夫?」

 

未だに埋もれているヨサクにレウリアが声を掛けるが…

ヨサクは未だにピクピクしていた

 

「そだ、ウソップとジョニーはどうした?」

 

その言葉に、ゾロがハッとして慌てて立ちあがった

 

「ウソップ……!! そうだ! こんな所で、油売ってる場合じゃねェっ!!」

 

「ん? どうしたんだ!?」

 

「あの野郎、今、アーロンに捕まってやがんだ! 早く行かねェと殺されちまう……」

 

 

 

 

 

 

「———殺されました!!!!!」

 

 

 

 

 

 

その時だった

突然、誰かの叫び声が聴こえてきた

はっとして、そちらの方を見ると肩で息をしながらジョニーが走って来ていた

その顔は、真っ青で今にも倒れそうだった

 

「!?」

 

「…もう、手遅れです……」

 

がくっと、その場に膝を付きジョニーはガンッと拳を地に叩きつけた

 

「……ウソップの兄貴は死にました……殺されたんです…っ。……………!!! ナミの姉貴に…っ!!!」

 

 

 

「「「「「!!?」」」」」

 

 

 

「殺されたって……」

 

あのナミが…? ウソップを……?

俄かには信じがたい話だった

 

「本当なのか、それ!?」

 

最初に叫んだのがヨサクだった

すると、ジョニーはどさっとその場に座り込み

 

「ああ! とんでもねェ話さ!! あの女は魔女だったんだよ! 隠し財宝の眠っているココヤシ村を独り占めにする為にアーロンに取り入ってたんだ!! その為には、平気で人を殺しちまう根っから腐った外道だったんだ!! みんな、ずっと騙されてて――――」

 

その時だった、ルフィが叫んだ

 

 

「お前っ!!もういっぺん言ってみろ!!! ブッ飛ばしてやるからな!!」

 

 

ジョニーの胸ぐらを鷲掴みにすると激怒したのだ

それを見た、レウリアが慌てて止めに入る

 

「ちょっと、止めなさいよルフィ。ジョニーさんには関係ない話でしょう!」

 

だが、ルフィは止まらなかった

 

「信じたくなきゃいいさ! でも、おれはこの目で見たんだ!! あの女がウソップの兄貴を――――」

 

 

 

 

「デタラメ言うな!!!」

 

 

 

 

 

 

「ナミがウソップを殺すわけねェだろうが!!! おれ達は、仲間だぞ!!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「だ、だけど、おれは――――っ」

 

「ルフィ……」

 

ルフィの言いたい事も分かる

ルフィは、ナミを仲間だと思っている

その仲間が仲間を殺すなどある筈ない

そう思っても、おかしくない

 

だが、ジョニーが嘘を付いている様にも見えない

こんな事、冗談で言える話じゃない

 

どういう事……?

 

何が本当で何が嘘なのか

判断しようにも、判断材料が少なすぎた

 

その時だった

 

 

 

「誰が仲間だって? ルフィ」

 

 

 

 

はっとして声のした方を見ると、そこにいたのは――――

 

 

「ナミ……?」

 

 

そこには、棍棒を持ったナミが険しい表情でこちらを睨んでいたのだった

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ついに、ルフィと夢主が上陸しましたー

やっと、出番増えるな! 

 

2014/05/04