MARIKA

-Blue rose and Eternal vow-

 

  Act. Ⅱ アーロンパーク 25

 

 

視界が霞む・・・・・・

全身の痛みが前より酷く感じた

周りの音が、頭に響く

 

「こんな、こと・・・・・・してる、場合じゃ・・・・・・」

 

早く、ルフィのとこにいかねェと・・・・・・

 

助けに行ったはずのレウリアも上がってこない

つまりは、彼女でも不測の事態が起きている可能性がある

 

そもそも、あの女も“悪魔の実の能力者”じゃないのか・・・・・・?

あの不思議な力は――――・・・・・・

 

風を操り、自在に攻撃する

普通ならあり得ない・・・・・・・・・・だった

だから、“悪魔の実の能力者”だと思っていたが――――・・・・・・

 

自分から海に飛び込んだという事は、違うという事か・・・・・・

 

「へっ・・・・・・まぁ、どうでも、いい、が、よ・・・・・・」

 

ゾロが震える手を隠す様に、刀の持つ手に力を籠めた

とりあえず、とっととこのふざけたタコ星人を先に倒すことが先決だ

 

それなのに―――――・・・・・・

 

さきほどから、のらりくらりと緊張感のない事ばかり――――

今も、目の前で腕をうねうねさせていて、イラつく

 

 

「・・・・・・いい加減――――くたばれっ!!!!」

 

 

そう叫ぶなり、刀を思いっきりハチに向かって振り下ろした

が―――――・・・・・・

 

ハチは、突然6本の腕を伸ばしたかと思うと

 

「タコハチ・・・・・・“吸盤ナンバーナイン”!!!!」

 

そうハチが叫んだかと思った瞬間――――

ゾロの刀が空を斬った

 

「な、に・・・・・・?!」

 

消えた!?

一瞬、そう錯覚しそうになるが――――見ると、何故か傍にあった柱の上部にくっ付いていた

ハチが・・・・・・背中を柱に合わせて

タコの習性なのか・・・・・・全身が吸盤で張り付いたかのように、柱にべた~~~と引っ付いていた

 

なにか、くる・・・・・・!?

 

ゾロが、そう思い神経を研ぎ澄ましたが・・・・・・

 

 

「・・・・・・・・・・・・」

 

「・・・・・・・・・・・・」

 

 

・・・・・・・・・・・・

・・・・・・・・・・・・・・・・・・

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

 

し―――――――ん・・・・・・

 

ざざーんっと、波の音まで聞こえてくる

 

 

 

「だから何なんだ!! さっさと降りて来い!!!」

 

 

 

傷と、焦りと、イラつきで余計に視界が霞んでくる

傷が、ズキズキと痛みが増してくる

嫌な汗が、全身からだらだらと流れ出て、いっその事ここで意識を失えたらどんなに楽か・・・・・・

 

そうとさえ、思いたくなる・・・・・・が

 

「この、クソタコ・・・・・・っ!!」

 

バカにされてるのか、無性に腹が立つ

スタミナが切れている訳でもないのに、息が上がる

 

 

そんなゾロを見ていたヨサクとジョニーがギリっと奥歯を噛みしめた

 

「くそっ!! あのタコ野郎!! ウネウネモタモタしやがってっ!!」

 

「かといって、今海に入ればそのまま海底に引きずり込まれちまうし!!」

 

「だけど・・・・・・っ! このままじゃルフィの兄貴が死んじまう!!!」

 

「・・・・・・おれ達でなんとかするしかねェ!!」

 

と、二人が決意した時だった

突然、後ろからゲンゾウが「待て」と言いながら、ヨサクとジョニーの背を軽くぽんっと叩いた

瞬間

 

 

 

「「うがあァァ!!!!!」」

 

 

 

2人がびきびきびいいいいっと、稲妻の様に走った痛みに耐えかねて、その場の沈没する

 

「君達、そんな重症で海へ入ってどうするつもりだ。 これでは満足に事が成せる筈もない」

 

もっともな意見だった

 

「あのゴムの若者ならば、私が助けに行く。 あの若者を救えるか否か・・・・・・それが、この戦いの分かれ目なのだろう? 私も分かる」

 

ゲンゾウのその言葉に、村人たちも息を呑む

 

「ゲンさん・・・・・・」

 

ゲンゾウの意思は固い

きっと、彼の言う通りなのだろう

自分達の命を預ける相手だ

 

それなのに、これ以上ナミの時の様に黙っている事など出来なかった

 

「おれも行く!!」

 

「あたしもいくよ!!」

 

村人たちが、次々名乗りを上げていく

しかし――――・・・・・・

 

「だめだ!!」

 

ゲンゾウの声が、ぴしゃりと響いた

 

「大勢で行って、手間取っている所を魚人達に見つかってしまっては、かえって彼らに迷惑をかける事になる」

 

「ゲンさん・・・・・・っ」

 

「・・・・・・彼らの戦いに、水を差す結果になってしまっては意味がない。 私、1人でいい!!」

 

そう言い切ると、ゲンゾウはヨサクとジョニーを見て

 

「それでいいな? 君達」

 

ゲンゾウのその言葉に、ヨサクとジョニーが頭を下げる

 

「すまん!! ありがとう」

 

「ここは、あんたに頼む! 申し訳ねェ、急いでくれ!」

 

ゲンゾウが小さく頷いて、アーロンパークの裏手に回ろうとした時だった

 

 

「――――待って!!!」

 

 

はっとして、声のした方を見ると――――そこには、石のハンマーを持ったノジコが立っていた

 

「ゲンさん! あたしも行くよ!!」

 

「ノジコ・・・・・・、お前は怪我を――――」

 

そう―――ノジコは怪我をしていた

あのネズミに撃たれた傷だ

だが、ノジコはそんな事では引き下がらなかった

 

「あいつらは、あたしの妹の為に戦ってくれてるんだよ!?」

 

彼らは、ナミの為に・・・・・・

 

「ゲンさん!!!」

 

ノジコの決意は固かった

そして、彼女が頑なにそう言う理由もゲンゾウには分かっていた

 

ゲンゾウは深く風車のついた帽子をかぶると――――・・・・・・

 

「よし、急ぐぞ!!」

 

「――――はい!」

 

2人が、走って行く――――ルフィを助ける為に

ヨサクとジョニーは申し訳ない気持ちでその2人を見送るしか出来ない、己の不甲斐なさを悔やみつつも――――ただ祈るしかなかった

 

ルフィが助け出される事を――――・・・・・・

 

 

 

――――一方・・・・・・

 

サンジとクロオビはどちらも引かずに、攻防を繰り返していた

だが、ゾロは・・・・・・

 

冷や汗を全身からかきながら、息も荒く、ふらふらしながらも、刀からは絶対に手を離さずに、上に登ったまま降りてこないハチを煩わしそうに見ていた

 

すると、ハチがのほほ~んとした様に

 

「ロロノア・ゾロ。 ひとつ聞いてもいいか? いいよな?」

 

「あ”?」

 

「お前は、三刀流だと聞いていたぞ? なんで、一本なんだ?」

 

「一本で、充分負けてんじゃねェか、てめェは!!!」

 

もっともである

が、ハチにはお好みの答えではなかったらしく――――・・・・・・

 

「う、うるせェ!!! おれは、本気じゃねェんだ!!!」

 

そう返した後、ハチがにや~と笑った

 

「実はな、人間の剣士・・・・・じゃあ、絶対におれに勝てない理由があるのだ!! 聞きたいか? 聞きたいよな? 聞きたら驚くぞ! たまげるぞ!」

 

「・・・・・・・・・・・・」

 

くそ・・・・・・

こんな時に、痛みが・・・・・・っ

 

先ほどよりも、傷の痛みが時間経過と共に酷くなっていく

おそらく鎮痛剤も切れたのだろう

 

傷が熱を持ち、頭がガンガンと痛み出す

 

動いていたらその内引くかと思っていたが・・・・・・

 

「・・・・・・くっ、あ・・・・・・っ!」

 

視界が不意に揺らぎ、耐えられなくなったのかゾロの体制がぐらついた

 

「ニュ?」

 

「ん?」

 

「・・・・・・・・・っ!?」

 

ハチとアーロンが、ゾロの異変に気付く

だが、それに気づいたのは、2人だけではなかった

 

「てめェ・・・・・・やっぱり、“鷹の目”から受けた傷が・・・・・・ッ!!」

 

サンジが、慌てた様にそう叫んだ

 

「「兄貴ィ!!!」」

 

ヨサクとジョニーの声が重なる

 

だが、よくわかっていないハチは、首を捻りながら

 

「なんなんだ? 仮病でも使おうって作戦か~? その手には乗るか~。 ロロノア・ゾロ! おれ様の真の姿を見るがいい!!!」

 

そう言うと、ハチがひょいひょいっと柱を登って上の階の部屋へと入って行った

そして、数秒もしない内に6本の手に刀をそれぞれ6本持ったハチが戻って来た

 

「見ろ!! これが、おれの真の姿! 六刀流のハチ! 参上――――・・・・・・」

 

ぐらあ・・・・・・っと、ゾロの身体が揺れたかと思うと、その場に倒れた

立っていられなかったのだ

 

だが、ハチにはそれが理解出来ておらず・・・・・・

 

「おおい!! そこ、コケるとこじゃねェぞ!!? バカにすんな!!」

 

だが、ゾロはそれどころではなかった

立つどころか、動く事すらままならなかった

 

辛うじて意識だけが、朦朧とする中にあるだけだった

 

それを見た、ヨサクとジョニーが

 

「兄貴!!」

 

「ああ、やっぱり、我慢してただけだったんだ!!」

 

「そりゃぁそうだ、普通なら死ぬか、最低でも半年は立てねェ傷を負ってるんだ!!」

 

その言葉に驚いたのは他ならぬ、ドクターだった

 

「なんじゃと!?」

 

「おかしいと思ってたぜ!! あれ程の戦いをしてきた直後に平気な顔してやがるから・・・・・・! バカか、あの野郎っ」

 

サンジがゾロの異変に気付き、ちっと舌打ちをした時だった

ひゅんっという音と共にクロオビの拳がサンジの腹に思いっきり入った

 

「・・・・・・ぐぁっ!!!」

 

ゾロに気を取られていたサンジに取って、クロオビのそれは不意を突かれたも同然

めりめりめりっと、身体が軋む音と共に後方へ吹き飛んだ

 

そのままアーロンパークの外壁を破り、ココヤシ村の人たちの横を飛んでいった

 

驚いたのは、村人の方だった

 

「な。なんだ? 人が・・・・・・?」

 

だが、ヨサクとジョニーは這いつくばりながらも、慌ててサンジが飛んだ方を見た

 

 

 

「あ、兄貴! コックの兄貴ィィィィィ!!!

 

 

 

クロオビは、しゅうう・・・・・・と、熱を帯びた拳を放ったまま

 

「よそ見はするなと言ったはずだ・・・・・・。 おれは魚人空手40段だぞ」

 

そう言ったところで、サンジには聞こえていないと思ったのだろう

クロオビは小さく息を吐くと

 

「片付いたぜ、アーロンさん。 ロロノア・ゾロをどうする?」

 

「ふん、海にでも捨てて置け。 たわいもねェ奴らだったな・・・・・・つまらん」

 

そこまで言って、何かを思い出したかのように

 

「ああ・・・・・・そういえば、海軍の小娘が1人いたなァ? まぁ、上がってこない所を見る限り、今頃水中でくたばってるかもしれねェがな・・・・・・シャーッハッハッハッハッハ!!!」

 

「まぁ、相手は海兵だ。 念には念を入れるべきか・・・・・・」

 

 

 

 

 

 

 

 

   ****    ****

 

 

 

 

 

 

 

 

 

―――――海水プール内

 

 

 

海水に誰かが入ってくる気配を感じ、レウリアがはっと水上の方を見る

 

まさか、魚人が――――・・・・・・!?

 

そう思って臨戦態勢を取ろうとした時だった

こちらに向かってくる2人組が視界に入った

 

あれは――――

ノジコさんと、ココヤシ村の・・・・・・?

 

レウリアの存在に気付いた2人が、石のハンマーを指さして降りてくる

これで、割ろうというのだろう

だが・・・・・・

 

「(ノジコさん、それと――――・・・・・・)」

 

レウリアがそう呼びかけると、ノジコがこくんと頷きレウリアに距離を取るように手で指示する

レウリアが少しルフィから離れると

もう一人の駐在風の男性――――ゲンゾウが、持ってきたハンマーを思いっきり振り上げてルフィの足下の石に打ち付ける

カ――――ン!!! という音が波紋となって海に響いた

だが・・・・・・

 

やっぱり、浮力が――――・・・・・・

 

いくらゲンゾウが叩いても、ルフィの足下の石は割れなかった

ルフィの顔を見る

真っ青で、血の気がない

かなり水を飲んでいる証拠だ――――

このままでは・・・・・・

 

ぐっと、レウリアは握る拳に力を入れた

 

やるしか・・・・・・ないっ!!

 

 

「(ノジコさん、駐在さん!!)」

 

 

今からするこの技は、完成までに時間を要する

その間、2人にはルフィの呼吸を確保できるようにしてもらわなければならない

 

レウリアは、とんとんとノジコの肩を叩くと

ルフィの首を指さした

そして、2人が入って来たであろう海上の方を指さす

 

それで通じたのか、ノジコがこくんと頷くと、ルフィの頭を引っ張った

瞬間、ぐい~~~~んと、ルフィの首が伸びる

そのままノジコが海上へと頭を持って上がっていく

 

きっと、3人がかりでもこの石を持ち上げる事は不可能だ

ならば、とりあえず、ルフィの顔だけを海上に上げておけば時間が稼げる

それから、レウリアはゲンゾウにジェスチャーで心臓マッサージをお願いする

 

「(お主はどうするんじゃ!!?)」

 

ゲンゾウからの問いにレウリアはにっこりと微笑み

人差し指を立てて横に振った

 

「(では、お願いします)」

 

ゲンゾウに聞こえる様にそう声を掛けると、レウリアは一気にノジコが上がっていたであろう海上へと一度 顔を出した

 

「・・・・・・・・っ、はぁ、はぁ」

 

それに気づいたノジコがレウリアに

 

「あんた! とりあえず、言われた通りこいつの顔だけ外に出したけど―――――」

 

ノジコの言葉に、レウリアが小さく頷く

 

「ありがとう、ノジコさん。 かなり水を飲んでいるの―――せめて、水だけでも吐けば意識は戻るはずよ」

 

「あんたは、どうするんだよ!?」

 

声を荒げそうなノジコに、レウリアがしっと人差し指を口に当てる

そして、裏手からそっとアーロンパークの様子を見た

 

ゾロが倒れていて、サンジの姿がない

 

「・・・・・・あまり、悠長な事はしていられなさそうね」

 

もしかしたら魚人がプールに入ってくる可能性もある

 

レウリアは、腰にはいていたスティック状の武器と銀のナイフを取り出すと――――

 

「今から、断絶結界を張るわ。 ・・・・・・水中で上手く張れるかは分からないけれど――――・・・・・・」

 

「断絶、け、っかい?」

 

「あの石は海底にある限り、私達じゃどうにもできない。 でも――――その場が“海底”ではなくなったら?」

 

「え? それはどういう――――」

 

「見てて」

 

それだけ言うと、レウリアは再びプールの中へと潜った

 

これは時間との勝負だ

魚人が気づくのが先か、結界を張り終わるのが先か―――――・・・・・・

 

ぐっと、持っていた武器を見て心の中で謝る

きっと、これからする事に、この子たちは耐えられない・・・・・

結界を維持できる最大まで先延ばしても――――

 

でも、それ以外の方法が見つからない――――ならば、やるしかない!!

 

 

とん・・・・・・と、再び海底へ戻ると、ゲンゾウの背を叩いた

一度、息継ぎをしてくるように言う

ゲンゾウが頷いて、海上に上がっていく

 

それを見届けてから、レウリアは銀のナイフで自身の手を切った

じわあ・・・・・・と、血が流れ出る

 

だが、レウリアは気にすることなくその血でスティック状の武器に血紋を描く

同じことを銀のナイフにも施した

 

瞬間、ぱぁぁっと、血紋が淡く光り出す

 

後は――――・・・・・・

 

そうしている内に、ゲンゾウが息継ぎから戻って来た

レウリアはゲンゾウに再度ルフィを頼むと、自身はルフィを中心とした2か所を確認する

 

位置だけ確認した時だった

 

海水の中に、別の何か・・・・が入ってくる気配を感じた

レウリアがはっとして、そちらを見る

 

ノジコさん・・・・・・?

 

いや、違うわ・・・・・・これは―――――っ!!

 

無駄のない動き

そして、早さ

 

間違いない

 

 

 

 

   魚人が――――来た!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

あああああああ~~~~

もう11月やーん

これ、年内中に決着付くかなぁ・・・・・・

付けたいんだけど・・・・・・むむむ

 

 

2022.11.02