MARIKA

-Blue rose and Eternal vow-

 

  Act. Ⅱ アーロンパーク 26

 

 

 

海水の中に、別の何か・・・・が入ってくる気配を感じ、レウリアがはっとして、そちらを見る

 

この気配――――・・・・・・

 

無駄のない動き

そして、早さ

 

間違いない

 

 

―――― 魚人が来た!!!

 

 

相手の狙いはきっと自分だろう

しかし、このままではノジコやゲンゾウの事に気付かれてしまう

 

そうすれば、ルフィを助ける事も叶わなくなる――――・・・・・・

 

いいえ、それだけじゃないわ

ココヤシ村の誰ひとり死なす訳にはいかない――――

 

レウリアは、素早くゲンゾウの背をとんとんっと叩くと「ルフィを頼みます」と手を合わせる

その仕草で、ゲンゾウが何かを悟ったのか、はっとしてレウリアの後ろを見た

 

海上の方から、“何か”が物凄い速さでこちらに迫っている

それが彼らの敵である“魚人”だと気づくのに時間は掛からなかった

 

ゲンゾウが慌ててレウリアを見るが――――

レウリアは何でもない事に様に、にっこりと微笑むと

すっと、持っていた銀のナイフで先ほどとは反対の手を斬る

 

「(何を――――・・・・・・!!?)」

 

ゲンゾウがそう叫んでいたが、レウリアは気にした様子もなくその流れ出てくる血で何かの言葉を唱えながら海中に血紋を描いた

 

瞬間、それは起きた

血紋が光ったかと思うと、ゲンゾウとレウリアの間に見えない壁が現出したのだ

否、ゲンゾウからは見えるが、こちら側・・・・からは、向こうは見えない壁だ

 

本当ならば、媒体に描いた方が持続時間を長らせられるが――――

今は、“媒体”がない

 

既に、このナイフも武器も別のものの“媒体”に使ってしまっている――――・・・・・・

 

“海中”という不安定な場所に描く紋は、もっておそらく数分・・・・・・

この“結界”が解ける前にケリを付けなければならない

 

そうとなれば――――

レウリアは近くにいたネフェルティに空間の開門を命じる

すると、ネフェルティがくるくるっとレウリアの頭上を回ったかと思うと、蒼い宝石のはまっている一冊の本をどさっと彼女の手の中に落とした

 

レウリアはその本をばっと開くと、さらに手を銀のナイフで斬った

ぽたり・・・・・・と、血がその本に垂れる

 

瞬間――――

 

ぱああああ!!! と、まばゆい光がその本から放たれた

そして、レウリアの眼前に巨大な八芒星の紋が現れる

 

 

「(水の精霊・“ウンディーアローズ”。 我が血の盟約により、我が剣となり、盾となりて、我が前に現出せよ!!!)」

 

 

レウリアがそう唱えた刹那

それは起きた

 

ざざざざざっと、波の音が響いたかと思うと轟音が海中に轟いたのだ

そして、その中心からネフェルティとはまた異なる美しい人魚の様な姿をした蒼い精霊が姿を現した

 

『主――――、急な呼び出しは感心しないわ』

 

「(緊急事態よ)」

 

レウリアがそう答えると、その精霊・ウンディーアローズは ぱちんっと指を鳴らした

 

「あ・・・・・・」

 

『これで、会話できますでしょう? それにしても主、何故海中に?』

 

「それは――――」

 

レウリアが答えようとした瞬間、何かを察したかのようにウンディーアローズが『ああ・・・』と声を洩らした

 

『理解致しましたわ。 まずはあちらのお魚さんを蹴散らかすのですね』

 

彼女には、先ほど張った結界の奥が見えている

それで、全てを察したのだろう

 

『ですが、主? あの少年の岩を砕くのでしたら、わたくしをもっと早く呼び出せば簡単でしたのに――――まぁ、足は保証できませんけど』

 

「だから、呼ばなかったのよ」

 

さらっと、とんでもない事を言うのがこのウンディーアローズの悪い所だ

足が無くなってもいいなら――――などと、冗談でも実行出来なかった

 

「ルフィの事は後で何とかするわ、だから今はあの魚人を海上に打ち上げる方が先決よ」

 

『あら、水も海もわたくしのテリトリーですのよ? なのに、その程度・・・・でいいんですの? 主がお望みならば、このエリア諸共海底に沈めて差し上げますわよ?』

 

「・・・・・・いや、それは後々困るから止めて」

 

コノミ諸島が沈んでしまっては意味がない

ナミや、ココヤシ村の人達の8年間を無駄にしてしまう――――・・・・・・

 

すると、ウンディーアローズは『ふぅ・・・・』と溜息を洩らし

 

『仕方ないですわね、主の御随意のままに――――・・・・・・』

 

そう言って、ゆっくりとレウリアに向かって微笑むと、くいっと手を動かした

瞬間――――・・・・・・

 

ざざざざざっと、波が再びウンディーアローズの元へと集まってくる

 

『さぁ・・・・お魚さん、わたくしの攻撃受け止められますかしら――――』

 

そうウンディーアローズが囁いた刹那、波が一斉に渦を逆に発生させたかのように轟音を上げながらこちらに向かっていた魚人めがけて放たれた

 

ゴゴゴゴゴゴゴゴ!!!!

 

と、海中が逆流する

その勢いはすさまじく、術者がレウリアでなければ巻き込まれていたかもしれない

だが、ウンディーアローズは楽しそうに笑いながら

 

『さぁ! もっと、もっとですわ!!』

 

彼女がそう言うと、まるで周りの海水が彼女の手足の様に自在に集まりだしたかと思うと

向かって来ていた魚人めがけて海水のドリルの様に襲い掛かった

 

単なる雑魚魚人ならばこれで、一網打尽だろう

だが――――・・・・・・

 

レウリアが何かに気付き、はっと顔を上げる

瞬間

 

 

 

『――――主!!!!』

 

 

 

何かがレウリアに向かって放たれるのと、ウンディーアローズがレウリアを守る様に間に入るのは同時だった

 

「ウンディーアローズ!!?」

 

瞬間、拳風ともいうべきか・・・・・・

謎の、圧力が押しかかってきたのだ

 

『こ、のような、もの・・・・・っ!!!』

 

ぐぐっと、ウンディーアローズが水の盾を張り、その拳風を飛散させる

 

いま、のは――――・・・・・・

 

レウリアが息をのんだ時だった

 

「ほぅ、今のを食らって生きているとはな・・・・・・」

 

そこに現れたのは、あのエイの魚人のクロオビとか言う奴だった

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

   ****    ****

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

―――― 一方、アーロンパーク

 

 

「なんだァ~? あの渦」

 

ハチが突然起きたプール渦に首を傾げていた

 

「ニュ~~~~~? 終わり・・・・・・?」

 

六本刀を持って構えていたハチがちらりと、周りを見る

見ればゾロは倒れ、サンジはクロオビの拳により、アーロンパークの外に吹き飛ばされていた

そして、レウリアとルフィは海の底

 

そう――――今、アーロンパークに立っているのは自分達だけだったのだ

 

だが、見せ場もなく勝手に倒れたゾロにハチがもやもやするのは当たり前で――――・・・・・・

 

「ンニュ~~~~!! おれ様を無視するなァ、ロロノア・ゾロ!!!」

 

そう言って、ぶんぶんと6本の刀を振り回し始めた

 

「大剣豪“六刀流のハチ”と呼ばれるおれ様の剣を食らう前にショック死か!!? せめて、この“六刀流”を食らって死んだのなら名を残せたのになァ?! ま、どうあがいても、天地がひっくり返っても、貴様ら人間など6本の刀を操るこのおれに傷ひとつ付けられねェがなァ!!」

 

そう言いながら、怒りのあまり剣風巻き起こし始めた

 

ガラガラっと、周りの瓦礫が剣風に巻き上げられる

それを見た、アーロンが呆れたように溜息を洩らし

 

「おい、ハチ。 アーロンパークを壊す気か?」

 

アーロンのその言葉に、ハチがはっと我に返る

 

「はっ・・・・・・!! い、いかん、いかん。 ついつい、調子に乗っちまった。 すまねェ、アーロンさん」

 

その時だった

 

「“六刀流”か・・・・下らねェ・・・・・・」

 

ゆらりと、意識を失いかけていたゾロが立ち上がった

 

「これだけは言っておくがな、タコ!! おれには会わなきゃならねェ男がいるんだ。 ・・・・・・そいつにもう一度会うまでは・・・・」

 

その目がギンッとハチを捕らえる

 

 

 

「――――おれの命は死神でも取れねェぞ!!!」

 

 

 

「ロロノア・ゾロ・・・・・? 生きてたのか。 なんだか知らんが、てめェ勝手にきつそうだな? そんな状態で“六刀流”のおれに勝てると思うのか? 全世界の皆さんだって同じ意見だぞ?」

 

ハチがそう煽る様に言うが、ゾロには関係なかった

持っていた刀を口にくわえると、しゅるっと左肩にいつも結んでいるバンダナを解くと、頭に巻いた

 

「・・・・・・はっ、大きなお世話だ・・・」

 

だが、意識が朦朧として一瞬でも集中を切らせば、意識を失いそうだった

それを見ていたヨサクとジョニーが息を呑む

 

「危険だぜ、今の兄貴の状態は・・・・・・!!」

 

「おそらく傷が熱を持ってしまって、おそらく意識もギリギリの状態の筈だ・・・・・・っ。 もし、万が一にもこれで傷が開いたりでもしようもんなら・・・・・・あいつは、間違いなく死ぬぞ!?」

 

ドクターの言葉に、誰しもが息を呑んだ

 

「でも・・・・・・っ!! そんな事考えてる場合じゃねェ・・・・・・!」

 

「ああ! この場を切り開けるのは兄貴しかいねェんだ・・・・・・っ!」

 

サンジは倒れたまま

ルフィとレウリアも上がってこない

今頼れるのはゾロしかいないのだ

 

ゾロが、すぅ・・・・・・・と息を吸い、吐く

そして

 

「・・・・・・見せてやるよ、“三刀流”。 ――――ヨサク、ジョニー!!! てめェらの剣 貸せ!!」

 

ゾロの言葉に、ヨサクとジョニーがはっとする

 

「も、もちろんだ!!」

 

「兄貴! 受け取ってくれ!!」

 

そう言って、2人がゾロに向かって自分達の剣を投げた

 

息が上がる

予想以上に、傷口が痛む

 

・・・・・・参ったな

意識がぶっ飛びそうだ・・・・・・

後、何分立ってられるか・・・・・・

 

動いていれば、そのうち引くかと思った熱も

どんどん、エスカレートしてきていた

 

「兄貴!! 剣投げたッスよ!?」

 

「受け取ってくれぇ!!」

 

遠くで、ヨサクとジョニーの声が聞こえる

音という音が頭の中で反響していた

 

 

だが、ハチは違った

むしろ、怒りを覚えたのか・・・・・・刀を6本構えると

 

「二本腕の“人間”には決して超えられねェ壁を見せてやる!! 六本の腕と艶めかしい軟体があってこその“六刀流”―――――“蛸足奇剣”!!!

 

ハチがそう叫んだ瞬間

うねうねした6本の刀が多方面からゾロめがけて斬り掛かって来たのだ

 

 

「「兄貴いいいいい!!!」」

 

 

ヨサクとジョニーの声が重なる

 

滅多斬りにされる――――・・・・・・

誰しもがそう思った時、それは起きた

 

「――――“三刀流”・・・・」

 

ゾロは二人の投げた剣を両の手で受け取るとそのまま、流れるような動きでハチの刀を避けていき――――

 

 

 

「“刀狼流し”!!!」

 

 

 

まるで何も無かったかのように、ゾロがそのままハチの間をすり抜けていった

瞬間――――

 

 

「ニュ~~~~~~~っ!!!?」

 

 

ハチの刀を避けるだけではなく、ハチの胸元に大きな刀の十字傷が入った

 

「さばいたァ~~~~!!!」

 

「六刀の乱れ打ちを!! やっぱすげェよ、あの人は!!!」

 

ヨサクとジョニー興奮気味に叫ぶ

後ろで見ていたココヤシ村の人たちが、驚きのあまり声を失った

 

ドクターが息を呑む

 

「なんという集中・・・・・・。 なんという精神力!」

 

普通なら立っている事すら困難な筈なのに・・・・・・

ゾロは、医者の理論では語れない何かを持っている様にしか思えなかった

 

一方ハチはというと、今までにないくらい怒りをあらわにしていた

 

「ホンッッッット、怒ったぞ! お前!!! ホント、ブッ殺してやるからな!!!」

 

「・・・・・・・・」

 

「普通に考えてみろよ!? 刀三本しか持てねぇお前が、刀六本のこのおれに敵うわきゃねェ!! そうだろうが!!?」

 

「ハッ、普通・・に・・・・・・? ・・・・・・大きな計算違いだな」

 

よろめきながら、ゾロがハチの方を見る

 

 

 

『何を背負う。 強さの果てに何を望む』

 

 

 

あの時の、ミホークの言葉が脳裏を過ぎる

 

 

『おれは・・・・・・っ! あいつの分も強くなるからっ!! 天国までおれの名が届くようになるように強くなるから!! 世界一強い剣豪になるから――――・・・・・・』

 

 

幼い頃、交わした“約束”――――

そして

 

 

『おれは、おれはもう二度と敗けねェから!!!』

『あいつに勝って、大剣豪になる日まで 絶対にもう、おれは敗けねェから!!! ———文句あるか! 海賊王!!!』

 

 

ルフィとの約束――――・・・・・・

 

「・・・・・・三本だろうが、六本だろうが・・・・・・、そんな事は関係ねェ!!」

 

ぐっと、刀を握る手に力が籠もる

 

 

「――――おれの剣とお前の剣じゃぁ、一本の重みが違うんだよ!!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「・・・・・・・・・・・・」

 

サンジがポケットのタバコを1本出すと、しゅぽっと火をつけた

そして、一服して「ふぅ・・・・・・」と、紫煙を吐く

 

それから、ゆっくりと身体を起こして

 

「な――――んだ・・・・」

 

むくりと立ち上がると、スーツに付いた砂埃をぱんぱんと払う

 

「魚野郎のパンチが40段?」

 

笑いが出る

 

「それなら、いつも食らってたクソジジイの蹴りは400段だな・・・・・・」

 

そう言って、にやりと笑みを浮かべると

また一服、タバコを吸う

 

「残念だがな、リアさんとナミさんが待ってるんでね。 この程度じゃぁ、くたばってやれねェなぁ・・・・・・」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

   ****    ****

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ナミは、口で包帯を引っ張ると、左肩の刺し傷を何とか包帯で巻いて止血した

痛みで、涙が出るが そんな事を言っている場合ではない

 

いまも、ココヤシ村の皆も、ルフィ達も戦ってる

 

零れた涙をぐいっと拭うと

すくっと立ち上がり

 

「もう、泣くだけ泣いた! 弱音も吐いた! ――――覚悟も、決めた!!」

 

そう言って、両手で頬に気合を入れる様にぱんっと叩く

そして、立てかけていた棍棒を持つと

 

行かなきゃ――――! 皆、戦ってるんだっ!!

 

ぐっと、歯を食いしばり駆けだした

アーロンパークへ向かって

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

なんか、今月やっとwww 2回目のOPでーす笑

おいおい、話違うくね?

とか、思うかもしれませんが・・・・・・許してwww

誘惑がね~こう色々と・・・・・・ゲフンゲフン

 

 

2022.11.18