MARIKA

-Blue rose and Eternal vow-

 

  Act. Ⅱ アーロンパーク 24

 

 

「悪魔の実の能力者はカナヅチだ! まァ、この状態なら能力者じゃなくても沈む・・がな!! シャーハハハハハハハ!!!」

 

アーロンがにやりと笑うと、そのまま――――

 

 

 

「だめえええええええ」

 

 

 

「シャーハッハッハッハッハッハ!!!」

 

 

レウリアとアーロンの声が重なった

ルフィがアーロンの手により真っ逆さまに海の中へ落とされる

 

「・・・・・・・・・・・・っ」

 

レウリアが咄嗟に上着を脱ぐのと、サンジが海水プールの方に向かうのは同時だった

 

「今助けに――――」

 

サンジがそう叫び、プールへ飛び込もうとするが――――

すかさず、ゾロがそれを遮った

 

「バカ、待て!! 動じるな!! 海に入ればこいつらの思うツボだぞ!! 水中の戦いじゃ、明らかに魚人に利があるんだ! ルフィを助ける方法は1つ――――・・・・・・っ!!」

 

サンジがゾロを見た後、魚人を見る

 

「・・・・・・こいつらをおかで秒殺して海へ入るのか!? 上等だぜ!」

 

二人が臨戦態勢に入る

それを見た、アーロンが面白いものでも見た様ににやりとその口元に笑みを浮かべた

 

「果たして何秒もつかな? ゴムの男は」

 

アーロンのその言葉で察したのか、ハチとクロオビが

 

「あ~そういうゲームか」

 

「なるほど」

 

「シャーハッハッハッハッハッハ!!!」

 

 

その時だった

 

 

「――――待って」

 

 

不意に、レウリアが声を張り上げた

一瞬、全員の視線がレウリアに集まる

だが、レウリアはそれすら気にも留めない様に

 

「んだよ、時間がねえんだ! 要件は後に――――」

 

ゾロが苛ついた様に、そう叫ぶ

そんな事百も承知だ

 

そう、時間がない――――・・・・・・

 

“悪魔の実の能力者”は“カナヅチ”になるだけではない

彼らは“海”に嫌われるのだ

 

抵抗する力も、何もかも奪われるのだ――――・・・・・・

息するどころか、身体から“海”に触れていると力を奪われる

“カナヅチ”だけの方がどれだけマシか―――――

 

レウリアは、さっと長い銀糸の髪を左手首の蒼いリボンでまとめると――――

 

 

「――――私が行くから。 だから、そこの魚たちは任せるわ」

 

 

「は? お、おい!!」

 

「リアさん!?」

 

ゾロやサンジが止める間もなく、レウリアがそのまま海水プールへと飛び込んだ

それを見た、アーロンがにやりと笑みを浮かべる

 

「おっと、お客がお待ちだぜ?」

 

その言葉に呼応する様に、ハチとクロオビがゾロとサンジを無視してプールの方に行こうとする

が――――・・・・・・

 

ひゅんっ! とサンジの長い足が二人の前に遮るかのように、空を切った

 

「おいおい、魚ごときがリアさんのジャマをするんじゃねえよ」

 

そう言って、プールの前に立つ

 

「生憎とここから先は、立ち入り禁止だぜ」

 

サンジのその言葉に、クロオビとハチが面白いものでも見たかのように笑いだす

 

「ふん、我らのシマで“立ち入り禁止”区域などない」

 

「そうだぞ~~!! お前らこそゲームのじゃますんな!」

 

その時だった

ゾロが一歩前に躍り出て刀を抜きながら

 

「そいつは、聞けねェな。 おれたちも参加者なんでね」

 

そう言って、クロオビとハチに刀を突き付ける

 

「おい、とりあえずルフィはあの女に任せる。 その代わり、こいつらを絶対海に行かせるな! 魚は任せた」

 

「はっ! 上等だ。 タコはお前が捌け」

 

「やるぞ!! 時間がないっ」

 

「オゥ!!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

   ****    ****

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――――― 一方、その頃

 

 

 

 

「うおおおおおおおおおおお!!!!!」

 

 

ウソップは、叫びながら村道を脱兎のごとく走り逃げていた

この時、ウソップは至極上機嫌だった

 

なにせ、こうやってアーロン一味の幹部の一人を引き付けておけば、ルフィ達の戦いにも少しは有利に働くだろうという魂胆である

心の中で「うしししし! えらいぞ~ウソップ様!! なんて仲間思いなんだ~」などと思っていた

まぁ、偶然そうなっただけなのだが・・・・・・

 

と、猛ダッシュしていたせいか、後ろを見ると例のキスの魚人は付いてきていなかった

 

「おっとと、やっぱりだ~付いて来やしねェ。 ちくしょーいかんいかん、えらく差が付いつぃまったみたいだな~」

 

などと、呑気に言いながら立ち止まった

 

「所詮、魚人なんておかじゃただの“亀”だぜ!! あっという間に、はるか彼方だ!へへ!! ふふん、亀、かぁ~~」

 

そこまで言って、ウソップがにやりと笑う

そして、相手を挑発するかの如く、その場で小躍りする様に

 

「やーい、やーい! 亀、かめ~~鈍亀~~~!! 付いてこれるもんなら、付いてきてみろ~~!! まーた、直ぐ引き離してやるぜ!! よちよーち、亀よ~~い!! へへ~んだ――――――「貴様の方じゃねェのか? よちよち這う事になんのは・・・・・・」

 

突然、背後からキスの魚人の声が聞こえた

カチ―――ンと、ウソップが固まる

 

「あ、い、いあ・・・・・・」

 

そろ~~と、後ろを見ると・・・・・・

そこには、例のチュウという魚人が―――――・・・・・・

 

 

 

「ぎゃあああああああああああ!!!!!!!」

 

 

 

「待て、コラァ!!!!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

   ****    ****

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「シャーハハハハハハハ!!!」

 

アーロンが面白い“見世物”を見るかのように笑っていた

だが、そんな事ゾロやサンジにはどうでもよかった

 

ひと先ず、ルフィはレウリアがなんとかするだろう

となれば――――・・・・・・

 

まずはこの目の前にいる魚人2匹を倒すのが先決だからだ

 

「はっ! 九体満足でいられると思うなよ、タコ助!!」

 

「アッハッハッハッハ!! ゲーム、ゲーム!!」

 

ゾロの挑発に、ハチが楽しそうにそう笑う

逆に、クロオビとサンジはというと――――一触即発だった

 

「腐ったマネしてくれるぜ、クソ魚野郎ども!!」

 

「フン・・・・・そう、焦るな。 どう、転ぼうと貴様ら全員生き残れる希望などないのだ」

 

その様子を高みの見物している、アーロンがにやりと笑う

 

ルフィが海に落とされて、レウリアがプール飛び込んでから何分経ったか・・・・・・

直ぐ上がってくるのかと思いきや、一行にその気配がない

 

プールに浮かんでくる空気泡が次第に消えてゆく――――・・・・・・

 

「シャーハハハハハハハ!!! 水中で呼吸も出来ねェとは、あわれな生き物だな!!」

 

アーロンが高らかに笑う

それを外で見ていたジョニーとヨサクが真っ青になりながら

 

「マズいぜジョニー!! ルフィの兄貴もリアの姐さんも上がって来ねェ!!」

 

「ルフィの兄貴が死んじまう!!!」

 

「・・・・・・・・・・・・っ!!?」

 

ゲンゾウやノジコだけではない

この場にいるココヤシ村の全員が息を呑んだ

 

どんどん、消えていく気泡が全てを物語っているかの様に――――・・・・・・

 

「どういうことだ?! あの女はなにしてやがる!!」

 

ゾロが焦った様に声を張り上げた

 

「いや、もしかしたらリアさんでも対応出来ない不測の事態が起きているのかもしれねェ!! 急ぐぞ!!」

 

そう言うなり、ゾロとサンジが地を蹴ってハチとクロオビに向かって駆けだした

 

「5秒で、片づけてやる!!!」

 

「バカ言え、3秒だ!!!」

 

そう言うか早いか、サンジがクロオビめがけて思いっきり蹴りをお見舞いした

しかし、それをクロオビは意図も容易く腕のヒレで受け流す

 

「ちぃ!! 魚が人間様に・・・・・・逆らうんじゃねェよ!!」

 

「・・・・・・フン! 貴様こそ、魚人こそが最強である事を身を持って知るんだな」

 

 

一方――――・・・・・・

 

 

「た~~こ~~は~~ち~~~」

 

自分に向かてくるゾロめがけてハチが、またあの技を出そうとして来た

 

「ブラーーーーークッ!!!!」

 

だが、一度見た技をくらう程ゾロは甘くはなかった

ハチの放った墨を素早く避けると――――すかさず、距離を詰め――――・・・・・・

 

「ニュッ!!」

 

すぱん!!!っと、ハチの頭上をゾロの刀がハチの頭すれすれの所を通る

はらりと、ハチの針の様に固めている髪が数本切れた

 

「ちっ!」

 

ゾロが舌打ちしつつ、ざっと着地して即刀を構える

慌てたのはハチだ

毎朝セットに時間かけている髪を切られたのだ

 

「ニュ――――――ッ!!! おれの髪がァ!!!」

 

そう言って、頭を押さえる

それから、ゾロをキッと睨み付け

 

「貴様ァ―――――!!! ゆ~~る~~~」

 

「・・・・・・・・・っ」

 

~す~~~~~~!!! 髪だから、また生えるからな!!」

 

がくっ・・・・

何だか知らないが、調子が狂う

 

そのせいか、無駄にやり辛い

ただでさえ、こちらは急いでいるというのに・・・・・・このタコの魚人はのらりくらりと

 

「・・・・・・ハァ・・・・、くそ・・・ッ」

 

少し動いた程度で息が上がる

全身が軋む様に痛い

 

長引かせる訳にはいかない・・・・・・っ

だというのに

 

ハチは、何でもない事の様に

 

「ロロノア・ゾロ!! お前におれは斬れん! その意味が分かるか!? 何故なら、おれには6本の手があるからだ~斬れるものなら斬ってみろ~」

 

と、まるでこちらを煽るかのように、手をうねうねとさせる

 

癪に障る

 

「知るかよ!!!」

 

そう叫ぶな否や、ゾロは刀をハチに向かって振り下ろした

が――――・・・・・・

 

にやりと、ハチが笑い

 

 

 

「蛸・三・連・真・剣・白・刃・取りっ!!!

 

 

 

瞬間、ハチが6本の手でゾロの攻撃を抑え―――――られなかった

ものの見事に空振りで終わる「白刃取り」

空しく、ぱんぱんぱんっと、手を叩いた音だけが響く

 

 

「あいたァ!!!!」

 

 

ハチの額を割った刀傷から、血が流れでていた

白刃取り――――失敗

 

だが、それが余計にゾロを苛立たせた

 

「お前と遊んでるヒマはねェんだよ!!」

 

痛みで視界がぼやけてくる

嫌な汗が全身から出ていて寒気もする

 

「くそ・・・・・・調子狂うぜ・・・・・・ッ」

 

今は、なんとか立っていられるが――――

いや、立っているだけで、全身がバラバラになりそうだった

 

はっと、そのゾロの異変にサンジが気づいた

 

「あいつ、まさか・・・・・・っ!!」

 

脳裏の浮かぶのが、バラティエで鷹の目・ミホークとの戦いだった

あの時、最後――――ゾロはミホークから“洗礼”を受けた

 

今の今まで、平気そうな顔をしていたから忘れそうになったが・・・・・・

ゾロは重症の筈だった

 

その時だった

 

「――――よそ見してると、寿命が縮むぞ!!」

 

気を逸らしていたサンジの脳天めがけて、クロオビがヒレを刃の様にして襲い掛かって来た

寸前のところで、サンジがその攻撃を避けると――――

 

「縮むだと・・・・・・!? サカナが料理人コックに――――逆らうな!!!」

 

そう叫びながら、足蹴り二段をお見舞いする

が、クロオビはヒレを盾の様にして、その攻撃を防いだ

 

「ちぃ!!」

 

なんと面倒くさい輩だ

あの“ヒレ”がとにかく厄介だった

 

攻撃も防御もすべてあの“ヒレ”でやってのける

 

ゾロも気になるが、水中に潜ったまま上がってこないルフィとレウリアも気になった

こんなサカナ風情に時間をかけている余裕などないのだ

 

「ルフィ・・・・・・、リアさん・・・・・・、無事でいてくれ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

   ****    ****

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

―――――海水プール内

 

 

レウリアは、息を止めたままルフィがいるであろう、海底を目指していた

 

海軍時代の賜物というか・・・・・・

訓練で水中戦などもあったので、普通の人よりも長めに息を止めておける様になったのが、今になって役立つとは思いもしなかったが

 

きっと、ルフィは岩の重力でもう底まで着いているはず・・・・・・

 

そう思って、アーロンが投げ込んだ位置から特定してルフィの落ちたであろう場所へと降りていった

幸いまだ魚人は追って来ない

おそらく、サンジとゾロが止めているのだろう

 

しかし・・・・・・

 

マリモさんはミホークから受けた傷が酷いし、サンジさんもまだパールとの傷が完治していない

絶対に魚人の足止めを出来るとは限らないのだ

 

急がないと・・・・・・

 

そう思って、速度を速めた

そうして、海底へと向かうと―――――

 

いた!!

 

ルフィがいた

レウリアは急いでそこまで泳ぐとルフィを呼びかけるかのように叩いた

しかし、反応がない

 

ルフィは水を既に大分飲んでいた

意識もない

しかも、それに付加する様に身体という身体から力すら感じられなかった

 

“悪魔の実の能力者”

その弱点を突いてくるだけでも厄介だというのに――――・・・・・・

 

問題は、この足の岩ね・・・・・・

 

ルフィの足に重りの様に、アーロンが持ち上げたアーロンパークの石畳ががっちり嵌っていた

まずは、どうするのにしてもこの岩をどうにかしなければならない―――・・・・・・

 

「(ネフェルティ!)」

 

レウリアがそう叫んだ瞬間、しゃらん・・・・・・と、いつも彼女の傍にいる風の精霊であるネフェルティが姿を現した

 

ネフェルティは少し戸惑った様に、くるくるとレウリアの周りを飛ぶと、小さく首を振った

分かっている、多分無駄に終わる――――でも

 

やらないより、やって後悔の方がマシだわ!

 

そう思うと、レウリアがネフェルティに指示を出す

すると、ネフェルティはくるくると回転しながら、ルフィの上空まで飛ぶと

 

すぱん!!!!

 

という、音と共に風の刃を放った

陸であれば、このひと振りでこんな石など真っ二つ割る威力の風だ

しかし――――・・・・・・

 

当たった場所が微かに、削れただけだった

 

すると、今度はネフェルティが幾つもの風の刃を放った

 

しゅぱぱぱぱぱぱ!!!

 

ルフィの足下の岩めがけて風の刃が襲い掛かる

だが―――・・・・・・

 

駄目だわ・・・・・・

 

当たった所が先ほど度同じ様に、軽く削れるだけだ

“速度”をもっともの武器とする“風の精霊”では相性が悪すぎる

 

浮力が邪魔なのだ

 

いっその事“水の精霊”を呼び出す方が早いが――――・・・・・・

下手をしたら、威力があり過ぎてルフィを傷付ける事になりかねない

 

要はここが“水の中”なのが原因なのだ

 

息つぎの問題もある

長考は出来ない

 

どうする・・・・・・?

 

方法がなくはないが――――・・・・・・

レウリアひとりでは、この方法は使えない

 

他に誰かが手を貸してくれれば――――・・・・・・

 

その時だった

“誰か”が水中に入ってくる気配を感じた

水の波紋の動きを風で感じたのだ

 

まさか、魚人が――――

 

そう思って、臨戦態勢に入ろうとしたが・・・・・・

こちらへ向かってくる人を見て、レウリアはそのアイスブルーの瞳を瞬かせた

 

あれ、は――――・・・・・・

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

さてさてさて

やっと真面目? に始まったバトルですね~~笑

はっちゃんが全然、こいつ駄目じゃね? って気がするけどwww

これで、よく幹部出来たなぁと・・・・・・www

 

 

2022.10.21