MARIKA

-Blue rose and Eternal vow-

 

  Act. Ⅱ アーロンパーク 20

 

 

 

――――アーロンパーク

 

 

「なに? もう一度言ってみろ、女」

 

 

 

一等低い、ドスの聴いた声がアーロンパークに響いた

 

すると、ふっと微かに口元に笑みを浮かべ、彼女は呟いた

 

 

 

「―――――何度も言わせないで」

 

 

 

さらりと、彼女の長いプラチナブロンドの髪が揺れる

 

 

 

「1億ベリーなら、あげるからナミとココヤシ村・・・・・・いいえ、この“コノミ諸島”から一切手を引けと言ったのよ。 元、タイヨウ海賊団のアーロンと、その一味――――行き先は、そうね・・・・・・インペルダウンなんてどうかしら? きっと、楽しいわよ」

 

 

 

そう言って、プラチナブロンドの少女――――レウリアがにっこりと微笑んだ

 

 

 

ざわざわと、魚人たちがざわめく

いや、むしろケタケタと笑い始めた

 

「なに、言ってんだ? この女」

 

「しかも、アーロンさんに向かって言うに事欠いてそれかよ―――!」

 

「頭、イカレてんじゃねェの!!」

 

そう言って、魚人達がレウリアを馬鹿にするように笑っていたが

当の本人には、どうでもいい戯言にしか聞こえなかった

 

雑魚には用はないのだ

あるのは――――――・・・・・・

 

真っ直ぐに、アーロンを見る

だが、アーロンも部下と同じようにニヤニヤと笑っていた

 

レウリアが一人では何も出来ないと高を括っているのだ

馬鹿らしい・・・・・・

 

レウリアが、呆れにも似た溜息を洩らした

そして、その口元に笑みを浮かべ

 

「あら、貴方ほどの魚人ならば私の言っている意味、理解出来ると思ったけれど――――どうやら、私の勘違いだったみたいね。 ごめんなさい、見誤ったわ・・・・・

 

その言葉に、アーロンが微かにぴくりと、眉間に皺を寄せる

 

「ほぅ・・・・・・? どう見誤ったのか聞かせてもらおうか?」

 

そう言って、ぎしっと音と立てて椅子から立ち上がると、レウリアに顔を寄せてきた

 

「言ってみろよ・・・・・・その口でよォ」

 

そう言って、顎をぐいっと持ち上げる

 

――――――瞬間

 

 

 

 

 

 

 

 

 「臭い」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あ?」

 

 

 

 

「――――――魚臭いって言っているのよ。 気安く私に触れようなんて――――馬鹿な男ね!!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 どん!!!!!

 

 

 

 

 

 

 

 

瞬間――――それは起きた

突然、レウリアを中心として、突風が吹き荒れたのだ

 

流石にそれは、予想していなかったのか

アーロンが、大きくその瞳を見開くが―――――

 

油断していたのもあり、防御が――――――遅れた

 

 

 

どおおおおおおん!!!!

 

 

 

という、けたたましい轟音と共に、アーロンがレウリアの風をまともに受けて、後方へ吹き飛んだ

 

 

 

 

「アーロンさん!!!!」

 

 

 

 

まさかの展開に、魚人たちが叫んだ

はらはらしながら、ハチはアーロンが吹き飛んだであろう先と、レウリアを交互に見る

 

「ど、どどどどうするんだよ~~アーロンさんが、飛んで行っちまったぞ?!」

 

ハチのその言葉に、チュウがやれやれという風に

 

「落ち着け、ハチ。 あの程度じゃ、アーロンはくたばらねェよ。 まぁ・・・・・あれかもしれねェがな」

 

「あれ? あれってなんだ?」

 

ハチが首を傾げてチュウを見る

すると、チュウは言いづらそうに

 

「あ~~~、それは・・・・・・だな」

 

と――――

その時だった

普段は冷静な、クロオビがすらっと、腰の刀を抜いてその刃をレウリアの首に当てた

 

「・・・・・・どういうつもりだ、女。 ことと次第によっては――――」

 

「・・・・・・・・・・・・」

 

だが、そんなクロオビとは裏腹に、レウリアは冷静だった

刀を首に当てられているというのに、微塵も慌てたそぶりはない

むしろ呆れた様に、溜息を洩らし

 

「・・・・・・言葉の通りですけれど? 貴方も、アーロンも魚臭いのよ。 陸に上がってこないでくれる?」

 

平静としてそう煽るかのように言うレウリアに、クロオビの眉間がぴくりと動く

 

 

「――――女、死にたいようだな」

 

 

一等低い声でそう言うと、かちゃりと刀を持つ手に力を込めた

だが、レウリアは微動だにしなかった

 

むしろ、クロオビなど眼中にないといった風に、真っ直ぐにアーロンが飛ばされていったであろう方を見ていた

 

「・・・・・・・・・・・・」

 

カラカラ・・・・・・と、小石が落ちる落ちが響く

 

レウリアは小さく息を吐くと、呆れにも似た溜息を洩らした

肩にかかった、プラチナブロンドの髪を横に流す

 

「・・・・・・いつまで、そうしているつもり? この程度でくたばる輩じゃないでしょう?」

 

にっこりと極上の笑みでそう言う

思わずハチとチュウが、ぞくっと背筋を凍らせた

 

「なぁ・・・・・・、なんか、おれ・・・この感覚、昔あったような・・・・・・」

 

「あ、ああ・・・・・・奇遇だな、ハチ。 おれも、今それも思ってたところだ」

 

ハチの言葉に、横にいたチュウが頷いた

その時だった

 

ガラガラという瓦礫の音が大きくなった

 

「ああ~お前、あの時の海軍が」

 

声と共に、アーロンが瓦礫の中から出てくる

まるで何事も無かったかのように、肩をコキコキ鳴らせながら

 

「海軍!!?」

 

ざわりと、周りの魚人たちがざわめき始める

だが、レウリアは微動だにもしなかった

 

「あの時は、とっても下品で下劣で最低な“提案”、どうもありがとう」

 

そう言って、絶対零度の笑みを浮かべる

びゅおおおおおおお と、そこだけブリザードが吹いているようだった

 

そう――――以前、この魚人はレウリアをアーロンパークに呼び出した

あのネズミ大佐と同じように―――――

 

丁度その事、“東の海イースト・ブルー”で、任務にあたっていた為、アーロンの目に留まったらしい

そして、事もあろうことにこの魚人は

レウリア相手に、笑いながらこのコノミ諸島で起きている、“事件”を「見て見ぬふりする」という条件で毎月の一定数の金をやると言ってきた

 

確かに、労ぜず「見て見ぬふり」するだけで、毎月お金が手に入るのだ

傍から見れば、なんとラッキーな話だろうと、見えただろう

 

「アーロンからの恩恵」

 

それは、もうその時点で“東の海イースト・ブルー”の海軍にとっては喉から手が出るほど欲しいものだった

 

だが――――――・・・・・・

 

レウリアは『結構です』と、それを一刀両断にした

レウリアがそう返した時の、アーロンの顔は今でも覚えている

 

最初は、脅し半分で再度提案してきた

しかし、それすらもレウリアは蹴った

 

すると、『シャーハッハッハッハッハッハ!!!!』と、高らかに笑い出した

瞬間、それまで姿の見えなかった魚人たちがぞろぞろと武器を持って出てきた

 

アーロンはにやりと笑い

 

もう一度だけ・・・・・・聞こうか・・・・・・。 何も難しい事は言ってねェ。 単に、おれたちのやる事に口を出すなと言っているんだ。 賢い海軍様ならどちらについた方が得か・・・・・・わかるよなァ?』

 

この時、もうレウリアは完全に、呆れ果てていた

何を自信満々に言っているのだろう

要は、犯罪に加担しろと言っているのだ

 

それを、矜持を持つ海兵ならば受け入れるわけがない

いや、受け入れられるわけがない

 

ネズミ大佐が、「アーロンの恩恵」を受けたと自慢していたが・・・・・・

公然と、海軍内で「犯罪に加担しました」と公言している時点で、アウトである

 

魚人どもは、どこまでも海軍――――いや「ひと」と馬鹿にしているのだ

自分たちが「最強の種族」だと思っている

 

勘違いも甚だしい

魚人とは、馬鹿なのだろうか?

 

という、疑問しか浮かばなかった

 

 

 

――――――そして、今

 

アーロンは何も変わっていなかった

ナミが必死になって集めた9300万ベリーに相当するほどの財宝を、こともうある事とか、あの海軍大佐のネズミに「盗品がある」と言って、「回収」させに行かせたのだ

 

アーロンとナミの「約束」――――1億ベリーでココヤシ村を買うという約束を反故にする為

そして、優秀な「測量士」のナミを自分の手元に置き続ける為に―――――

 

「1億ベリーでコノミ諸島ここから手をけだと? シャーハッハッハッハ!!! 笑わせる!! ここ・・は最早、それ以上の“価値”があるんだよ」

 

そう言って、どかっとアーロンが椅子に座った

 

「ナミとの約束は、ココヤシ村を買う―――という約束だけだ。 コノミ諸島ここら一帯からじゃあ1億じゃ足りねェなぁ? 海軍さんよ」

 

そう言って、にやりと笑みを浮かべてきた

 

「・・・・・・・・・・・・」

 

レウリアが黙っていると、アーロンは高らかに笑いながら

 

「ここは、これから築かれる“アーロン帝国”の礎になるのさ!!! “東の海イースト・ブルー”だけじゃねェ!! “西の海ウエスト・ブルー”、“南の海サウス・ブルー”、“北の海ノース・ブルー”!!!! すべてがいずれはこのおれ様の・・・・・・魚人の世界になるんだ!!!」

 

「・・・・・・・・・・・・」

 

「すべての海を支配下にした暁には、下等な人間どもは我らを崇めるだろう!!! 世界最強の種族こそ、魚人だとなァ!!!!!」

 

 

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・はぁ」

 

 

なが~い沈黙の後、レウリアが呆れにも似た溜息を洩らした

呆れて言葉も出ないとは、まさにこのことである

 

それから、もう一度大きな溜息を付いて

 

 

 

「・・・・・・くだらないわ」

 

 

 

「なに?」

 

ぴくりとアーロンが眉間に皺を寄せる

だが、レウリアは構うことなく

 

「くだらないって言ったの。 世界最強の種族? すべての海の支配? 頭にお花畑でも咲いているのかしら。 ・・・・・・・・・・・・ああ、そういうこと・・・」

 

何かに気付いたかのように、レウリアがぽつりと呟いた

 

 

 

「・・・・・・フィッシャー・タイガー」

 

 

 

「・・・・・・・・・・・・!!!?」

 

ぴくりとアーロンや他の幹部たちが反応する

と、同時にその表情が険しくなった

 

「かれは、偉大だったそうね。 単独で世界政府の本拠地・聖地マリージョアを襲撃して奴隷解放を行い、世界政府に指名手配された。 魚人でありならが、人を恨んではいけないと、説いていたそうだけれど・・・・・・結局は、人の血を受け入れられなかった。 故に死んだ」

 

コツン…と、レウリアのヒールの音が響く

 

「彼は、本当は人を恨んでいた。 なぜならば、彼は――――――」

 

 

 

 

 

 

「だまれ!!!!!!」

 

 

 

 

 

不意に、アーロンが叫んだ

コツリ・・・・・・と、レウリアのヒールの音が止まる

 

「下等なに人間ごときが・・・・・・その名を口にするな。 ―――――汚れる」

 

一等低い声でアーロンがレウリアを睨みつけた

だが、レウリアにとってそれはさほど効果を示さなかった

 

一度だけそのアイスブルーの瞳を瞬かせると

 

「魚人・アーロン――――、かの亡き“英雄”がこの姿を見たらどうおもうかしらね・・・・?」

 

口では和平を願いつつ、心の奥底では人間を許せてなかった “フィッシャー・タイガー”

そして

“フィッシャー・タイガー”が死ぬ原因となった人間を許すことはなく、常に見下す “アーロン”

 

誰が正しくて

誰が間違っているのか

 

ただ、分かっていることはひとつだけ

 

 

 

アーロン・・・・・・貴方のやり方は間違っているという事

 

 

 

その事に気付けていない時点で、貴方の“負け”は“確定”なのよ―――――

 

 

 

その時だった

 

 

 

 

 

 

  ドゴオオオオン!!!!!

 

 

 

 

 

 

「!!!?」

 

 

けたたましい音と共に、アーロンパークの門がぶち壊された

 

アーロンだけではい、他の魚人達がぎょっとしてそちらを見る

 

 

 

 

 

 

「アーロンっての、どいつだ」

 

 

 

 

 

 

濛々とする土煙の中、一人の青年が立っていた

 

あれは――――――――・・・・・・

 

トレードマークの麦わら帽子はかぶっていないが、赤いベストにハーフパンツの青年

 

 

 

「ルフィ?」

 

 

 

そこにいたのは、ゴムゴムの実の能力者のモンキー・D・ルフィだった

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

久々、ワンピ(*´艸`*)

でも、今回は主に夢主とアーロンの会話で終わったぜwww

愛称で呼ぶシーンないんで、今回はその部分の変換なしです

 

さて、やっとバトルに突入よ~~~~ん…((((*・ω・)ノゴーゴー♪

 

 

2021.05.15