MARIKA
-Blue rose and Eternal vow-
◆ Act. Ⅱ アーロンパーク 2
―――アーロンパーク・東口
ナミは、肩に鞄を掛けゆっくりとアーロンパークに向かって歩いていた
風が吹き、砂ほこりが舞い上がる
思うことは何もない
また、ここにこうして来る事になったとしても……
その時だった、後ろの方からナイフを持った少年がアーロンパーク目がけて翔って来た
「おい!お前どけよ!!おれは、アーロンを殺しにきたんだ!!」
ナミがゆっくりと振り返る
そこには、ガタガタと震え、涙を流す少年の姿があった
「アーロンを殺してやる!おれの父ちゃんがアーロンに殺されたんだ!!!どかねェと、お前だって殺すぞ!!」
大粒の涙を流しながらそう訴える少年の姿が、ナミの中の何かを思い出させた
それは幼い頃の―――――………
「………………」
「本気だぞ!!!」
ナミは、小さく息を吐くと、ゆっくりと胸元に仕舞っていた武器を取り出し――――………
バキッ!!
思いっきり、少年をその棍棒で殴り飛ばした
少年が「うあ……!!!」という声と共に、投げ飛ばされる
そして、冷たく見下ろすと
「アーロンは、あんたみたいなガキに付き合う程ヒマじゃないわ!!…わかったら、帰んな」
それだけ言うと、素早く武器を仕舞った
そして、札束をぽんっと少年に投げつけると
「これで、せいぜい自分の身でも守るのね」
それだけ言うと、そのままアーロンパークの門をくぐっていったのだった
少年が「…ちくしょう……!!」と泣き叫ぶのも無視するかのように―――――………
**** ****
その日、アーロンは機嫌が良かった
いつもの様に、酒を飲み仲間と談話する
そこへ、ナミが無表情のまますたすたと足を踏み入れてきた
それを見たアーロンは嬉しそうに
「おお!帰ったか、ナミ!長旅だったな!!!」
その言葉に、呆れた様にナミは呟いた
「相変わらず、不用心ねこの屋敷は」
ナミのその言葉に、アーロンがハッと鼻で笑う
「フン…このおれを誰だと思ってる……!!で?どうだった、今回の収穫は!?」
アーロンがそう尋ねると、ナミはやはり呆れた様に
「上々よ、稼ぎまくったわ!簡単に騙されてくれるカモが多くってねーこの通り!」
そう言って、今回の収穫のブツの入った鞄をバンッと叩いた
ナミのその反応にアーロンは「シャーッハッハッハッハ」と笑みを浮かべながら
「裏切りはてめェの十八番だからなァ!!」
「……まぁね」
ナミがフンッと鼻を鳴らしそう答える
すると、アーロンは立ち上がり叫んだ
「オウ、同胞達よ!仲間が帰った!宴の準備だ!!!」
アーロンがそう叫ぶな否や、海へと続くプールから一斉に同胞の魚人たちが姿を現した
「ウオオオオオオオ!!!!」
「ナミだ!ナミが帰ったぞ―――!!!」
その魚人たちを見て、ナミは不敵に笑うのだった
◆ ◆
――――― 一方、その頃
ゾロとウソップとジョニーを乗せた船は、刻々とアーロンパークの前までやってきていた
ゾロが静かに瞑想する中、ウソップとジョニーは船に隠れながらアーロンパークを目の前をごくりと息を飲んだ
「つ……!!つき、着きました!!ついに、アーロンパークです!」
「ここかァ、“偉大なる航路”から来た、アーロンって魚人のアジトは…本当にナミがいんのか?ここに」
ガタガタと震える二人を余所に、ゾロは静かにアーロンパークの門を見据えた
「まずは、ナミの姉貴の乗っていたゴーイングメリー号がこの島の何処にあるか、探してみましょうか」
ジョニーの意見にウソップもこくこくと頷く
「そ、そそ、そうだな」
なんとか、アーロンパークに突入せずに済みそう―――――
瞬間、ゾロが刀をガンッと船に押し当てて一言
「斬り込むぞ」
「何で、いきなりそうなるんすかァ!!!!!」
「アホかてめェ!!!まだ何の手掛かりも掴めてねェんだぞ!!!」
ジョニーとウソップが叫んだのは、言うまでもない
「相手は、あの魚人なんっすよ!?」
「まず、作戦を立てて―――――!」
必死にそう訴えるが、ゾロは完全にスルーする様にそのまま立ち上がると刀の柄をカチャリと開けると――――
「七面倒くせェのはごめんだ。おれはルフィにあの女を連れ戻す様に言われた。相手が誰だろうと連れ戻すまでだ――――」
その言葉に、ウソップとジョニーが顔を顰めて見合す
「行くぞ!!」
ゾロがそう叫んだ瞬間―――――
ガンッ ゴンッ!!
ウソップは、望遠鏡で辺りを見回しながら、様子を窺った
瞬間、ゴーイングメリー号が視界に入る
「あった!見つけたぞ!!ゴーイングメリー号だ!!」
そこは、アーロンパークよりも少し離れた場所だった
「でも、なんであんな所に……」
ジョニーが地図を見ながら
「やっぱりここにナミの姉貴はいるんっすね……」
そう言いながら、二人して地図を見る
が……その後ろで
「おい、てめェら!どういうつもりだ!!縄をほどけ!!!」
マストにがんじがらめに縄で結びつけられたゾロの姿があった
が、二人は完全スルーすると
「でも、確かにおかしな所に停まってるっすね…ここはさっきのアーロンパークより東の“ココヤシ村”だ。でも、なんでこんな村から外れた所に停めてんだ?」
「ほどけっつってんだろォ!!」
ゾロが更に叫ぶと、ウソップは笑いながら
「無理すんなって、叫ぶだけで気絶しそうなくせに!お前は死にかけたほどの大けがおってんだぞー?」
そう言って、ぽんっとわざとらしく傷の上を何度も叩く
「~~~~~っ!!!」
声にならない痛みがゾロを襲ってくるが、お構いなしだ
むしろ、ゾロを大人しくさせる為に、あえてそうしている
「うっはっはっはっは!ここは、おれにどーんとひとつ任せとけ!」
そう言って、再度バシバシと傷を叩く
その度に、ゾロが声にならない悲鳴を上げた
ある意味、酷い
ゾロが「こいつ、いつかぶった切ってやる……!」と心の中で叫んだのは言うまでもない
ウソップは、大きく胸を張ると腕を組み
「あの女は、おれが連れ戻してやるよ!あっはっはっはっは!!!」
「……アーロンパークじゃないと分かったら、元気なんすね」
ジョニーがそう突っ込むが、無視だ
ウソップは大きく息を吸うと
「面舵、いっぱ―――――い!ゴーイングメリー号に船を付けろ――――――!!」
「へーい!」
そう言って、ジョニーが船を思いっきり漕ぎ出す
それに気前良くしたウソップは、自慢の長っ鼻を前に突き出して
「よ――――し!このこの未知の地に足を踏み入れんとするおれの勇姿に“キャプテンウソップの大冒険”とタイトルを付けよう!!イカスだろ、ジョニー!」
「へーい」
と、とりあえず、ジョニーが一応返事をする
その時だった
ゴーイングメリー号のすぐ傍の海岸沿いを、魚人が三人立っていたのだ
ぎょっとして、ウソップが慌てて小さくしゃがみゾロの側にやってくる
ジョニーも姿勢を低くし、ゾロの側にやってきて
「ぎょ、ぎょぎょ魚人……!?」
「大丈夫ですかい!?」
と、小声で囁くと
「ぜんそくぜんしーん」
「へーい」
と小声でそのまま、魚人の横を通り抜ける
が――――――
「何、通り過ぎてんだよ!!!!!」
空気読まずに、ゾロが叫んだ瞬間、ウソップとジョニーが慌てて
「し――――――――――――っ」と、叫んだ
「今見たか!?魚人がいたんだよ!アーロン一味だよ!怖ェんだよ、悪ィかよコラ!!」
これ見よがしに、逆切れするウソップに
「お前がキレんな」
と言いながらゾロが蹴飛ばしたのは言うまでもない
一方、ジョニーはギリッと奥歯を噛みしめて
「ダメだ……この辺一帯、マジでアーロンに支配されてるようっす。どうします?ウソップの兄貴」
「よし、ナミは連れ戻せなかったという事で……」
「おれの縄をほどけバカ!!!」
そんなやり取りをしている小船が一艘 魚人達の前を通り過ぎて行った
が、あまりにも不自然極まりないその小船は、逆に魚人達の目を引いてしまったのだ
「んー?」
「見かけねェ船だな…」
「怪しいぞ……」
そう言うなり、こちらの小船に向かって海へ飛び込んできたのだ
ぎょっとしたのは、言うまでもなくウソップとジョニーだ
瞬間
「脱出!!」
「御意っ」
そう言うなり、ゾロを残して海へ飛び込んで逃げてしまったのだ
「ちょっと待てお前らァ!!!せめて、縄をほどいてからいけェ!!!」
ゾロがそう叫ぶが、ウソップ達は物凄い速さで泳ぎ去ってしまったのだ
残されたゾロの元に、泳いできた魚人がザバッと船に上がってくる
「何だコイツ、一人か…?」
「さては、どっかから島流しにあったかな?」
「………あァ…まァな……」
顔を引くつかせながらゾロはそう答えつつ心の中「アイツら、ブッ殺してやる……!!!」と叫んだのだった
「成程、こりゃ拷問で受けたケガか……」
「よーし、とりあえずアーロンさんの所に連れて行くか……」
**** ****
一方、ウソップ達は、ザパァッと船から離れた距離をキープしたままようやっと顔を出すと
胸に手を当てて祈った
「許せゾロ。お前は実に勇敢だったとルフィには言っておく」
その横で、ジョニーは涙しながら
「なんて、運の悪ィ人だ……っ!アニキの事は忘れねェよ……!!」
と、一言終えた後、平気そうな顔をして
「じゃぁ、ひとまず陸に上がろう」
「へい」
そう言って、近くの陸に上がった瞬間だった
「え……」
「な……」
そこで見たものは、ウソップ達には信じられないものだったのだった
◆ ◆
サンジの料理の腕は見事なものだった
レウリアなど、手伝う事などないんじゃないかと言う程、手際がいい
包丁さばきも、火の扱い方も、何もかもが一流のコックだった
「サンジさん、本当に料理凄いわね……」
感心した様にレウリアがそう言うと、サンジは何でもない事の様に
「ずっと、昔からやってますからね……それに……」
「え……」
不意に、がしっとレウリアの手を掴むと
「今は、リアさんとこうして料理が出来て、まるで新婚さんの様―――――」
「メシ――――――――!!!!!」
サンジの告白を無視するかのように、腹を空かせたルフィがキッチンになだれ込んできた
そして、料理を目の前にして、ごっくんと唾を飲み
「いっただきまー 「つまみ食いすんじゃねェ!!」
ゴスッ!と、サンジの蹴りが炸裂したのは言うまでもない
瞬間、チーンと言う音と共に、ルフィご希望の骨付き肉がオーブンから取り出された
それを見た瞬間、ルフィが「うっまそぉ~~~~」とよだれを垂らす
余りにも、だらしのない恰好にレウリアは呆れた様に溜息を付いた
船の煙突から、肉の焼ける美味しそうな匂いが辺り一帯に広がっていく
ルフィは、「にーくにーく」と大はしゃぎだ
だから、気付かなかった
その匂いにつられて、巨大な化け物が襲ってこようとしていた事に―――――
ゾロが可哀想過ぎる…!!
さてさて、アーロンパーク編に本格的に突入ですよー
一方、まだルフィ達は海の上です
モームくるかなー?
2013/12/24