MARIKA

-Blue rose and Eternal vow-

 

  Act. Ⅱ アーロンパーク 3

 

 

 

「え……」

 

「な……」

 

そこで見たものは、ウソップ達には信じられないものだったのだった

町…だったのだろう

その町だった筈のものは、まったく別の物と化していた

 

「一体、何なんだ この町は…!!!」

 

「……こ…ここはおそらく、数週間前アーロンが暴れたという“ゴザの町”っす…」

 

家という家が、すべてひっくり返り、人ひとり誰も居ない

まるで、廃墟の様になったその町には、砂誇りだけが吹き荒れていた

 

「なんて光景だ…家が全部ひっくり返ってやがる…!!」

 

こんな事が現実に起こり得るというのだろうか

とても、常識では考えられなかった

 

「……魚人達は通常生まれながらに人間の10倍の腕力を持つと聞きます…!!これがつまり…“偉大なる航路(グランドライン)”から来た者達の実力なんでしょう……!!」

 

その時だった

物陰から現れる人影に、ジョニーはハッと気付いた

その人物を見た瞬間、顔面蒼白になり慌てて、ささっと、家の影に隠れる

 

だが、ウソップはその事に気付かずに、考え込んでいた

 

「つまり、これがアーロンに背いた町の成れの果てってやつか…しかし、なんで道までこんなに――――」

 

その時だった

ウソップの背後に、巨大な影が近づいて来た

 

「そいつは、“モーム”って怪物の仕業だ」

 

「怪物?なんだ、怪物までいるのか?」

 

「おれ達が、“偉大なる航路(グランドライン)”から連れて来たんだ」

「ふーん、“偉大なる航路(グランドライン)”からねぇ……ん?おれ、た……ち?」

 

そこでハッと気付いた

慌てて振り返ると、そこに居たのは先程の魚人の一人だったのだ

 

「お前!島流しの仲間だな!!」

 

 

 

 

「ぎいやあああああああああああああ!!!!」

 

 

 

「待てェ!!!!」

 

ウソップが泣き叫ぶなり、一目散に逃げ出したのは言うまでもない

魚人の「待て」に「待てませ~~~~~ん!!!」と叫びながら脱兎のごとく逃げる

 

その様子を、家の陰で難を逃れたジョニーはふーと溜息を付きながら汗を拭った

 

「ふー紙一重か…」

そして、心の中で合掌しながら

 

「どうか、ご無事でウソップの兄貴!!おれァ、ここでヨサクとルフィの兄貴を待つっす!!」

 

一方、魚人から逃げているウソップは、高笑いをしながら走っていた

何故なら、ウソップには“逃げる”事に関しては絶対の自信を持っていた

“逃げ”に関して、ウソップに敵う者はいない

 

「ぷははははははははは!!いくら、魚人でも陸ではおれに追いつけるもんか!!こういうのは、慣れてんだ!!追いついてみろォ!!」

 

ははははははははと笑いながが、余裕をぶちかましていた時だった

 

突然、謎の足がウソップの前に出てきたかと思うと、思いっきりその足に躓いた

スライディングにも近い位、ずざざざざーと豪快に顔面からこけた

 

「どうわあああ~~~~」

 

まさかの不意打ちに、流石のウソップも対処しきれなかった

 

「な、何だァ!?」

 

慌てて起き上がるとそこにいたのは――――

 

「見つけたぞ魚人!父ちゃんのかたきだ!殺してやるぅ!!」

 

剣を持った少年がそう叫びながら襲い掛かって来たのだ

 

「!!?」

 

斬られる――――!!!

と思った瞬間だった

 

ドスッ!!という景気の良い音と共に、少年の頭に手刀が何処からともなく落とされてきた

少年が半泣きになりながら、手刀をかまされた頭を押さえる

 

すると、少年の後ろから一人の女が現れた

そして、少年を守る様に抱きしめると

 

「魚人に手を出すな!忘れたの!?このゴサの町はたった一人の村人が魚人に背いた為に皆殺しにあったのよ!」

 

そこまで言って、女はウソップを見て小さく溜息を付いた

 

「なんだ、よく見な。確かに、魚人に似た顔立ちだけど…人間じゃない……ギリギリで

 

「ギリギリかァ!!!」

 

魚人に間違われただけに飽き足らず、人間としてもギリギリ宣言されて、ガーンとショックでウソップが叫ぶ

その時だった

 

「何処だ!?そこかァ!!!」

 

「やべ、来た!!」

 

そこへ、あの魚人が追いついて来たのだ

 

「魚人だ!!!」

 

「……本物もいたの……」

 

ぎょっとする少年とは裏腹に、冷静なままに女はそう呟いた

 

ウソップは、今すぐ逃げたい気持ちで一杯だった

だが、今度ばかりは逃げる訳にはいかなかった

 

女子供を残して逃げる訳にはいかない

 

ウソップはパチンコを取り出すと魚人に向かって構えた

 

手が震える

本当は今からでも逃げ出したい

 

でも、男としてそれだけは出来なかった

 

「下がってろ!お前達はキャプテン・ウソップが守る!!一人ぐらい何とか出来るだろ!!」

 

ギリギリっとパチンコを最大限まで引っ張った

魚人が迫ってくる

 

「くらえ!!必殺なまりいいいいいい~~~~~~」

 

ゴンッ!

 

「だから、魚人に手を出すなっての!」

 

ウソップの勇気も虚しく、女がもち出したハンマーによってウソップが撃沈されたのだった

ずるずると、女は気を失ったウソップの足を引っ張りながら家の陰に隠すと

 

「きゃあああああ――――――!!!」

 

叫び声を聞きつけて、魚人がやってくる

 

「どうした!?」

 

「鼻の長い男が……!!」

 

「どっちへ行った!?」

 

「あっちよ!」

 

魚人はその言葉を聴くと、「あっちだな」と叫びながら反対の方角へと走っていた

それを見届けた後、女はウソップと少年の元に戻ると

 

「早くあたしの家へ運ぶよ」

 

その言葉に、少年はこくこくと頷くのだった

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

      ◆      ◆

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ふーふーとハチはアーロンパークの海へと続く門の外で火を起こしていた

火の上には、美味しそうにこんがりと焼かれた豚の丸焼きがあった

 

「あーまァ、こんなもんでいっか」

 

焼き加減も、匂いも上出来

きっと味も美味しい筈だ

 

ハチは、立ち上がると海へ向かって口ラッパを鳴らした

 

「モーム!メシだぞー!モーム!!!」

 

そう叫んでみるが…

モームが一向に姿を現さなかった

 

いつもなら、この口ラッパと匂いにつられて直ぐに姿を現す筈なのに、今日に限ってまったくその気配がなかった

 

ハチは首を傾げながら

 

「おっかしいなァ…あの野郎。ぺっこぺこに腹空かしてる時間なのに……どこ行ったんだろ?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その頃――――

 

レウリア達は、船上で食事の真っ最中だった

机を出し、優雅に最高級の料理に舌を包む

何と贅沢な時間だろうか

 

ルフィなどは皿ごとピラフを持つと、そのまま一口で食べきってしまった

自分の分は小分けに避けておいて正解だったと、レウリアは心底思った

 

「流石、超一流の味付けっすね!」

 

ヨサクが、もりもりとモヤシ炒めを頬張りながらそういう

サンジは、優雅にワインを傾けながら

 

「おれは、お前達2人なんかより早くナミさんにお食事作って差し上げたいよ」

 

そう言って、一口ワインを口に運んだ

 

「リアさん、こちらのサラダお取りしますね~~~vv」

 

そう言って、慣れた手つきでサラダを取り分けてくれる

レウリアは、素直に「ありがとう」とその皿を受け取った

 

サラダもやはり絶品だった

特に、このドレッシングがたまらない

 

「上手くまた一緒になれるといいっすね~ナミの姉貴と」

 

そうヨサクがモヤシを頬張りながら言う

その言葉に、念願の骨付き肉にかぶり付きながらルフィが

 

「なれるさ!あいつは、うちの航海士だ。一緒に“偉大なる航路(グランドライン)”に行くんだ」

 

そう言ってもう一本の骨付き肉に手を伸ばそうとした時だった

ヨサクが普通にその肉を取ったのだ

 

「それ、おれんだ!」

 

ルフィが慌てて抗議する

だが、ヨサクも引かなかった

 

「だって、今食ったばっかでしょ!おれにも食わして下さいよー!」

 

その時、海の向こうが揺れた気がした

 

「でも、それはおれんだ!」

 

「いいじゃないですかーちょっとぐらい!」

 

「駄目だ!おれのだ!返せ!!」

 

「モヤシ上げますからー!」

 

「返せ、おれの肉―――――!!!」

 

「おれにも、肉食わせて下さいよ――――!!」

 

そう叫びながら、バタバタと船に中をヨサクが逃げまくるのをルフィが追い掛ける

ガタガタと船が揺れるが、レウリアは呆れつつもあえてスルーしていた

 

すると、サンジがワインを注ごうとしてガタガタと揺れる船にピシッと眉間に亀裂を走らせた瞬間

 

「揺らすんじゃねェ!てめえら!!!」

 

と、キレた

 

「折角の酒が零れちまうじゃねェか」

 

瞬間、船の下に巨大な何かの影が現れた

だが、ルフィもサンジもヨサクもその影に気付かなかった

 

ふと、レウリアの周りをくるくると何かが回りだした

 

「ネフェルティ?どうかしたの?」

 

どうやら、ネフェルティが何かを伝えようとしている様だった

だが、ネフェルティが話すより先にピンッときたレウリアはくいくいっとネフェルティ呼び寄せた

すると、一枚のカードがストンッと落ちてきた

それをキャッチして裏面を見る

 

更新日は―――――

 

「きゃ――――――!!! やったわ!!」

 

突然叫びが出したレウリアに、サンジだけでなく、ルフィとヨサクもその動きを止めた

 

「どうかしたんですか?リアさん」

 

サンジの問いにレウリアは嬉しそうに微笑むと

 

「入ったのよ! 賞金!!」

 

「「賞金??」」

 

ルフィとヨサクが顔を見合す

すると、レウリアは得意気に

 

「つるさんに、駄目もとでクリークを当分再起不能にしたって連絡したの。 そしたら、流石に掴まえた訳じゃないから全額…は無理だけど、一部だけ賞金が入ったのよ!」

 

と、満面の笑みでそういうレウリアにヨサクが目をキラキラさせて

 

「マジっすか!?で?で?幾らはいったんですか!?」

 

「ふふふ……1200万ベリーよ」

 

そう言って、レウリアはブラックカードを見せた

3人がそのカードを覗き込む

そこには、今日の日付の更新日と、1200万の文字が刻まれていた

 

「へーいいっすね!羨ましいっす!!」

 

羨ましそうにそういうヨサクとは裏腹に、ルフィはさほど興味を示した訳でもなく

ただ一言

 

「1200万ベリーって、肉食えるのか?」

 

「食べられるわよー。お店のお肉ぜ~んぶ食べてもおつりがくるぐらい」

 

流石にその例えは分かりやすかったのか、ルフィが目をランランをと輝かせて

 

「スッゲー!!!!マジか!!!肉食えるのか!!」

 

大興奮のルフィがいそいそと足をばたつかせて

 

「じゃぁ、直ぐ行こう!今、行こう!!」

 

「何言ってるのよ、ここは船の上よ?それにこのお金は、私が使うの!ルフィのお肉代じゃないわ。第一、お肉ならそこにあるじゃない」

 

そう言って、ヨサクがあーんと食べようとしていた骨付き肉を指さす

それを見たルフィが「あ―――――――!!!」と叫んだ

 

「おれの肉――――――――!!!」

 

「いいじゃないですか、ちょっとぐらい!!」

 

と、またバタバタと醜い攻防が繰り広げられ始めた

サンジがはぁ…と溜息を洩らすのと、レウリアがご機嫌でサラダに舌を包むのは同時だった

 

ネフェルティが必死に何かを訴えるが、今のレウリアには聴こえなかった

 

だから、巨大な影が船を覆う様に下に現れた事に、誰も気付かなかったのだった

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ウソップの続きは、アニメと漫画版両方混ぜてます

ルフィの方は、アニメとオリジナルですね

 

さて、そろそろモームさんが出てくるかなー??? 

 

2013/01/01