MARIKA

-Blue rose and Eternal vow-

 

  Act. Ⅱ アーロンパーク 19

 

 

 

「シャーハッハッハッハッハッハ!!! 海軍だと?」

 

にやりと、アーロンがその口元に笑みを浮かべる

 

「そりゃぁ、不憫だったなァ・・・・・しかし、約束は約束だ。 おれの目の前に一億ベリー用意できなきゃ、おれも村を返すわけにはいかねェ」

 

そう言って、ぐいっとその大きな手でナミの顎をギリギリっと掴み上げた

 

「・・・・外道・・・・・・・・っ!!!!」

 

畜生・・・・・・っ!!

 

ボロボロと、泣きたくもないのに、涙があふれ出る

するうと、アーロンは面白そうに高笑いをした

 

「シャーハッハッハッハッハ!!! だが、まァ・・・! たかが一億ベリーだ!! またためりゃいいじゃねェか!!! ――――それとも」

 

ふぃに、アーロンの口調が変わる

悪魔の様なその顔で、ナミに問いかけた

 

 

 

 

「ここから、逃げ出すか? ただし・・・・お前が逃げりゃ、ココヤシ村の人間は全員―――殺す」

 

 

 

 

「・・・・・・・・・・・・っ!!!」

 

 

 

ぎゅっと、ナミが手を握りしめる

 

悔しくて、悔しくて・・・・・・

あと少し、あと少しだったのに――――・・・・・・

 

ふっと、アーロンが口元に笑みを浮かべ

 

「残念だなァ、ナミ。 お前の為に、殺されることになるなんてなァ?」

 

 

 

「・・・・・・・・・・・・っ!!!!!」

 

 

 

瞬間、脳裏に浮かぶ―――ゲンゾウは言っていた

 

知っていたと・・・・・・

でも、ナミが逃げ出したと思った時、自分たちの期待がナミの足を引っ張ってしまうと―――・・・・・・

だから、皆、知らぬ振りをしてきたのだと・・・・・・

 

「・・・・・・・・・・っ!!!!」

 

ナミは、ぐっと唇を噛みしめると、思いっきりアーロンの手を払いのけた

そして、村に向かって一目散に走りだした

 

それを見たアーロンは、にやにやと口元に笑みを浮かべ

 

「ん? どうしたナミ。 ついに逃げだすのか? シャッハッハッハッハッハ!!!」

 

アーロンの言葉なんかに構っている暇はなかった

 

早く

早く、ココヤシ村に行かなくては――――・・・・・・・・!!

 

ゲンさん・・・・・・!!

みんな・・・・・・!!

お願い―――――早まらないで・・・・っ!!!

 

死んじゃいけない・・・・・・!!

全て、終わってしまう!!!!

 

生き抜かなきゃ・・・・・・!!!

何もかも終わっちゃう――――――――!!!!!

 

 

 

 

 

お願い――――――!!!!!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

   ****    ****

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「いいのか? 追わなくて」

 

ハチが、走り去るナミの背を見ながら言った

すると、アーロンはさも当然に様に

 

「追う? 何故?」

 

おどけた様に、そう返す

 

「あの女が逃げるわけがねーだろ。 村人の命見捨てる事なんてできねェ女なんだよ・・・・・・くくく」

 

そうあざ笑うアーロンを見て、チュウが小さく息を吐いた

 

「しかし、アンタもエグイ手を使うなぁ・・・・・・」

 

「ナミほどの優れた測量士を、みすみす逃す手がるか。 ―――とはいっても、おれだって鬼じゃねェ・・・・・・」

 

にやりとアーロンがその口元に笑みを浮かべ

 

「世界中の海の測量を終えたら・・・・・・自由にしてやるさ」

 

アーロンのその言葉に、一同が一斉に笑い出す

 

「そりゃァ、何十年後の話だよ!!」

 

「100年たっても終わりはしねェな!!」

 

その言葉に、またどっと皆が笑い出す

その時だった

 

コツン…

 

 

 

 

「――――それはつまり、今ここに1億ベリーあったらナミとココヤシ村を解放してくれるという事かしら?」

 

 

 

 

 

 

 

聞きなれない声がアーロンパークに響き渡った

 

「ああ? なんだ…貴様は」

 

いぶかし気に、アーロンがその声のした方を見る

そこには、見慣れないアイスブルーの瞳にプラチナブロンドの髪の美しい少女が立っていた

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

   ◆      ◆

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「よぉ~~し、こうなたったら一刻も早くルフィと合流だ!!」

 

ノジコの話を聞きていたウソップが、そう意気込みぐっとこぶしを握るその横で・・・・・・

何故か、サンジは幸せをかみしめていた(本人談)

 

「なにいってんだ? おめぇ・・・・・・」

 

ウソップは、訳が分からないという風に首を傾げた

すると、サンジは胸元からタバコを取り出し

 

「ナミさんは、人の何倍もの苦しみを背負て生きてきた・・・・・・。 その苦しみをおれが取り除いてやれる・・・・・・こんな幸せがあるか?」

 

そう言って、ふぅーと紫煙を吐く

 

それを聴いたウソップは半ば呆れた様に

 

「魂胆は見え見えなんだよ! この、ラブコック」

 

すると、サンジは悟りでも開いたかの様―――――・・・・・・

 

「美しい人の為に戦う・・・・それのどこが悪い?」

 

「そうじゃねェだろう! ナミと、村人たちの為に! だろうが。 なぁ、リア! リアからも何か言てやって―――・・・・・・」

 

とそこではたっと気づいた

いつの間にかレウリアの姿が消えていたのだ

 

ウソップがきょろきょろと辺りを見回す

 

「あっれぇ~~~? リアのやつどこ行ったんだ??」

 

さっきまで、一緒にノジコの話を聞いていた筈なのに

その姿は忽然と消えていたのだ

 

すると、樹に寄り掛かって寝ていたゾロが、横の刀を手に持つと立ち上がった

 

「あの女なら、向こうの方へ歩いて行ったぞ」

 

「はぁ!? 向こうって・・・・・この緊急時に一体どこにだよ」

 

「知るか。 ―――ごちゃごちゃ言ってねェで、行くぞ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

    ◆      ◆

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

―――ココヤシ村

 

 

 

 

「これまでだ、武器を取れ!! 戦うぞ!!!!」

 

 

 

 

 

ゲンゾウの掛け声に、村の皆が「おお!!」という掛け声とともに、その手に武器を取る

 

「私たちは8年前、一度は命を捨てる事をとどまり、誓った!! 奴らの支配がどんなに苦しく屈辱でも、ナミが元気でいる限り、“耐え忍ぶ戦い”を続けようと。 ――――だが!! これがあいつらの答えだ!!!!」

 

「この村の解放という突破口が閉ざされては、この島の支配圏に希望はない!!! もとより、あのの優しさをもてあそぶ あの魚人どもを我々は絶対に許さん!!!! 異存は!!?」

 

ゲンゾウの言葉に、村人が我先にと答える

 

「ある訳ねぇ! 行こう!!!」

 

「これ以上あいつらの支配なんか受けるか!!」

 

「村人全員、いつでも戦う覚悟と準備はあったんだ!!!」

 

るぞ!!!」

 

 

 

 

「「「おおおおおおおおおおお!!!!」」」」

 

 

 

 

 

村人が一斉に声を上げる

その時だった

 

 

 

 

 

「――――待ってよみんな!!!」

 

 

 

 

 

 

その声にはっとして村人たちが見る

そこには、明るく一生懸命笑うナミがいた

 

「・・・・・・ナミ!!」

 

ノジコがナミに駆け寄る

だが、ナミは明るく

 

「もう少しだけ、もう少しだけ待ってよ!! 私、頑張るから・・・・・もう一度、お金を貯めるから・・・!!!」

 

笑ながらそう言うナミ

それが余りにも痛々しくて、今にも泣きそうなナミが必死に笑顔を作っているのが見ていられなくて・・・・・・

 

「今度は簡単よ・・・・・! 慣れてるから・・・・・、今度は———―――――」

 

瞬間、ゲンゾウがナミを優しく抱きしめた

 

「もういいんだ・・・・・・ナミ」

 

「!」

 

「もう、無駄なことぐらいわかってるだろう? ・・・・・・我々の命を一人で背負って・・・・・よく、ここまで戦ってくれた・・・・・・!! お前にとってあの一味に入ることは、身を斬られるより辛かっただろうに・・・・!!」

 

「・・・・・・ゲンさん・・」

 

「よく戦った」

 

ゲンゾウの言葉に、今度こそ本当にナミの大きな瞳から涙が零れ落ちた

 

「お前は、このまま村をでろ」

 

「・・・・・・え!?」

 

「そうしな、ナミ」

 

ノジコとゲンゾウの言葉が、ナミに突き刺さる

そんなこと出来ない

出来るはずがない

なのに――――――

 

「そんなっ!!」

 

自分一人だけ、逃げるなんて―――――

 

「ナっちゃん」

 

「ナミ」

 

あの日以降、言葉を交わすことなかった村人たちが「ナミ」の名を呼ぶ

 

「あんたにはさ・・・・悪知恵もあるし、夢だってある」

 

待って

 

「ノジコ!! みんな!!?」

 

待って

 

そんな目で見ないで・・・・・・

そんな慈しむような目で・・・・・・・・・

決意が揺らいでしまう――――――

 

「行かせない!! やめてよみんな!!!」

 

ナミは咄嗟に持っていたナイフを抜いた

行けば死ぬ

それなのに、みんなどうして――――――

 

「もう、あいつらに傷付けられる人を見たくないの!!!!」

 

手が震える・・・・・・

 

でもこのままじゃ―――――

 

「・・・・・・死ぬんだよ・・・・・・・・!?」

 

「知っている」

 

不意に、ゲンゾウの手が伸びてきてナミの持つナイフを掴んだ

 

「・・・・・・・・・・・・っ!!」

 

ぽた・・・・ ぽた・・・・ と、ゲンゾウの手から血が流れて落ちる

 

「無駄じゃ、わしらはもう心を決めておる」

 

ドクターがそう言うと、周りのみんなも、そう頷いた

 

だめ・・・・・・

だめ、な、のに・・・・・・

 

身体が動かない

涙だけがボロボロと零れ落ちる

 

刹那

 

 

 

 

 

 

 

「どきなさい!! ナミ!!!!」

 

 

 

 

 

 

 

「!!!」

 

突然のゲンゾウの叫び声に、ナミがびくっとして、ナイフが手から零れ落ちる

だが、ゲンゾウは、剣を大きく上にかざすと

 

 

 

「いくぞ、みんな!!!!」

 

 

 

だ、め・・・・・・・・・

 

 

 

「勝てずとも、おれたちの意地を見せてやる!!!」

 

 

 

おおおおおおおおお!!!!!

 

 

 

だめ、な、のに・・・・・・・・・・・・

 

なのに――――

 

皆が、おおおおおお!という掛け声とともに、ナミの横を走り抜けていった

 

 

だ、め・・・・・・

 

 

 

「・・・・・・・・・・・・」

 

 

 

ナミが力なくその場に、崩れ落ちた

 

 

止められなかった

行ってしまった

みんな、みんなが・・・・・・・・・・・・

 

 

頭の中でアーロンが高らかに笑う姿が脳裏を過る

 

憎い・・・・・・

アーロンが、憎い

 

ぎりっと、左肩のアーロン一味の刺青が

まるで、アーロンが笑っているかのように見える

 

「・・・・・・・・・・・・っ!!!」

 

わなわなと震える手でナイフを拾うと、力任せにその刺青をナイフで突き刺した

 

憎い

 

アーロンが、憎い

 

あの男が―――――

 

何度も何度も、血が流れようとも関係ない

この刺青すら憎い

 

「アーロン・・・・!!  アーロン!!!! アーロン!!!!!」

 

 

 

 

 

アーロンっ!!!!!!!!

 

 

 

 

 

 

 

その時だった

不意に誰かにその腕を掴まれた

 

「!」

 

村人は誰もいない筈

なのに

 

ボロボロの顔で振り返ると、そこにはルフィがいた

 

「ルフィ・・・・・・」

 

カラン・・・・と、ナイフがナミのから落ちる

 

ルフィは何もしなかった

ただ、ナミをじっと見ていた

 

「・・・・・・なによ、8年間この島で何かあったか何も知らないくせに・・・!!!」

 

「うん、知らねェ」

 

わなわなと怒りがこみあげてくる

違う

 

「あんたには関係ないから・・・・・!! 島から出てけって言ったでしょ・・・・・・っ!!」

 

「ああ、言われた」

 

違う、こんなことが言いたいんじゃない

でも、でも――――

 

「出てけ!! あんたなんか・・・・・・っ、出てけ! 出てけぇぇぇ!!!!」

 

そう泣きながら砂をぶつける

 

本当は・・・・・・・・・

 

「出てけ! 出てけええええ!!!!」

 

何度も何度も、砂を掛ける

 

「・・・・・・・・・・・・っ、・・・・・・・・・・・・っ!!」

 

本当は・・・・・・

本当は――――――

 

「っ・・・・・・う、くっ・・・・・・うぅ・・・・・・」

 

涙が止まらない

もうどうしていいかもわからない

 

でも、もう――――――

 

ナミは嗚咽を洩らしながら、ゆっくりとルフィの方を見た

そして―――

 

「ルフィ・・・・・・」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

        「たすけて・・・・・・・・・・・・」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

小さな、震える声でナミが呟いた

 

「・・・・・・・・・・・・」

 

不意に、ルフィが被っていた麦わら帽子を、ナミに被せてきた

 

「!」

 

一瞬、何をされたのかわからず、ナミがその瞳を大きく見開く

すると、ルフィはすうううううと息を吸うと

 

島中に聞こえるんじゃなかという大きさで

 

 

 

 

 

 

 

 

「当たり前だ――――――!!!!!!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「!!」

 

あ・・・・・・

そうだ、この麦わら帽子は・・・・・・

 

ルフィが一番大事にしている“宝物”だ

それをかぶせてくれた・・・・・・

 

認めてくれるの・・・・・・?

まだ、期待していいの・・・・・・?

 

「・・・ルフィ・・・・・」

 

 

 

 

 

 

 

ルフィが歩き出す先には――――

いつの間にか、ゾロとサンジとウソップの姿もあった

 

 

 

 

 

「!!!?」

 

 

 

 

 

みんな・・・・・・

 

 

 

 

 

「いくぞ」

 

ルフィの掛け声に、三人が「オオッ!!!」と応える

 

 

 

「・・・・・・・・・・・・っ」

 

ナミはボロボロと涙を流した

 

助けて、くれる、の・・・・・・

あんなことしたのに・・・・・・

 

それ、なの、に――――――・・・・・・

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「なに? もう一度言ってみろ、女」

 

一等低い、ドスの聴いた声がアーロンパークに響いた

すると、ふっと微かに口元に笑みを浮かべ、彼女は呟いた

 

「―――――何度も言わせないで」

 

さらりと、彼女の長いプラチナブロンドの髪が揺れる

 

「1億ベリーなら、あげるからナミとココヤシ村・・・・・・いいえ、この“コノミ諸島”から一切手を引けと言ったのよ。 元、タイヨウ海賊団のアーロンと、その一味――――行き先は、そうね・・・・・・インペルダウンなんてどうかしら? きっと、楽しいわよ」

 

そう言って、プラチナブロンドの少女――――レウリアがにっこりと微笑んだのだった

その顔は怖いくらい美しかったー――――・・・・・・

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

久々に、ワンピ

やっと、バトルが開始されますが

一足お先に、夢主が単独で乗り込んでおりますwww

 

2020.10.28