MARIKA

-Blue rose and Eternal vow-

 

  Act. Ⅰ 海上レストラン 7

 

 

 

「錨を上げろ!!!この船ごともってかれちまうぞ!!!」

 

「はいっ」

 

ゼフの怒声が響いた

コックの1人が慌てて錨を上げに行こうとするが船体が傾いている為、上手く歩く事すら出来ない

 

ルフィのいる場所も、ガレオン船が波に呑まれる衝撃で、大きく揺れた

だが、ルフィが何かを思い出したかの様にハッすると、慌てて揺れるバラティエの外に飛び出した

 

「お、おい…ルフィ……っ!?」

 

それを見ていたウソップが、ルフィを止め様と声を発しかけた時だった

横にいるゾロがルフィの行動に気付き、慌てて階段を飛び降りた

 

「まずいっ!表の船にナミもヨサクもジョニーも乗ったままだ……っ!!」

 

外は、突然のガレオン船両断で荒れている

ゴーイング・メリー号よりも大きな このバラティエでさえこの揺れだ

普通に考えれば、それよりも小さいメリー号では転覆してしまう可能性が極めて高い

 

ウソップもその言葉でハッとし、慌てて顔を上げた瞬間―――ごんっ!

 

盛大に、階段の手摺に頭をぶつけた

じんじんと頭が痛む

が、それに構っている暇はなかった

 

「くそっ!!もう、手遅れかもしれねェぞ!!」

 

ウソップもまた、ゾロに続く様に階段を飛び降り―――は出来ないので、急いで駆け下りた

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ルフィは、飛び出したバラティエの甲板で息を飲んだ

 

目の前で、あの巨大ガレオン船がいまにも沈もうとしているのだ

一体、何が起こったのか
それは、想像を絶する様な程の“異様”な光景だった

 

普通に考えれば“あり得な”出来事だった

後から駆けつけてきたゾロとウソップも、その光景に驚きの色を隠せなかった

 

その時だった

 

 

「アニギ~~~~~~~!!!」

 

 

「ア~~ニ~~ギィ~~~~~~~ッ!!!!」

 

東の方角から、バシャバシャと荒れ狂う海の中を必死に叫びながら泳いでくる何かがあった

ルフィ達はハッとして、慌ててその影に駆け寄った

 

「ヨサク!! ジョニーッ!! 無事か!!?」

 

それは、縁あってナミと一緒に船番を頼んでいたゾロの弟分の賞金稼ぎユニット・ヨサクとジョニーの2人だった

 

「船は!? 船が無いぞ!! ナミはどうした!?」

 

見れば、ここのあった筈のゴーイング・メリー号の姿が見当たらない

もしや、波に呑まれてしまったのだろうか…

そう思った時だった

 

「それが……っ。 ずいばせんアニキ……っ!!! もう、ここにはいないんです!!」

 

ヨサクとジョニーが涙を流しながら訴えた

 

『じゃあね!あいつらに言っといて!』

 

「ナミの姉貴は……っ!!」

 

『縁があったら、また会いましょvって』

 

「宝、全部持って……逃げちゃいましたっ・・・・・・・・・!!!!」

 

「……なっ……」

 

 

 

 

 

「「「何ィィィィィィィィィ!!!!?」」」

 

 

 

 

 

突然、横から聴こえてきた叫び声にレウリアはハッと顔を上げた

あの声は……

 

「ルフィ……?」

 

しかも、ルフィだけではない

ゾロやウソップの声も混じっていた

 

店内に居る筈のルフィ達の叫び声が、何故かこの外から聴こえたのだ

しかも、今、この場にそぐわない雄叫びともいえる奇声が

 

「リアさ……」

 

サンジの呼び声にも目もくれず、レウリアは慌てて声のした方へ駆け出した

 

 

「あの……っ! すみません、通して下さい…っ」

 

様子を見に来たコック達の合間を縫って、声のしたであろう方向へ向かう

何とか、そこをすり抜けると 目の前が急に開けた

 

そこには、びしょ濡れの見知らぬ男2人がぜーぜーと肩で息をしながら甲板に寝転がっていた

その周りに、ルフィ達が驚いた様な顔をして取り囲んでいる

 

「なんだってぇ―――!!?」

 

「ナミが、ゴーイング・メリー号に乗って逃げたぁ!!?」

 

「そいつは一体、どーいう事なんだ!!?」

 

ぐいぐいと、ルフィ達が互いに押し合いながら 甲板に倒れている男達に詰め寄る

 

「ちょ…っ、ちょっと! 一体、こんな時に何の騒ぎ―――」

 

レウリアが、慌ててそう口にしようとした時だった

ルフィがハッとレウリアの存在に気付くと、あわあわしながら今度はこっちに詰め寄りだした

 

「リア――――っ!! 大変なんだ……!! ナミが逃げた!!!」

 

「は……?」

 

「だからー!! ゴーイング・メリー号が逃げちまったんだっ!!!」

 

「え……?」

 

「おれ、行かねェと!!」

 

そう言いだすと、突然ルフィがぐいーと手摺に手を掛けて伸びた

 

「ちょっ……! 待……っ!! 待ちなさい、ルフィっ!! 貴方、一体どうやって海を行く気なのよ!!」

 

次に起こるであろう出来事に加え、結果を瞬時に理解し、慌ててルフィを止める

 

「止めるな、リア!! 早くしねェと……」

 

更に手を伸ばそうとするルフィに、レウリアの鉄拳制裁が下った

 

「いいから、落ち着きなさい!!」

 

ゴンッ!と、景気のいい音を立ててルフィの脳天に直撃したゲンコツは、見事にルフィの頭に大きなコブを作りだした

 

「貴方は、自分が能力者だって事忘れたの!!?沈んだ貴方を誰が助けるのよ! だ・れ・がっ!!

 

後半部分を強調されたレウリアの怒声に、ルフィがコブを摩りながらしょぼんと縮こまる

 

「ずいません……」

 

「大体、ルフィはまだこのバラティエの後始末が終わってないでしょうが!」

 

「はい、その通りです…」

 

「って!!うぉぉぃ!!ルフィ!リア!遊んでいる場合じゃねェって!!」

 

ウソップが慌てて2人の間に割って入った

その言葉に、レウリアが少しムッとする

 

「失礼ね、遊んでなんかないわよ」

 

「そうだぞ」

 

レウリアの声に、何故かルフィがうんうんと頷きながら同意する

 

「だ――――!!んな、細かい事どーでもいいって!!それより、早くしねェとナミはともかく、ゴーイング・メリー号が……っ!!」

 

そう切羽詰まった様に顔を近づけてくるウソップを、鬱陶しそうにレウリアが手でぐいーっと押しのけた

 

「……で? 何があったの? 状況を説明してくれると助かるのだけれど―――って、どちら様?」

 

ゾロかウソップに説明を求めた筈が、何故か甲板に倒れていた2人組が突然挙手した

 

指名された(?)2人は突然立ち上がると、スチャッと腰にはいていた鞘無しの片刃の剣“菜斬り刀”を(自分達的に)かっこよく構える

黒髪の男がくいっとサングラスを上げ、もう1人の坊主頭にヘッドギアをした男がタバコを吹かした

 

「「申し遅れました」」

 

「おれの名はジョニー」

 

「あっしはヨサク」

 

「「2人仲間の、海賊相手の賞金稼ぎ」」

 

「かつては、ゾロのアニキとは同業者」

 

「どうぞ、お見知りおきを」

 

「……………」

 

レウリアがアイスブルーの瞳を瞬かせてぽかんとする

だが、そんなレウリアを余所に 2人は何故か語りだした

 

「今まであっし達の手に掛かった賞金首達は数知れず」

 

「“鉄腕のゴノフ”に“鎌切のビリー”、他にも名の知れた賞金首達。そいつらは、すべて紙一重でおれ達の手に掛かったのさ」

 

「はぁ……」

 

“鉄腕のゴノフ” “鎌切のビリー”

残念ながら、名前すら聞いた事のない賞金首だった

聞いた事ない=チェックする必要性を感じない=小物 なのだが……

 

「ジョニーさんと、ヨサクさんって……」

 

レウリアがそう呟くと、2人がふっとかっこよく決めポーズをした

 

「どうするよ、相棒。おれ達も、有名になっちまったもんだな」

 

「そうだな、相棒。困ったもんだ」

 

うんうんと、頷き合いながらそう言い合う2人だが…レウリアは小さく首を傾げ

 

「ごめんなさい、知らないわ。それどころか、そんな名前の賞金稼ぎも聞いた事もないかも」

 

と、きっぱりと言い切った

 

「「ん“な………っ!!!?」

 

ヨサクとジョニーがショックを受けた様に、ガーンと口を開けたまま固まってしまった

 

「「………………」」

 

ゾロとウソップが憐みの目で2人を見た

ちなみに、ルフィはあまりよく分かっていない様だった

 

「あ…あはははは、お、おれ達も紙一重で有名だから……なぁ!、相棒!!」

 

ジョニーが乾いた笑みを浮かべながら、ヨサクの肩を叩いた

それにハッとしたヨサクが

 

「お、おお!そうだよなぁ!!」

 

「「あっはっはっはっはっ!」」

 

「……………」

 

情報通で知られるレウリアが賞金稼ぎの事を調べていない筈がない

が、調べる必要のなかった者は除外している

それは、必要性を感じなかったというのが一番の原因である

 

基本的に、レウリアは自分が必要な情報しか調べない主義である

興味のない事や、必要性のない小物などはスルーするのが当たり前で、この先も調べる気も無い

 

つまりは、そういう事である

 

が、それをきっぱり言ってしまうのもどうかと思ったので、あえてその事には触れないでおく

レウリアは、にこりと微笑むと

 

「あーうん…まぁ、そこはどうでもいいとして。結局は、何があったの?」

 

レウリアがさらっとそう言った時だった

ジョニーとヨサクが、先程よりもショックを受けた様な顔になった

 

「ど…どうでも……!?」

 

「……い、い………!?」

 

ガーンと打ちひしがれると、2人して超どんよりオーラを発しながら甲板にのの字を書きだした

 

「どうでもいいってさ……」

 

「おうよ…相棒……あっしら、どうでもいいらしい……」

 

そんな2人に、ウソップがぽむっと肩を叩いた

 

「おいおい、2人とも。そんなに落ち込むなよ。このキャプテン・ウソップ様でさえ、リアに掛かったら 小物だぜ?相手が悪かったんだよ」

 

「な?同志よ」と言いながら、うんうんと頷いた

が…

 

「いや、ウソップの兄貴と一緒にされても、困りますよ」

 

「兄貴は、仕方ないとしても、あっしらは一介の賞金稼ぎとしてのプライドがあるんで」

 

と、どきっぱりと言い返された

 

「なんだとぉ――――!!!!!どーいう意味だよ!!!?」

 

そうウソップが叫んだのは言うまでもない

 

それを見ていたレウリアは、はぁ…と盛大な溜息を付いた

と、同時に……

 

 

 

ゴンッ! バキッ! ドカッ!

 

 

 

ジョニーとヨサクとウソップに鉄拳制裁が下された

 

「貴方達、話を脱線させないでくれるかしら」

 

「「「ず…ずびばせん………」」」

 

「とりあえず、ウソップさん そこ邪魔!」

 

レウリアの叫び声に、ウソップが「了解でありますっ!!」と敬礼し、さささと避けた

 

「貴方達は、そこに正座!!」

 

「「は……っはいぃぃぃぃ!!!」」

 

ビシッと指された場所に、ジョニーとヨサクがスチャッと正座する

 

レウリアは、仁王立ちになると腕を組んだまま2人を見た

 

「それで? 説明してもらえるかしら」

 

言葉は丁寧なのに、何故か節々に威圧感を感じる

 

ジョニーとヨサクは顔を見合わせながら、ごくりと息を飲んだ

 

「た…たった、今しがたの事でした」

 

 

 

 

 

 

ナミと一緒に船番をしていたジョニーとヨサクは、ナミが自分達の賞金首リストを見ていたのに気付きナミに話し掛けた

 

「どうしたんです?ナミの姉貴。賞金首のリスト ぼーっと眺めちゃって」

 

ヨサクの声にハッとした様に、ナミが慌てて顔を上げた

 

「あ、ううん。何でもない」

 

ナミは誤魔化す様にそう言ったか、ジョニー達はそこよりもナミの見ていた賞金首に目がいった

それは、ある海賊の手配書だった

 

「お―――っ、さすが、ナミの姉貴!高額の海賊に目をつけやしたね!でも、アーロンだけは狙わねェ方がいいっすよ。そいつは、くそ恐ろしいまでに強いとかで…一時期は大人しく影を潜めてたんですがね」

 

「最近、また暴れだしたって話なんですよ」

 

「……………」

 

「まぁ…でも、2000万ベリーの賞金ってのは捨てがたいけどな!」

 

「こいつの強さときたら、このおれ達でも紙一重で殺される可能性が紙一重であるからなぁ」

 

あっはっはっはっはと笑いながら、ジョニーとヨサクがうんうんと頷く

 

その時だった

 

突然ナミが、新しいシャツを船の手摺に打ち掛けた

そして、少し頬を染めながら恥ずかしそうに

 

「ねぇ……悪いんだけど、着替えたいから向こうを向いててくれる?」

 

「「え!!?」」

 

突然の急展開に、ジョニーとヨサクのハートがドキンコーンと鳴った

 

「ふ…服を!?今、ここで……っ!?」

 

顔が緩むのを必死に抑えながらヨサクが、何とかそう口にする

 

するとナミは、少し照れた様にはにかみながら

 

「……いけない?」

 

そう言って、決め手に軽くウィンクした

 

「「ど…どうぞ!どうぞ!!」」

 

ジョニーとヨサクが頬を赤く染めながら、慌てて後ろを向く

 

どくん どくんと2人の心臓の音が大きく響き渡る

顔が笑いそうになるのが止まらない

 

「ナ…ナミの姉貴ったら、見かけ通り大胆なんだから」

「ちょっ…ちょっとぐらい見ても、バチは当たんねェよな……ちょっとだけ」

 

あきらかに、声が嬉々としている

 

どきどきと心臓の高鳴りを聴きながら、そ~~~と振り向こうとした瞬間だった

 

 

 

 

「「はっ!!?」」

 

 

 

 

ドボ―――――ン!!

 

 

突然、誰かの後頭部を押され 2人はまっさかさまに海へと落ちたのだ

予想外の出来事に、ジョニーもヨサクも混乱する

なんとかもがいて海面に顔を出した時、視界に入ったのはナミの後ろ姿だった

ナミに落とされたのだと理解するのに、数秒を要した

 

「げほっ!!げほっげほっ!!」

 

「なっ……何するんですかぁ!!ナミの姉貴っ!!」

 

ジョニー達の声に応える様に、ナミがゆっくりと振り返った

そして、にっこりと微笑むと

 

「何って……仕事よv 私は海賊専門の泥棒だもん!だから、この船を頂いて行くわ」

 

「「なっ……!!」」

 

ジョニーとヨサクが声にならない叫び声を上げた

 

「私は、一度だって仲間なんて言った覚えないもの。手を組んでた・・・・・・だけ!」

 

そう言って、一瞬だけ愁い意を帯びた表情になる

 

「ルフィ達とは短い付き合いだったけど……結構、楽しかったわ」

 

だが、次の瞬間 その表情は元のナミに戻っていた

 

「じゃあね!あいつらに言っといて!」

 

「「え」」

 

「縁があったら、また会いましょv って」

 

それだけ言うと、ナミは甲板から去って行った

 

「ナミの姉貴っ……うわっ!!」

 

ヨサクの出した呼び声も虚しく、突然動き出したゴーイング・メリー号の波が2人に押し寄せてくる

 

「ちょっ……ちょっと!困るっす!!ナミの姉貴ィ!!!」

 

「おれ達、一応 船番 頼まれてるんっすよォ!!!!」

 

必死にそう叫ぶが、メリー号はどんどん進みだしていた

その時だった

 

突然、物凄い音と共に隣にあった筈の巨大ガレオン船が切断されたのだ

その衝撃で、一気に波が2人に押し寄せてきた

 

そして、今に至るのだという

 

 

 

ジョニーとヨサクは、バンッ!と甲板を叩きながら頭を下げた

 

「そういう訳で、船は持ってかれちまいました!!」

 

「すいやせんっ!!」

 

「……………」

 

レウリアは今の話にどうしても引っかかる事があった

 

「……アーロン」

 

「え?」

 

「ナミが見ていた手配書が、アーロンの物だったというのは本当なの?」

 

「え?あ、はい。そうっす」

 

「………そう…」

 

アーロンといえば、思い当たるのは1人

魚人海賊団のノコギリザメのアーロンただ1人だ

懸けられた懸賞金は、2000万ベリー

現在、この東の海イースト・ブルーでの最高額である

確か、今はコノミ諸島を根城にしていた筈

何故、ナミがアーロンの手配書を……?

 

どうしても、そこが結びつかなかった

 

「くそっ!!」

 

ガンッ!と勢いよくゾロが壁を殴った

 

「あいつ……っ!この非常事態に輪を掛けやがって……っ!!」

 

「あの船は、カヤに貰ったもんだぞ!!!」

 

カヤと言うのが誰かは知らないが、どうやらあのゴーイング・メリー号はそのカヤという人より受け取ったものらしい

そして、口ぶりから察するに 恐らくウソップにとってその“カヤ”という人物は近しい存在だったのだろう

 

「でも………」

 

ちらりと、ジョニーとヨサクを見る

そして、一言

 

「貴方達、最低ね」

 

「「え!!?」」

 

突然の最低発言に、ジョニーとヨサクが驚きの表情をする

 

「な、なんでおれ達が“最低”なんっすか!?」

 

「そ、そりゃぁ…アニキ達の船番を頼まれてたのに、こんな事になっちやいましたけど…」

 

「いや、そうじゃなくて」

 

レウリアが、軽く手を振った

 

「「??」」

 

いまいち、レウリアの言わんとする事が分からず、2人が首を傾げる

 

「ナミの着替えを覗こうとしたのでしょう?男として、それはどうなの?」

 

 

 

「「「そっちかよ!!!」」」

 

 

 

何やら、声が多かった気がするが、そこはあえてスルーする

 

「まぁ、冗談はさておき」

 

「冗談なのかよ!!」

 

何やら、先程からウソップの声が聴こえるが…やはり、これもスルーする

 

「……ナミは手を組んでいただけだと言ったのよね?てっきり、私は貴方達の仲間なのだと思っていたけれど…元々、そういう契約だったの?ルフィ」

 

レウリアからの問いに、ルフィが答える事はなかった

ただ、海の方をずっと見ている

 

「……………」

 

どうやら、それ所ではないらしい

その様子に、レウリアは微かに笑みを浮かべた

 

どうやら、レウリアが思っていたよりもずっといい“船長”をしている様である

 

その時だった

突然ルフィが「あっ!!」と叫んだ

 

「待て!!まだ、船が見えるぞ。ゴーイング・メリー号だ……!!」

 

言われて水平線の彼方の方を見ると……

確かに、小さくだが まだメリー号を目視する事が出来た

 

「ヨサク!ジョニー!お前らの船は!?」

 

「……それは、まだ残ってやすが…」

 

「ゾロ! ウソップ!! すぐ行け!! その船で、ナミを追っかけてくれ!」

 

ルフィがそう訴えると、ゾロははぁーと呆れにも似た盛大な溜息を付いた

片手をひらっと上げて 軽く横に振る

 

「あーもう、いい。船なんてくれてやれ!あんな女、もう追い掛ける事はねェ」

 

「……………」

 

一瞬、ルフィの表情が消える

そして、ゆっくりと顔を上げ

 

 

 

 

「おれは、あいつが航海士じゃなきゃいやだ!!!」

 

 

 

 

 

そう言い切ったルフィの表情には、切望にも譲れない想いにも似たものが感じ取られた

 

「………………」

 

一瞬の沈黙

ほんの僅かな、瞬き程の睨み合い

 

放っておけと言ったゾロと、ナミでなければ嫌だと言ったルフィの間に、無言の空間が作られていた

数秒の沈黙の後、溜息を付いたのはゾロの方だった

 

「……ったく。分かったよ。………世話の焼ける船長キャプテンだぜ。おい、ウソップ!行くぞ!!」

 

「お……おう」

 

ウソップが返事をするのと同時に、いつの間にか出航の準備をしていたジョニーとヨサクが戻ってきた

 

「ルフィ、お前は?」

 

ゾロの問いに、ルフィは小さく首を振った

 

「おれは、まだこのレストランでなんのケリも付けてないからだめだ」

 

「そうか。お前は―――」

 

そう言い掛けてレウリアの方を見た

それに気付いたレウリアは、小さく手を左右に振った

 

「私もここに残るわ。今の所、私は貴方達の仲間って訳でもないし…一緒に行く理由が無いもの。それに、ルフィ1人残して行ったら、何をしでかすか気が気じゃないわ」

 

レウリアの言葉に、ゾロが小さく笑みを浮かべた

 

「は……っ。まぁ、そういう事にしておいてやるよ」

 

彼女の言葉は要約すれば、“ルフィが心配”だと言っている様なものだった

だが、素直にそう口にしなのは恐らく彼女の性格なのだろう

 

存外、面倒くさい奴だとゾロは思った

 

「とにかく、気を付けろよ。こっちの事態も尋常じゃねェんだ」

 

「ああ、分かってる」

 

ゾロの言葉に、ルフィが頷いた時だった

 

 

 

 

 

「あいつだァ!!!!」

 

 

 

 

 

突然、クリーク海賊団の叫び声が聴こえてきた

 

首領ドン・クリーク!!あの男です!!!我々の艦隊を潰した男ですっ!!!!」

 

「ここまで追ってきやがったんだっ!!!おれ達を殺しにきやがったんだァ!!!」

 

突如、騒ぎ出したクリーク海賊団に、ジョニーの船に乗り込もうとしていたゾロ達の動きが止まる

 

そして、それを視界にとらえた途端 みるみるゾロの表情が変わっていった

 

沈みゆくガレオン船―――

その中を、悠然と真っ黒な一艘の小舟が、ゆらり ゆらりとゆっくりと漂っていた

先端に立っている一対の緑色の炎が、まるで道標ともいう様に 怪しげに ゆらゆらとゆらめいている

 

棺桶―――そう呼ぶのが相応しいのかもしれない

 

それぐらい、それは怪しげな光をかもしだしていた

そして、その中央には椅子に座って静かに佇んでいる男が1人―――

 

羽飾りのついた大きなつばのある帽子

鷹を思わせる鋭い目と、整った口髭

そして、背中にある十字架を模したあの大きな黒い長刀

 

どくん どくん と、ゾロの心臓が煩い位に鳴り響く

何故かは分からない

分からないが、その男から目が離せなかった

 

見知っている男ではないのに、ずっと昔から知っていたかのような感覚

 

額から、嫌な汗が流れ落ちる

ごくりと、大きく息を飲んだ

 

ふと、脳裏のレウリアの言葉が蘇る

 

運が良ければ・・・・・・・・・・・・ここでも会えるかもしれないけれど』

 

「まさか……」

 

その“運”とやらが巡って来たのだろうか

 

「あれが……鷹の目の男……っ!!?」

 

ずっと、探し求めていた男

 

ゆらりと、ゾロが歩き出した

それは、まるで何かに取りつかれたかの様に、ただ一直線に鷹の目の男の元へ向かおうとしていた

 

瞬間、レウリアは全てを察して、慌ててゾロの腕を掴んだ

 

「ちょっ……!ちょっと、マリモさん!?一体、何考えて―――」

 

「離せ」

 

低い 今まで聞いた中で一等低い声が響き渡った

 

だが、レウリアは怯まなかった

それよりも、ゾロを掴む一層手に力を込める

 

「相手が誰だか分かっているの!? 世界最強の男よ!? 鷹の目・ジュラキュール・ミホークなのよ!! いくらマリモさんが強くたって、相手が悪すぎるわ!!」

 

勝ち目などないのは、明白だった

なのにこの男は、あのミホークに挑もうとしている

 

「いいから離せ、レウリア」

 

「離せる訳ないでしょう!どんな理由だろうと、無駄に死に行かせる様な真似を認める訳には―――」

 

「おれは、知らなきゃいけないんだ!」

 

「え……?」

 

不意にゾロの動きが止まった

振り向く事は無い

だが、その背が全てを物語っていた

 

「おれは、死んだ親友との約束の為、“最強”を目指すと誓った!その為には、今、“世界”と“おれ”の距離がどのくらいあるのか、知らなけりゃいけねェんだ。―――それでも」

 

ゆっくりと、ゾロが振り向く

その瞳には“迷い”の一文字は無い

 

「それでも、お前は無駄だっていうのか!」

 

「……………っ」

 

レウリアは言葉を失った

 

何故なら、“同じ”だったからだ

あの日、エースが言った言葉

 

『約束だ!おれは、絶対に死なねェ!!お前も、ルフィも、死なせねェ!!』

『おれ達は、絶対に“くい”のない様に生きるんだ!!!』

 

 

『おれは必ずお前にまた会う。その“約束”の証だ』

 

「……………」

 

己の信念は曲げない

それが、“彼ら”の生き方なのだ

 

するりと、ゾロの腕を掴む手が離れた

レウリアは小さく息を吐くと、諦めにも似た溜息を付いた

その顔は、微かに笑っている

 

「まったく…男って言うのは、どうしてこう………」

 

ぎゅっと締め付けられる胸を隠す様に、レウリアが背を向ける

 

「お……」

 

ゾロが言葉にする前に、レウリアがひらりと片腕を上げた

 

「行ってきたら? その“約束”とやら、しっかり果たしてもらおうじゃないの」

 

その言葉に、一瞬面食らったゾロだが、次の瞬間 にやりと口元に笑みを浮かべた

 

「ああ、言われなくともな」

 

そう言って、くるりとミホークの方を見る

ふと、何かを思い出したかの様にゾロの動きが止まった

 

「――それから、マリモじゃねェ。おれの名はロロノア・ゾロだ。いい加減、覚えろ!リディ・レウリア!!」

 

それだけ言い残すと、ゾロはザッとその場から離れた

その言葉に、微かにレウリアが笑みを浮かべる

 

 

「……残念、知ってるわ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

      ◆      ◆

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

空をカモメが飛んでいる

波は穏やかで、荒れる気配ひとつない

 

ゴーイング・メリー号は、ゆっくりと航行していた

 

「……………」

 

風が頬を撫でていく

 

ナミはメリー号の手摺に寄り掛かったまま、ずっと水平線の先を見ていた

 

「今度会ったら、また仲間に入れてくれるかな……」

 

何故だろう……

有りもしない事を考えてしまう

 

最初から、こうするつもりだった

なのに、いつの間にかそこにいる事が当たり前になっていた

 

思い出すのは、ルフィやゾロ・ウソップ達との楽しかった想い出ばかり

そして、サンジやレウリアの事

 

楽しかった……

 

楽しいと思ってしまった

 

    思っては、いけなかったのに―――

 

 

「……………また……逢えるかなぁ………………っ」

 

知らず、ポロポロと涙が零れる

涙は止まらず、どんどん溢れてくる

 

「……はやく…………」

 

 

『どうしたんだい?ナミ』

『何やってんのよ、ナミ!早くしないと、置いてっちゃうわよ!!』

 

 

脳裏によぎる

自分を呼んでくれる、懐かしい人達

 

 

 

「…………早く、自由になりたいよ……っ、ベルメールさん……………」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

あれ……???

オカシデスネー

ゾロVSミホークが入るが…

その前で終わったよwwww

 

いや…もう、本当にすみません(-_-;)

どうしても、ゾロの理由に触れたかったんですよー

つか、あのシーン

原作もアニメも、いつの間にかガレオン船に移動してるんだよなぁ…ゾロ

いつの間に!?って、思ったもん

 

いや、それより、誰か止めろや!!思ったからなww

あ、別に、戦いの最中に横槍を入れろって言ってるんじゃないよ?

それは、.駄目です

その前に、止めないの?って思ってさー

ウソップとか…止めそうなのに……

だって、あの時点では止められない理由は判明してないものー 

 

2012/04/10