MARIKA

-Blue rose and Eternal vow-

 

  Act. Ⅰ 海上レストラン 3 

 

 

 

「いい機会だ、そいつらと一緒に海賊になっちまったらどうだ?」

 

「…………っ」

 

サンジの表情が豹変する

 

「てめぇは、もうはこの店には要らねぇよ」

 

ゼフのその言葉に、サンジがギリッと奥歯を噛み締めた

 

「おい、クソジジイ。おれはここの副料理長だぞ。おれが要らねぇとはどういうこったっ!!」

 

「客とはすぐ面倒を起こす、女とみりゃすぐ鼻の穴膨らましやがる。ろくな料理も作れやしねぇし、てめぇはこの店にとってお荷物なんだと そう言ったんだ」

 

「………っ」

 

コック達が階段の上でくすくすと笑っているのが聴こえる

 

「てめぇは他のコックどもにもケムたがれてる。さっさと海賊にでも何にでもなって、早くこの店から出て行きやがれ」

 

「なん、だとぉ……」

 

サンジが険しく表情を引き攣らせた

レウリア達も、突然のゼフの言葉に言葉を失っていた

 

「黙って聞いてりゃぁ、言いたい放題言ってくれるじゃねぇか、クソジジイ……」

 

サンジが、怒りを含ませた声音でそう呟きながら、ゼフに近づく

 

「他の何を差し置いても、おれの料理をけなす事は許さねぇぞ!」

 

「……………」

 

「てめぇが何と言おうと、おれはここでコックをやるんだ……っ!!文句は、言わせねぇ!!!」

 

そう叫ぶと、思いっきりゼフの胸ぐらを掴み上げた

瞬間、ゼフがスッと目を細める

 

「……オーナーの胸ぐら掴むたぁ何事だ……この―――」

 

そう呟くと、突然バシッとサンジの腕を払ったかと思うと、そのまま――――

 

 

 

 

「―――ボケナスがぁっ!!!」

 

 

 

「…………っ!!」

 

思いっきり、サンジを投げ飛ばした

ガシャーンという音と共に、サンジがレウリア達のテーブルに降ってくる

 

「………っきしょぉ…」

 

サッと料理を持って避けたレウリア達を横目に、そのままずるずるとサンジが斜めに倒れたテーブルから崩れ落ちた

 

「……サンジさん、大丈夫?」

 

一応、声だけ掛けておく

 

「フン」

 

ゼフが鼻を鳴らすと、サンジはキッとゼフを睨みつけた

 

「……ふざけんな…。いくら追い出そうとしてもな、おれはこの店でずっとコックを続けるぞ……てめぇが死ぬまでな!!」

 

「おれは死なん。後、100年は生きる」

 

そう言って、ゼフはホールから出て行ってしまった

 

「……口の減らねぇジジイだぜ……」

 

サンジがそうぼやくと、にこにこ顔のルフィがポムッとサンジの肩を叩いた

 

「許しが出てよかったなぁ~!これで、海賊に―――」

 

 

「なるかぁ!!!」

 

 

サンジは小さく息を吐いた後、立ち上がると倒れているテーブルを元の位置に戻し……

 

「先程は失礼。お詫びにフルーツのマチェドニアとティラミスを召し上がれ、お姫様」

 

そう言って、何処から出したのか綺麗なグラスに盛られたカットフルーツの盛り合わせサラダとティラミスケーキをナミの前に置いた

 

「うわぁ、ありがとう。優しいのね」

 

ナミがワザとらしく歓喜の声を上げるとにこりと微笑んだ

サンジもまんざらでは無さそうに、ふっとかっこよく笑みを浮かべる

 

「おい」

 

「リアさんには、ピスタチオのジェラートとブラッドオレンジのグラニータを。そして、こちらが洋ナシのタルトです」

 

そう言って、レウリアの前に並べられたドルチェはどれも美味しそうだった

 

「あ、ありがとう……」

 

なんだか、周り(特にウソップ)の視線が痛いので、素直に喜べない

 

「うおいっ!!」

 

ビシィィィと、スルーされていたウソップが突っ込みの声を上げた

そして、抗議だと言わんばかりにバンバンとテーブルを叩く

 

「おれ達には、何の詫びもなしか!!?男女差別で訴えるぞ、このラブコック!!」

 

ずずーとウソップの横で知らん顔をしたゾロが、いつの間にかあった目の前の茶を飲んでいる

 

「ああ!?てめぇらには、粗茶出してやってんだろうが!礼でも言え!長っ鼻!!

 

「お!?やんのかコラ!手加減しねぇぞ!!やっちまえ、ゾロ!!

 

「……てめぇでやれよ…」

 

「あ、これ美味し……って、なんで大口開けてるのよ…ルフィ」

 

洋ナシのタルトを一口食べてそう洩らしたレウリアの真横で、何故かルフィが大きなを口開けて待っていた

 

「……食べたいの?」

 

「………………」

 

うんともすんとも言わず、無言の大口が迫ってくる

呆れにも似た溜息を洩らしたレウリアは、目の前のドルチェの中からピスタチオのジェラートをルフィの前に置いた

 

「食べたいなら、自分で食べなさい。エースならまだしも、ルフィのくせに私に食べさせてもらおうなんて100万年早い」

 

と、毒付いたが……当の本人は気にした様子もなく

ルフィは満面の笑みで、あーと口を開けると……

 

「それは、てめぇにじゃねぇ!!リアさんにだ!!」

 

ガスッ!!

 

という叫び声と共に、ルフィの頭めがけて踵落としが一発落ちてきた

しかし、そんなルフィを余所にウソップとサンジの口論は続く

 

「大体、男相手にゃ皿も下げねぇのか!!」

 

そう言いながら、ビシィと目の前の空いた皿を指さすウソップ

 

「キノコ残ってんだろう。食えよ!」

 

皿の隅に、ちょびっと残ったキノコを指摘するサンジ

 

「“残したん”だよ!!ガキの頃、毒に当たってから おれは、キノコが嫌いなんだ!」

 

「こいつは毒じゃねぇから、残さず食え!長っ鼻!!」

 

そこへ、突然ナミがワザとらしく切望する様に

 

「やめて。私の為に争わないで」

 

「はいvやめます」

 

と、コロっとサンジ

 

「誰がてめぇの為かぁ!!」

 

と、ウソップが叫んだのは言うまでもない

 

そんなウソップを無視して、ナミはもじもじとすると

 

「ところで、コックさん」

 

雰囲気たっぷりの声音でそう呟くと、スッ…とサンジの頬に手を添えた

サンジの心臓がドキコーンと鳴る

 

「はいv」

 

「ここのお料理、美味しいんだけど…私には少し高いみたい」

 

「勿論!!タダでvv」

 

「うれしい!ありがとう!!」

 

ナミが感動?のあまり、ぎゅっとサンジを抱きしめると、サンジは目をハートにして歓喜の声を洩らした

 

ウソップが、「わざとらしい…」とぶつぶつぼやいている所へ

 

「あ、お前らは払えよ」

 

と、痛恨の一言

 

「なぬぅっ!!!」

 

「分かりやす過ぎるぞ…お前」

 

その様子を見ていたルフィは「あはははははは」と笑い出したが―――

 

「てえぇは、何くつろいでんだ、雑用っ!!!」

 

ドゴォォ!!

 

と、これまた強烈なサンジの回し蹴りがルフィの首をダイレクトに襲った

 

「店に客が入ったら、おしぼりだ!」

 

「御意」

 

ルフィは、そのままずるずるとサンジに引きずられる様に去って行った

その様子を見ていたレウリアは、はぁーと盛大に溜息を付いた

 

「……心配だわ…」

 

ぽつりと、そう呟く

 

「ルフィがか?」

 

ゾロがそう尋ねると、レウリアは一度だけそのアイスブルーの瞳を瞬かせた

 

「そりゃぁ、姉として心配なのも分かるけどよールフィだろ?だーいじょうぶだって!」

 

と、ウソップがレウリアの気持ちを晴らそうと、明るく言う

また、レウリアが瞳を瞬かせた

 

「そうよ、心配し過ぎよリア。ルフィなんだから、万が一にも何かあったりしないって!」

 

と、ナミもレウリアを励ます様に笑いながら手を振った

だが、当の本人はその大きなアイスブルーの瞳を瞬かせた後、首を傾げた

 

「ルフィの心配?誰が???」

 

きょとんとしたまま、レウリアは本当に意味が分からないという風に更に首を傾げた

 

「え?だって、お前―――」

 

ウソップが、慌てて口を開きかけるが……

 

「いや、私が心配しているのは、ルフィのせいで良くて半壊、最悪全壊になるんじゃないかと思われるこのレストランよ?」

 

 

 

 

「「「そっちかよ!!」」」

 

 

 

 

3人が一斉に脱力した様に机に突っ伏す横で、レウリアはくすくすと笑いながら

 

「全壊所か、存在すら消えちゃったりして」

 

と、けらけらと笑っている

十分あり得るだけに、誰も否定出来ない

 

流石、(自称)「ルフィの姉」と言い切るだけはある

ルフィの事を、よく理解している様だ

 

「まぁ、どちらにせよ、ルフィの件が片付くまでナミ達はここから動けないのでしょう?私と一緒ねー足止め組」

 

そう言いながら食後の紅茶を飲んでいると、その言葉にいち早くウソップが食いついた

 

「おれ達が足止め食らってるのは分かるけどよーリア、お前も動けない理由でもあるのか?」

 

「ん?」

 

レウリアが、きょとっとしたまま首を傾げた後、平然な顔をして

 

「あー乗り逃げされてしまったから……船。正真正銘、足が無いのよね。それに、ルフィ放置して行ったら、今度は何しでかすか……」

 

「おいおい、乗り逃げって……っ」

 

「ちょっと、それってマズイじゃない!何処かに言ったの?ほら、海上保安局みたいな……」

 

ナミの言葉に、レウリアがもう一度アイスブルーの瞳を瞬かせて、首を傾げた

 

「海上治安維持組織?」

 

「そう、それ!」

 

「それは言うだけ無理。乗り逃げしたの、その海上治安維持組織、通称・海軍の中将だし」

 

 

 

 

「「「はぁ~~~~~~~!!!?」」」

 

 

 

 

 

「しかも、相手は義父だから、相手にするだけ労力の無駄ね」

 

 

 

 

「「「父~~~~~~~~!!!?」」」

 

 

 

 

今度こそ、3人は本当に素っ頓狂な声を上げてしまった

 

「え!?え?海軍が??船で?リアが父で??乗り逃げが……あわわわわわ」

 

「ちったぁ落ち着け」

 

ゴス!と、景気の良い音がウソップの脳天に響いた

 

「いきなり、ぬぁにすんだぁ~~!!ゾロぉぉぉぉぉぉ!!!?」

 

突然、脳天チョップをかましてきたゾロに、大きなコブを作ったウソップが抗議の声を上げると

ゾロは平然とした顔で

 

「落ち着かせてやったんだ。礼ぐらい言ってもいいんだぜ」

 

「ふ・ざ・け・ん・な!」

 

「ちょっと、静かにして!!」

 

今にも、(一方的な)口論が起きようとしていたゾロとウソップをナミが止める

ナミはレウリアの方を見て

 

「海軍中将が父親って…じゃ、まさかリアも……」

 

「……………」

 

流石ナミ

鋭い所を突っ込んできた

 

……ここは変に誤魔化さない方がいいわよね…?

 

そう決めたレウリアは、姿勢を正すとにこりと微笑んだ

 

「改めまして。艦隊“艦風”を指揮する 海軍本部大佐“翔風のレウリア”こと、リディ・レウリアと申します。以後、宜しくね」

 

そう挨拶すると、3人がパカーと口をあんぐりと開いたまま固まった

 

「か、かかかかか海軍本部大佐ぁ~~~!?」

 

「おい、“翔風のレウリア”って、お前っ……!」

 

「中将の次は大佐……」

 

ナミが泣きそうになりながら、ぐったりと肘を付いた

とは反対に、ウソップがぷるぷると両手足を震えさせながら威嚇すてくる

 

「さ、ささささては…っお、おおおおおおれ様を捕まようって魂胆だな……っ!!こ、こここ来い…!いつでもこの勇敢な海の男があ、あいあいあい相手に………ゾロ!後は任せた!!」

 

と言いつつ、サッとゾロの後ろに隠れる

ゾロが「おい」と突っ込んでいるが、ウソップがゾロの後ろで「行けー!ゾロ!」

と小声で叫んでいる

ゾロは、はぁ~~~~と重い溜息を付くと、レウリアを見た

 

「おい」

 

明らかに威嚇しているであろうゾロに、レウリアは平然とした顔でにっこりと微笑んだ

 

「何かしら?マリモさん」

 

「だぁれが、マリモだぁ!!」

 

「ゾロ、論点がずれてるぞ」

 

怖いので、後ろからビシッとウソップが突っ込みを入れる

ゾロは、はっとして ごほんと咳払いをした

 

「で?その海軍大佐さんが、なんでこんな所にいるんだ?」

 

「あら、食事に来ただけよ?海軍はレストランにすら来ては行けないのかしら?」

 

「うっ……」

 

正論なだけに、反論出来ない

 

レウリアは、更ににっこりと微笑むと

 

「それに、私小物には興味無いの。だから、安心して」

 

レウリアがそう言うと、突然ウソップがすくっと立ち上がった

そして、ふーと額の汗を拭う

 

「なんだそうかぁ~小物には興味無いのかぁ~。小物でよかった♪」

 

「……馬鹿にされてる事に気付けよ」

 

心底安心した風に言うウソップに、ゾロが鋭く突っ込んだ

 

その様子を見ていたレウリアが、突然ぷっと吹き出した

 

「ふふ……くすくすくす、ごめんなさい、からかって。安心して、嘘だから」

 

「へ?嘘……?」

 

「あー“嘘”は違うわね……“元”かな」

 

「え……?じゃぁ……」

 

ナミがバッと顔を上げた

 

「今は、もう海軍大佐でも艦隊率いてもいないわよ。一身上の都合で辞めたから海軍」

 

「何だそっかぁ~驚かせないでよ」

 

ほっとしたナミがそう洩らすと、レウリアがくすくすと笑いながら「ごめんなさい」と謝った

 

「お、おれ様は、き、ききき気付いてたけどな!」

 

とか、ウソップが言っているが、思いっきりどもっている

 

だが、ゾロだけが違った

ゾロは、鋭い眼差しのまま

 

「確かに、海軍ではないのかもしれない。けど、“翔風のレウリア”である事は変わらねぇんだろ?」

 

瞬間、レウリアの表情が消える

それから、小さく息を吐いて紅茶のカップを持った

 

「そうね、その通り名は一生付いて回るでしょうね」

 

事態の読めないウソップは首を傾げながら

 

「おい、ゾロ。何だよ“翔風のレウリア”って?そんなにヤバい名なのか?」

 

「ヤバい…つーか、同業者みたいなもんだったからなぁ~」

 

「は?同業者???」

 

やっぱり意味の分からないウソップは、首を傾げた

レウリアは、小さく息を吐くと、カップを置いた

 

「“海賊狩りのロロノア・ゾロ“………それが、マリモさんの通り名よ」

 

「マリモじゃねぇっつってんだろ」

 

「それで、リアは“賞金首狩りの海軍・翔風のレウリア”―――よね?」

 

そこへ口を挟んだのはナミだった

 

「あら、ナミ知ってたのね」

 

と、平然とするレウリアに、ナミが頭を抱えながらはぁ~~と溜息を付く

 

「名前聞いた時に、気付くんだった…」

 

2人の様子に、ハッとウソップがしたかと思うと――

ドンと胸を叩き

 

「も、ももも勿論おれ様も知ってたさ!!」

 

「「嘘付け」」

 

ゾロとナミの声がハモッた

 

「ちなみに、2人は?」

 

と、レウリアがナミとウソップを指さす

指名された2人は、顔を見合わせた後

 

「私は、航海士よ」

 

「おれは、キャプテン・ウソーップ!」

 

「雑用だろ」

 

と、ゾロ

 

「だぁれが、雑用だぁ!!狙撃手だ!!」

 

それを聞いていたレウリアは、ふむふむと頷きながら

 

「航海士に狙撃手にマリモさんとルフィ……あーだから、サンジさんが欲しいのね」

 

「は?」

 

「だから、サンジさん。さっきルフィ引っ張って行った」

 

「あーあのエロコックか」

 

エロコック…

 

まぁ、間違ってはいないので、ここはあえて訂正はしない

 

「ルフィは、彼が欲しいみたい。執拗に仲間になろうって誘てたわよ」

 

「へぇーあのコックさんを?腕は確かなの?サービス精神は買うけど」

 

と、ナミ

 

「そうね、腕は確かみたいよ。彼の料理を食べて美味しいって言ってたし…」

 

ギンさんが……だけど

 

「それに、結構いい人だったわ」

 

レウリアのその意見に、男2人が顔を顰めた

 

「あれがか?」

 

「女限定じゃねぇのかよ」

 

と、それぞれ不満を述べる

 

「そんな事ないわよ、男の人にも親切だったわよ?さっきは。あの人だったら、貴方達のいい仲間になるんじゃないかしら?……まぁ、本人は断固拒否してるみた―――」

 

そこまで言い掛けた時だった

 

「リアも仲間になるんだからな!!一緒に行こう!!」

 

突然、にゅっと手が伸びてきたかと思うと、ゾロの取り皿に残っていた肉の切れ端を奪った

 

明らかに、犯人は明白だった

レウリアは、はぁーと溜息を洩らし

 

「ルフィ……むやみやたらに人様のお皿から取らないの!!行儀悪いでしょうが!!」

 

「むひゃこひゅむにゅむにゅ……」

 

「食べるか、話すかどちらかにしなさい!!!」

 

「もぐもぐもぐもぐ」

 

「食べるのかよ!!」

 

何だか、突っ込む事すら疲れてきた……

そんなレウリアとは裏腹に、ルフィはごっくんと肉を飲み込むと、嬉しそうに両手を広げ

 

「今日からリアも仲間だからな!!」

 

「ちょっ……!勝手に話進めないで!私は、了承してないっ!!!」

 

「何だよぉ~、何が不満なんだ”偉大なる航路グランドライン”に行くんだろ?」

 

「……行くわよ」

 

「エースに会うんだろ?」

 

「……会うわよ」

 

「だから、仲間だ!!」

 

「全然、意味分かんないから!!」

 

言っている事が、めちゃくちゃ過ぎる

まったく、要点が掴めない

 

レウリアは、重い溜息を付きながら頭を抱えた

 

「いい、ルフィ。さっきも言ったでしょう?私を仲間にすると厄介だって。無事に航海したいなら、無用な問題の種は省いておくものよ」

 

もう一度、牽制する様に注意を促す

だか、ルフィにはまったく通じておらず……

くいっと首を捻ると「う~ん?」と唸った

 

数分…いや、数秒そうした後、

ルフィは、突如その矛先をウソップとゾロとナミに向けた

 

「なぁ!リアを仲間にしたいよな!!?」

 

突然話を振られた3人は、目を点にした後……

 

「したいかどうかは知らねェけど…別にいいんじゃねぇか?もう、海軍って訳じゃねぇんだし。戦力は多い方が助かる」

 

「おれは、賛成だ!おれを守ってもらえる!!」

 

と、意見は様々だが……

 

いやいや、当人の意見を無視し過ぎではないだろうか……

こっちは、拒否しているのに、勝手に賛同しないで欲しい

 

その時だった

 

「ちょっと待って」

 

それを遮ったのは、他ならぬナミだった

 

予想外の伏兵に、ルフィが難しそうな顔をする

 

「何だよ~ナミは反対なのか?」

 

「……別に、反対って訳じゃないけど…安易に賛同も出来ないわ」

 

「??」

 

やっぱり、ルフィには意味が通じていないらしく、首を捻っている

ナミは、はぁーと溜息を洩らしながら

 

「いい? リアも言ってたでしょう“厄介な事になる”って。 あんた達、その意味分かってる?」

 

ルフィとウソップが顔を見合わせた

結論

 

「「さっぱり」」

 

ナミが溜息と共に「これだから、馬鹿は…」とぼやいた

 

「あのねぇ、よく考えれば分かる事でしょう! リアは、海軍でも大佐の地位に居て、艦隊まで率いてたのよ? しかも、“翔風のレウリア”って言ったら、4年で大佐まで上りつめたっていう凄腕の海軍将校の名じゃない。 そんなリアが海賊になったら、 海軍に真っ先に目を付けられるのは必須でしょうが!!」

 

 

「「あ」」

 

 

やっと、合点がいったのか……

ルフィとウソップが声を洩らした

 

「ナミの言う通りよ。私なんかが仲間になったら、即海軍に目を付けられて、追われる羽目になるわよ。賞金だって掛けられるかも。無事に航海したいのなら、お勧めしないわね」

 

 

 

「それでも、おれはリアが良い!!」

 

 

 

突然、ルフィが叫んだ

 

「はぁ!?ちょっと、ルフィ!人の話を聞いて――――」

 

「海軍なんか関係ねぇよ。おれ達は海賊だ!それぐらい何とでもなる!!だから、仲間になれ!」

 

余りにもきっぱり言い切られて、レウリアは言葉を失った

すると、突然周りからくつくつと笑い声が聞こえてきた

 

「「「あっはっはっはっは!!!」」」

 

ゾロとウソップとナミの3人が笑っている

 

「え……え??」

 

意味が分からず、レウリアは困惑した

何故笑うのか

今の話に、笑う所など一つも無かった筈だ

なのに、彼らは笑っていた

 

「確かに~!海賊には関係ねぇ!!」

 

「うちの船長は、言い出したら聞かねぇからなぁ」

 

「ほんと…いつも、勝手なんだから」

 

そう言って、彼らは笑っていた

まるで、レウリアの事を受け入れ体制バッチリという風に

 

 

バッとルフィがレウリアの前に手を出す

 

 

「だから、一緒に行こう!リア!!」

 

「え……」

 

……………

…………………

………………………

 

えええええええ――――――!!!?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

      ◆      ◆

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

―――4日後

 

早朝

海の水のせいか、霧が立ち込めていた

 

ウソップは、自分達の海賊船:ゴーイング・メリー号の甲板で辺りを見回しながら

 

「―――って、何だかんだでここに来て、もう4日になるぜぇ~?なぁ、いつになったら出発出来んだ?」

 

「さぁな」

 

支柱にもたれ掛って座っていたゾロが、そうぼやく

 

「……本当に、1年間雑用続ける気か?」

 

ウソップのため息交じりの台詞に、手すりに寄り掛かり何かを見ていたナミが顔を上げた

 

「いいじゃない、食事はタダだし。居心地良いもん」

 

「そりゃ、お前だけだ」

 

その時だった、バラティエの外壁の廊下をルフィが大きな荷物を持って歩いていた

 

「お~い!ルフィィ~~~!!どうなってんだよぉー!早く出航しようぜぇ~!!」

 

痺れを切らした様にウソップが叫ぶが、ルフィは顔を顰めたまま

 

「もう少し待ってくれよ~、オーナーにまた話してみるからさ~」

 

「頼むよ~」

 

というウソップの声を余所に、再度荷物運びをしようとした時だった

 

「ん?」

 

ルフィは何かを感じ、後ろを振り返った

だが、そこには何もない

霧の立ち込めた海が広がっているだけだ

 

「…………?」

 

一瞬、気のせいかとも思ったが…

やはり、何かを感じた

 

じっと、その方角を見る

 

でも、やはり何もない

何もないが………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……凄い霧」

 

レウリアは、部屋の窓を開けながら小さく息を洩らした

レウリアは、バラティエにある客間を借りていた

本当は、ゴーイング・メリー号に来ないかとナミに誘われたのだが…

 

行ったら行ったで、もう後には引けそうになかったので辞退したのだ

幸い、オーナーが話の分かる人で、空いている客間を一室貸してくれたのだ

 

ここに、留まっているのには理由があった

確かに、足が無い…というのもあるが…

それよりも気になったのが、ルフィだった

初日を見ていただけでも、頭を抱えたくなった

コックに客に迷惑かけまくるわ、備品は壊すわ、つまみ食いはするわ

何度、レウリアが謝りにいった事か…

とてもじゃないが、放置していけなかった

 

最初は1日だけ様子を見ようと思ったが…

後1日、後1日とやっている内に、気が付いたら4日も経ってしまっていた

 

我ながら、随分お人好しになったものだと痛感する

まぁ、元々艦隊に帰る気などなかったので荷物はいつもの場所に持って来ていたのが幸いした

 

その時だった

ふいに、耳元でシャララン…と何かが音を立てた

 

「ネフェルティ?」

 

レウリアが声を掛けると、“それ”はレウリアの前でくるくると回りだす

 

「外?」

 

言われて、窓の外を見る

だが、別段霧が張っていること自体はなんらおかしくない

 

ここは、海の上だ

水蒸気を含んだ大気の温度が、何らかの理由で下がり露点温度に達して霧が発生する

よくある事だ

 

 

だが―――

 

 

霧の奥で何かがうごめいている―――気がした

 

何か異様な“もの”が……近づいてくる様な……

 

 

「……………」

 

 

レウリアは、じっと霧の奥を見た

微かに聴こえる波を避ける音

風に吹かれる音

 

 

「――――っ、まさか……っ!!?」

 

 

そう思った瞬間、レウリアは慌てて部屋を飛び出した

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

パリーン

 

ホール内に、グラスの割れる音が響いた

落とした女が顔面蒼白になって、口元を押さえる

連れの男が何事かと思い、彼女の見る方へ視線を向けた

瞬間、男も驚いた様に目を見開き、ガタンと立ち上がった

 

 

「あ、あれは……っ!!」

 

 

霧の立ち込めるの海

その中を、ゆっくりとこちらへ向かってくる何かの影

 

揺らめくドクロマークの旗

波を掻き分ける船首

巨大なガレオン船

 

「ドクロの両脇に、敵への脅迫を示す砂時計……っ!」

 

ざわりとホール内がざわめきだす

 

「間違いない…っ!!あの旗印は…この東の海イーストブルーの覇者・“首領ドン・クリーク”だぁぁぁぁぁ!!!」

 

 

 

 

うわぁぁぁぁぁぁ!!!!!

 

 

 

一斉に、ホール内の客が隅に逃げ出しだす

 

巨大なガレオン船は、バラティエを飲み込まんとする程の大きさで

ギギギギギと、不気味な音を立てながらゆっくりと近づいて来た

 

 

「見ろパティ!!マジで来ちまったじゃねぇか!!追っ払ってくれるんだろうなぁ!!?」

 

「ま…まさか、間違いじゃねぇのか!?兵力5千人の海賊艦隊の首領ドンだろ……っ!!?たった一人の部下の仕返しの為にわざわざ来る訳……」

 

「来てるんだよ!!間違いなく、その船が!!!」

 

カネルにどやされて、パティが青くなりながら叫んだ

 

レウリアは慌ててバラティエのホールに出ると、目の前の巨大なガレオン船に息を飲んだ

 

「何て大きいの……っ」

 

それは、想像を遙かに超える大きさだった

だが―――

 

「でっけー船!!ギンの奴、お前に恩返しに来たのかなァ」

 

と、呑気にぼやくルフィにサンジは、目の前の巨大ガレオン船を眺めながらぼやいた

 

「そうは思えねぇな。……でも、妙だぜ」

 

霧が風で晴れていく

そこにあったのは――――

 

「……………?」

 

帆はボロボロに破け、船首の飾りは壊れ、船体もぐちゃぐちゃで、支柱が曲がり掛けた―――ボロボロの船だった

 

誰しもが、言葉を失った

普通に考えて、この手の巨大ガレオン船をここまで痛めつけるのはあり得ない

少なくとも、人の業ではなかった

 

「嵐かハリケーンか……何かの自然現象に捕まったんだわ……」

 

そうとしか、考えられなかった

 

ゆらりと、船首の先に人影が見えた

スッと、サンジがレウリアを庇う様に前に出る

 

「……お出ましだぜ」

 

 

 

コツコツコツ……

と、ゆっくりと何者かがホールに近づいて来た

誰しもが息を飲んだ

 

 

そして、ギィィィィィとエントランスホールの扉がゆっくりと開いた

そこに立っていたのは―――

 

 

「…………?」

 

 

「すまん……水と…メシを貰えないか……。金ならある…いくらでもある……もう…どのくらい食って…ない…か……たの…む。水と…食料を…くだ…さい………」

 

ギンに支えられ、息も耐え耐えに憔悴しきった身体でそう呟く

 

首領ドン・クリークの姿だった――――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

出てきただけで終わったwww

まぁ、仕方ない

だって、その前にサンジと夢主が勧誘中ですよw

ってのを、仲間に教えておかないといけなかったんだもの

何故なら、原作だと何故か仲間勧誘してるの前提なんだよぉ!!

何故、知っている!?お前らwww

って、思ったもの

 

あ~次回からアクションですねぇ~

 

2011/10/15