MARIKA

-Blue rose and Eternal vow-

 

  Act. Ⅰ 海上レストラン 4

 

 

 

誰しもが、己の目を疑った

 

首領ドン・クリークといえば

この東の海イーストブルーなら誰しもが知っている

兵力5千の艦隊を率いる提督・東の海イーストブルーの覇者

その手口は残忍で非道極まりなく、大悪党とまで呼ばれている

 

その筈の男が、今

目の前で今にも倒れそうになりながら、ギンに支えられてやっとの状態で立っている

そして、衰弱しきった面持ちで、食事をさせて欲しいと懇願している

 

誰が、この姿を予想出来ただろうか

 

流石のレウリアも、これは予想だにしていなかった

それは、他の者もそうだろう

皆、信じられないものを見る様にクリークを凝視していた

 

「な……なんだ、ありゃぁ…」

 

「……威厳も迫力もねぇ。あれが、大海賊艦隊提督のクリークか?」

 

カルネとパティが、驚きのあまりそう呟いた

 

「ハラ、減ってんのかぁ……」

 

「……そう…みたいね」

 

ルフィが螺旋階段の踊り場から眺めながら、そう呟く

レウリアも、困惑しつつも同意見だった

 

ふと、そんな二人の横をサンジが通り過ぎて行った

 

「え? サンジさん?」

 

そのまま、螺旋階段を上がって行く

サンジは階段を昇りきると、そのまま奥へ消えて行った

 

「…………?」

 

レウリアが首を傾げていると――――

 

首領ドン・クリーク!!!」

 

ギンの切実な叫び声がホール内に響いた

ハッとしてそちらの方を見ると

かろうじて立っていた筈のクリークが、ドサ…という音と共に床に倒れ込んだ

起き上がる力もないのか……

クリークは、床に突っ伏したまま……声を絞り出す様に呟いた

 

「……たのむ……水と食料を………」

 

ギンがふるふると震えだす

そして、誰かに懇願する様に声を張り上げた

 

「お願いだっ!!うちの船長を助けてくれ……っ!!本当にもう、餓死寸前なんだ!!もう、何日も食ってねぇんだっ!!……このままじゃ、死んじまうよっ!!!!」

 

ギンは必至だった

恐らく、本当に餓死寸前なのだろう

助けを求める相手を選ぶ余裕などないのだ

 

 

だが――――

 

 

周りの客たちの反応は、ギンが思っていたものとは違った

まるで、“助ける義理など無い”そう言っている様にも見えた

今までのクリークの悪行を知っているからか……

たとえ、クリークが死にそうになっていても、手を貸そう―――という者など一人も居なかったのだ

 

 

ギンがショックのあまり、言葉を失う

 

 

自分達が、今までしてきた事の報復か―――

確かに、クリークの行いは褒められたものではなかった

それでも、ギンはクリークを尊敬していた

あの強さに、憧れもしていた

ここで、死なす訳にはいかないのだ

 

 

「はっはっはっはっは!!こりゃぁいい!!傑作だ!!これが、大悪党“首領ドン・クリーク”の姿か!!」

 

 

パティが、面白い物でも見る様に笑い出した

その姿に、ギンの頭にかっと血が昇る

 

「今度は金もあるんだぜ!!?おれ達は客だぞ!!!」

 

ギンがそう叫ぶが、パティが一喝する様に叫んだ

 

「寝ぼけた事言ってんじゃねぇょ!」

 

そして、鼻息をフンッと荒くさせると

 

「おい、直ぐに海軍に連絡を取れ」

 

「何……っ!?」

 

「こんなに衰弱しきってるとは、またとないチャンスじゃねぇか!何も食わせるこたァねぇぞ!!取り押さえとけ!!」

 

「ぐ……っ!」

 

ギンがぎりりっと奥歯を噛みしめながら、パティを睨んだ

すると、周りの客たちが、「そうだそうだ!」と言いだす

 

「そうだ!!そいつが元気になった所で、何されるかわかりゃしない!!」

 

「日頃の行いが悪いんだ!!ハラ空かして死んじまえ!!」

 

「餓死しても当然だ!そしつは、それだけの事をやってきたんだ!!」

 

「…………っ」

 

事実なだけに、反論すら出来ない

ギンは言い返す事も出来ず、悔しそうに手を握り締めた

 

「復活したら、まずこの店を襲うに決まってる。一杯の水すら与える事はねぇ」

 

コックの1人が、軽蔑する様な眼差しでそう言い放った

ギンは、ぐっとこらえる様に、下唇を噛んだ

 

悔しかった

言い返してやりたかった

ぶちのめしてやりたかった

 

だが、ここで暴れればきっとクリークは助からない

今、自分達の置かれている状況ぐらい理解している

争ってはいけない

反論しては、助かるものも助からないのだ

 

ギンは、ただただ悔しそうに堪えるしか出来なかった

 

どうすれば―――

 

そう思った時だった

 

「何もしねぇ……」

 

不意に、クリークが呟いた

そして、よろよろと身体を起こしながら「何もしねぇ…」と呟いた

ギンが、慌ててクリークの身体を支える

 

すると、クリークはゆっくりと床に手を付き、頭を下げた

 

「食わせてもらったら、大人しく帰ると…約束する……っ。だから、頼む……助けてくれ……!!」

 

床に頭を擦りつけて懇願するクリークの姿に、ギンが涙を浮かべて訴えた

 

「ド…首領ドン・クリーク!!止めて下さいっ!!頭を下げるなんて止めて下さい!!!あんたのする事じゃねぇよ!! そんな情けないマネ……っしねぇでくれ………っ!!!」

 

強くて、偉大なクリーク海賊団の首領ドン

ギンが憧れたクリークの姿はそこには無かった

 

「約束しますから……お願いしますから……残飯でもなんでもいいですから……っ何でも……」

 

まさかのクリークの土下座に周りの客たちも困惑しだす

 

首領ドン……………っ!!!」

 

ギンは情けなかった

こんな事をクリークにさせてしまう己も

こうする事がクリークを助ける唯一の方法だという事も

 

全てが、情けなかった

 

 

「……………」

 

一部始終をずっと見ていたレウリアも、流石に困惑の色を隠せなかった

 

あの、悪名高き首領ドン・クリークが、残飯でもいいから食わせてくれと頭を床に擦り付けて懇願しているのだ

きっと、そこにはプライドも何もない

兵力5千の艦隊の提督である事も、東の海イーストブルーの覇者である事も そこにはない

あるのは、生への渇望 執着

ただ生きる為に、何もかもを捨てたクリークの姿だけだった

 

レウリアは、今まで数々の賞金首や海賊を捕まえてきた

 

中には、死にたくないと懇願する者もいた

だが、レウリアがそれらすべてを踏み台に大佐の地位まで昇りつめた

はたから見たら、それは冷徹な判断に見えたかもしれない

 

だが、レウリアとて人間だ

感情もあるし、心もある

相手を可哀想に思う事もある

 

クリークは、悪党だ

彼の今まで行ってきた事は、決して褒められたものではない

それでも、ここまでする者を見捨てるのは、流石に気が引けた

 

レウリアは、くいっとルフィのシャツを引っ張ると

 

「ねぇ、ルフィ。 厨房の場所分かるわよね? 何か少しでもいいから持って来れないかしら? 幾らなんでも、あのままは……」

 

「リアさん」

 

そこまで言い掛けた時だった、不意に自分を呼ぶ声が聴こえてそちらの方を見ると

奥に消えた筈のサンジが、いつの間にか戻って来ていた

 

そして、その手には―――

 

「あ………」

 

 

 

「けっ、同情引こうってのか……」

 

パティが、クリークの態度に悪態をついた時だった

 

「おい、そこをどけ。パティ」

 

という、掛け声とともに――—ドゴォ!!!

 

サンジの蹴りが、パティの顔面にクリティカルヒットした

突然、意味も分からず蹴られたパティは「ぶはぁっ…!!」と声を洩らしながら、そのままダンダンと階段から落下

そのままヒクヒクしながら、床で白目を剥いていた

 

流石のこれには、皆も驚いた

 

勿論、ギンも例外ではない

 

「サンジさん……」

 

まさかのサンジの登場に、ギンは信じられないものでも見る様に、大きく目を見開いた

サンジは持っていたボールに山盛りのピラフと酒瓶を、ドカリとクリークの前に置く

 

「ほらよ、ギン。そいつに食わせろ」

 

「!」

 

目の前に置かれたピラフに、クリークがガバッと顔を上げる

そして、躊躇する事無く、そのボールに手を伸ばした

 

「すまん……っ!!」

 

そう叫びながら、涙ながらにそのピラフを手で口に掻き込む

ギンはサンジを見て、涙を堪える様に唇を噛み締めた

 

 

その時だった

 

 

バタバタとカネルが階段を駆け下りてくると、傍に立っていた(邪魔な)コックを殴り飛ばした

 

「おい!サンジ!!すぐにそのメシを取り上げろ!!!てめぇ、そいつがどういう奴だか分かってんのか!!?」

 

「あ?」

 

サンジが、ゆっくりと振り返る

カネルは怒りの形相で叫んだ

 

東の海イーストブルーの覇者“ダマし討ちのクリーク”とは、こいつの事なんだぞ!!?」

 

「……………」

 

「始まりは監獄から……!!こいつは海兵になりすまし、海軍の船上で上官を殺し、その船を乗っ取る事で海賊として狼煙を上げた!! 時には“海軍旗”を掲げて港に入り、町や客船を襲ったり、“白旗”を振って敵船に襲いかかったり……っ勝ち続ける為に手段を選ばず、ここまで上りつめた海賊だ!!」

 

「なんだ、卑怯者かぁ~」

 

「ルフィ……本当に、知らなかったのね……」

 

カネルの熱演にそうぼやくルフィに、レウリアは呆れにも似た溜息を洩らした

 

「この男、本来の強さもハンパじゃねぇ……!! メシ食ったら大人しく帰るだと? こいつに限って、あり得ねェ!! そんな外道は、見殺しにするのが世の中の為ってもんなんだよぉ!!!」

 

 

 

 

 

ダン!!

 

 

 

 

突然、クリークが持っていた酒瓶を思いっきり床に叩きつけた

その音に、カネルがビクッとする

 

「……っ!!」

 

「ん?」

 

カネルの驚いた表情に、サンジが何かに気付いた様に振り返ろうとした瞬間――――

 

 

「ぬああああああ!!!!!!」

 

 

 

————ゴォ!!!

 

 

 

けたたましい声と共に、突然クリークがサンジの喉めがけて腕を振りかぶってきたのだ

 

「サンジさん!!!」

 

レウリアが慌てて、階段から飛び降りる

突如襲われたサンジは、防御する事も出来ず、そのまま後ろへ吹っ飛んだ

誰しもが、己の目を疑った

つい直前まで、衰弱しきって頭を下げていたクリークが、自分を助けてくれたであろうサンジを、豹変した様に襲ったのだ

 

「サンジさん……っ!!」

 

レウリアが、サンジの側に駆け寄ると必死に呼びかける

 

周りの客は、恐怖のあまり叫び声上げると、逃げ惑うかの様にホールから飛び出して行った

 

「は……話が違うぞ!!首領ドン・クリーク!!!この店には絶対手を出さねぇって条件であんたをここへ案内したんだ!!それに、あの男は、おれ達の命の恩人だぞ!!」

 

ギンが慌ててそう抗議するが―――

突如、クリークはその腕を伸ばすと、ギンの右肩を掴んで捻り上げた

 

「ぐぁぁっ!!」

 

ギンが苦悩の顔を浮かべると、クリークは面白い物でも見るかの様に、笑みを浮かべた

 

「ああ、美味かったよ」

 

そう言うと、ギンの右肩を掴んでいた左手に力を込めた

 

「ぎゃあああああ!!!」

 

ボキボキっと嫌な音が、ホール内に響き渡る

 

「生き返った気分だ……」

 

そう言って、するりと左手を離した

ギンが、苦悩の顔を浮かべたままドサリと床に落ちる

 

クリークはゆっくりとホール内を見渡した

そして、満足気ににやりと笑みを浮かべると

 

「いいレストランじゃねぇか……この船、貰うぜ」

 

カネルが、驚きのあまり口を開けて固まった

よろめきながら、サンジがゆっくりと身体を起こす

 

「そう、きたか……」

 

「……………」

 

レウリアは、ごくりと息を飲み、じっとクリークを睨みつけた

 

「言わんこっちゃねぇ!!これが、クリークなんだっ!!!この船を貰うだと!!?」

 

カネルが、ほらみろという感じに叫んだ

レストランの外では、逃げ出した客達が叫び声を上げながら次々と自身の船に乗り込んでいく

 

「……………っ…な、何の騒ぎだ…??」

 

先程、サンジに蹴り飛ばされたであろうパティが、頭を抱えながらよろよろと立ち上がった

どうやら、周りの騒がしさで目を覚ましたらしい

が、目の前に倒れていある筈であろうクリークが、復活している事に、驚愕の声を洩らす

 

「え………!!ええええ!!!!?」

 

クリークは、ぷしゅーと息を吐くとにやりと笑っ

 

「うちの船はボロボロになっちまってな、新しいのが欲しかったんだ。お前らには用が済んだらここを下りてもらうぜ」

 

 

「「「な、何ぃ――――!!?」」」

 

 

カネル達が、ぎょっとして声を上げる

 

首領ドン…クリーク……っ!約束が、違う……っ」

 

ギンが、外された右肩を押さえながら訴えるが、クリークは見向きもせずにくいっと後方を指さした

 

「今、船に息のある部下どもが約百人。空腹と重傷でくたばっている。あいつらの水と食料を百食分 まず、用意してもらおう、既に、餓死者も出ている……早急に出せ!!」

 

「この船を襲うと分かってる海賊を、おれ達の手で増やせっていうのか……!?断る!!!」

 

カネルがそう言い切るが……

クリークは、まるでカネルを馬鹿にする様に乾いた笑みを浮かべた

 

「断る……?勘違いしもらっちゃぁ困る。おれは別に注文してる訳じゃねぇ……」

 

瞬間、スぅ…と周りの空気が下がる

そして、今までとは比べものにもならないぐらいの怒声で

 

 

 

 

「命令しているんだ。誰もおれに逆らうな!!!」

 

 

 

 

ビクッと、周りに居たコック達が身体を震わせた

 

「サンジさん…すまねぇ……っ。おれは…こんなつもりじゃあ…・・」

 

ギンが悔しそうに、そう呟いた

 

「……………」

 

「サンジ!!てめぇは、なんて取り返しのつかねェ事してくれたんだっ!!!」

 

「……………」

 

パティがそう叫ぶが、サンジはギンをじっと見据えたまま、パティの声にはまったく反応しなかった

 

「サンジさん……?」

 

レウリアが、心配そうに声を掛ける

 

「……………」

 

サンジは一度だけ息を吐くと、突然、ゆらりと立ち上がった

 

「ちょっ……!サンジさん!!そんな身体で立ったら危ないわ……っ!!」

 

「大丈夫ですよ、リアさん。ご心配には及びません」

 

レウリアにそう返事をすると、サンジはそのまま奥に向かって歩き出した

 

「…………!おい!!何処へ行く、サンジ!!!」

 

突然歩き出したサンジに、パティが怒りの形相で叫びだす

サンジは、さも当然の事に用に

 

 

 

 

「厨房さ。後、百人分メシを用意しなくちゃならねぇ」

 

 

 

 

「「「「なにィ!!!!?」」」」

 

 

 

 

コック達が驚愕の声を上げる

無理もないだろう

このレストランを襲うと言っている海賊に、食事を与えるというのだ

誰しもが、サンジを信じられない者でも見る様に見た

 

「サンジさん……」

 

レウリアは、心配そうにそう呟く

 

サンジは、皆の反感を買う様な行動ばかりしている

このままでは……

 

「そう、それでいい」

 

クリークが、にやりと笑みを浮かべた

そんなクリークを、サンジはゆっくりと見据えた

 

その時だった

 

周りのコック達が一斉にサンジに向かってあらゆる武器を突きつけた

 

「てめぇはクリークの回し者かよ!サンジ!!」

 

「厨房に入らせる訳にはいかねぇ」

 

「お前のイカれた行動には、もう付き合いきれねぇ!!!」

 

皆が、それぞれ不満をぶちまける様に叫んだ

だが、サンジは穏やかだった

ゆっくりと目を閉じると、スッと抵抗する気は無いという風に両の手を広げた

 

「やれよ」

 

「!」

 

サンジのまさかの行動に、武器を突きつけていたコック達が息を飲む

それでも、サンジは穏やかだった

 

「おれを止めたきゃ、やれよ」

 

「……………!!」

 

コック達に、動揺が走る

てっきり、こう脅せば止まると思っていた

だが、サンジの反応は違った

止めたくば殺せと言う

そこまでは考えていなかったコック達は、躊躇した

 

ゆっくりとサンジがその目を開ける

 

「分かってるよ……相手は救いようのねぇ悪党だって事ぐらい。でも、おれにはそんな事とどうだっていい……どうだっていいんだ、そんな事は!!」

 

そう分かっているのだ

クリークがどんな卑劣なやつぐらい分かっている

だが―――

 

「食わせてその先どうなるかなんて……考えるのも面倒くせぇ……」

 

脳裏に浮かぶ、あの時の光景が

お金があっても、飢えを満たす事は出来なかった

 

湧き上がってくる空腹感と、絶望感、飢餓

 

“飢え”という物がどんなに辛く、苦しいのか……誰よりも分かっているつもりだ

 

「おれはコックだ。それ以上でも、それ以下でもねぇ。ハラ空かしている奴がいたら食わせてやる。……ただ、それだけだ」

 

『その度に思う……海のど真ん中にレストランであったらなぁってよ』

『この岩の島から生きて出られたら、おれの最後の生きがいに、そいつをブッ建てようと思ってた。今の海賊時代に、そんな店やれるのはおれくらいのもんだ』

『……よし!おれもそれ手伝うよ!!だから、まだ死ぬな!!!』

『ッハ…てめぇみてぇな貧弱なチビナスにゃムリだ……』

『強くだってなるさ!!!』

 

 

「コックってのは……それでいいんじゃねぇのか?」

 


誰しもが息を飲んだ

 

サンジの言っている事は正しい

それがコックの――――

 

ドゴォ!!!

 

 

「うっ……!!!」

 

 

その時だった、突然パティが後ろからサンジを殴り飛ばしたのだ

不意打ちを食らい、サンジがその場に倒れる

 

「パティ!?」

 

「おい、そいつを抑えとけ」

 

「サンジさん!!」

 

レウリアが、サンジの側に駆け寄るとキッとパティを睨んだ

 

「いきなり何するの!?いくらなんでも、今のは酷いわ!!」

 

すると、パティはフンッと鼻を鳴らすと

 

「シロートは口を挟まないでもらおうか。おい、サンジ。てめぇはおれが追い払った客に、たまに裏口でメシをやってるよな。おれとお前どっちが正しいとは言わねぇが、今回のこれはてめぇのミスだ!!!」

 

そう言い切ると、パティは階段の下部にある物置きの扉を開けた

 

「これ以上余計なマネをするな!れは、この店を守る!!!」

 

そう言って、中から布に包まれた“何か”を取り出した

 

「幸い敵はまだ1人。“首領ドン・クリーク”と言えど、このおれ達相手に何ができる!!ここは、日々海賊うごめく海上レストラン。どんな客だろうと、接客の準備は万端よ!!!」

 

「それは……」

 

それを見て、サンジが声を上げた

パティは、にやりと笑みを浮かべ

 

「ハラは一杯になったかい?クリークさんよ」

 

バサッと、その布を外す

そして、それを思いっきりクリークに照準を合わせて構えた

 

 

 

 

 

 

「食後に一つ、くろがねのデザートを食って行けっ!!!!食あたり砲弾ミートボールっ!!!!!」

 

 

 

 

 

 

   ドドン!!

 

 

 

けたたましい音と共に、鉄の弾がそのエビの形をしたバズーカ―から放たれた

 

「…………っ!!?」

 

突然の攻撃に、避ける暇もなく クリークは思いっきりそれを食らった

ボゴォ!!という爆破音と共に、辺り一面光の渦にのみ込まれる

 

首領ドンっ!!」

 

ギンが叫ぶが、煙で何も見えない

 

もろにあれを至近距離で食らったのだ

普通だったら生きてはいまい

 

「まいったな……扉、壊しちまった。また、オーナーにどやされるぜ」

 

「なに、店を守る為にだ。小せぇ被害さ」

 

パティの軽口に、カネルが問題ないという風に答える

 

「………クリークの船に残った連中は、どうするつもりだよ……」

 

サンジの問いに、パティが面白そうに笑みを浮かべる

 

「さぁな。船にバターでもぬって炒めるか」

 

そう言って笑っている時だった

 

 

 

 

 

「そいつァ、うめぇんだろうなヘボコック……!!」

 

 

 

 

 

ゆらりと、煙の向こうが揺れた

 

「!!バカな……っ!?」

 

誰しもが驚いた

ゆらりと、煙の中からそれは姿を現す

 

「クソマズイ、デザート出しやがって……最低のレストランだぜ!!」

 

そこには、黄金の鎧に包まれたクリークが無傷のまま立っていたのだ

その表情は怒りに満ちており、今までとは比べもののならない程のオーラを放っていた

 

瞬間、クリークの肩や腰など全身から火器銃口類が姿を現す

 

 

 

 

「うっとおしいわァ!!!!!!」

 

 

 

 

そう叫ぶと同時に、それらが一斉に放たれた

 

 

「うわああああああああ!!!!!」

 

「うそっ……!」

 

「体中から……っ」

 

「弾丸が……!!」

 

クリークからの猛攻を受け、コック達が次々と倒れていく

撃たれたコック達は、皆苦しそうに悶えた

 

「虫ケラどもが……っ!このおれに逆らうんじゃねぇ!!おれは最強なんだっ!!!!」

 

そう言って、ぐっと拳に力を入れる

 

「誰よりも強い鋼の腕!!誰よりも硬いウーツ鋼の体!!そして、全てを破壊するダイヤの拳!!全身に仕込んだあらゆる武器!!50隻大艦隊に五千人の兵力!!今まで全ての戦いに勝ってきた!!おれこそが、首領ドンと呼ばれるにふさわしい男!!」

 

 

 

 

「おれが食料を用意しろと言ったら、黙ってその通りにすればいいんだ!!!誰も、おれに逆らうなっ!!!!!」

 

 

 

 

 

その時だった

 

ドサ……

 

クリークの目の前に大きな袋がドサリと置かれた

 

「百食分ぐらいはあるだろう……さっさと船へ運んでやれ」

 

それは―――

 

「オーナー・ゼフ!!」

 

コック達のその言葉を聞いて、クリークが驚愕の顔をした

 

「……ゼ……ゼフだと……!!?」

 

ゼフは、一度だけ視線をクリークの向けると、そのまま反転して店の奥へ向かて歩き出した

 

「何て事を……っ!オーナー!!一体、どういうつもりですか!?」

 

「船に居る海賊達まで呼び起こしたら、この店は完全に乗っ取られちまうんですよ!?」

 

コック達が、必死にそう言い募る

だがゼフは穏やかだった

 

そのままゆっくりと歩き続ける

 

「……その、戦意が“あれば”の話だ……」

 

「え?」

 

ゆっくりとゼフが足を止めて振り返った

 

 

 

 

 

「なァ、“偉大なる航路グランドライン”の落ち武者・・・・よ」

 

 

 

 

 

誰しもが、ゼフの言葉に耳を疑った

 

「ま…まさか、“首領ドン・クリーク”が落ち武者…!?」

 

まるで、信じられないものでも見る様に視線がクリークに集中する

 

「この東の海イーストブルーの覇者でも…」

 

「50隻の“海賊艦隊”でも……」

 

「渡れなかったのか!!?“偉大なる航路グランドライン”!!!?」

 

ギンが、何かに覚える様にガタガタと震えだす

 

やっぱり……

 

レウリアは、ごくりと息を飲んだ

 

クリークが、“偉大なる航路グランドライン”から逃げ帰ったという噂は耳にしていた

だが、信憑性に欠けたので、判断出来なかった

仮にも、クリークは東の海イーストブルーの覇者で、50隻の海賊艦隊の首領ドンなのだ

その事実は消えない

それが、たった7日で壊滅したというのだ

 

 

だが、ゼフの話とクリークの反応・ガレオン船の壊れ具合を見る限り……

 

本当なんだわ……

 

クリークですら、渡れなかった “偉大なる航路グランドライン

 

 

クリークは、信じられないものでも見る様に大きく目を見開いた

 

 

 

    「貴様は……“赫足のゼフ”……っ!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

おや……アクションまで入りませんでしたねー(笑)

しかし、夢主があまり動いていないですな(-_-;)

や~でも、まぁ、仕方ない

ここ辺は、ルフィですら傍観状態ですからねー

動かし様がないんです

 

そんな訳で、クリーク暴れだしましたww

一体、いつになったらクリークと戦えるんですかね?

この後、ミホークだしなぁ~

 

2011/11/05