MARIKA

-Blue rose and Eternal vow-

 

  Act. Ⅰ 海上レストラン 29

 

 

チリリリリリン

  チリリリリリン

 

「メシだァ―――――!野郎どもォ―――――っ!!!」

 

まかないの時間を告げる鐘が、バラティエに鳴り響いた

それと同時に、コック達がバラティエ2階の店員食堂にぞろぞろとやってくる

 

そこには、とてもまかないとは思えない様な豪華な料理がところせましと並んでいた

 

「おい、今日の当番は誰だ?」

 

コックの1人がそう尋ねる

すると、パティとカルネが待ってました!とばかりに、胸を張り

 

「おれ様と!!」

 

「あ、おれ様よ!!」

 

その言葉に思わず

 

「なんだ、極道コンビかよ。大した味じゃねェなどうせ」

 

そう悪態付きながら、むしゃむしゃと食べ始める

その反応に思わずパティが

 

「黙って食え!!このアホのボイル共!!」

 

その時だった

ガチャリと食堂のドアが開き、サンジとレウリア・ルフィ達が入って来た

そして辺りを見渡し、少しだけ首を傾げる

 

椅子は満席で座る場所など空いていなかった

変な話だ

いつもなら空いているのに、今日は何故か空いていない

 

「おい…おれ達の席は?」

 

「めしはー?」

 

サンジとルフィがそう問うが、コック達の反応は返ってこなかった

それどころか

 

「おめェらの椅子はねェよ」

 

「へっへっへ、床で食え床で!!」

 

「椅子がねェ……?そんな事あるかよ。レストランだぜ?ここは。大体、おめェら、おれ等はともかく、リアさんにまで床で食えって言うのか!?」

 

「サ、サンジさん、私は良いから!」

 

今にも、コック達に掴みかかりそうになるサンジを、レウリアは慌てて止めに入る

サンジはチッと舌打ちをすると、傍にあったテーブルクロスを引っ張り出すと、レウリアの座る場所に敷いた

 

「すみません、床で」

 

そう言って、自分とレウリアの料理を運んでくる

ルフィも、自分の飯を運んできながら

 

「なんか変だな…あいつら」

 

「あー?いつも変だよあいつらは」

 

その時だった

スープを一飲みしたパティが突然ガシャンとスプーンを置いて叫んだ

 

「おい!今朝のスープの仕込みは誰がやったんだ!!?」

 

その言葉に、サンジが嬉しそうの声を上げた

 

「……おい!おれだ、おれ!!うめェだろう!?今日の特別に上手く作った――――」

 

その瞬間だった

突然、パティがスープの入った皿を思いっきり床に叩きつけたのだ

ガシャン!!という音と共に皿が砕け散る

 

「こんなクソマズイもん飲めねェよ!!ブタのエサかこりゃぁ!!!?」

 

「…………!!?」

 

サンジが驚愕の表情になる

奥歯をギリッと噛み締め、ギロリとパティを睨んだ

 

「……………」

 

ルフィはむしゃむしゃと食べならがその様子をじっと見ていた

いつもなら止めに入るレウリアさえも、何も言わない

 

ゆらりとサンジが立ち上がると、一歩パティに近づいた

 

「オイ…人間の食べ物はお口に合わなかったかい。クソダヌキ」

 

「はん…ここまでマズイと芸術だな。吐き気がするぜ」

 

「!」

 

瞬間、サンジの表情が益々険しくなる

 

「悪ィが、今日のは自信作だ。てめェの舌がどうにか……」

 

その時だった、こんどはカルネが突然

 

「ウエッ、まずっ!オエッ!!」

 

そう叫びながら、ぺっぺとスープを吐き出した

瞬間

 

「飲めねェ、なんだこのスープ」

 

「飲めねェよ、このスープは、ぺっぺ!」

 

「最低だ、誰か水寄越せ!」

 

コック達皆が口をそろえた様に、そう言うなりガシャンと次々とスプーンを置いて行く

 

「………………っ」

 

わなわなとサンジが怒りで震えだす

 

 

 

「てめェら……一体、何のマネだ!!!!」

 

 

 

たまらずそう叫んだ時だった

ついに堪忍袋の緒が切れ方の様に、パティ達が口々に

 

「てめェなんざ、所詮 ”エセ副料理長“ だ、ただの古カブよ!」

 

「もう暴力で解決されるのは、ウンザリだぜ」

 

「マズイもんはマズイと言わせてもらう」

 

「何だと……っ」

 

ギリッと、サンジが歯を噛み締めた時だった

すず…と、ゼフが、皆がマズイマズイというスープをずっと飲み続けた

 

「おれ達は、海のコックだ。スープの一滴すら無駄にしちゃならん」

 

そう言って、最後までスープを飲み干した途端―――――

ガシャーン!!

その皿を床に叩きつけたのだ

 

「!?」

 

サンジが信じられないものを見る様な目でゼフを見る

 

「オーナー!!!」

 

「ジジイ……っ!!」

 

そう―――ゼフまでもが、皿を割ったのだ

あのゼフが……

 

レウリアは信じられないものを見る様に、ゼフとサンジ、そしてスープを見た

彼等が言う様なマズイスープ

レウリアはスプーンを持つと、一口スープを口に運んだ

 

「…………! これって――――……」

 

その瞬間だった

ゼフの怒声が食堂に響いた

 

「オイ何だ、このヘドロみてェなクソまずいスープは!!! こんなもん、客に出されちゃ店が潰れちまうぜ!!!」

 

流石に堪忍袋の緒が切れたのか、サンジがゼフに掴みかかった

 

「フザけんな、クソジジイ!!!てめェの作ったスープとこれがどう違うってんだよ!!言ってみろ!!!」

 

「おれの作ったモンと……? うぬぼれんなァ!!!」

 

瞬間、バキャッと音が下かと思うと、ゼフが思いっきりサンジを殴り飛ばした

蹴らずに、殴ったのだ……拳で

 

その衝撃は、他のコック達にも伝わったのか

驚いた様に、声を荒げた

 

「オーナーが、殴った……!?」

 

「蹴らずに……殴った……?」

 

殴り飛ばされたサンジがギリッとゼフを睨みつける

だが、ゼフは鼻をフンッと鳴らすと

 

「てめェが、おれに料理を語るのは十億年早ェぞ、チビナス!!! おれァ、世界の海で料理してきた男だぜ!!」

 

「………………っ!!!」

 

サンジがギリッとゼフを睨みつける

さが、ゼフもサンジを睨んだまま一歩もひかなかった

 

認めさせたかった

この男に認めて欲しかった

 

なのに―――――

 

「……………っつ、クソ!!!」

 

そう叫ぶと、サンジは食堂を飛び出して行った

 

クシジジイ……

おれは……おれは……

 

「もう、チビナスじゃねェ――――――――!!!!!」

 

そう叫びながら走り去っていくサンジを、ゼフやコック達は窓の中から無言で見ていた

 

その時だった

ずずっと、スープを皿から飲みほしたルフィが、更に追加でスープを注ぎながら

 

「……このスープ、メチャクチャうめェのにな…はは!!」

 

そう言って、お代りと言わんばかりに更に飲み干した皿をレウリアに指す出す

レウリアは、小さく息を吐いた後、スープを注ぎに立ち上がった

 

「それで、下手な芝居の真相はなんなのですか? オーナーさん」

 

「……芝居?」

 

ルフィが不思議そうに首を傾げる

どうやら、ルフィは全然気付いていなかったのか…

 

だが、レウリアには一口飲んで直ぐに分かった

 

「そのスープが自信作というのはよく分かってる。 サンジの料理の腕は、ここにいる全員が認めてる」

 

「マズかねェよ」

 

「ああ、上出来だよこのスープは」

 

「あ―恐かったァーあいつ、マジで切れるんだもんな、あいつ」

 

「そうそう」

 

 

 

 

 

 

 

サンジは、小さく息を吐きながら食堂のドアの前に戻ってきた

色々考えた、

考えたが、やはり自分の居場所はここだ

もう二度と「マズイ」なんてゼフの口から言わせない

 

一瞬、ドアノブに掛けた手が躊躇いを色を出す

開ければまた非難轟々かもしれない

でも―――――

 

その時だった

 

「こうでもしねェと。聞かねェのさあのバカは……なァ、小僧…」

 

ゼフの声だ

何の話だ……?

 

サンジが耳を澄ませた時だった

 

「お前、船にコックが欲しいって言ったよな? 頼みごとって訳でもねェんだが、あのチビナスを一緒に連れて行ってやってくれねェか?」

 

「!」

 

「………“偉大な航路(グランドライン)”はよ…、あいつの夢なんだ」

 

「……………!」

 

まさかのゼフの言葉に、サンジが驚いた様に目を見開く

 

まさか………

 

「まったく、オーナーも面倒くせェ事さしてくれるよなァ」

 

「おめェの下手な演技でバレねェか、おれはヒヤヒヤだったぜ」

 

「がっはっはっは!おめェこそ、ド下手な演技で!!」

 

パティとカルネの声まで聴こえてくる

 

すると、コック達が我先にという風に

 

「おれ、スープお代り!!」

 

「おれも!!」

 

「おれもだ……!!」

 

中から聴こえてくる皆の声

サンジの事を考えてくれていたゼフの言葉

 

サンジは、ずるずるとその場にしゃがみ込んだ

煙草に火を点けようとするが、上手く付かない

滲み出る涙を隠す様に、そのままサンジは膝を抱える様に突っ伏した

 

「………丸聞こえだよ…クソ野郎ども………っ!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「どうなんだ小僧」

 

ゼフの言葉に、ルフィが一言

 

 

 

 

 

「いやだ」

 

 

 

 

 

「何――――――――――っ!!!!?」

 

下手な芝居まで打ったのに、まさかのルフィの反応にコック達全員がずどーんとショックを受ける

その反応に、レウリアがくすくすと笑い出した

 

「どういう事だ、小僧!貴様は船にコックが欲しんじゃなかったのか!?それとも、あの野郎じゃ不服だっていうのか!?」

 

ゼフの言葉に、ルフィはもしゃもしゃと飯を食べながら

 

「不服じゃねェよ。おれだって、あいつに一緒に来てほしいけどさ、あいつはここでコックを続けたいって言ってるんだ。おっさん達に言われても、おれは連れてけねェよ」

 

「ごめんなさい、オーナーさん、ルフィも頑固だから……きっとサンジさんの口から聴くまでは納得しないと思うわ」

 

レウリアが申し訳なさそうにそう言う

それに同意する様に、ルフィもうんうんと頷き

 

「わけだ。おかわりー」

 

と、もしゃもしゃと平らげた皿をレウリアに差し出す

レウリアは、小さく息を吐くとルフィの料理を取りにテーブルに向かった

 

「……まァ、当然の話だな。だが、あのヒネくれたクソガキが素直に行くと言えるかどうか……」

 

「言える訳ないっすよ、あいつは頑なにアホだから」

 

そういって、だはははははとパティ達が笑い出す

その先でルフィが「おかわりー」と何度目か分からないお代りに、レウリアの「いい加減にしなさい!!」という怒声が響いた

 

サンジはそんな中のやり取りをドアの外で聴いていた

ふーと紫煙を吐きながら、遠くの空を見る

 

あの時

ルフィを助けに海に入った時

確かに見たと思った“オールブルー”の幻を

 

 

おれの夢………

 

 

その時だった

 

 

 

「だばだばだばだばだばだばだばだばあばあああああ!!!!」

 

「ん?」

 

何処からともなく、奇声が聴こえてきたかと思うと

起きの方から何かが、ドバババババババとこちらへ向かてやってくるじゃないか

 

「は?」

 

 

「だば―――――――ああああああああああああ!!!」

 

ザバーン!!!という音と共にそれは空高く舞い上がるとそのまま―――――

 

 

 

ドゴォォォォォォーン!!!!

 

 

 

「うわああああっ!!!」

 

サンジのいる所目がけて突っ込んできたかと思うと、そのままドアをぶち破り食堂へ倒れ込んだのだ

 

「サンジ!?」

 

「なんだこいつは、魚人か!?」

 

サンジが、よろよろと後退りながら、下敷きになっていた所から這い出てくる

 

「魚人等からはるばるうちの飯を食いに……?」

 

パティの阿保な突っ込みに、思わずコックが

 

「バカ、こりゃぁ、人間とパンサメだ」

 

突然騒ぎ出したドア口に、ルフィとレウリアは顔を見合わせた

そして、コック達の間をぬって前へ出るとそこに居たのは―――――

 

「ん?何だ……?あれ?ヨサクじゃねェか!」

 

「ヨサクさん?何してるの……?」

 

何故、パンサメに食われているのだろうか…

謎であるが、それは紛れもなくナミを連れ戻しにいたヨサクだった

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

あれ…意外と文字食ったww

次回こそ、バラティエ編終わりですよー

 

2013/12/05