MARIKA

-Blue rose and Eternal vow-

 

  Act. Ⅰ 海上レストラン 28

 

 

 

ザザーン……

 

海は穏やかだった…

数時間前まで、あんな激戦が繰り広げられていたとは思えないぐらい穏やかだった

だが、その激戦の激しさは、このバラティエの受けた衝撃を見るより明らかだった

 

ボロボロになって割れた“ヒレ”

バラティエの周辺に散らばる、ガレオン船の破片の数々

そして、身体に出来た無数の傷の数々

 

少し前に目を覚ましたレウリアは、ベットから起きたまま、ずっと窓の外を見ていた

どうやらあの後、出血多量で気を失ってしまっていたらしい

 

隣りを見ると、ルフィが呑気に大口を開いたまま爆睡している

無理もないと思った

 

あのクリークに勝ったのだ

あれだけ傷付き、撃たれても、クリークを打ち負かしたのは事実で

よっぽど疲れたのだろう

 

ルフィは疲れがMAXになると、いつも突然爆睡しだす

それで回復するのだから、ある意味どういう身体の構造をしているのか、謎の塊である

 

呑気に、ぐがーぐがーと爆睡するルフィを見てレウリアはくすっと笑みを浮かべた

瞬間、傷を負ったわき腹がずきりと痛んだ

見ると、いつの間にか包帯が巻かれ手当てしてあった

 

一体誰が…というのも浮かんだが…

ここは、素直感謝すべきなのかもしれない

 

海で相当の血を流した

もう、後半は気力で保っている様な状態だった

それでも、血を輸血した訳でもないので、頭が貧血でくらくらする

だが、先程に比べれば幾分かましだった

 

レウリアは、ベットからよろりと立ち上がると、窓際に寄り掛かる様に身体を預けた

 

ザザーン…と、静かな波の音が聴こえてくる

 

終わったのね……

 

あの戦いも終わったのだ

レウリアは、ふと、何も無い空間に手を伸ばした

 

「ネフェルティ」

 

そう口にした途端だった

何も無い所からカードが一枚落ちてくる

それをキッチすると、裏面を見た

 

最終更新は、今日の日付では無かった

 

「……やっぱり、引き渡していないもの…入らないわよね」

 

折角の、1700万ベリー

逃してしまったのは大きかったかもしれない

 

「一応、報告だけいれようかしら……」

 

当分再起不能レベルまで負かしたのだ

もしかしたら、半分ぐらいは入るかもしれない

一銭も入らないよりはマシだろう

 

そう思ったレウリアは、ネフェルティに伝言を頼む様に言葉を綴った

 

「つるさんに宜しくね」

 

それだけ言うと、ネフェルティは返事をする様にくるくると回ると何処かへ飛んで行った

 

それから小さく息を吐と、近くにあった椅子に腰かけた

流石に、貧血で長時間立っているのは辛い……

 

ルフィは相変わらず寝ているし…

そろそろ、自分の身の振り方について考えなくてはならない

 

ここに残ったのは、ルフィ達の仲間では無かったので、一緒に行くのはおかしいと思ったからだ

それに、ルフィも無茶をするんじゃないかと心配だった

 

そう言う意味では、正しかったのかよく分からない

実際、ルフィが勝つと信じていたし、負けるなど思いもしなかた

そして、事実ルフィは勝った

 

もう、ここのいる理由は無いのだ

でも――――……

 

「ルフィも“偉大なる航路(グランドライン)”目指しているのだったわね……」

 

偉大なる航路(グランドライン)

そこに、エースがいるのは間違いなかった

 

あの男女のジェシーとかいう奴の話では、何かしている様ではあるが

死んでいる筈はない

エースは約束してくれた「死なない」と

そして、いつか両手いっぱいの蒼い花をくれるのだと

 

だから、死んだなんて事は絶対にあり得ない 信じない

 

その時だった

不意に、ガチャリと部屋のドアが開いたかと思うと、サンジが入って来た

 

「あ、リアさん」

 

レウリアが起きているとは思わなかったのだろう、サンジはレウリアを見るなりガシャンと持って来た水差しベットのサイドテーブルに置くと、駆け寄ってきた

 

「起きて大丈夫なんですか?」

 

サンジの言葉に、レウリアが小さくう頷く

 

「ええ…少し頭がくらくらするけれど平気よ。……手当、してくれてありがとう」

 

レウリアの言葉に、サンジが「いえ……」とだけ答えた

その様子が少しおかしくて、レウリアが首を傾げた

 

「サンジさん?どうかしたの?」

 

その瞬間、突然サンジがガバッと頭を下げた

 

「すみません…っ!おれがいながら、レディにそんな大怪我させてしまうなんて……っ」

 

言われて、「ああ……」とレウリアは痛々しく巻かれた包帯を見ながら、何でもない事の様に微笑んだ

 

「気にしないで、自分でした事だもの…それに怪我ならサンジさんやルフィの方が酷いでしょう。怪我…動いて平気なの?」

 

レウリアの言葉に、サンジはうるうると涙を流しながら

 

「リアさんが、おれの心配をしてくれるなんて……っ、もうこれは愛……っ 「違います」

 

サンジの言葉を一刀両断にすると、レウリアは小さく息を吐いた

 

「普通に心配するでしょう? アバラだって何本かいってるでしょうし……普通ならそう動けないわよ?」

 

すると、サンジはあっけらかんとした様に

 

「ああ、平気ですよ。あの程度、うちのクソジジイの蹴りに比べたら屁でもないですよ!」

 

そう言ってけらけらと笑ってみせるが――――瞬間、「いてっ」と声を洩らし胸を押さえた

それを見たレウリアが、慌てて駆け寄り

 

「ほら! もう、無理しないで!!」

 

そう言って、サンジに手を伸ばした時だった

不意に、その手を掴まれたかと思うと、ぐいっと引き寄せられた

 

「ちょっ……」

 

「リアさん、あいつと行くんですか?」

 

「え………」

 

一瞬、何の事を問われているのか分からなかった

だが、次の瞬間ルフィの事だと気付き、レウリアは困った様に苦笑いを浮かべた

 

「どうしようかと迷っている所。 ルフィの仲間達には私が元海軍とかどうでもいいみたいだし…目的地も一緒だしね……。 そういうサンジさんは?」

 

「……おれは―――――」

 

その時だった

 

 

 

 

「帽子っ!!!!」

 

 

 

 

突然、後ろからの叫び声と共に、ルフィががばっと起き上がった

そして慌てふためく様に

 

「帽子!おれの麦わら帽子!!!」

 

ルフィのいつもの反応に、レウリアがぷっと吹き出す

サンジは、半ば呆れながらルフィの寝ているベットの横を指さした

 

「あるだろ、そこに」

 

「あ…あった」

 

言われてルフィが、帽子の存在に気付きほっと胸を撫で下ろす

そして、大事そうにそれを抱えると、いつもの様に帽子を被った

 

「目ェ、覚めたのかよ」

 

「ルフィ!良かった、目が覚めたのね!!」

 

先程までの雰囲気は見事なまでにぶち壊され、レウリアがサンジの手をサッと離れるとルフィに駆け寄った

 

「大丈夫?痛い所とかない?」

 

レウリアの言葉に、ルフィが「おお!」と声を洩らす

 

「リア!お前も無事だったのか!!よかった~~~」

 

「いや、それは私の台詞なんですけれど……」

 

明らかに、レウリアより重症のルフィに心配されるとは…

なんだか、心外だ

 

と、その時だった

今、気付いたとでもいう風に、ルフィが辺りをきょろきょろと見回した

 

「あれ?あいつらは?」

 

「帰った。お前のおかげだ」

 

「おれの?」

 

事態の掴めないルフィは、それはもう不思議そうに首を傾げた

だが、サンジは気にした様子もなく

 

「“偉大なる航路(グランドライン)”でまた会おうてよ。ギンが言ってたぜ」

 

「へ―――ギンがが……お前にか?

 

 

 

「てめェにだよ!!!」

 

 

 

そのやり取りに、思わずぷっとレウリアが吹き出した

 

「そうね、サンジさんにも当てたメッセージだったかもしれないわね」

 

「え?いや、それは―――――」

 

そこまで言い掛けて、サンジがふっと笑う

 

「そうだと、嬉しいですけどね」

 

それだけ言うと、そのまま窓からベランダの方へ歩いて行った

と、その時だったルフィは思い出した様に

 

「そういやァ、おれ あいつらおっぱらったんだから今日で雑用終わりだよなァ!!」

 

「おめでとさん」

 

サンジの言葉に、ルフィがニッと笑みを浮かべた

 

「ところでお前……」

 

「おれは行かねェぞ。海賊にはならねェ」

 

サンジの即答とも言えるその言葉に、ルフィががくっとうな垂れる

だが、サンジには目標とも呼べるものがあった

 

「ここでコックを続けるよ。クソジジイにおれの腕を認めさせるまで……」

 

「サンジさん……」

 

レウリアが、サンジを見る

サンジの中でゼフの存在は大きく、それは何にも代えられない――――

そう思わせる言葉だった

 

ルフィは、その言葉に、静か息を吐いた

そして

 

「分かった、諦める」

 

静かにそう言った

が………

 

 

「手が諦めてねェっ!!!」

 

 

ルフィの手が、サンジの衿足首をがっちり掴んで引っ張っていた

 

それを見たレウリアは、呆れた様に息を吐いた

そして、ぽかっとルフィを殴りながら

 

「もう、止めなさい!」

 

「だってよォ~」

 

「だっても何もありません!」

 

それだけ言うと、レウリアはスッと立ち上がりサンジの側にやって来た

 

「サンジさんは行かないの?“偉大なる航路(グランドライン)”」

 

「それは―――――」

 

一瞬、サンジが息を飲む

しかしサンジは、ふーと紫煙を吹かすと遠くを見る様に

 

「今回みたいな事が、あったんだ。尚更離れられないですよ。どいつもこいつも頼りにならねェ奴らばかりなんで」

 

「……本当に?」

 

本気でそう思っているのだろうか

レウリアには、理由をそう付けているだけにしか思えなかった

 

「でも、おれもいつかは行こうと思ってます。“偉大なる航路(グランドライン)”に」

 

その言葉に反応したのはレウリアではなくルフィだった

 

嬉しそうに満面の笑みを浮かべると、手をぐい~んと伸ばしてきて、サンジとレウリアの間に割って入る様に飛んでくる

 

「じゃぁ、今行こう!!」

 

だが、サンジは冷静だった

 

「まだ、時期じゃねェんだよ」

 

それだけ言うと、海を眺めた

海は静かだった

ザザーンと波の音だけが聴こえてくる

 

その時だった、ふわっと何か風が吹いたかと思うと、レウリアの回りをくるくると何かが回った

レウリアがそれに気付き、「ネフェルティ」と声を掛けた時だった

 

シャララン…という音と共に小さな人型の羽根の生えた生物が姿を現したのだ

 

「「な……っ!!」」

 

驚いたのは、サンジとルフィだった

ルフィなど「羽虫だ!妖精か!?」と大はしゃぎだ

 

「な、なんですかそれ!?」

 

流石のサンジにも驚きを隠せなかたのか、それを指さし震えだす

だが、レウリアは何でもない事との様に

 

「ネフェルティよ」

 

ネフェルティと呼ばれた、それは二人に小さくお辞儀をするとにっこりと微笑んだ

 

「スゲー!!!! 小人!? 妖精!? 何だ、お前!!」

 

大興奮のルフィがネフェルティをちょんちょんとつつきあげる

それに驚いたネフェルティが慌ててレウリアの後ろに隠れた

 

「もう、苛めないで!ネフェルティは風の精霊よ。妖精でも小人でもないわ」

 

「精霊!?そんなものが存在するんですか!?」

 

まるでお伽噺だ

 

「いつもは姿を消しているだけで、常に私の側に居るわよ」

 

「はーすげーなお前、妖精従えてんのか!?」

 

ルフィの言葉に、レウリアがむっとする

 

「従えてません!正しい契約の元、ネフェルティは傍に居るのよ! その辺の下っ端扱いしないで!! 後、妖精じゃなくて、精霊!」

 

レウリアの剣幕に、ルフィは気にした様子もなく足をぱんぱんとさせながら

 

「分かった! 仲間なんだな!!」

 

と言いながら、二カッと笑った

 

「いや、それも違うけれど……」

 

どういったものか、どうも調子が狂う

その時だった、サンジがハッとした様に

 

「もしかして、リアさんってあの幻の精霊操士とかうんじゃぁ――――」

 

「……幻かどうかは知らないけれど、そうね。 数は少ないわ」

 

「精霊操士?なんだそれ、うまいのか?」

 

話に付いていけないルフィは鼻をほじくりながら首を傾げた

ルフィのその言葉に、サンジが信じられないものを見る様に

 

「ばっか、知らねェのかよ! 精霊操士つったら、その希少な血を持つ者しかなれなくて、なるのはすげェ難しいんだぜ? しかも、精霊と契約を交わしその力を借りるんだけどよ、この契約がまだ面倒で―――」

 

「どう面倒なんだ?」

 

ルフィのその言葉に、レウリアはうーんと少しだけ首を傾げた

 

「まずは、精霊に気に入られる事と認めさせる事が重要ね。 精霊の気にいる色って言うのがあってね、その色を宿していると気に入られやすいわ、後は――――」

 

「リアさんは今、何体の精霊と契約してるんですか?」

 

気になるのだろう

サンジが突然、そう問うてきた

 

すると、レウリアは一度だけそのアイスブルーの瞳を瞬かせた後

 

本契約(・・・)は、この子(風の精霊)だけよ。 中々大きな力を持った精霊の“精霊文書(グリモワール)”が見つからなくって―――……」

 

「“精霊文書(グリモワール)”?」

 

「そう、精霊と契約する紋章(シジル)が記された文書の事。 これがないと契約出来ないの。 特に、“大精霊義書(グラン・グリモワール)“となるともう“偉大なる航路(グランドライン)”しか考えられないわね

 

偉大なる航路(グランドライン)

 

恐らく、他の精霊の文書もそこにある可能性が高い

 

「じゃぁ、リアさんはその“精霊文書(グリモワール)”を集める為に、“偉大なる航路(グランドライン)”に――――?」

 

「そう、エースの件もあるけれど、それも目的の一つよ。特に、“大精霊義書(グラン・グリモワール)”の精霊との契約は精霊操士の最終目標の一つでもあるもの」

 

その言葉に、ルフィがぱぁっと嬉しそうに笑みを浮かべた

 

「じゃぁ、リアは仲間になってくれるんだな!!」

 

だが、その言葉に返って来たのは――――

 

「はっきり言うと、気が進まないし嫌です」

 

「ええ――――――」

 

瞬間、ルフィが不満そうに声を上げる

その様子が可笑しくて、レウリアはくすっと笑みを浮かべた

 

「なんだけれど、ルフィと一緒の方が退屈しなさそうだし、エースも見つかりそうだし……一緒に行ってもいいかなって」

 

「本当か!?」

 

レウリアの言葉に、ルフィが歓喜の声を上げる

 

「ええ。 皆、私が元海軍なの気にしないみたいだし。 それなら一緒の方が目的も達成出来そうでしょう? 第一、ルフィは無茶ばかりするから見てないと気が気じゃないもの」

 

「ニシシシシ、そっか! リアは一緒に来てくれるのか!! よーし、お前も行こう!!」

 

と、見事なまでにサンジに矛先が向いたのは言うまでもない

だが、サンジは一刀両断する様に、

 

「おれは行かねェつってんだろうが」

 

と、言い切った

その反応に、ルフィがむぅ…と頬を膨らます

 

その時だった

突然、サンジは嬉しそうな顔をして

 

「なぁ、2人とも、“オールブルー“って知ってるか?」

 

「“オールブルー”?」

 

「いや?」

 

聞いた事のない、言葉だった

だが、2人のその反応にサンジは逆に嬉しそうに顔を綻ばせ

 

「何だ、知らねェのかよ。奇跡の海の話さ!その海にはよ…“東の海(イーストブルー)” “西の海(ウエストブルー)” “南の海(サウスブルー)” “北の海(ノースブルー)”全世界の海の魚が住んでるんだ!!」

 

「……凄い、そんな場所があるの?」

 

「ああ、おれたちコックには夢の様な楽園さ!そんな所が“偉大なる航路(グランドライン)”に―――――」

 

嬉しそうに夢の話を語るサンジを、ゼフは3階のオーナー室のベランダから見ていた

サンジのその顔は、今までにない位嬉しそうな顔だった

 

その様子を見ていたゼフは、ふっと笑みを浮かべると

 

「嬉しそうな顔しやがって……バカが」

 

あんな嬉しそうな顔のサンジを見たのはどのくらい前だろうか

それぐらい、ゼフにとっては喜ばしい事だった

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

夢主は、付いて行くと決めたみたいですなー

多分、色々言い訳がましく目的言ってますけど、本音は心配だからかな?

 

後、能力者じゃない事が判明しましたw

はい、精霊操士という精霊と契約し操る能力の事で、誰でもなれる訳じゃないんです

それは、また後日

 

さて、サンジはどうするかな-?

 

2013/12/05