MARIKA

-Blue rose and Eternal vow-

 

  Act. Ⅰ 海上レストラン 25

 

 

 

クリークがもち出した、大武器“大戦槍”

その威力は、凄まじかった

 

あの巨大な槍をクリークはいとも軽々とあやつり、ルフィを攻撃していく

ルフィも、その攻撃をなんとか避けている…という状況だった

 

海賊達は、息を飲んだ

 

「……しかし、何て怪力だ……!!肩当て2つ合わせて1tもあるあの超重量の大槍を軽く振り回すとは……!!」

 

「あの怪力こそ、首領(ドン)の最強たる由縁なんだ……!!」

 

両肩合わせて1t

その大重量は、クリークにとっては毛ほども重さもないと言うのだろうか

 

その時だった

クリークの攻撃を避けていたルフィが、割れたガレオン船の端に追いやられた

 

「うわっとっとっとっ!!」

 

足に力が入らず、今にも海に落ちそうになる

クリークはその瞬間を見逃さなかった

 

 

「むんっ!!」

 

 

と、渾身の一撃を放った

 

「わっと!」

 

ルフィが溜まらず高く上空にジャンプする――――が、それはクリークの罠だった

にやりと笑みを浮かべると

 

 

 

 

 

「死ねェ!!!!」

 

 

 

 

 

 

クリークが、ブオオオン!!と、今までで一番の力で撃ち込んできた

ルフィは、避けようとしたが、空中にいる為避けられない

 

だれもが食らった――――そう思った

が――――――………

 

起きる筈の爆発は何故か起きなかった

それどころか……

 

「ふーあぶねェ……」

 

ルフィはなんと、大戦槍にサルの様にしがみ付いていたのだった

それを見た瞬間、わなわなとクリークが今までにない位怒りを露わにした

 

「……………っ!!!」

 

眼は血走り、歯はギリリと音を立てていた

今までここまで自分をコケにしてきた野郎がいただろうか

いや、いない

 

それぐらい、この男はクリークの怒りを駆り立てた

 

クリークは、そのまま大戦槍を振り上げると――――

 

「…………この………っ」

 

「ん?」

 

 

 

 

 

 

「イモ虫野郎がァ!!!!!」

 

 

 

 

 

 

力の限り、大戦槍をガレオン船に振り下ろした

ドオオン!!!とけたたましい音と共に、槍の先が爆発する

 

ルフィが、「うわああ」と叫びながら、ぱっと大戦槍から手を離して飛び上がった

が、それを狙っていたかのようにクリークはそのまま大戦槍を引くと、今度はその空中のルフィ目がけて突き出したのだ

 

瞬間、ルフィが大戦槍の槍の部分を拳で挟む様に受け止めた

ガキン!!と音がすると同時に、にやりとクリークが笑うのが見えた

刹那

ドカアアン!!!という音と共に、大戦槍の矛先が大爆発を起こした

 

「雑用ォ!!!」

 

「ルフィ!!!」

 

サンジとレウリアの声が重なる

 

爆発をもろに受けたルフィは真っ黒焦げになりながら、黒い煙を吐きながらその場に落下した

それを見たクリークがにやりと笑みを浮かべる

 

「ルフィ!!」

 

溜まらず、レウリアがルフィの側に行こうとした時だった

 

「行かせないわよ」

 

突然横から声が聴こえたかと思うと、ブンッという音と共に鎖鎌が迫って来た

 

「……………っ」

 

レウリアは咄嗟にそれを避けると、ハッと前を見た

いつの間に来たのか、ジェシーがバラティエの前に姿を現していた

 

「アンタの相手は、アタシでしょ?あんな、カナヅチ小僧の心配してる場合かしら・……ね!!」

 

そう叫ぶな否や、再び鎖鎌が迫って来た

 

「ネフェルティ!!」

 

避けるより弾いたほうが早い

 

そう判断したのだが、にやりとジェシーが笑みを浮かべるのが見えた

 

瞬間、ハッとして弾かずに上空へ飛び上がりそれを避ける

するとその避けた鎖鎌は、ドガアン!!というけたたましい音と共に、ヒレにめり込んだのだ

 

「なっ……!?」

 

それを見たサンジはぎょっとした

普通のさっきまでの鎖鎌とは違う

それは、何十倍もの重さを持っていたのだ

 

しかも、攻撃はそれだけでは終わらなかった

 

上空に避けたレウリアに向かって、もう一つ鎖鎌を取り出すとそれを一気に振り上げたのだ

 

避けられない――――

 

誰しもがそう思った

空中ではバランスは取れない

先程のルフィと同じパターンだ

 

あの何十倍もの重さの鎖鎌がレウリアに当たる――――そう思った瞬間、

 

「ネフェルティ!!」

 

レウリアの声が響いたと思った刹那、それは起きた

突然、彼女の周りに風の幕が出来たのだ

 

ガキャ!!ギギギギギギギ!!!!

 

と、音を立てて鎖鎌が風の膜に阻まれる

だが―――――………

 

「そらもう一丁!!!」

 

もう一本の鎖鎌もそこへ攻撃を仕掛けてきた

 

「くっ………!

 

流石に、重い鎖鎌の2重の攻撃には耐えられなかったのか

風の幕が、はじけ飛ぶと同時に2振りの鎖鎌がレウリアめがけて撃ち放たれた

 

「――――――っ!!!」

 

 

ドカアアアン!!!!

 

 

咄嗟にガードはしたものの、あまりの重さにレウリアの身体が横へ吹っ飛ぶ

そして、そのままバラティエの壁に激突したのだ

 

「リアさん!!」

 

サンジがたまらず叫ぶ

 

「う……痛っ………」

 

パラパラと、木屑が零れる中、レウリアがよろりと起き上がった

ガードし腕は真っ赤に腫れ上がっており、明らかに痛めているのが見て取れた

 

失敗した……

まさか、ネフェルティの防壁を破られるとは誰が思っただろうか

どんなものも弾く、無敵に近い程の風圧だったのだ

なのに、あの鎖鎌はいとも簡単に打ち破って来た

 

しかも――――

 

何、あの重さ……

 

先程までとは違う

もっとずっと重い

 

ジェシーは、腕を押さえて立ち上がるレウリアを見て、にやりと笑みを浮かべた

そして、両手に持った鎖鎌をいとも簡単に回し始める

 

「これはねェ~、1つにつき1t あるのよ。あんたのその細腕じゃ、受けるなんて無理に決まってるでしょう」

 

「ひとつで1t!?」

 

ぎょっとしたのは、コック達だった

クリークですら、あわせて1tだと言っていたのに

このジェシーは片方で1tだというのだ

 

つまり先程は2t分の圧力がレウリアの腕に押しかかった事になる

細いレウリアなど飛ばされて当然だった

 

それを見ていた、海賊達は、わぁっ!と歓喜の声を上げた

 

「ジェシーさん、やっちまってください!!!」

 

「ジェシーさんの怪力は、クリーク海賊団一番なんだ!!あんな女に敗ける筈がねェ!!!」

 

ぴく…

 

微かに、レウリアの眉間に皺が入った

瞬間、突然海賊達を突風が襲ったのだ

 

「うわああああ!!!」

 

突然の荒波に飲まれて海賊達が、どよめきだす

レウリアが、その口元に微かに笑みを浮かべた

 

「“敗ける筈が無い?”誰が誰にですって……?」

 

ゆらりと、レウリアの鋭い眼光が海賊達を睨みつける

瞬間、海賊達がごくりと息を飲んだ

 

レウリアは、よろりとそのまま立ち上がると、持っていた風の鞭をバチィ!と撓らせた

 

「要は、この怪力男女の攻撃さえ食らわなければいいって事でしょう?」

 

レウリアのその言葉に、ジェシーがフンッと鼻を鳴らす

 

「それが出来たら、苦労しないと思うけど?」

 

「そんなの――――………」

 

瞬間、レウリアのアイスブルーの瞳が細められらた

 

「やってみなければわからないでしょう!!!」

 

刹那、今までにない位の速さでレウリアが地を蹴ったのだ

ジェシーがハッとした瞬間、レウリアの風の鞭の柄の部分が迫っていた

ジェシーが咄嗟の後方に飛び退くが、それは間違っていた

瞬間、柄の部分から突如風の刃が出現したのだ

そしてその刃は瞬く間にジェシーの身体に傷をつけた

 

「ああ!アタシの玉の肌が!!」

 

「力では勝てなくても―――――」

 

ハッと、後ろから聴こえてきた声にジェシーがはっとして、鎖鎌を振りかざす

が、そこにはもう誰も居なかった

 

「速さで私に勝とうなんて―――――」

 

今度は横から聴こえてきた声に、攻撃をす

 

が、やはり誰も居ない

 

 

 

「十万年早のよ!!!」

 

 

 

刹那、上空から聴こえてきた声にジェシーがハッとした

が、遅かった

 

遙か上空から、レウリアの踵落としが物凄いスピードでけり落とされたのだ

高さと速さの組み合わせで、それは物凄い威力を発揮した

 

 

ドゴオオン!!!という音と共に、ジェシーがヒレにめり込んのだだ

それだけでは済まなかった

 

レウリアは、そのまま風を呼ぶと

 

 

 

 

「落ちなさいっ!!!」

 

 

 

 

そう叫や否や、何十倍にも膨れ上がった“風圧”がジェシーの身体めがけて放たれたのだ

まるでそれは“重力”の様に、メキメキメキ!!と音を立てたかと思うと、そのままヒレを突き破りジェシーの身体が真っ逆さまに海へ突き落としたのだ

 

とん…と、レウリアがその穴の側に着地する

 

誰もが、し…んと、静まり返っていた

 

「まさか、ジェシーさんまで敗けたとかいわないよな?」

 

「あの人は、総隊長に次ぐうちのNo.3だぜ!?」

 

海賊達にもどよめきが走る

 

だが、レウリアは冷静だった

あのジェシーとかいう男女は、まだくたばってはいない

 

それは、海の中から感じる気配で分かった

 

瞬間、ハッとして後方へ飛び上がった

 

刹那、レウリアのいた場所がバキャッ!と音と立てて崩れ出す

 

一瞬、何が起きたのかとコック達にどよめきが走った

そこからジャラララララと鎖鎌が2本ヒレに刺さると、それを反動にジェシーが海の中から出てきたのだ

 

「……………」

 

レウリアは、真っ直ぐジェシーを見据えたままゆっくりと一歩横にずれた

真後ろにサンジ達がいたからだ

 

「リアさん……」

 

サンジが、痛々しそうなレウリアの腕を見て声を洩らす

あれはそうとう痛い筈だ

もしかしたら、ヒビが入っているかもしれない

 

それぐらい、彼女の腕は赤く腫れあがっていた

 

ジェシーは、びしょぬれになったのを気にする様子もないのか、怒りに震えていた

 

「アンタ、よくもアタシを……っ!!!これでも食らいなさい!!!」

 

そう叫ぶな否や、鎖鎌をブンブン振り回し始めると―――

 

 

 

 

「――――――ライジング・フレーム!!!!」

 

 

 

 

 

 

 

「――――――っ!!!」

 

 

鎖鎌から無数の鎖鎌が出現したかと思うと、一気にレウリアめがけて四方八方から襲い掛かって来たのだった

 

「ネフェルティ!!!」

 

レウリアが叫ぶのと、鎖鎌が襲ってくるのは同時だった

それを避けるのは不可能に近かった

避ける場所は上空しか空いていないのだ

だが、この場合そこは相手の思うツボになる

そこにだけは避けられない

 

なので、防御しきれないと分かっていてもネフェルティの風の防壁を展開させたのだ

だが、防壁の間を縫って鎖鎌がザシュ ザシュと頬や足、腕に襲い掛かってくる

 

レウリアは、ただそれを耐える様に堪えた

必ずチャンスは来る

それまでは、このまま耐えるしかない

 

そうこうしている内に、どんどん身体中が傷だらけになっていく

 

 

「あっははははははは!!翔風も大した事ないわね!!」

 

 

ジェシーがそう叫んだ時だった

レウリアが何かに気付いたかの様に、突如ネフェルティの防壁を解いたのだ

瞬間、ダイレクトに鎖鎌が襲い掛かってくる

が、レウリアはそのままその全ての鎖鎌を風のナイフで受け流し始めたのだ

 

ぎょっとしたのは、ジェシーだった

大技、“ライジング・フレーム”で今頃血祭りになっている筈が、たった小さなナイフで受け流されているのだ

 

「な、なによそれは!!!!」

 

ジェシーの攻撃が益々速くなる

だが、それはレウリアも同じだった

軽く、そのまま受け流すと今度は一気に上空へ飛んだのだった

 

それを見たジェシーがにやりと笑みを浮かべる

 

「馬鹿ね!お見通しよ!!!」

 

空中にいるレウリア目がけて2振りの鎖鎌を放ったのだ

 

 

 

「リアさん!!!

 

 

 

誰しもが避けられないと思った

 

ザシュ!!!という音と共に、鎖鎌の一本がレウリアの身体を斬り刻む

 

「ほら、もう一本!!」

 

そしてもう一本もレウリアの身体めがけて放たれた

ザシュゥ!!

 

もう一本がレウリアの身体にめり込む

 

 

 

 

「リアさ――――ん!!!」

 

 

 

サンジがたまらず叫んだ

そのままぐらりとレウリアの身体が地に落ちていく

 

ジェシーがにやりと笑みを浮かべた

 

勝った!

 

誰しもがそう思った

 

ドサリ…と、レウリアの身体が地に落ちる

そのままぴくりとも動かなかった

 

鎖鎌の刺さった傷口からはどくどくと血が流れ落ちている

 

「リアさん!リアさあああん!!!」

 

サンジの声が木霊する

 

だが、それはジェシーが鎖鎌を抜こうとした時に起こった

ぐんっと、引っ張った筈の鎖鎌が抜けないのだ

それも、両方とも

 

違和感を感じ、ジェシーがもう一度、鎖鎌を引っ張る

やはり抜けない

 

その時だった、ゆらりとレウリアが立ち上がったのだ

ポタ…ポタ…と、脇から出る血を手で押さえながら、もう片方の手で鎖鎌を握っていたのだ

 

それを見たジェシーはフンッと鼻を鳴らして

 

「なぁに?最後の悪あがき?そんなもの……力で勝てる訳ないでしょ!!!」

 

そう叫ぶな否や、ぐいっと鎖鎌を引っ張った

瞬間、レウリアの身体もそれに引きずられる様にジェシーに向かったかと思うと――――

 

 

「甘い」

 

ギュン!!

 

「え………」

 

突然、鎖鎌がバラバラになったのだ

一瞬、何が起きたのかジェシーには分からなかった

が、次の瞬間――――

 

不意に伸びてきたレウリアの手がジェシーの首を掴んだかと思うと

 

 

「――――万象に集え。風の精霊よ―――彼の者を斬り裂け!!!!

 

 

そう叫んだ瞬間だった

ゴゥ!!!という突風という名の鎌鼬がジェシーの身体を斬り刻んだのだ

 

「ぎゃあああああああああ!!!!」

 

目の前で、直接ぶち込まれた無数の鎌鼬は、ジェシーの想像を遙かに超えた威力を増した

ただの鎌鼬じゃない

何十倍にも圧力を込められた風圧を加えた鎌鼬なのだ

 

あの時、わざと避けなかったのはこのためだったのか……!!

 

そう気付いた時にはもう遅かった

ジェシーの身体は風圧と、風の刃でそのままマストに激突すると圧迫する肺で呼吸が出来なくなり、そのまま倒れてしまったのだ

 

 

「―――――はぁ」

 

レウリアが、乱れたプラチナブロンドの髪をなびかせながら、その場に立ち上がる

 

「うおおおおおおお!!!勝った!!!」

 

「すげェぞ、ねェちゃん!!」

 

コック達が歓喜の声に震えた

逆に、海賊達は真っ青に青ざめていた

あのジェシーまでもが敗けたのだ

 

 

信じられなかった

 

 

クリーク海賊団一の怪力のジェシーが……

あんな、細いレウリアに敗けたなど誰が信じられただろうか

 

「リアさん……無茶しない下さい!!」


サンジの言葉に、レウリアは脇の傷を押さえながら

 

「別に、無茶なんて………」

 

そう言った時だった

 

「な……“大戦槍”が……!!!!貴様!!…何をしやがった……!!!」

 

突然、クリークの叫び声が聴こえてきた

ハッとしてそちらを見ると、あの大戦槍の矛先がバラバラに砕けていたのだ

 

クリークは信じられないものを見る様な目でそれを見た

にやりと、ルフィが笑みを浮かべる

 

「5発パンチ入れてやった……!!お前の槍、もう駄目だな」

 

「何!?」

 

瞬間、ボロボロのルフィがニッと笑みを浮かべると

 

  「覚悟しろよ!!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

はい、夢主VS権蔵は終了しました

後は、クリークぶちのめしたら終わりですね!

 

2012/10/24