MARIKA

-Blue rose and Eternal vow-

 

  Act. Ⅰ 海上レストラン 24

 

 

 

「……ふざけないで」

 

ざわりと、レウリアの纏う空気が変わった

バサバサと、辺りの木屑が飛び散りだす

 

「エースが死んだ?……馬鹿な話も大概にしないさいよ」

 

瞬間、風もないのに何処からともなくふわりと風が舞い始める

それと同時に、彼女のプラチナブロンドの髪が風に舞う様に靡きだした

 

一歩、コツリ…と彼女のヒールが音を立てる

 

「どんな噂を聞いてそう判断しているのか知らないけれど……」

 

コツリ…コツリ…と、また彼女のヒールが音を立てた

ざわざわと、彼女の周りの風がどんどん酷くなっていく

 

パタパタとバラティエの帆が風で音を立てて始める

 

ごくりと、ジェシーもサンジも皆が息を飲んだ

瞬間、ビュオオオオオと凄まじい風がレウリアの周りを吹き荒れ始めた

 

 

 

 

「それ以上、エースを侮辱するのは許さないわ!!!」

 

 

 

 

 

ゴオォ!!と、辺りの木片が吹き飛ぶ

余りの突風に、波が音を立てて弾かれた

 

 

「うわああああ」

 

突然の波飛沫にコック達が慌てふためく

 

「リアさん……」

 

本気で怒っている

あのレウリアが……

いつも、半分冗談で怒っている様な雰囲気なのに、今回ばかりは違った

サンジにも肌でびりびりと感じる程のレウリアの怒りが伝わって来た

 

ジェシーも、まさかそこまでレウリアが怒るとは思わなかったのか

ごくりと息を飲むと、はっと精一杯の虚勢を張った

 

「なによ、本当の事じゃない。それで怒るなんて事実と認めてる様なも―――――っ!?」

 

“認めてる様な物”と言い掛けた瞬間、それは起きた

いつの間にか、目の前にレウリアのアイスブルーの瞳があったのだ

そして、その手に持っていた風のナイフが自分の首を捉えていたのだった

 

「なっ――――――」

 

瞬間的に後ろへ飛ぶのと、レウリアが風のナイフを振り切るのは同時だった

だが、完全に避けきれなかったのか首筋から赤い血が流れ落ちる

 

「ちょっと!アタシの玉の肌に傷が付いちゃったじゃ―――――」

 

言い終わるよりも早く、レウリアが地を蹴った

と、同時に持っていた風のナイフが鞭の様に伸びたのだ

ジェシーがぎょっとして横へ避けるが、それは避けた内には入らなかった

すぐさま、風の鞭は反動を武器にそのままジェシーに再度襲い掛かったのだ

 

「ちょっ―――――」

 

ジェシーが何かを叫ぼうとするが、レウリアの攻撃は止まらなかった

直ぐに、風の鞭を撓らせると今度は一気に“ヒレ”を弾いた

 

瞬間、バンッ!という音と共に“ヒレ”がはじけ飛ぶ

 

「!?」

 

瞬間的に、視界が”ヒレ“の瓦礫でふさがれる

が、目くらましなのはジェシーにはお見通しだった

 

ジェシーはふんっと鼻を鳴らすと、持っていた鎖鎌で思いっきりその瓦礫を弾いた

 

「こんな目くらましきくわけないじゃな――――」

 

そう叫んだ矢先だった

不意に、ぐんっと足元を引っ張られた

 

ぎょっとしてそちらを見るといつの間に絡みついたのか、風の鞭が巻きついていたのだ

しまったと思った時には既に遅かった

そのままぐいっと身体ごと引っ張られるのと、レウリアが反動で跳躍するのは同時だった

それでも、咄嗟に避けようとするが――――

 

「速―――――っ」

 

避ける体制に入る前に、レウリアの蹴りが炸裂した

ドゴォォォォ!!!という音と共に、思いっきりレウリアの回し蹴りがジェシーの身体にヒットする

と、同時にはるか先のガレオン船まで吹き飛ばしたのだ

 

それを見ていたコックや海賊達は、口をあんぐり空け愕然としていた

先程までそんな雰囲気微塵も感じさせてなかったのに、怒らせたと思ったら攻撃の連続

しかも、殆ど速すぎて目で追えなかった

まさかの、レウリアの反撃に流石のコックや海賊達も驚きを隠せなかった

 

が、それと同時にコック達は「うおおおおお!!」と、歓喜の声を上げた

 

 

「すげェぞ、ねえちゃん!!」

 

「やっちまえー!!!」

 

驚いたのは彼等だけでは無かった

サンジも、レウリアの反撃に驚きを隠せなかった

 

正直、目で追うのがやっとの速さだった

特に、最初の一撃は見えなかった

それぐらい、彼女の動きは速かった

 

それを見ていたゼフがふんっと鼻息を鳴らしながら笑みを浮かべた

 

「あの嬢ちゃんも、“翔風”の名は伊達じゃねェってことか……」

 

「“翔風”……」

 

そういえば、レウリアには“翔風のレウリア”という二つ名があった

あの“翔風”というのは、風を使うという意味と同時に、この“速さ”を意味していたのではないだろうか

 

だが、幾らなんでも速すぎる

普通の人ではあり得ない速さだ

恐らくあの速さの秘密は、風の力も加わってなのだろう

 

パワー不足をスピードで補っているという事か

 

でも、だからって……

 

本気で怒らすと、あそこまで蹴り飛ばす威力は怖いです……

 

と思ったのは、きっとサンジだけでは無い筈だ

 

「…………いったぁ……」

 

ガラガラガラと、ガレオン船の瓦礫の中からジェシーがよろりと立ち上がった

ジェシーはパンパンッと服に付いた木屑を払うと、ぱさりと金髪の巻き毛を払った

そして、ビシィ!とレウリアを指さすと

 

「ちょっとアンタ!怪力にも程があるわよ!!どんだけ馬鹿力なのよ!!アタシの一張羅が台無しになる所だったじゃない!!」

 

……怪力とか、お前にだけは言われたくない

 

と、皆が思ったのは言うまでもない

その時だった

 

「ここは、おれの死に場所じゃねェ…だと?」

 

ぐらりと、ジェシーの側に倒れていたクリークが動いた

 

「ここがてめェの……死に場所じゃなけりゃ……」

 

その纏う空気が尋常でない程のオーラに包まれているのを無視するかのようにジェシーが「クリークちゃん!!」と叫んだ

 

だが、クリークはジェシーに見向きもせずにゆらりと立ち上がった瞬間――――

 

 

 

 

 

「一体……誰の死に場所だァアア!!!」

 

 

 

 

 

バコォォォン!!という音と共に、振り向きざまにウーツ鋼の肩当てをルフィ目がけて撃ち放った

突然の反撃に、ルフィがもろに食らってしまう

 

瞬間クリークがにやりと笑みを浮かべた

 

 

 

 

 

  「貴様だろォ!!!!」

 

 

 

 

 

そう叫ぶと同時に、肩当てがドウン!!という音と共に爆発したのだ

もろに爆発を食らった

誰しもがそう思った

 

が―――――

 

ルフィはそのまま爆風に乗って跳躍すると右足を突如ぐい~んと伸ばした

クリークがハッとした時には既に遅かった

ルフィの右足はクリークの肩に引っかかると同時に―――

 

 

 

 

「お前のだよ!!!」

 

 

 

 

 

そのままクリークを引っ張り上げると、そのまま地べたに引きずり下ろしたのだ

ドカァアン!というけたたましい音と共に、クリークの巨体が倒れ込む

 

驚いたのは、他ならぬ海賊達だった

 

「ま……また首領(ドン)が倒されたァァァァァァ!!!!!!」

 

「どうなってんだこりゃぁ!!?」

 

今まで一度として倒れた事のないクリークが、二度もあんなひょろっとした奴に倒されたのだ

海賊達は、もうわけが分からなくなっていた

 

「いやぁ~~~~!!!クリークちゃーん!!!」

 

ジェシーの叫び声まで聴こえる

 

「敵は…首領(ドン)・クリークに触れる事すら出来ずに死ぬはずなのに……」

 

首領(ドン)は無敵の筈なのに……!あいつは……」

 

ごくりと海賊が息を飲む

 

 

 

 

 

 

「あいつは、何なんだァ!!!」

 

 

 

 

 

それを見ていた、サンジも言葉を失っていた

2階から見ていたパティとカルネも唖然としながら、その様子を見ていた

 

「……あの野郎、やりやがるぜ……」

 

「ああ、たまげた……」

 

そう言いながらも、このままクリークに勝てるんじゃないかと思わず口元に笑みが浮かぶ

それはコック達も一緒だった

 

「あいつ、すげェぜ…!」

 

「クリークなんぞ、やっちまえェ!!!」

 

「やれるぜ、あいつなら!!」

 

それとは、逆に海賊達には動揺が走っていた

今まで敗けた事のないクリークが敗けそうになっているのだ

 

「あの小僧、間違いなく首領(ドン)と渡り合ってやがる……っ」

 

「夢じゃ…ねェよな?あんな奴に首領(ドン)が……」

 

「無敵の筈だぜ、首領(ドン)は!これじゃぁ、首領(ドン)・クリークの最強伝説が……」

 

海賊達が動揺を隠せない中、クリークの傍にいたジェシーがバシィとクリークを叩きながら

 

「起きてったら、クリークちゃん!!他の人に倒されるのなんて見たくないわ!!」

 

ぶち……

 

 

クリークの中で何かが切れた音がした

瞬間

 

 

 

 

 

 

「くだらねェ事、言ってんじゃねェ!!!!」

 

 

 

 

 

 

ドスの利いた声が、辺り一帯に木霊した

瞬間、クリークは起き上がると両肩のウーツ鋼の肩当てをガキィインン!と重ねた

ルフィとサンジやレウリアがハッとしてそちらを見る

 

刹那

肩当てから柄の部分が延びてきたかと思うと、ルフィ目がけて思いっきり振り下ろしてきたのだ

 

 

ドガアアアアン!!!!

 

 

けたたましい音と共に、振り下ろされた場所が大爆発を起こす

それと同時に、ガレオン船が真っ二つに割れたのだ

 

流石のルフィも驚いて咄嗟にその攻撃を避けて、折れたマストにしがみ付いた

 

「な、なんだ!?」

 

サンジが、ぎょっとして声を上げる

一体何が起きたのか遠目には分からなかった

 

だが、レウリアには分かったのか、一瞬そのアイスブルーの瞳を細めると

 

「あれは――――」

 

瞬間、それを見た海賊達が歓喜の声を上げだした

 

「……ついに出た!!!」

 

首領(ドン)・クリーク最強の武器!!“大戦槍”!!!!」

 

にやりと、クリークが口元に笑みを浮かべた

 

「どこまで逃げ切れるか見物だな……カナヅチ小僧」

 

バサリと、羽織っていたマントを脱ぎ捨てると、その大戦槍を構えた

 

「この“大戦槍”は、2・3発食らっても立っていられる様なさっきまでのチンケな槍とは訳が違うぜ」

 

クリークの言う意味が分からないルフィは首を傾げながら

 

「何だあれ?爆発したぞ……?」

 

「触れれば、即木端微塵だ!!!」

 

瞬間、クリークが大戦槍を振り上げた

そしてそのまま振り下ろした瞬間―――――

 

 

 

ドゴオオオン!!!!

 

 

 

「うわああああ!!!!」

 

 

ルフィの捕まっていたマストが大爆発を起こすと木端微塵に吹き飛んだのだ

ルフィと一緒に

 

「何だ、あの槍は……!!!?」

 

ぎょっとしたのはコック達だった

撃ち放った先が爆発したのだ

 

爆風で飛ばされたルフィが慌てて手をぐい~んと伸ばして、柵にしがみ付く

あやうく、海に落ちる所だった

 

「何だよ、あの槍!!撃ち込む度に爆発するのか……!?」

 

なんとか着地するが、立ち上がろうとした瞬間それは起きた

不意に、足に力が入らずにかくんと膝が折れてしまったのだ

 

「あ?何だ…?膝が……」

 

一体何が起きたのか分からず、ルフィが辺りを見渡す

それを見たサンジがギリッと奥歯を噛み締めた

 

「長期戦はマズイな……血を流し過ぎてる……!!もたねェぞ…あいつ……」

 

それを見たクリークはにやりと笑みを浮かべた

 

「無理がたたったな……。そろそろ、てめェの体力も限界だろうぜ」

 

「くそォ…こんなに揺れる“飛び島”じゃぁ、フルに力だせねェや…参ったな」

 

ルフィがよろめきながらそうぼやいた

それを見ていた海賊達はごくりと息を飲んだ

 

「いつ見てもすげェぜ…、あの“大戦槍”はよ……」

 

「ああ、あの大槍は撃ち込む力が強ければ強い程、大爆発を引き起こす。首領(ドン)以外の人間にはとても使いこなせる代物じゃねェ」

 

その時だった、クリークが叫んだ

 

「権蔵!!」

 

呼ばれて権蔵…もといジェシーが「いやん」と首を振った

 

「権蔵だなんて、呼ばないで!クリークちゃん、アタシはジェシーよ!!」

 

嫌々と首を振るジェシーだが、クリークは特に気にした様子もなく くいっと顎をしゃくると

 

「お前は、あの翔風を殺れ! この、生意気なカナヅチ小僧はおれが仕留める!」

 

「……ご褒美は?」

 

「ふん、宝石でも服でも好きな物くれてやる」

 

その言葉に、ジェシーがキランっと目を輝かせた

 

「じゃぁ、愛するクリークちゃんの為に何が何でも殺らなきゃぁね……」

 

そして、鎖鎌をジャラリと垂らすとその刃を舐めるとにやりと笑み浮かべた

 

「丁度あの、顔だけ女が気に入らなかったのよねェ~血祭りにしちゃっていいのよね?」

 

「好きにしろ」

 

その言葉に、「オッケー」と返すとジャランと鎖鎌をぐるんぐるんと回し始める

 

瞬間、ぴくりとレウリアが俄かに眉を寄せた

 

「リアさん!」

 

サンジがハッとして間に入ろうとするが、傷がズキリと痛み思う様に身体が動かない

しかし、さっきまでとは訳が違う

あの怪力の男女とまともにやり合うには、レウリアには分が悪すぎる

 

「リアさん、幾らなんでも危な―――」

 

「止めないで、サンジさん」

 

なんとか、止めようとするがそれはレウリア本人に制された

レウリアは、コツリ…と一歩前に出る

瞬間、ふわりと彼女の周りに風が起きて、彼女のプラチナブロンドの髪が揺れた

 

「残念だけれど、あちらからの指名みたいだから」

 

「ですが―――」

 

尚も止めようとした瞬間、レウリアの持っていた風の鞭がバチンッと”ヒレを弾いた

弾かれた“ヒレ”の部分がバチバチと音を立ててえぐれていく

 

「丁度いいわ。こっちもあの人に聞きたい事があるのよね――――」

 

そう言って微笑んだ顔は、今までにない位恐ろしい程美しかった

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

やっと起きたよ、クリークwww
遅いwww

でも、次から激戦になりそうですねー
同時進行で行きますが…多分、夢主の方が先に決着つくと思う

 

2013/10/18