MARIKA

-Blue rose and Eternal vow-

 

  Act. Ⅰ 海上レストラン 2 

 

 

 

「で?何でまた、この店に砲弾撃ち込んだりしたんだ?」

 

「ありゃ、事故なんだ。正当防衛の流れ弾だ」

 

「何だ、そりゃあ」

 

ルフィのいまいち意味不明な答えに、サンジが顔を顰めた

それから、小さく息を吐くと、タバコをふかし始めた

 

「……まぁ、何にしてもこの店に妙なマネしねぇこった。この店のオーナーは元々名のある海賊団のコックでね」

 

「へーあのおっさん、海賊だったのか」

 

ルフィが今知ったという風に、声を上げた

 

「そのクソジジイにとって、このレストランは“宝”みてぇなもんだからな。その上、あの男に憧れて集まったコックどもは、全員 海賊ばりに血の気が多いやつばかり。まァ、海賊も往来するこの場所には、うってつけのメンツなんだけどな」

 

サンジのその言葉に、ルフィがニシシと笑った

 

「ほんと、めっちゃくちゃ騒がしいもんなーこの店」

 

「まーな、これが“日常”だ。最近じゃ、海賊とコックの乱闘見にやって来る客もいる程だ。お陰で、バイトのウェイター達はビビって全員逃げ出しちまったよ」

 

「ああ、だからいないのね」

 

あの時、サンジが“うちじゃよくある話”と言ったのは、そういう事だったのだ

 

すると、それまで足をぱんぱんと叩いて遊んでいたルフィが、何かに納得いった様に頷いた

 

「はーん、それでかぁ~。おれに1年も働けって言ってんのは」

 

「1年もここで働くの?ルフィが?」

 

どう考えても、無理な話だ

弁償云々の前に、店の方が壊れかねない

 

すると、ルフィはうう~んと、珍しく難しい顔をして

 

「流石におれも1年も足止めはヤダから、おっさんにまけてくれって言ってる最中なんだ」

 

「……賠償金払っちゃえばいいじゃない…」

 

その方が、店の為だ

だが、ルフィは……

 

「そんな金ねぇよ」

 

と、どきっぱり言い切った

 

その言葉に、レウリアがはぁーと溜息を付いた

そういえば…さっきお金ないとか言ってたっけ……

 

だが、そんなレウリアを余所に、ルフィはまたぱんぱんと足を叩きながら

 

「まぁ、いいや。なぁ、仲間になってくれよ、お前ら二人とも」

 

というルフィに勧誘に

 

「「それは、断る」」

 

と、またきっぱりとサンジとレウリアが言い切った

 

「おれは…この店で働かなきゃいけねぇ“理由”があるんだよ」

 

「私を仲間にすると厄介だから、止めておいた方がいいと思うわ。……それに、この先ずっとルフィの面倒みなきゃいけないなんて、ぞっとするわ」

 

と、各々の理由を言った瞬間

 

「いやだ!!断る!!!」

 

と、突然、上からルフィの顔がにゅっと伸びてきた

 

「なっ……何がだ…」

 

流石のサンジも驚いたらしく、やっとの思いでそこ言葉を吐き出していた

 

「ちょっと、ルフィ。いきなり首伸ばさないでよ」

 

レウリアの注意を余所に、ルフィ的には至極真面目な顔で

 

「お前らが断る事を、おれは断る!!お前は、いいコックだし、リアはおれのねーちゃんだ。だから、一緒に海賊やろう!!」

 

とても良い事を言った……と、ルフィ的には思っているであろう顔をしながら、ルフィは笑った

 

「いや、勝手に進めないで」

 

ズビシィ!と、レウリアが鋭く突っ込みを入れる

 

「オイオイ、おれの言い分を聞けよ……」

 

サンジが後退りながら、そう洩らした

すると、ルフィはきょとんとしたまま

 

「理由ってなんだ?」

 

「お前に、言う必要はねぇ」

 

そう言いきったサンジに、ルフィが顔を顰めた

 

「ん~~~?今、聞けって言ったじゃん」

 

ルフィのその言葉に、サンジがマジ切れした

 

「おれが言ってんのは、おれの意見を聞き入れろって事だよ!!三枚にオロすぞ!このクソ麦わら野郎!!」

 

「何だと―!!?麦わらをバカにするとぶっ飛ばすぞ!この野郎!!」

 

「ちょっと!私の頭上で言い争わないでよ!!……って!唾が散る!!!」

 

と、三者三様に火花を散らし始めた時だった

 

「あのー話、割ってすまねぇが……」

 

 

 

「「「何だよ!!!」」」

 

 

 

三人の怒りの矛先が一斉に自分に向いて、一瞬男はごくりと息を飲んだ

 

「おれは、クリーク海賊団のギンって者なんだが……」

 

「知ってるわ」

 

そこまで言い掛けた折角の男……ギンの台詞を、思いっきりレウリアが切った

 

「え……?」

 

流石に、レウリアの台詞は予想だにしていなかったのか

ギンと名乗った男は、驚きにあまりその目を瞬かせた

 

「だから、クリーク海賊団のギンでしょう?知ってるって、言ったの」

 

「あ……」

 

よく考えれば、レウリアは情報通と言われる“翔風”だ

知っていてもおかしくはない

 

「あ、ああ……あんたなら、知ってても当然か……」

 

何だか納得した様に、ギンがほっと胸を撫で下ろした

 

「まぁ、おれの事はいい。それより、あんた」

 

不意に、ギンがルフィの方を見た

ルフィが、周りをきょろきょろ見た後、「あ、おれか」と声を洩らした

 

「あんたも海賊なんだろ?目的はあんのかい?」

 

すると、ルフィはにかっと笑い

 

「おれは、“ひとつなぎの大秘宝ワンピース”を目指してる。“偉大なる航路グランドライン”へ入るんだ!!」

 

ルフィのその言葉に、ギンの表情が険しくなった

ギンは、言葉を飲み込んだ後

 

「……コックを探してるくらいだから、あんまり人数揃っちゃいねぇようだが……?」

 

「ああ、こいつで5人目。んで、リアで6人目だ!」

 

「「何で、おれ(私)が入ってるんだよ(のよ)!!」」

 

サンジとレウリアの突っ込みを無視して、ギンは話し始めた

 

「あんた、悪い奴じゃ無さそうかだら忠告しとくが……“偉大なる航路グランドライン”だけは止めときな」

 

「!?」

 

「あんた、まだ若いんだ。生き急ぐことはねぇ。“偉大なる航路グランドライン”なんて世界の海のほんの一部に過ぎないんだ。海賊やりたきゃ、海はいくらでも広がってる」

 

忠告……なのかもしれない

ギンなりの、礼のつもりなのかもしれない

だが、それはルフィには逆効果だった

 

案の定、ルフィはわくわくした顔で

 

「へーそうか!なんか、“偉大なる航路グランドライン”について知ってんのか?」

 

と、興味津々だ

だが、その反対に、ギンの表情はますます強張って行った

 

まるで、何かに怖れている様なほどに……

 

「……いや、何も知らねぇ…!何も、分からねぇ……っ!だからこそ、怖いんだ……っ!!」

 

その怯え方は尋常ではなかった

 

その瞬間、レウリアはふとある事を思いだした

少し前に、耳にした”噂“だ

 

もしかして、あの“噂”……本当なのかも……

 

それなら、ギンのこの怯えっぷりにも納得いく

 

「あの、クリークの手下ともあろうモンが、随分と弱気だな」

 

サンジが、ふーとタバコをふかしながらそう呟く

 

「クリークって?」

 

ルフィの間抜けな質問に、レウリアとサンジが脱力した

 

「ルフィ…、本当にクリークの事知らないの?」

 

「知らん」

 

あまりにも、きっぱりはっきりそう言い切るので、怒る気も失せる

レウリアは、小さく溜息を付きながら

 

「クリークっていうのは――――」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

      ◆      ◆

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

―――海上レストラン内・厨房

 

何人ものコックが、ばたばたと料理に忙しそうに回していた

 

「3番のオードブル、お待ち!!」

 

「てめぇで持って行けよ!!ウェイターはいねぇんだ!!」

 

半分喧嘩の様でもあるが、これがここの“日常”でもあった

 

「―――しかし、いいのかい?パティ」

 

「何が?」

 

魚をおろそうとしていたパティの、1人のコックが話し掛ける

パティは、包丁をくるくると回すと、スパパパンと鮮やかな手つきで魚を捌いていた

 

「さっき、お前が店でボコボコにした野郎は、クリークの一味の者だったそうじゃねぇか」

 

と、コックが心配?そうにパティに言うが…

パティは気にした様子もなく、能天気な顔で

 

「ああ、そんな事も言ってたなぁ」

 

と言いながら、次の魚を捌きだした

 

「“首領ドン・クリークといやぁ、この辺の海じゃ最悪最強の海賊の名だぜ?」

 

そこへ、パティの横で野菜を切っていたカネルが会話に入ってきた

 

「そうそう、なんせ奴ァ50隻の海賊船の船長達を束ねる「海賊艦隊」の首領ドンなんだからな。怪物…なんだよ、まさに」

 

ごくり…と息を飲みそうな話であったが…

当の本人は、毛ほども気にしていないらしく…

 

「それがどうした」

 

と言いながら、中華鍋に入れた魚にワインを投入した

ボォォウッと、鍋の中から緑色の炎が発火する

 

「あの並はずれた兵力は、五千万人を超えると聞いた……例えば、だ」

 

カネルは、切っていた包丁を止め、じっとその刃を見た

 

「さっきの野郎が、このレストランであんな目にあったと“首領ドン・クリーク“に伝えたとしたら……象の大群がアリでも踏み潰すかのようにこのレストランはミンチにされちまうだろうな」

 

「ほぅ~~~~う、じゃぁ、あの男には大人しくご馳走してやった方が良かったのかい?それじゃぁ、他のお客様に失礼だろうが!!」

 

そこまで言い切ると、パティは何故かワインをぐびっと瓶から飲み始めた

そして、ぷはぁっと吐くと同時に

 

「海上レストラン“バラティエ”名物、戦うコックさんの名が泣くぜ!!!!」

 

むっとしたカネルが、パティを睨みつける

負けじとパティもカネルを睨み返した

 

「おれ達が、今まで一体どれだけの海賊どもを追い払ってきたと思ってんだ!!?そんなに怖きゃ、辞めちまえ!!!」

 

「何だとぉ!!?おめぇのその一言で、ウェイターは全員辞めちまったんだよなぁ!パティ!!!てめぇのせいだ!この忙しさも!!」

 

「ケッ、あんな意気地のねぇ野郎どもは元々要らねぇ長物だったんだよぉ!!!」

 

言い争いが加速する中、周りのコック達が、1人また1人と集まりだした

皆、面白くなってきた!という感じに、わくわくした顔をしている

 

がるるるるるると睨み合う、パティとカネルを、コック達が「やれ、やれー!」と、更に煽りだした

今にも取っ組み合いになりかねん……と言う時だった

 

 

 

 

「オイ、馬鹿ども!さっさと働け!!」

 

 

 

 

厨房の中に、突如現れたオーナー・ゼフの声が響いた

一瞬、その場は停止するが…

次の瞬間

 

 

「はい、オーナー」

 

 

まさに、鶴の一声

今まであわや乱闘…までいった皆が、スチャッと綺麗に並び、てきぱきと調理しだした

これも、ここでの“日常”の1つだった

 

 

 

 

 

 

 

 

      ◆      ◆

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「じゃあな」

 

そう言って、ギンは船に乗り移ると結んでいたロープを離した

 

「でも、おれは行くぞ“偉大なる航路グランドライン”に」

 

「私も行くわよ“偉大なる航路グランドライン”」

 

そう言い切るルフィとレウリアに、ギンは少しだけ笑みを浮かべた

 

「ハハ…ああ、後は好きにしな。他人のおれにあんたらの意思を止める権利はねぇよ……ただ、忠告しておきたかったんだ。それに―――」

 

少しだけ間を開けた後、ギンはサンジを見た

 

「サンジさん……本当にありがとう。あんたは、命の恩人だよ……。あのメシは最高にうまかった。また食いに来てもいいか?」

 

ギンが微笑みながらそう尋ねた

サンジは、ニッと笑みを浮かべ

 

「また、いつでも来いよ」

 

の時、だった

 

「コラ、雑用小僧!!」

 

突然、頭上からゼフの怒鳴り声が聴こえてきた

 

「げぇ!?おっさん!!」

 

ルフィは、ぎょっとして身を後退させた

 

「そこにいたか!!」

 

そこまで言い掛けて、ゼフの視線が空になった皿とコップに向けられた

ルフィ以外の皆が、その事に気付いた

 

が、サンジは平然としたまま

 

「行けよ、ギン」

 

「………………」

 

ギンが何か言いたげに、言葉を探している

 

「何してるの?ギンさん。折角サンジさんが行けって言っているんだから、早く言った方がいいわよ。じゃないと、その内オーナーさんの右足が飛んでくるかも」

 

と、レウリアが後押しする様にくすくすと笑いながら言った

 

ギンは一度だけ口を開きかけたが、またそのまま俯く

そして、申し訳なさそうに頭に巻いているサポーターをぎゅっと掴んだ

 

「ああ……悪ィな。怒られるんだろ…、おれなんかにただメシ食わせたから……」

 

ギンがそう呟くと、サンジは少しだけ口元に笑みを浮かべ

 

「なーに……」

 

カチャリと空いた皿とコップを持つと、そのまま海の中に投げ捨てた

 

「怒られる理由と、証拠がねぇ」

 

そう言って、空いた手のひらを見せるとにやりと笑みを浮かべた

ギンが信じられないものを見た様に、目を見開いた

 

船がゆっくりと進みだす

 

「もう、捕まるんじゃねぇぞ、ギン!!」

 

その言葉に、ギンは深く深く頭を下げた

その様子を、3人はじっと見ていた

 

「サンジ!!雑用!!てめぇら、とっとと働け!!」

 

ゼフの怒鳴り声が響いてくる

 

サンジは、一度だけ背伸びをするとレウリアを見た

 

「リアさんは、この後どうするんですか?」

 

話を振られたレウリアは、少しだけ考えて

 

「そうねぇ…ルフィのお仲間さんにご挨拶しておこうかしら?一応、こんな面倒事ばっかり起こす義弟が世話になってるんだし……後は、さっきは結局食事出来なかったから、ご飯かな?どっちにせよ、今は行先決まってないし」

 

「あいつらに会うのか!おれが案内するよ!!」

 

「阿保!」

 

そう名乗り出たルフィに、サンジの足蹴りがさく裂した

 

「お前ぇは仕事あんだろうが!」

 

「あ…そうだった」

 

と、本気で忘れていたっぽいルフィは、蹴られた頭をかきながらぼやいた

 

「いいわよ、船の特徴教えてくれたら自分で行くから」

 

「食事の方は、お任せくださ~~~いvv」

 

と、サンジがくねくねしながら叫んだ

 

「っていうか、リア。行く先決まってねェって…お前、海軍に帰るんじゃねぇのか?」

 

ルフィの間抜けな質問に、レウリアは小さく溜息を付いた

 

「いや、人の話聞いてたの? 私は、もう海軍辞めたのよ。 帰る訳ないでしょ。 第一、今、足がないから…正真正銘足止め状態なのよね」

 

「足がない?ここまで乗ってきた船があるんじゃないんですか?」

 

「あーそれ。お義父様が乗り逃げしたから、もう無いのよ。こんな事なら自分の船で来ればよかったわ」

 

あの時、ガープが見事に乗って逃げたので…マジで陸に行く船すらないのだ

 

「すげぇー!お前、船持ってたのかぁ!!」

 

ルフィが、なんだかどーでもいい所に食いついて来た

 

「そりゃぁ、一応これでも元大佐ですから。艦隊率いてたんだし?個人用船ぐらい持ってたわよ」

 

レウリアのその言葉に、ルフィがますます目をきらきらさせた

 

「何でしたら、買い出し用の船貸しますよ?」

 

と、サンジが申し出てくれたが、それは丁重にお断りした

借りても、返しに来る目途がまるで無いのに、借りる訳にはいかない

 

「ま、何とか考えるわ」

 

と、意外にレウリアはあっさりしていた

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

      ◆      ◆

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

―――海上レストラン・厨房

 

腰にはエプロン

トレードマークの麦わらは常備

 

そして、締めの一声

 

「おれはルフィ!!今からおれが雑用だっ!!どうぞ、よろしく!!」

 

と、ルフィ的にはやる気満々?で厨房に仁王立ちしていた

 

厨房は、あわただしく

皆、せかせかと走り回っていた

 

ルフィが挨拶したが、誰一人振り向かない

正直、何をしていいのか分からない状態だった

 

ルフィは、スタスタと傍にあった椅子に近づくと腰かけた

そして、腕をだら~んと背もたれにかけ……

カターンカターンと椅子をキィキィさせながら揺らし始めた

 

「6番のデザートまだか!!」

 

「オウ、誰だ!?注文受けたのは!!」

 

「てめぇじゃねぇのかよ!?」

 

カターン カターン

 

「おれは今、手が離せねぇんだ!!」

 

「ボーッとしてるからだ!!」

 

「何だとぉ!?やるか、お前!!」

 

カターン カターン

 

 

 

「「「「やる事ねぇんなら、皿でも洗ってろ!!雑用ぉ!!!!」」」」

 

 

 

 

「よしきた」

 

ようやく仕事を始めた、ルフィは早速皿を洗い?始めたが…

皿など生まれてこの方洗った事のないルフィだ

案の定……

 

ジャブジャブと水を流しながら同時に……

 

パリーン パリーン

 

「サンジの野郎は?」

 

パティの問いに、近くに居たコックがくいっとホールを指さした

 

「店内で客くどいてるよ」

 

「またか……!!大体、おれはあいつが“副料理長”やってる事だけでも、ムナクソ悪ぃんだ!」

 

そうぼやきながら、パティがジャガイモの皮をしゅるしゅるゅしゅるを剥いて行く

 

「しょうがねぇよ。あいつは、店一番の古カブなんだから」

 

「オーナーと仲の悪いサンジが、この店に居続ける理由を知ってるか?」

 

「料理長の座を狙ってんだろ?見てりゃ分かるぜ……」

 

と、コック達がサンジの話をしているのに聞き耳を立てながらルフィは……

 

ジャブ パリーン パリーン

ジャブ パリーン パリーン

 

「………………?」

 

ジャブ パリーン パリーン

ジャブ パリーン パリーン

 

「おい、何の音だ?」

 

ジャブ パリーン パリーン

ジャブ パリーン パリーン

パリーン パリーン

パリーン パリーン

パリーン パリーン

 

「―――ってぇ!!おい、雑用!!てめぇは、さっきから一体何枚皿割ってんだ!!!」

 

「あ、わりぃ 数えんの忘れてた」

 

と言いつつ、更に…パリーン

 

「そうじゃねぇだろう!!割った事を、謝れぇっ!!!」

 

流石に、これ以上皿を割られてはたまらないと思ったのか…

 

「皿洗いはもういいから!その辺、掃除でもしてろ!!」

 

次なる、任務が与えられた

 

「よし、任せろ」

 

と、ルフィ的にはやる気の返事をし……

 

「あーん」

 

歩き様に、横に会った料理をパクリ

 

「つまみ食いすんなぁ!!!!」

 

「メインディシュじゃねぇかぁ!そりゃぁ!!」

 

よりにもよって、メインデッシュだった

 

ルフィはあははははと笑いながら、傍にあった中華鍋を持とうとして―――

 

じゅわっ

 

「熱ぃぃぃぃぃぃ!!!!」

 

 

どんがらがっしゃーん

 

「熱ぃぃ!!!熱っ熱っ!!」

 

と、叫びながら右え左え行きつつ、厨房の中をぐちゃぐちゃにしだした

 

「厨房から、出てってくれぇぇぇぇぇ!!!!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「いいか、注文を取って来るんだ。“お客様”が何を食いてぇのか聞いてこい!出来るな!?」

 

と、怒りの形相のパティがルフィの顔を鷲掴みにし睨んだ

ルフィは、頬を掴まれたまま

 

「むい」(うい)

 

「ちゃんと、教えたとおりに接客するんだぞ!!」

 

最後の、忠告をしてパティは厨房へ下がっていた

 

「疲れるなぁ~雑用は……コビーの奴も大変だったんだろうなぁ…」

 

と、ぼやきながらホールへと続く螺旋階段を降りていた時―――

 

「よっ!雑用!!」

 

聴きなれた声が聴こえてきた

ぎょっとして、そちらの方を見ると―――

 

「げっ!お前ら!!」

 

「1年も働くんだってなぁ!」

 

「船の旗、描き直していいか?」

 

「ルフィ、雑用ちゃんとやってる?」

 

ルフィの仲間のナミとウソップ、ゾロ

そして、何故かレウリアもその場にいた

 

しかも、そのテーブルを見ると…

これまた、美味しそうな料理の数々が並んでいる

 

「お、おおおお前ら!おれを差し置いて、こんな美味いモンを食うとは……ひでぇじゃねぇかぁ!!!!」

 

怒る所は、どうやらそこらしい

 

「別に、おれ達の勝手だよなぁ?あはははは」

 

と、ゾロが笑っている横で、ルフィはむぅ~とした後

鼻をほじほじとほじくると、ゾロのコップの中にそれを…ボチャン

 

それを見た、ウソップがぶっと吹き出しそうになるのを堪えながら

 

「あ…ああ、まぁな」

 

ナミも笑いを堪えている

レウリアは、半ば呆れた様に頭を抱えた

 

そんなゾロは、それに気付いていないのか…

 

「まぁ、でも、ここの料理は確かにうめぇよ。お前にゃぁ、悪いとは思ってるが―――」

 

と、例の物が入ったコップを口に――――

 

 

「これは、てめぇが飲め!!!!」

 

 

と、叫ぶと同時に、ルフィにその水を無理矢理飲ませだした

それを飲んだルフィはオエーと吐きながら、喉を押さえて床でじたばたしだした

 

「な……っ!何てことすんだ、お前はァ」

 

と、抗議の声を上げるルフィにゾロがどきっぱりと

 

「てめぇが、何てことするんだ」

 

最もな意見だ

 

「ふふ……ルフィの仲間って面白い人ばかりね」

 

それまで、傍観していたレウリアがくすくす笑いながらそう言った

 

「あ、そうそうルフィ。まさか、ルフィにこんな礼儀正しいお姉さんがいるなんて、知らなかったわー。うちの愚弟を宜しくお願いしますって、わざわざ挨拶に来られたのよ?リアさん」

 

そう言うナミに、レウリアはにこりと微笑んだ

 

「リアでいいわ、ナミさん。後、話し方も普通でいいわ。同い年ぐらいだろうし」

 

すると、ナミは何かに気付いた様に

 

「ああ、じゃぁ私もナミでいいですよ。話し方も普通で」

 

すると、ウソップがはいはいーいと、手を挙げた

 

「おれも、ウソップでいいからな!リア」

 

そう言うウソップに、思わず

 

「……長っ鼻君じゃ駄目なの?」

 

「なんでだよ!」

 

と、長っ鼻のウソップがビシッと突っ込みを入れる

 

「後は……」

 

ちらりと、ゾロを見た

一瞬、それで何かを悟ったのか……ゾロが顔を引くつかせる

 

「マリモさん」

 

「誰がマリモだぁ!!」

 

「じゃぁ、腹巻さん」

 

「ロロノア・ゾロだっつってんだろぉ!!」

 

「もー我儘言わないで!で、どっちがいいの?マリモ?腹巻?」

 

「こいつ、ぜってぇールフィの姉だ!!!」

 

真顔で言レウリアに、ゾロがそう断言した

 

「違うぞ。リアはおれのおばちゃ――――ぶへぇ!!」

 

また、問題発言をしようとしたルフィの顔面にレウリアの鉄拳制裁がさく裂した

 

「ルフィ~~~~あんた……死にたい様ね……」

 

ゴゴゴゴゴと背後に暗黒のオーラを纏ったレウリアが、ルフィの前に仁王立ちしていた

 

殴られたルフィは、納得いかないという風に

 

「なんでだよぉ~だっれ、リアはじっちゃんの義娘なんだから、おれのおばちゃ――――「ふん!!!」

 

ドコォ!!

 

と、ルフィの真横の床が沈没した

 

「ルフィ……瞬殺されるのと、永遠地獄を味わうの、どっちがいい?」

 

にっこり極上スマイルでそういうレウリアに、身の危険を感じたのか…

ルフィは、ぶんぶんと首を横に振り

 

 

「リアは、お…おおおおれのねーちゃんだ!」

 

 

「分かれば宜しい」

 

これを見ていたゾロ・ウソップ・ナミの3人は心の中で

 

あー叔母ちゃんなんだ……

 

と、思ったが、そこには触れてはいけない禁域なのだと悟った

 

の時だった…

突然、シャララ~ンというきらきら音と共に赤いバラがすっと現れた ナミの前に

瞬間―――

 

「ああ海よ!今日という日の出逢いをありがとう!!!ああ恋よ!この苦しみに耐えきれぬ僕を笑うがいい!!」

 

「え?何!?」

 

流石のナミも驚いたらしく、ぎょっとして後退った

 

「僕は君となら、海賊にでも悪魔にでも成り下がれる覚悟が出来た!!」

 

「げっ…」

 

ゾロとルフィが微妙な顔をする

この登場の仕方は…間違いなく……

 

そこには、目をハートにしたサンジの姿が―――

 

「しかーし!何という悲劇か!!僕らにはあまりにも大きな障害が――――」

 

このままサンジのラブトークが続くかと思いきや…

意外な所で横やりが入った

 

「障害ってのぁ、おれの事だろうサンジ」

 

「うっ!クソジジイ!!」

 

そこには、腕組んで椅子に寄り掛かるゼフの姿があった

 

「いい機会だ、そいつらと一緒に海賊になっちまったらどうだ?」

 

「…………っ」

 

サンジの表情が豹変する

 

「てめぇは、もうはこの店には要らねぇよ」

 

 

「……………っ!!!?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

      ◆      ◆

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「成程ね……」

 

とある岩場の、影

 

「そのコックに助けられて、一命を取り留め ここへ帰って来れたと…そういう事か、ギン…」

 

ギンはごくんと息を飲み、目の前にいる人物を見た

 

「は……はい。し、しかし……まさか本船がこんな状態にあるだなんて……」

 

ギンはぎゅっと目をつぶると、ゆっくりとその目を開けた

 

「“首領ドン・クリーク”」

 

「…………なんだ」

 

 

「………案内します。海上レストラン“バラティエ”へ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

とりあえず、ようやく次回クリークが来るようです

 

ちなみに、夢主が何故ゾロの事をああ呼ぶのかは…

その内、出てきますw

おそらく、ゾロの事は知っていた可能性が大ですからね

 

一応?有名人?だったんだしー

顔合わせは、あっさり終了ですね

 

2011/09/27