MARIKA

-Blue rose and Eternal vow-

 

  Act. Ⅰ 海上レストラン 16

 

 

 

 

「イブシギ~~~~~~~ン!!!」

 

空高く飛び上がっていたパールが急降下しだした

それも、頭のパール部分を頂点にして

 

「避けろ!!サンジ!!!」

 

コック達が叫ぶ

 

だが、サンジには避けられない理由があった

今だ銃口はゼフに向けられている

避ける訳にはいかない

 

 

「…………っ!」

 

 

その時だった

レウリアが、サンジを庇う様に覆いかぶさったのだ

 

「!?」

 

それに驚いたのは他ならぬサンジだった

 

「リアさ……っ!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「——————プレゼント!!!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ドゴオオン!!!!

 

 

「あああああ……っ!!

 

「うあ………っ!!」

 

パールの頭は、サンジを庇ったレウリアごと二人に直撃した

高低差のある場所からの急降下の攻撃に、身体中の骨がミシミシと悲鳴を上げる

 

「……………っ」

 

「くっそォ……!!」

 

コック達の嘆き声が聴こえる

 

「リアさ…ん……なん、て…無茶……」

 

微かに途切れそうな意識の中レウリアが、笑った気がした

 

 

 

「ハァーッハッハッハッハッハ!!!てっぺき!!!」

 

 

 

パールが勝ち誇った様に笑っていた

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

   ****    ****

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――――9年前

 

       北の海(ノースブルー)・客船 オービット号

 

 

「オールブルー?」

 

「ああ、知らねェの?伝説の海の名前だよ」

 

少年の言葉に、コック達は「ああ…」と思い出した様に頷いて

 

「バカだな、お前は。そりゃぁ、知ってるけどよ」

 

「まァ、おれ達だって海のコックだ。一度はその海を夢見た事はあるぜ」

 

コック達の言葉に、少年が嬉しそうに顔を綻ばせる

 

「だろォ!!おれは、いつか必ず その海を探し出すんだ!!」

 

「探すたってなァ、サンジ」

 

「大体、お前オールブルーがどんなものなのか分かってるのか?」

 

くっくっくと笑みを浮かべるコックに、サンジと呼ばれた少年はムッとして叫んだ

 

「分かってるよ!!バカにすんな!!」

 

サンジは夢見る様にうっとりと顔を綻ばせた

 

東の海(イーストブルー)西の海(ウエストブルー)北の海(ノースブルー)南の海(サウスブルー)。この四つの海にいる全種類の魚達が住んでる海……それが、オールブルーさ!海のコックにとっては、たまらねェ楽園なんだ!!

 

想像しただけでわくわくする

全ての海域の魚がいるのだ

楽園なんてもんじゃない もっと凄い所だ

 

サンジは目をキラキラさせながら

 

「おれの夢だ!!」

 

サンジの言葉に、コック達が顔を見合わせた

 

「そりゃあな、世界中の海の食材がその海に揃ってるんだ。料理人の腕がなるってモンよ」

 

「ああ、命賭けてもその海を探す価値はある!」

 

コック達の反応に、サンジは嬉しそうに微笑んだ

が――――……

 

 

「ま、ホントにあれば(・・・)な!」

 

 

「―――――え?」

 

不意に降って湧いた様な言葉に、サンジの表情が消える

 

コック達はくつくつと笑いながら

 

「ありえねェんだよ。“オールブルー”なんて、奇跡の海は!」

 

「ちょっと考えれば分かる事だ」

 

「大方、どこぞの夢見るコックが大ボラ吹いたんだろ!」

 

そう言って、はっはっはと笑い出す

 

「…………っ」

 

サンジが泣きそうな位、わなわなと震えだす

 

「さァ、バカ話は終わりだ」

 

「仕事だ仕事。皿引いて来いサンジ、片付けるぞ」

 

そう言って、どやどやとそれぞれの持ち場に戻っていく

 

「………………っ」

 

サンジは、叫びたいのを我慢する様にぐっとこらえながら、コック達を睨みつけた

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

カチャカチャと引いてきた皿の中の残り物を、ゴミ箱に捨てる

その横で、コック達は客の残り物に舌を綴っていた

 

「あーあー、もったいねーな。こんなに残してくれやがって」

 

「これなんか、殆ど手ェつけてねェぞ、自信作だったのに」

 

「昨今の客は贅沢だなぁ、おい」

 

そう言いながら、次々と残り物を口に運んでいく

サンジはそれを見て不快そうに眉を寄せた

 

「みんなやめろよ、客の残りモンなんて!!味悪そうな食材も、さっき捨てといたぞ!!」

 

そう言って、バサバサ―と何の躊躇いも無く 残り物をゴミ箱へ捨てていく

それを見ていたコック達は、小さく息を吐きながら

 

「そういう事言ってるから、お前ェはまだ半人前だってんだよ。おれ達は、海のコックだってことを忘れるな」

 

「海ってのは、何が起こるか分からねェ。節約しとくに越した事ねェんだよ」

 

節約?これが?

客の残り物を漁る行為が“節約”だというのか

 

サンジには理解出来なかった

 

「どうだいお前も、ん?」

 

コックがほれっという感じに、魚の骨を見せた

その行為が自分をバカにしているのだと分かり、サンジはふんっとそっぽを向いた

 

「いらねェよ!」

 

その時だった

 

 

 

 

 

きゃああああああああああああ!!

 

 

うあああああああ!!

 

 

 

 

 

『皆さん落ち着いてー!落ち着いて下さい!!』

 

突然、上のホールから客の叫び声と、ボーイの声が響いて来た

 

「ん?」

 

コック達は互いに顔を見合わせて首を傾げた

その声は尋常ではなかった

 

瞬間、バタバタと足音が近づいて来たかと思うと、ボーイの1人がキッチンに駆け込んできた

 

「どうしたんだよ、何の騒ぎ――――」

 

「海賊船だ!!海賊がこの船に向かって来てる!!」

 

「か…海賊!?」

 

ざわりと、キッチン内がざわめいた

 

「おい、海賊って……!!?」

 

サンジの言葉に、コック達が慌ててサンジを掴みだす

 

「バカ、逃げるぞサンジ!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ギギギギギギ

 

雨が降りしきる嵐の中

鳥にコック帽をかぶった船先の海賊船がオービット号に近づいて来た

 

「あの船は……クック海賊団………っ!!!」

 

「”赫足のゼフ“の船だ……!」

 

「“偉大なる航路(グランドライン)”から帰ったのか!!?」

 

船員たちが甲板から見える、クック海賊団の旗印を見て息を飲んだ

 

クック海賊団といえば、1年前に“偉大なる航路(グランドライン)”に入ったと言われている海賊団だった

特に、船長の”赫足のゼフ“は凄腕のコックであり、足技の達人と言われ

その足が敵の血で赤く染まる事から“赫足”と通り名が付いたほどだ

 

骨の代わりにフォークとナイフが交差する、コック帽を被った鳥のマーク

 

それは、間違いなくクック海賊団のものだった

 

サンジは慌てて甲板に駆け上がると、その様子を階段からのぞき見た

そこには、にやにやと笑みを浮かべる海賊達

そして、その中央には、腕を組んでにやりと笑みを浮かべる、”赫足のゼフ“の姿があった

 

オービット号の船長は、ごくりと息を飲んだ

かたかたと震える身体を必死に堪えながら

 

「……海賊、”赫足のゼフ“船長とお見受けします。ご…ご用件は……」

 

瞬間、ゼフはにやりと笑った

そして手を軽く上げると――――

 

 

 

 

「奪え」

 

 

 

 

「ウオオオオオオオオオ!!!!!」

 

ゼフの声と共に、海賊達が一斉に船員や客達に襲い掛かった

 

「金品を全て奪い尽くせ!!!」

 

きゃあああああ

うわあああああああ

 

客や船員たちが泣き叫びながら逃げ惑う

海賊達は、そんな彼らにお構いなしに金目の物を奪いまくった

 

サンジは、ガタガタ震えながら階段の柵にしがみ付いて歯を食いしばった

 

くっそォ……

あんな奴らに、殺されてたまるか……っ!!

 

「船長、急がねェと嵐に巻き込まれる!!」

 

「わかってるよ」

 

副船長の言葉に、ゼフはちっと舌打ちをしながら答えた

 

その時だった

ゼフの目に見てはならぬものが入った

 

ドサリと置かれた奪った金目の物に混じる様に入っている袋

それは――――………

 

「オイ、ちょっと待て!てめェ、こりゃ何だ……!!」

 

「………え……」

 

ゼフのその言葉に、それをおいた海賊の1人がぎくりと顔を強張らせた

それは、ゼフが常々“手を出すな”と言っている品だったのだ

 

「うわぁ!!ゴ…ゴメンなさい、ゼフ船長っ!……ちょっと、小腹が――――ぐあっ!!」

 

その海賊が言い終わらぬ内に、ゼフの強烈な足蹴りがそいつに炸裂した

ボコォ!!とオービット号を破壊しながら海賊が吹っ飛ぶ

 

ぎょっとしたのは、襲われていた客達だった

そして、それを見ていたサンジもだった

 

まさか、仲間を蹴り飛ばすとは誰が思っただろう

そして、それもさることながら あの強烈な足蹴り

尋常では無かった

 

蹴られた海賊は、ミシミシと身体が悲鳴を上げなら遠くの方へ吹き飛ばされる

ゼフは、カツカツとその海賊に近づくと、ぐいっと頭を潰し上げながら持ち上げた

 

他所(よそ)の食糧には手を出すなと、いつも言ってあるはずだぜ」

 

「……は、はひ……っ!!」

 

「ボケナスが!!」

 

ゼフはそう言い捨てると、そのままそいつを投げ捨てた

 

殺される―――

 

サンジは思った

このままではあの男に殺される――――と

 

瞬間、身体が動いた

持って来た包丁を二振り両手に持つと、飛び出した

 

「うわぁ!何だァ、このガキ!!」

 

突然騒ぎ出した一味に、ゼフがゆっくりと振り返る

そこには、包丁を振り回す少年の姿があった

 

サンジだ

 

サンジは、包丁を持つ手に力を入れると、キッと海賊を睨みつけた

 

「…おい、ボウズ 危ねェからそんなモン振り回すんじゃねーよ」

 

「血が出たよ、こら重傷だ」

 

と、海賊の1人がワザとらしく手を振った

だが、サンジはそんな海賊達に向かって吠えた

 

「うるせェ!!お前らなんかに、殺されてたまるか!!」

 

ぎょっとしたのは、仲間のコック達だった

 

「ああ、サンジィ~~~~」

 

「やめろぉ!抵抗するなぁ!!」

 

頭を抱えて、叫びだす

まさか、サンジがあんな行動に出るとは思わなかったのだろう

なんとか、押し留めようと必死に叫ぶが サンジにはまるで通じていなかった

 

サンジだって本当は怖かった

手も足もガタガタと震えて、声も上ずっている

それでも、死にたくなかった

オールブルーを見つけるまでは死ねなかった

 

だが、ゼフは一瞥だけくれると―――

 

「ふん、そんな死にたがりのガキは とっとと殺しちまえ!!」

 

「死にたいもんか!!どうせ、前らに殺されるぐらいだったら、おれが先にお前らを殺してやる!!!」

 

そう叫んだ時だった

 

バコォ!!!

 

「うあ……っ!!」

 

強烈なゼフの足蹴りがサンジの腹めがけてさく裂した

瞬間、サンジの身体が船室を突きぬけて吹っ飛ぶ

 

「サンジ!!」

 

コック達が叫んだ

 

「か――――やるぅー船長」

 

「容赦ねェな!」

 

はははははと、面白そうに海賊達が笑った

 

が、サンジはそれだけでは諦めなかった

バラバラになった板の隙間から這い出てくると、そのまま甲板に這いつくばりながらゼフに近づいた

 

「……死んで…たまるか………」

 

一歩 また一歩 ゼフに近づく

そして、その足に噛み付いた

 

 

「お! おれはいつか……!!!オールブルーを見つけるんだ………っ!!!!」

 

 

一瞬ゼフの瞳が大きく見開かれた

辺り一帯、しん…となるが……

次の瞬間、どっと笑いが湧きあがった

 

「プッ…はっはっはっはは!!オールブルーだってよ!大いなる志だな!!」

 

「船長、言ってやって下さいよーそんなモンは、“偉大なる航路(グランドライン)”にも無かったってよ!!」

 

海賊達が大笑いするのとは逆に、コック達は真っ青になっていた

 

「あのバカ……まだ、あんな事を……っ」

 

あああと、青くなって頭を抱え込む

 

はっはっはっはっは

海賊達の笑い声が妙に耳障りだった

 

ゼフはスゥッと息を吐くと ゆっくりととサンジごと右足を上げた

そして、そのまま海賊達がいる方へ蹴り飛ばしたのだ

 

ドガガガアン!とけたたましい音と共にまたサンジが吹き飛ぶ

だが、サンジは諦めなかった

また、よろよろとバラバラの板の中から這い出てくる

 

「こんな…とろで………」

 

はぁはぁと息をしながらバタリと仰向けに倒れ込む

 

「くそ海賊なんかに……殺されて、た、まるか…よ……っ!!」

 

いつまでも折れない信念

オールブルーを夢見る気持ち

 

ゼフはじっとサンジを見続けた

その時だった

 

「船長、引き上げましょう!!この嵐、予想よりでかい!!」

 

副船長のその言葉に、ゼフは一度だけその瞳を瞬かせた後

 

「よし、てめェら、早ェとこ宝を船に積み込め!引き上げるぞ!!」

 

そう声を掛けると、そのまま踵を返した

ドカドカとサンジの横を海賊達が通りすぎていく

 

サンジは動けなかった

太刀打ちできなかった

 

悔しくて悔しくて、ボロボロと涙を流した

 

くそ……

くそ………っ

 

その時だった

 

突然、大津波がクック海賊船にぶち当たったのだ

瞬間、海賊船がオービット号にぶつかる

 

「!?」

 

気付いた時にはもう遅かった

ぶつかった衝撃で波が一気にオービット号の甲板に押し寄せてきたのだった

 

「サンジ!!!」

 

その波は瞬く間に甲板をサンジごと飲み込んだ

 

「うわあああ!!!」

 

サンジの身体は一気に浮きあげられたかと思うと、船の外へ投げ出された

 

 

「―――――っ!!!」

 

 

「サンジぃぃぃぃ!!!!!」

 

 

死にたくねェ………っ!!

 

そのままサンジは嵐の海の中へ呑みこまれたのだった

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

サンジ過去編前編

と言った所でしょうか…

やっぱ1話に収まらなかったよwww

 

とりあえず、問題はゼフの足を漫画とアニメとどちら仕様でいくか…ですね

漫画で沿いたい所だが…R指定掛けなきゃいけなくなるかもだし…それは嫌や

ちょっと相談します 

 

2013/07/10