MARIKA

-Blue rose and Eternal vow-

 

  Act. Ⅰ 海上レストラン 14

 

 

 

「ハーッハッハッハッハッ!!燃えろ燃えろォ!!!」

 

パールは高笑いをしながら、更に火力を上げた

白い炎が、さらにヴボォ!っと高く舞い上がりだす

 

「燃えろォ!!!この炎と、炎の盾で おれはもう超鉄壁だァ!!!」

 

ヒレの部分が炎の海と化す

バラティエ自体、海のど真ん中に浮ぶ海上レストランだ

そのヒレの部分が火の海になっては、逃げ場などない

 

海賊達は、自分達に降りかかった火の粉を叩くので精一杯だった

 

クリークが、ちっと舌打ちをする

 

「バカが……!乗っ取る船を丸焼きにしちまう気か!!」

 

だが、パールには最早そんな事考える余裕は無かった

身の危険が迫っているのだ

こうして、炎で威嚇しなければ襲われる!!

 

それしか、頭には無かった

 

レウリアを降ろしたサンジが、「くそ…っ」と舌打ちしながら呟く

 

このままでは、店が燃えてしまう

ゼフが大切にしてくれた店が……

 

『海のど真ん中にレストランがあればな……』

 

ゼフの夢が……

 

「あ――――づづづづづ!!!!」

 

後ろ気ルフィが炎に巻かれてバタバタしている

 

燃えてしまう

 

「畜生ォッ!!海の真ん中で“火の海”じゃ…逃げ場がねェ!!」

 

「マズイ!店に引火するぞ!!」

 

遠くでコックやカネル達の声が聴こえてくる

 

この店が燃えるだと……?

 

「燃えろ燃えろォ!!!」

 

パールがどんどん火力を上げていく

 

そんな事……

 

その瞬間、サンジが空高く飛び上がった

 

ぎょっとしたのは、他ならぬパティ達だった

サンジが向かったのは、あの火の中心だったからだ

 

「サンジさん!!」

 

レウリアの声が木霊する

だが、たとえレウリアの頼みだろうと、これだけは聞く訳にはいかなかった

 

「バカ!丸コゲになるぞサンジ!!」

 

「パティ、下がるんだ!!」

 

パティとカルネが叫ぶ

 

だが、サンジは止まらなかった

 

「てめェ、この店を……」

 

高くジャンプをしたかと思うと、そのまま炎の中心地であるパールの上空から――――

 

 

 

 

 

「勝手に燃やすんじゃねェよ!!!」

 

 

 

 

 

そう叫ぶな否や、サンジが空中からパールに向かって強烈な回し蹴りをさく裂させたのだ

 

驚いたのはパールだけではなかった

海に避難していた海賊達も、あの炎の壁を越えたサンジを見てぎょっとした

 

今まで誰ひとり、あの壁を越える事は出来なかった

だが、サンジはいともたやすく超えたのだ

 

「なっ…何ちゅうムチャをするんだ!!」

 

「火ダルマになりてぇのか!!?」

 

パールはかろうじてサンジの蹴りを受け流したが

それよりも、この炎の壁を越えられた事の方が衝撃が大きかった

 

「な…何!?猛獣も寄せ付けないファイヤーパールを!!」

 

その言葉に、サンジがくっと喉の奥で笑った

 

「バーカ、炎が怖くて料理人(コック)が務まるかよ」

 

わなわなとパールが震えだす

 

「ち…畜生ォ……っ!なんて、イブシ銀なやつだっ!!」

 

瞬間、サンジがにやりと笑った

 

「行くぜ!」

 

言うが早いか

サンジは、そのままヒレに手を付けると、瞬時に足を引いた

そして、パールが攻撃するよりも早く――――………

 

 

 

 

  ドゴォ!!!

 

 

 

 

「!!!!」

 

まともに、サンジの蹴りがパールの顔面に入った

その時だった

 

「サンジさん、そまましゃがんで!」

 

何処からともなくレウリアの声が聴こえたかと思うと――――

 

ヒュン……!

 

風の唸る音と共に、何かがパールめがけて撃ち放たれた

サンジの蹴りで体制を崩していたパールにそれを避ける事など出来る筈もなく

 

「…………っ」

 

 

 

  バシィィィィィ!!!!!

 

 

 

 

鞭の様な唸る何かが、パールの胸元めがけて放たれた

瞬間、パールの胴を守っていた鉄板部分にひびが入る

サンジの蹴りと、レウリアからのそれを受けたパールには成す術もなく、そのままドカァ…ン!と倒れ込むしかなかった

 

「うわっ!二発とも入った!!!」

 

「鉄壁のパールさんの壁を抜けた!!!?」

 

驚いたのは、他ならぬ海賊達だった

今まで誰1人として抜ける事の出来なかったパールの炎の壁をいとも容易く抜けたのだ 2人も

 

その時だった

サンジの後ろの炎が避けたかと思うと、レウリアがゆっくりと歩いて来た

その手には、何やら不思議なロットの様なものを持っており、その先から先程放ったであろうコオオオと音を立てる謎の何かが鞭のように出ていた

 

「んな、炎が避けたぁ!!?」

 

その事実に、また海賊達が驚愕の声を上げた

 

そう―――避けていた

レウリアの周りの炎だけが避けているのだ

 

「リアさん、それは?」

 

サンジがレウリアの持っている武器に気付き、視線を送る

レウリアは何でもない事の様に

 

「ちょっと変わった武器です」

 

そう言って、シュッと不思議な鞭を唸らせる

瞬間、ヒレに触れた部分がバチイッと粉々に砕け散った

 

 

 

 

絶対嘘だ……!!!

 

 

 

 

と、海賊達が思ったのはいうまでもない

 

「しかし、リアさんの周りには炎は寄ってこないんですね」

 

サンジももっともな意見に、レウリアはにっこりと微笑んだ

 

「ああ、それはネフェルティが護ってくれているから、この程度の炎なら風で受け流せるの。たとえば―――――」

 

そう言うが早いか

レウリアは、ヒュンッとその不思議な鞭を横に唸らせた

瞬間、真横の炎が消えたかと思うと、そのまま鞭が海賊達めがけて襲っててきた

 

「ぎゃああああああ!!!」

 

海賊達が、慌てて避けようとするが…避けきれる筈もなく思いっきり食らって海へ落ちる

 

「こんな感じに」

 

と、にっこりと微笑んで見せた

 

「な……何だ、翔風とこのコック…!!マジで危険(ヤベ)ェぞ!!!」

 

海賊達が驚愕の声を上げながら叫ぶが、レウリアは気にした様子もなく

 

「とりあえず、一時しのぎかもしれないけれどこの炎 消すわ」

 

そう言った瞬間、それは起きた

突然、彼女の周りに風が巻き起こりだす

 

ビョオオオオオオ

 

という音と共に、その風はどんどん強くなっていき――――瞬間

凄まじい突風が吹いたかと思うと、あれだけ炎まみれだったヒレの部分の炎が一欠けらも残さず消えたのだ

 

「なっ……!?」

 

驚いたのは、他ならぬパールだった

自慢のファイヤーパールがこうも簡単に消されてしまったのだ

 

危険……!!

この女も、コックも危険だ……!!

 

パールの頭には、最早これしかなかった

 

「す、スゲェ、あのねえちゃん!」

 

「一瞬で、消えちまった」

 

コック達は歓喜の声を上げながら、助かっと喜んだ

 

その時だった

 

 

「おのっ…おの……!!おのれェ~~~~~っ!!」

 

 

顔面を血だらけにしたパールが、わなわなと震えながら叫んだ

 

頭の中を、危険 危険 とそれだけが支配する

 

 

 

 

「危険だ!!危険すぎるっ!!!火を!!!ファイヤーパールをもっとくべねばァ!!!」

 

 

 

 

 

そう叫んだ瞬間、再びボォッとパールの全身が白い炎に包まれたかと思うと―――

炎の粒を、また辺り一面にまき散らした

 

「うわぁ!!!まただ!!!」

 

「店が燃えるぅ!!!」

 

「厨房に火が回ったら、店が吹き飛ぶぞ!!!」

 

その粒では、バラティエ目がけて放たれた

そして、そのバラティエのエントランスホールにいるのは――――

 

「オーナー!!逃げて下さい!!!!オーナー!!!」

 

ゼフだった

 

ゼフは、その場から動こうとはしなかった

 

「オーナー!!!」

 

今にも炎の粒がゼフに襲いかかろうとしていた時だった

ゼフは、一度だけその瞳を瞬かせた後

 

「ふん!」

 

ブンッ!という、風を切る音と共に、ゼフが義足の右足を高速で空蹴りを放った

瞬間――――……

 

 

コン……コロコロコロ…

 

炎を纏っていた筈の粒での炎は風圧で消えてしまった上に、粒でも威力が落ち、その場に転がったのだ

 

「え!!?」

 

驚いたのは、他ならぬパールと海賊達だった

 

「おれのファイヤーパールが……っ」

 

半泣きになりながらそう訴えるパールに、ゼフはふんっと鼻を鳴らした

 

「足一本なかろうとも、これぐらい造作もねェこった」

 

ゼフのその言葉に歓喜に震えたのはコック達だった

 

「~~~~~~~~~!!すげェ、オーナーっ!!」

 

「蹴りの爆風で炎を消しちまった!!」

 

それと同時に、海賊達もぎょっとしていた

 

「なんてこった!まさに、神業!!“赫足のゼフ”は健在なのか……!!?」

 

そして、やはりルフィも嬉々としてその顔に笑みを浮かべた

 

「おっさん、すげェ!!さすがだなァ!!」

 

それは、レウリアも同様だった

最早、神のなせる業としかいいようがないゼフの足技は、驚き以外のなにものでもなかった

 

世間は、”赫足のゼフ”はもういないと言うが……

 

あの人は衰えてなんかいない

今でも、“赫足のゼフ”なのだ

 

「くそくそくそぉ~~~~~~~!!!!」

 

パールがわなわなと震えだすと、再び火力を強めた

そして、瞬く間に、サンジとレウリアを囲む様に炎の壁を作り上げる

 

 

 

 

 

 

「危険だ…危険だ…危険だぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!」

 

 

 

 

 

 

パールの興奮具合に、レウリアもサンジも溜息を洩らした

 

「ああ……もう、面倒ね……」

 

アイスブルーの瞳を瞬かせながら言うレウリアに、サンジも深く頷く

 

さっさと、パールを沈めてしまおう

そう決意した時だった

 

「パールの野郎、余計な事ばかりしやがって…!!炎が店に回る前に、てめェら、“ヒレ”ごと沈めてやる!!!」

 

何処からともなくクリークの叫び声が聴こえたかと思うと、突然あのルフィを吹き飛ばした鉄球がパールとレウリアとサンジの3人のいるヒレの中心めがけて振り下ろされたのだ

 

「サンジ、クソ女、危ねェ!!」

 

「駄目だ!火に囲まれてる…!!」

 

パティとカネル達が叫ぶ

 

 

「………………っ」

 

流石のレウリアもあの鉄球をネフェルティで防御するのは難しい

しかも、向こうは味方のパールが居るのに放って来たのだ

 

パールもまさかの展開に、驚愕の顔をしている

 

「サンジさん!!」

 

レウリアが、サンジの手を引こうとした瞬間

逆に、手を引かれてサンジの背に庇われる形となった

 

驚いたのは他ならぬレウリアだった

 

「ちょっ…!サンジさん、放して!!」

 

「駄目です、リアさんに怪我なんてさせられません」

 

「サンジさん!!!」

 

このままではサンジは、もろにあの鉄球を食らってしまう

ルフィですら吹き飛ばされた鉄球を――――……

 

 

 

「サンジさん、避け―――――……!」

 

 

 

その時だった

 

「あぢぢぢぢぢぢっ!!」

 

突然、炎の壁をルフィが越えてきたのだ

 

「なっ!?」

「ルフィ!?」

 

突然現れたルフィにぎょっとする間もなく、ルフィはにやりと笑みを浮かべると

 

 

「ゴムゴムの――――」

 

瞬間、ルフィが両の手をぐい~~~~んと後ろへ伸ばした

そして――――――

 

 

 

 

   「――――バズーカ!!!!」

 

 

 

 

 

 ドンッ!!

 

と、その鉄球を受け止めと、そのまま弾き返したのだ

驚いたのは、他ならぬクリークだった

 

まさか、あの巨大な鉄球を弾き返されるとは思ってはいなかったのだ

 

鉄球は、そのままクリークの横にあるマストに激突すろと、そのままマストをへし折った

折れたマストはぐらりと前に倒れ込み――――……

 

それを見た、サンジは慌ててレウリアを抱え上げると横へ避けた

ルフィもそれにならう様に、その直線上からささっと避ける

 

瞬間――――

 

 

 

  バキャッ……!!

 

 

 

 

「か!!………はっ………!!」

 

ものの見事に、パールの脳天に直撃したのである

 

「が…あ……へ………」

 

そのままパールくらくらと揺れた後、その場にがくっと倒れたのだった

 

それに驚いたのは、海賊達だった

 

「パールさんが……」

 

「本当にやられちまった……!!」

 

無敵無敗の男・鉄壁のパールがやられたのだ

いや、正確にはクリークにやられたようなものだが……

 

それを見ていたレウリア達は…

 

「何なんだよ、コイツは…」

 

「バカだなーこいつ……」

 

と、サンジとルフィが言うのに対しレウリアは、はぁ…と溜息を洩らしながら

 

「二人とも、正直に言い過ぎよ。でも、今のは流石に可哀想かも……」

 

と、憐みの表情を見せる

 

伸びきってしまったパールを見て、クリークチッと舌打ちをかました

 

「……どいつもコイツも、結局 頼れるのはおれだけか……!」

 

その時だった

 

「ぬあ!!」

 

突然、後ろの方からゼフの叫び声が聴こえてきた

ハッとしてそちらの方をみると、そこには――――

 

「ギ、ギンさん!?」

 

それを見たレウリアはぎょっとした

 

そこにはギンが居たのだ

ゼフの義足である右足をへし折り、倒れさせた頭に銃を突きつけるギンの姿が

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

パール、撃沈の回ww

まぁ、この後復活しますけどねー(-_-;)

もう起きて来なくていいのにな…


とりあえず、次回からちょっとアレなシーン入りますよー

 

2012/09/01