MARIKA

-Blue rose and Eternal vow-

 

  Act. Ⅰ 海上レストラン 13

 

 

 

「ハァ――――――ッハッハッハッハ!!てっぺき!!よって無敵!!クリーク海賊団、鉄壁の盾男・パールさんとはおれの事よ」

 

「パールさん!!」

 

自称 盾男・パールを見て、海賊達が歓喜の声を上げた

 

「パティ!カルネ!!大丈夫か!?」

 

ゼフが、目の前で倒れているパティとカルネに声を掛ける

だが、2人は立てずにいた

 

そのゼフの言葉に、パールがにやりと笑みを浮かべた

 

「大丈夫じゃねェ~~~~よ?この、おれの殺人パンチ “パール プレゼント”を食らっちまったんだからよォ!!」

 

そう言って、パールは両手の盾をパーンと鳴らす

 

すると、海賊の1人がパティの持っていた“それ”に目を付けた

それは、綺麗に研がれて、鋭く光っていた

 

海賊はにやりと笑みを浮かべると

 

「みろよ、こいつ!いい刃物持ってるじゃねェか!」

 

それは、パティが大切に使っていた愛用の包丁だった

海賊は、腰に仕舞っていたそれに手を掛けると、そのままエプロンから引き抜いた

 

「へへへ、これはおれが貰っとくぜ」

 

そう言って、その包丁を我が物にしようとした時だった

気を失っている筈のパティの腕が、その包丁の刃を掴んだ

 

「あん!?」

 

海賊が眉をひそめて、パティの手を外そうと手を振り回しだす

 

「オイ、手を離せ!!」

 

「あ……あう……あ」

 

意識が半分朦朧としているのか、上手く喋れないままパティは必死に抵抗する様に刃を持っている手に力を込めた

 

ポタ…ポタ…と、パティの手から血が流れ落ちる

 

「………………」

 

「その手を離せ!!、くたばり損ないがぁ!!!」

 

「………………っ」

 

海賊が、パティの顔を押さえつけ、無理矢理包丁を奪おうと躍起になった瞬間――――

 

コツ…と、靴の音が聴こえたかと思うと

 

「!!?」

 

バキィ!!

 

突然、何の前触れもなく、蹴りがさく裂してきた

海賊は叫ぶまもなく吹っ飛ぶと、周りの海賊も巻き添えにしてそのままパールの身体の盾にバーン!という音を立ててぶつかっていった

くるくるくると、宙に浮いた包丁が落下してくる

蹴った張本人―――サンジは、その場所を見る事もなく、そのままパシッとその包丁を柄をキャッチした

 

それを見ていたルフィは嬉々としながら

 

「あいつ、ほんとにスゲェ蹴りだなぁ~!やっぱ、おれが気に入っただけの事はある!」

と、もっともらしく言うが……

 

ルフィがサンジさんを気に入ったのは、蹴りを知る前だったと思うのだけれど……

 

と、レウリアが心の中で突っ込んだのは言うまでもない

だが、ルフィの言う事にも一理あった

 

とにかく、サンジの蹴りの威力は半端なかった

あの脚力は、常人ではあり得ない

 

そんなルフィとレウリアの思惑を知る由もないサンジは、ただ真っ直ぐに海賊達を見据え

 

「包丁は料理人コックの魂。クソ素人がやすやすとコックの包丁に手を掛けるんじゃねェよ」

 

そう宣言すると、その包丁をパティへと差し出した

 

「サンジ……」

 

「ホラ、しっかり持ってくたばってろ。あいつらは、おれが片付ける」

 

パティは小さく頷くと、大事そうにその包丁を握り締めた

 

だが、そのサンジの言葉に激怒したのは海賊達だった

 

曲がりにも自分達はこの東の海イースト・ブルーの覇者“クリーク海賊団”なのだ

その自分達を、単なるコックが片付けると宣言したのだ

許せるものではなかった

 

海賊達は、ギラリとその目を険しくさせると

 

「なァにが、片付けるだ!!!」

 

「たかがコックにおれ達がやられるかァ!!!」

 

そう息巻き、一気にサンジに向かって襲い掛かった

だが、サンジは一度だけ紫煙を拭くと、小さく息を吐き

次の瞬間―――――……

 

 

 

 

 

ドガガガガガガガ!!!

 

 

 

 

 

 

「「「「「!!!!?」」」」」

 

 

 

海賊達めがけて、強烈なサンジの回転蹴りがさく裂したのだ

しかも、見事にすべての海賊達の顔面めがけて

 

回転蹴りを食らった海賊達は、「うわああああああ!!!」という叫び声と共に、辺り一帯に蹴り飛ばされた

 

「たかがコックだと?三枚にオロすぞ、てめェら」

 

ギラリと、一等険しくなったサンジのドスの利いた声が響く

それを見ていたパールは、両手を広げるとハッと鼻で笑った

 

「蹴りだけで彼らをヤッっちまうとは、横着なヤローだねどうも……そりゃ、ポリシーかい?」

 

パールのその言葉に、サンジはくっと喉の奥で笑った

 

「料理人は手が命。戦闘で傷付けるわけにゃいかねェんだ」

 

そう言って、上げていた足を高くパールに向かって蹴り上げた

ビュッと風を切る音が響く

 

「てめェもこの脚で、仕留めてやるよ」

 

その向けられた言葉に、パールがにやりと笑みを浮かべた

 

「仕留める?きみがおれを!? そりゃぁ、無理だね!!おれは過去61回の死闘を全て“無傷・・”で戦ってきた鉄壁の男だ。君は手を守るだけだが、おれは全身を守り戦える」

 

そう言って、すっと人差し指を立てた

 

「おれは戦闘において一滴・・の血も流した事ね~~~~~~のよ。血の一滴たりともだ」

 

そう宣言すると、手に付けている盾をパーン パーンを2度鳴らした

 

「無傷こそ強さの証!!おれはタテ男でダテ男だァ! イブシ銀だろ」

 

と、キラーンとパール的かっこよく決めてみた

 

が……

 

「何だ、あいつ」

 

鋭く、よりにもよってルフィに突っ込まれた

レウリアに至っては、突っ込む気すら起きない

 

ギャグなのか…

だが、まったく面白くない

 

その時だった

突然、後ろに居たクリークが棘の生えた鉄球を振り回しながら叫んだ

 

 

 

 

 

「オイ、翔風と麦わら小僧!!!余所見してるとケガするぜ!!!!」

 

 

 

 

 

 

そう叫ぶな否や、その鉄球をルフィめがけて投げ飛ばしてきたのだ

ブン!という音と共に、鎖の付いた鉄球が襲い掛かってくる

 

ぎょっとして、レウリアはすかさず 「ネフェルティ!」 と叫んだ

瞬間、レウリアの身体が宙に舞いあがる

 

が、ルフィはそんな芸当出来る筈もなく――――

バキィ!という音と共に、ルフィの捕まっていたマストが折られる

 

「おわっ!」

 

びっくりしたルフィはそのままマストに捕まったまま宙に浮いてしまった

 

「ルフィ!」

 

レウリアがルフィを掴もうとした瞬間だった

 

 

 

「くたばれっ!!!」

 

 

レウリアがルフィを掴んだ瞬間――――

クリークの鉄球が再度、ルフィ目がけて投げ飛ばされた

 

「うえっ!!!」

 

「きゃぁっ!!!」

 

それをもろに食らったルフィは、そのままバラティエに方角に向かて吹き飛んだ

掴んでいたレウリアごと

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「おれには軍艦の大砲も効かないんだ」

 

ハハハハハと、パールが笑いながらまたパーンと盾を鳴らす

 

ひゅるるるるるるるるるるるるるるる

 

「どんな攻撃でも無傷―――――……」

 

るるるるるるるる………

 

「あ」

 

誰かがそう洩らした瞬間

 

 

 

 

 

   ご~~~~~~~~~~ん

 

 

 

 

 

パールの後頭部に、クリークによって飛ばされたルフィが激突した 見事な位清々しく

 

「…………………」

 

パールがカチーンと固まる

だが、飛んできた当の本人は何事も無かったかのようにパンパンとズボンの砂を払った

 

「あーびっくりした。海に落ちなくてよかった」

 

「よかったじゃないわよ!!」

 

そこへ、空から降りてきたレウリア着地しながら突っ込んだ

 

「お、リア!無事だったのか!!」

 

「無事だった……じゃないわよ!! ルフィのせいで巻き添え食らう所だったじゃない!!」

 

どうやら吹き飛ばされた瞬間、レウリアは離脱したようだった

だが、そうとも知らないルフィはくりっと首を傾げたまま

 

「なんだよー2人とも無事なんだからいいだじゃねェか」

 

「ちっとも無事じゃありません!! あんなもの食らったら死んでるわよ!!」

 

と、そこへサンジが目をハートにしながら両の手を広げてレウリアに抱擁を求める様に

 

「リアさ~~~~んvv 無事だったんだね~~~~vvvv」

 

「無事じゃありません!!」

 

「おれにきみの無事を確かめさせてくれ、さっ!」

 

そう言って、両手を更に広げた

 

一瞬、レウリアが固まる

 

あの両手は何を意味するのだろうか……

あの腕の中に飛び込めというのだろうか……

 

レウリアが反応に困った様に「あー」と声を洩らしていると、サンジはそこにきゅんっとしたのか、身体をくねくねさせながら

 

「こんな事で恥じらうきみも素敵だvv。 でも、おれときみの仲なんだから、恥ずかしがることは無いんだよぉ~vv」

 

「どんな仲なのか知りません」

 

すかさずレウリアが突っ込んだのは言うまでもない

 

と、その時だった

 

「あ」

 

と不意に、ルフィが声を洩らした

何かと思い、その声の方へ皆が視線を向ける

 

そこにいたのは固まったパールだった

そのパールの鼻からは血がたらりと流れ出ており――――………

 

 

 

 

「え……?」

 

 

 

 

一瞬、信じられないものを見る様にパールがその血を手に取った

そして、その血を見たパールが驚愕の事実の様に目を見開く

 

それを見た、クリークはちっと舌打ちした

 

「あーマズイなぁ……」

 

ぎょっとしたのは、クリーク海賊団の海賊達だった

皆、口をパカーと開けたまま、固まる

 

「血だ!!やべェエ!!!」

 

「パールさん!!大丈夫っすよ!!!」

 

「ただの鼻血っす!!!戦って付いた傷じゃないし!!!」

 

「気を静めて下さい!!パールさん!!!」

 

尋常でない海賊達の怯えっぷりに、コック達が顔を見合す

 

何……?

 

その海賊達の怯えっぷりは異常としか言いようが無かった

 

パールがわなわなと震えだす

その目は充血しており、身体中の汗という汗がにじみ出していた

 

「こ、ここここコイツら、危険だぜ」

 

意味の解らない事を口走りだし始める

思わず、レウリアとサンジが顔を見合わせた

 

「何なの?」

 

「何だかコイツ、様子が変ですね……」

 

サンジの言葉に、レウリアも同意見だった

どう見てもパールの様子がおかしい

 

ちなみに、ルフィはというときょとーんとしたまま

 

「鼻血がどうかしたのか?」

 

と、自分の鼻をいじりながら ぼやいていた

 

その時だった

突然、パールが縦をパンパンパンと鳴らし始めた

 

「よせ、パール!!たかが鼻血でうろたえるんじゃねェ!!ここは、ジャングルじゃねェんだぞ!!」

 

クリークがそう叫ぶも、その盾鳴らしは止まらない

更にパンパンパンパンと早くなっていく

 

「一体、何が始まるって言うの……」

 

レウリアの言葉と同じく、皆がどよめいた時だった

 

パールが突然叫びだした

 

「身の危険!! 身の危険!!!」

 

 

 

 

 

 

  「身のキケ―――――――ン!!!」

 

 

 

 

 

その瞬間、信じられない現象が起きた

 

パールの全身がボウッ!!という音と共に、突然白い炎に包まれたのだ

 

「なっ……!!」

 

ぎょっとしたのはコック達だった

それもそうだ

突然目の前の人間が白い炎に包まれたのだ

 

逆に慌てだしたのは海賊達だった

全員、右往左往しながら叫びだす

 

「やべェ!!出ちまった!!!ジャングル育ちの悪いクセ!!!」

 

「猛獣の住むジャングルで育ったパールさんは、身の危険を感じると発火するんだ!!!」

 

「なんだって?」

 

ルフィが海賊達の言葉に、目を瞬かせる

 

身の危険を感じると発火するとか……

どれだけ、はた迷惑な癖なのだ

 

ようは、あれは猛獣避けなのだろう

 

パールは更にパーンと鳴らすと、大きく手を広げた

 

「おれに近づくんじゃね――――――っ!!!!“ファイヤー パ~~~~~~~~ル!!!!”」

 

瞬間、ボボボボっと両手の盾にも炎が乗り移った

 

 

 

 

 

 

  「“大特典”!!!!」

 

 

 

 

 

そう叫ぶな否や、パールの全身の炎が粒となり辺り一面に飛び散りだしたのだ

 

「うわっちっちィ!!!」

 

「リアさん!!」

 

「きゃぁっ!!」

 

その炎は、無差別だった

敵味方関係なく、飛散しだす

 

それは勿論、レウリア達の方にも飛び火してきた

 

ルフィは必死になってその炎を避ける

レウリアは避けようとした瞬間、サンジに抱きかかえられた

そして、そのままサンジが後方へ飛び退く

 

「あ、ありがとう…サンジさん」

 

素直に礼を言うレウリアに、サンジはぎゅっとレウリアを抱える手に力を込めた

 

「リアさん、怪我はないですか?」

 

サンジの問いに、レウリアは 「ええ…」 と小さく頷いた

 

「ったく、なんつー厄介なもんを出しやがるんだアイツ。 おれのリアさんが怪我でもしたらどうしてくれるんだ…っ!!」

 

と、舌打ちしながら言い放つが……

 

「私、サンジさんの物になった覚えはありません」

 

と、レウリアが言い切ったのは言うまでもない

 

そんな3人とは裏腹に、大慌てで逃げ惑っていたのは海賊達の方だ

尻や服にパールの炎が飛散し、慌てて走り回る

 

「あ――――――ちゃちゃちゃちゃちゃ!!!!」

 

「パールさんやめてくれェ!!!!」

 

だが、パールは止まらなかった

更に発火する炎を強くしていき——————・・・・・・

 

 

 

 

    「燃えろォ!!!この炎と、炎の盾で おれはもう超鉄壁だァ!!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

キリ悪い所で、すみません(-_-;)

今回、区切り悪いのがおおいなぁ~

 

とりあえず、サンジ活躍の回①です

鉄壁男が、いい加減面白い奴だww

 

2013/06/01