MARIKA

-Blue rose and Eternal vow-

 

  Act. Ⅰ 海上レストラン 11

 

 

 

クリークは、にやりとその口元に笑みを浮かべて声高々に叫んだ

 

「野郎ども!!あの船さえ奪えば、“偉大なる航路グランドライン“も恐れるに足りん!!」

 

クリークが指した先には、バラティエが寸分なき姿で浮かんでいた

自分達の乗っていたガレオン船よりも、何十倍も小さな船だ

だが、その“魅力”は計り知れないものだった

 

「海軍の船を装うよりも、降伏の白旗を振るよりも、もっと効果的に敵陣に近づき……奇襲が掛けられる」

 

そう

今までの様に、海軍の旗を奪いなりすましたり

近づく為に、白旗を上げる事も無い

 

それよりももっと確実に――――……

 

にやりと、クリークの口元に笑みが浮かぶ

 

「確実な“ダマシ討ち”が出来るってわけだ」

 

言われて、クリーク海賊団の海賊達が顔を見合わせた

 

「確かに…あんなフザけた船に…」

 

「まさか海賊が乗ってるとは誰も思わねェ」

 

頷き合う海賊団たちを見て、クリークがくっと喉の奥で笑う

 

「この時代だ。海賊なんざ腐る程海にいる。また戦艦を組み直す事など容易い話だ……!!」

 

その言葉に、周りの海賊達も「そうだよな…」と頷きだす

が、不安が消えたわけではない

 

現に、自分達は一度“偉大なる航路グランドライン”で死ぬ思いを体験したのだ

入ったとしても、また同じ目に合うのではないかと思うと、足が竦んだ

 

偉大なる航路グランドライン”は魅力的だ

何処かに隠されているという“ひとつなぎの大秘宝ワンピース“も気になる

 

だが、それ以前に もう二度とあんな目に合うのは嫌だった

海賊達がお互いに顔を見合わせて ごくりと息を飲む

 

「し、しかし首領ドン……!!それで再び“偉大なる航路グランドライン”に入った所で、また あの“鷹の目”のミホークみてェな奴に出くわしたら――――……」

 

一人の海賊が、勇気を出して話を切り出した瞬間――――……

 

 

ドドン!!

 

 

大きな銃声と共に、話し掛けた筈の男が後方に倒れたのだ

そして、そのまま海の中で思いっきり落ちてしまった

 

驚いたのは、他のクリーク海賊団の海賊達だった

音のした方を見ると、鬼の形相をしたクリークが銃口を構えていた

 

まさかの、己の頭からの仕打ちに海賊達が真っ青になる

 

「まだ、あんなモンにびびってやがんのか てめェら!!アァ!!?」

 

「い、いえ……」

 

自分達に向けられた銃口に、海賊達が慌てて首を振る

クリークが吠える様に怒鳴った

 

「ただの人間に、大帆船をブッた斬れるとでも思うか!!?」

 

「!」

 

言われてみればそうだ

普通だったら、考えられない

 

海賊達は、お互いに顔を見合わせた

 

「あれはおそらく悪魔の実の能力だ。世の中じゃ伝説とまで云われている悪魔の実の能力者も……あの、偉大なる航路グランドライン”にゃ、うじゃうじゃとうごめいているんだ!!!」

 

海賊達が、ごくりと息を飲む

 

「ミホークも、船を割る時、何か妙な能力を使ったに違いねェ……!!あの、麦わら小僧も、”偉大なる航路グランドライン”に入れば、どうってことねぇ…… 一海賊なのさ……!!」

 

そう言って、クリークはぐっと拳を握りしめた

そのまま、バラティエの柵にぶら下がっているルフィを見た

そして、その先に居るゼフを睨みつける

 

「……だが、“赫足のゼフ”は、そこで1年の航海を続けた……ゼフは、あのバケモノどもに対抗する術を持っていたとしか思えねェ…。そして!その手段は、奴の持つ『航海日誌』に必ず記されている筈だ!!」

 

クリークがばっと大きく手を広げた

そして、にやりと笑みを浮かべ

 

「あわよくば、“ひとつなぎの大秘宝ワンピース”への情報もな!!」

 

その言葉に、海賊達がどよめきだす

 

「そうか!そういう事か!!」

 

「……流石は、“首領ドン・クリーク”!!」

 

「あの船と航海日誌さえあれば、また“ひとつなぎの大秘宝ワンピース”への道が開けるんだ!!!」

 

瞬間、うおおおおおおおお!!!!と海賊達が歓喜の声上げた

 

「分かったか、野郎ども!!レストランを乗っ取るぞ!!!」

 

 

「うおおおおおおおおオ――――――!!!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

海賊達の吠える声に、ルフィが嬉々とした顔で

 

「うほ―――――っ!向こうもやる気だっ!!燃えてきた!!な!リア!!」

 

と、何故か同意を求められた

 

何故、向こうがやる気になったら喜ばなくてはならないのか

レウリアは、呆れに似た溜息を洩らしながら

 

「あーはいはい、そうね、楽しいわね」

 

と、激しくどうでもよさ気に棒読みで返事だけする

それで満足したのか、ルフィはわくわくといった感じに

 

「おっさん、おっさん!さっきの!約束だぞ!!」

 

そう言いながら、ゼフに笑い掛ける

ルフィのその言葉に、ゼフはハンッと鼻で嗤うと

 

「願ってもねェ好条件だ。てめェに1年も雑用やられちゃ、店がメチャクチャになっちまう」

 

最もな意見だ

これは、どう見てもゼフが正しい

 

「ルフィ、どうでもいいけれど…海にだけは落ちない様にね」

 

レウリアが一応注意を促すとルフィは「分かってるって!」と言いながらパッと両手を上に上げた

………柵を持っていた両手を

 

「ありゃ」

 

瞬間、ぐらりとルフィの身体が海に向かって真っ逆さまに落ちる

ぎょっとしたのはレウリアだ

 

「ちょっ…!ちょっと!!」

 

慌てて手を伸ばそうとした時だった

 

「なんちってー」

 

と、足で支えていたルフィがにしししと笑いながらびよ~んと口を伸ばしながらにかっとした

 

……………怒(ぴき…)」

 

 

 

 

 

ふ……………ざけるなぁ!!!

 

 

 

 

 

 ばきぃ!!!

 

 

お約束の様に、レウリアの制裁が下ったのは言うまでもない

 

そんな二人を余所にサンジは、ふーと紫煙を吐くと クリーク達を見て小さく溜息を付いた

 

「このままじゃ、店は戦場か…」

 

脳裏にあの出来事が過ぎる

 

荒れる海

投げ出される小さな体

誰も助けの来ない無人島

 

 

 

『海のど真ん中にレストランでもあったらなぁって……よ』

『ここから生きて出られたら、最後の生きがいにレストランをぶっ建てようと思ってた』

 

 

「……………」

 

あの言葉が何度も頭の中で木霊する

 

『最後の生きがいにレストランを……』

 

それなのに………

 

もう一度、紫煙を吐く

それから、傍にいたコックに目をやると

 

「操作室に行って“ヒレ”開いて来い」

 

サンジのその言葉に驚いたのは、言われたコックだった

ぎょっとして、目を瞬きさせる

 

「え……!?あれを?“ヒレ”をやるのか!?いいのか?敵に足場を与える事になるんだぜ!!?」

 

コックの言葉に、サンジがにやりと笑みを浮かべる

 

「構わねェ。このレストランの中を戦場にする訳にはいかねェんだ」

 

そう言って、壁をバンバンと叩いた

 

「店ン中戦場にしたら、クソジジイがうるせェだろ」

 

「何か言ったか、クソガキ」

 

「オー、うるせェっつったんだよ」

 

ギロリとゼフの視線だけがサンジを睨みつけるが、サンジが気にした様子もなく悪態を付いた

 

「ほら、行け」

 

サンジが悪態付きつつも、コックを手で追いやる

コックは、「お、おお」と返事をすると慌てて操作室へ向かった

 

その瞬間だった、海賊達がオオオオという雄叫びと共に一斉に襲いかかってきた

 

「その船を渡せ、コックどもォ―――――っ!!!!」

 

その様子を見て、ルフィが益々嬉しそうに満面の笑みになる

 

「きたきたきたぁ――――!ついにきたぁ!!」

 

そう言って、びよ~んとゴムの腕を柵に掴むと反動をつける為に後ろへ身体を伸ばした

 

 

「いっくぞ―――――ゴムゴムの……」

 

 

と、その時だった

 

ふわりとルフィの目の前で銀糸の髪が揺れた

レウリアだ

 

 

「ごめんね、ルフィ」

 

 

そう言うと、そのままふわっと羽でも生えているかと思う様な仕草で柵の上に降り立つ

 

 

 

 

 「先に行かせてもらうわ―――――風よ

 

 

 

 

レウリアがそう囁いた時だった

どこからともなく、“風”が彼女の周りを舞い始めた

 

瞬間

 

「リアさ……!?」

 

ぎょっとしたのはサンジやコックだった

レウリアがそのまま海へ向かって飛んだのだ

 

 

誰しもが落ちる――――そう思ったが

 

 

レウリアはまるで背中に羽でもあるかのように宙に浮いたまま

 

 

 

 

「万象に集いて、我が命に応えよ――――かの者を打ち払え!」

 

 

 

 

その瞬間だった

何処からともなく無数の巨大な鎌鼬が海賊達に襲いかかったのだ

これに驚いたのは海賊達の方だ

 

 

 

「うわああああああああ!!!!」

 

 

 

まさかの、レウリアからの先制攻撃に海賊達がどよめくと同時に 一斉に後方の割れたガレオン船の甲板に吹き飛ばされる

甲板に落ちたならまだいい

半数以上がそのまま海へ投げ出された

 

「な、なんだぁ!?あの女も能力者か!!?」

 

かろうじて甲板にしがみ付いていた海賊達がざわめきだす

が――――……

 

「どうかしら?」

 

背後から聴こえた声に、ぎょっとして振り返ると いつの間にかそこにはレウリアがいた

レウリアはにこりと微笑むと、くるくると持っていたスティック状の何かを回した

その様子に、激怒したのは海賊達だった

 

「この女、妙な技使いやがって……」

 

「でも、ここで女一人で何ができるってんだよぉ!!!」

 

そう叫ぶや否や海賊の1人が襲いかかってきた

だが、レウリアは動こうとはしない

海賊は「とったぁ!!」と叫びながらそのまま、持っていた剣を大きく振り下ろした

 

誰もが「やった」そう思った

が……

 

「な……っ」

 

そこには誰も居なかった

と、その時だった

海賊達の一番後ろの方から

 

 

 

   「遅い」

 

 

 

そう一言呟いた瞬間――――

 

 

コツリ……

 

 

足音が響いた

 

        一度だけ

 

 

 

 

最前列・・・から

 

と、思った瞬間

 

「へ?」

 

レウリアの直線状に居た筈の海賊達が叫び声を上げる事も出来ずばたばたと倒れだしたのだ

 

「な………」

 

ぎょっとしたのは残された海賊達だった

 

一瞬、海賊達は何が起きたのか分からなかった

何故なら…後ろ・・に居た筈のレウリアが、気が付いたらに居て……

その直線状の仲間が倒れている・・・・・・・・・・・・のだ

 

「だから、“遅い”って言ったでしょう?」

 

レウリアが、呆れにも似た溜息を洩らしながら 銀糸の髪を後ろへ払った

 

「なんなんだ、この女!?」

 

「全然、見えなかったぞ…っ!?」

 

海賊達がどよめきだす

その時だった、海賊の1人が何かを思い出したかのようにレウリアを指さした

 

「思い出した!こいつ“翔風のレウリア”だ!!」

 

「なっ……!?」

 

それに驚いたのは他の仲間たちだ

 

“翔風のレウリア”といえば、海軍きっての賞金首狩りだ

それも、艦隊を率いている大佐である

それは勿論、ターゲットにされる海賊達の中では有名な話だ

 

「な、なんで海軍がここにいるんだよ!!」

 

「聞いてねェぞ!」

 

レウリアの正体に気付いた瞬間、海賊達がさらにどよめきだす

と、その時だった

 

「ほぉ、あの有名な女将校か。だったら好都合じゃねェか!!

 

甲板の上の方からクリークの声が響いて来た

 

はっとして、レウリアがそちらの方を見る

クリークはレウリアを見るなりにやりと笑みを浮かべ

 

「だったら、おめェら…その翔風とやらをぶちのめしちまえ。その女をやったとなりゃぁ、名が上がるぜ?」

 

クリークの言葉に、海賊達がハッとする

 

「そうだよな……」

 

「所詮は、女一人。多勢に無勢…」

 

「おおおおお!!流石は“首領ドン・クリーク”!!!」

 

「やっちまおうぜぇ!!!!」

 

 

 

オオオオオオオオオ!!!!と、先程まで動揺していた海賊達が雄叫びを上げだした

 

 

「………………」

 

レウリアは小さく息を吐きながら、クリークを睨みつけた

その視線に、クリークが勝ち誇った様ににやりと笑みを浮かべる

 

あれだけ戦意を失っていた彼らを、一瞬でやる気にさせてしまった

……とんだカリスマね…

 

ただ、誤算が一つあった

レウリアはくすりと微かに笑みを浮かべると

 

「馬鹿な人達ね。あのまま大人しくしていればよかったものを……」

 

「やっちまェ―――――!!!!!」

 

そう叫ぶと同時に、一斉に海賊達がレウリアめがけて襲ってきた

そのまま無数の剣がレウリアめがけて振り下ろされる

レウリアは小さく息を吐くと、ゆっくりとそのアイスブルーの瞳を閉じた

 

クリークが、にやりと笑みを浮かべた瞬間だった

 

 

 

「「「なっ………」」」

 

 

最初に声を上げたのは剣を振り下ろした海賊達だった

斬り刻まれているであろう筈のレウリアの姿がそこには無かったからだ

全ての剣が、空を斬った

四方すべてから襲いかかったのに―――だ

 

 

 

「馬鹿野郎!上だ!!!」

 

 

 

クリークの怒声が響いた

 

はっとして、海賊達が上空を見る が

 

「―――だから、“遅い”と言っているよ」

 

瞬間、空中に壁でも在るかの様に、レウリアがその場から跳躍した

と、思った瞬間―――……

 

「うわああ!!!」

 

「ぎゃぁぁあああああ!!!」

 

今度は、レウリアが四方八方から一気に刃となって襲いかかってきたのだ

海賊達はどちらから来るのか分からずに、ただオロオロしながら斬られる一方だった

 

 

「―――これで、終わりよ!!」

 

 

上空から声が響いたと思った瞬間――――

 

 

「落ちなさい!!」

 

 

 

「ぎゃぁあああああああああああ!!!!」

 

すさまじい、雷と竜巻が一気に海賊達に襲いかかってきた

そのまま、押しつぶされる様に甲板をぶち破って海へ落とされる

 

「ちぃ…!」

 

爆風とも呼べる風が辺り一帯に襲い掛かる

流石のクリークも舌打ちをしながら、マントで風を避けつつなんとか身体を支える

 

「うわああ」

 

驚いたのは、バラティエ側もだ

コック達は吹き飛ばされそうになるのを必死に堪えた

 

その中で、ゼフだけが腕を組んだまま悠然と立っていた

 

 

「やっぱり、そうか……」

 

 

そう呟き、騒ぎの中心に居るレウリアを見る

 

どよめくコックを余所に、嬉々として嬉しそうにしている輩が一人―――ルフィだ

 

「ずりぃぞ!リア、一人だけ楽しみやがって!!」

 

と、何故か悔しがっている

そして、さらに伸ばしていた手をぐぐぐと伸ばすと…

 

「いよぉ~~し、おれも―――ゴムゴムの……ロケット!!!

 

瞬間、バシュッ!!とルフィがゴムの反動の様にガレオン船めがけて飛んで行った

ぎょっとしたのはコック達だけではなかった、

的にされるであろう海賊達もぎょっとして

 

「うわっ!あいつが飛んできたァ!!!」

 

「と……!!」

 

不意に、ルフィの腕がぱちんと元に戻った

 

「へ?」

 

瞬間―――………

 

 

ゴムゴムの……大鎌っ!!!!

 

 

 

「うげェ―――――――っ!!!」

 

いきなりルフィの腕が左右に伸びたかと思うと、海賊達の喉元めがけて突っ込んできたのだ

 

「おっぷ!!」

 

「あぶ!!」

 

「えぅ!!」

 

ザッバ―――――ン!!!

と、景気のいい音を立てて海賊達が皆海へ吹き飛んでいく

クリークの上を越えて

 

クリークが、一瞬ぎょっとした様な顔をする

ちなみに、当のルフィはちゃっかりマストにしがみ付いていた

 

それに歓喜に震えたのは、バラティエのコック達だった

 

「やるじゃねェか、あの雑用!!」

 

「あのねえちゃんもすげェ!!!」

 

うおー!!!と歓声のを上げる

 

「一体、あいつら…」

 

「何者なんだ……!?」

 

海へ落ちた海賊達は切れ端にしがみ付きながら、そう洩らす事しか出来なかった

 

それを見ていたサンジはごくりと息を飲んだ

 

「“偉大なる航路グランドライン”にはこんな奴らがうごめいてるってのか……」

 

レウリアも、ルフィも、想像を絶する様な戦い方をしていた

はっきり言って、普通じゃない

 

その時だった

 

「サンジ」

 

ふいに、ゼフがサンジの名を呼んだ

 

一瞬、ハッとしてゼフの方を見る

ゼフはずっと前を見据えたまま

 

「よく見ておけよ、あいつらの戦いを。この勝負に決着がつくその時まで目を離すな」

 

「…………!」

 

ゼフの言葉に、サンジは息を飲んだ

それ以上ゼフは語らなかった

 

ただ、その言葉がサンジの中の何かを変えようとしていた

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

一応、夢主の戦闘シーンが入りますが……

予定よりは、大分表現を緩和しましたww 一応

まぁ、ルフィはいまから見せ場あるからな!

先制させるのは決めていたのですが、存外文字食ったww

やっぱ、戦闘シーンは字数使いますなー( ;・∀・)

むしろ、ルフィが短調にみえてしまうよ(そうじゃないのにww)

 

思いのほか、予定よりも大分文字数オーバーしたので

変な所で切っちゃいました すみません

でも、次はサンジですね!

 

2012/04/2