MARIKA

-Blue rose and Eternal vow-

 

  Act. Ⅰ 海上レストラン   

 

 

 

富・名声・力

この世の全てを手に入れた男・海賊王”ゴール・D・ロジャー”

 

彼の死に際に放った一言は、人々を海へ駆り立てた

 

「おれの財宝か?欲しけりゃくれてやる。探せ!この世の全てをそこに置いて来た!!」

 

男達は”偉大なる航路グランドライン”を求め、夢を追い続ける―――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ル…ルフィ!?」

 

突如、天井から降ってきた義理の弟のルフィの登場に、ホールは騒然となった

が、当の本人はさほど気にした様子もなく、きょろきょろとしている

 

「ちょっ……ルフィ!?こんな所で何やってるのよ!!?」

 

レウリアがそう叫ぶと、やっとその存在に気付いたのか…ルフィは目を瞬きさせて

 

「ん? おお! リアじゃねぇか!! 久しぶりだな~何年ぶりだ?」

 

「3年ぶりよ……っじゃなくて!!」

 

思わず、素直に答えてしまった自分が恥ずかしい

 

「こんな所で、何してるのよ!? 海に出たんじゃなかったの!?」

 

村の人の話では、ルフィは数か月前にフーシャ村を出たと聞いた

海賊王になる為に

 

の筈……なのだが、何故そのルフィがこのバラティエにいるのか……

 

登場の仕方から言っても、どう考えても客ではない

かといって、海賊王を諦めコックを目指した……なんて事はある筈がない

 

まさか……また、面倒事を……

 

何となく、嫌な予感がひしひしと伝わってくる

 

「ん~~~~」

 

少しだけ、ほんの数秒悩んだだけで、ルフィはにかっと笑い

 

「いや~この店に砲弾飛ばしちまってよぉ~~。謝りに来てたんだ!金はねぇけど」

 

「……………」

 

面白い事の様にあははははと笑いながら言うルフィに、レウリアはくらくらと眩暈がしそうになった

 

ああ……予想的中………

 

どうせ、そんなとこだろうとは思ってたけど……

予想通り過ぎて、泣けてくるわ……

 

相変わらずの義弟の無茶苦茶ぶりに、レウリアは内心「やっぱり…」としか思えなかった

 

「はっ……そうだわ…!」

 

瞬間、ガープの存在を思い出した

ガープならルフィを何とかできる

何故なら、唯一ゴム人間と化したルフィに“痛み”を与える事が出来る人間なのだから

しかも、実の孫と祖父という関係だ

 

お義父様なら、何とかしてくれる…!

 

「お義父様……っ! ルフィが……っ!!」

 

レウリアがそう叫んで振り返った時だった

何故か、居た筈のガープの姿が見えない

 

「え? お義父様??」

 

辺りをくまなく探すと、隅の方に何やら怪しいあのマスクの影が

 

「……………」

 

そのマスクは、ルフィに気付かれない様にそそそそそと壁つたえに入り口に向かって小走りに進むと、扉の目の前で一度だけ振り返り……

 

“後は、頼んだv”

 

そうVサインを送ってくると、そのままレウリア達が乗ってきた船に乗り……Good Bye

 

「………………」

 

って!逃げたぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!!

 

 

「うう……くっ……!!」

 

その時、ルフィと一緒に落ちて来たであろうもう1人の人物が、うめき声を上げながらむくりと起き上がった

 

「オ、オーナー!? 何やってんですか、一体っ!!」

 

その人物を見て叫んだコックの発言から察するに、どうやらこのバラティエのオーナー・ゼフらしい

 

ゼフは頭を押さえながら、はっとして天井を見た

そこには見事にぽっかり穴が空いていた

 

「くそォ! 何てことだ!! おれのレストランの天井が……っ!!」

 

いや、貴方達が落ちてきたから空いたんです、それ

と、口が開きそうになるのをあえて黙る

 

ゼフは、ルフィをとっ捕まえると、唾を飛ばしながら叫んだ

 

「てぇめぇのせいだぞ! 小僧!!」

 

「おっさんが、壊したんだろ!!」

 

ルフィも、負けじと叫ぶ

二人して、がるるるるると噛み付きそうなぐらい睨み合っていた時だった

 

「オーナー! サンジを止めて下さい!!」

 

突然、サンジを必死に止めていたコック達から助けを呼ぶ声が聴こえてきた

 

何事かと、ゼフとルフィが同時に声のした方を見る

そこでは、今にもフルボディに掴みかかりそうな怒りの形相をしたサンジと、それを必死に身体張って止めているコック達の姿があった

 

「オイ! サンジ!!」

 

ゼフが叫ぶと、サンジがその目をゼフに向けた

ゼフは、よっこらせと立ち上がると、つかつかとサンジの前に躍り出る

 

「貴様、またおれの店で暴れてやがんのか!!」

 

「そうなんですよぉ! オーナー!! よりにもよって、そのタコのお客様は海軍本部の―――」

 

何やら、イカコックが叫んでいるが、そこはスルーする

サンジは、身体にへばりついているコック達を引っ剥がすと、くいくいっとネクタイを締め直した

 

「うるせぇな、クソジジイ…っ!」

 

「何だと!? 誰に向かって、口きいてやがんでい!! てめぇ、おれのレストラン潰す気か!! このガキァ!!!」

 

と、叫ぶなり ゼフはその右足でサンジを思いっきり蹴り飛ばした

その様子に、フルボディがほっとした瞬間

 

「てめぇも、さっさと出ていかねぇか!!!」

 

「ぎゃあああああっ!!!」

 

と、思いっきり右足で蹴り飛ばされた

※ちなみに、ゼフの右足は義足で頑丈な棒で出来ている

 

「何なんだ!? この店は……っ! オーナーまでこうなのか……!! このガラの悪さは……っ、まるで海賊じゃねぇか……!!!」

 

と、叫びたいが怖くて叫べないので心の中でさけぶ Byフルボディ

 

「いいか、お客様は神様だっ!!」

 

「てめぇの、くそマズイ料理を食ってくれる客に限な」

 

「パティ!! サンジ!! ケンカなら厨房でしくされ!!!」

 

と、イカコック…改めパティ・サンジ・ゼフ

 

「こいつら、本当にコックなのか!!?」

 

と、叫びたいが、やっぱり怖くて叫べないので、心の中で叫ぶ Byフルボディ

 

その時だった

 

バタバタとホール中央の扉が開き、傷だらけの海兵が駆け込んできた

 

「大尉! フルボディ大尉……っ!!」

 

「!?」

 

レウリアもはっとして、そちらの方を見る

 

「た…大変です!!!も、申し訳ありません!!船の檻から……逃げられてしまいました……っ!!」

 

「何っ!?」

 

フルボディが、今までにない位青ざめた顔で叫んだ

 

「騒がしい店だなぁ…」

 

ルフィがぽつりと呟いた

 

いやいや、お前が言うな!

と、突っ込みたいが、半分以上フルボディが騒がしいので、ある意味正しい

 

「海賊クリークの手下が……!! “クリーク一味”の手掛かりにと、我々7人がかりで、やっと…やっと捕まえたのに……っ!!!」

 

なっ……!!

 

クリークの手下ですって……!?

 

レウリアは、驚きのあまり口元を押さえた

 

クリーク海賊団と言えば、東の海イーストブルーで最強と言われる海賊団だ

兵力5千人とまでいわれる、50隻もの大艦隊を率いる巨大なガレオン船

率いるのは、首領ドン・クリーク

またの名を“ダマし討ちのクリーク”

 

「馬鹿な……っ!!どこにそんな体力が……っ!?3日前に捕まえた時、餓死寸前だったんだぞ!?あれから、何も食わせてねぇん……「この、お馬鹿!!!!」

 

突如、レウリアがフルボディをそのヒールで蹴り飛ばした

 

「????」

 

いきなり蹴り飛ばされたフルボディは意味が分からないのか……

目をぱちくりさせながら、頬を押さえた

 

「3日も前に捕まえておきながら、どうしてすぐ護送しなかったのよ!! あんた……まさか、クリークの手下相手から情報取ろうなんて馬鹿な事考えたんじゃないでしょうね!!? ダマし討ちを最も得とするあの男が、そんな迂闊な事する訳ないでしょうが!! その頭の脳みそは飾りかぁ――――!!!

 

レウリアの突然の剣幕に、フルボディがたじたじになる

 

「し、しかし…!奴は、餓死寸前で、とても抵抗できる様な状況じゃぁ……」

 

「だったら、この状況は何なのよ。あんたが、蒔いた種でしょうが!」

 

最もな意見だ

誰もがうんうんと頷いた

 

「や、やつは下っ端で………」

 

フルボディが尚も言い募ろうとするが……それが、レウリアの癪に障ったのか

 

「いいからさっさと………捕まえてこんか――――い!!!

 

「ぎゃああああああ―――――!!!」

 

ぶち切れたレウリアが、叫びながら思いっきりフルボディを蹴り飛ばした

その時だった

 

 

 

 

 

ドンッ

 

 

 

 

 

突然の銃声と共に、報告しに来ていた海兵がぐらり…と前に倒れた

そのまま、ドサッ…とその場に倒れ込む

 

その後ろには、煙の出る銃口をこちらに向けた男が1人―――

 

店内に居た客たちは、真っ青になり、叫びながら散り散りに逃げ出して行った

 

銃口を向けたいた男は、ゆっくりと店内に入ってくると、そのままフルボディの横を通り過ぎていく

 

「“お客様”1名入りました」

 

と、とりあえず言っとくか感の漂うイカコック……改め、パティが一言

 

「また、おれの店で暴れようって輩じゃねぇだろうな……」

 

と、ゼフが舌打ちしながらそうぼやく後ろで、ルフィが嬉しそうに

 

「海賊かぁ~!」

 

サンジは、どうでもよさ気にタバコをふかしていた

 

男は怯えて端に逃げている客の視線を余所に、そのままホール中央のテーブルにどかっ

足を乗せて座り込むと、ゆっくりと顔を上げた

 

「……何でもいい…メシ、持って来い……ここは、レストランなんだろ!?」

 

そう言う男を見て、レウリアはぎょっとした

 

こいつ……

 

フルボディは何と言っていたか……

「餓死寸前」「手下」

そう言っていた

 

確かに、男の様子から言って何日もろくに食事をしていないのは分かる

今にも、倒れそうなのを、気力でもたせているであろうことも

だが、問題はそこでは無かった

 

「手下」

 

確かに、クリークにとっては「手下」の1人かもしれない

だが、相手が悪すぎる

 

何で、よりにもよってこの男なの……っ!

 

フルボディの空っぽの頭を撃ち抜きたい気分だ

クリークの「手下」の中でも、最も最悪な男だった

 

「“いらっしゃいませ、イカ野郎”」

 

パティが(一応)客向けであろう気持ち悪い笑みを、に”-んとさせながら、男に近づいた

隅に逃げていた客がどよどよと騒ぎ出す

 

だが、そんな客は余所にパティは(本人的には)接客スマイルで男の傍まで寄った

男は、一瞬だけパティを見た後

 

「もう一度しか言わねぇから、よく聞け……!食い物を持って来い……!!」

 

男の怒気の混じった声に、辺りが騒然とした

 

「あのコックは、殺される……!」

 

フルボディが、ごくりと息を飲みそう呟く

が、パティは気にした様子もなく、さらに笑みを深くし

 

「お客様、“ヘボイモおそれいりますが”、代金はお持ちで?」

 

パティのその言葉に、男がゆらりと視界をそちらへ向けた

と同時に、持っていた銃をパティの額へカチャッと当てる

 

「鉛でいいか?」

 

瞬間、すっとパティから接客スマイルが消えた

 

「金は無イんですね?」

 

そう言った瞬間―――

 

 

 

 

「ふん!!!」

 

 

 

ガンッ!!

 

 

 

パティが拳で思いっきり男と一緒に、その椅子を叩き割った

 

「—————っ!!」

 

男は、まさかの反撃に声を押し殺す様に叫んだ

おおおおおお!と、周りの客から歓声があがる

 

「パティの野郎、店の椅子を……っ!!!」

 

ゼフが、男を殴った事ではなく、椅子を壊した事に、そう叫ぶ

 

「すげーパワー」

 

ルフィが感心した様に、そう洩らした

 

いや、確かに凄いパワーだし、椅子も壊れたが……

突っ込むところは、そこじゃない気が……するんですけど?お二人さん…??

 

パティは、ふんっと腕を組むとふんぞり返り

 

「代金が払えねぇなら、客じゃねェじゃねぇか!!」

 

パティのその接客対応に、周りの客やコックから歓声がまた上がる

 

「いいぞ!コック!!」

 

「海賊なんて、たたんじまえ!パティさん!!」

 

 

ぎゅるるるるるる

 

 

瞬間、店内に何かの音が響き渡った

その音を聞いたパティが、にやりと笑う

 

「オーオ、腹の虫が泣いてるなァ、海賊」

 

「……………!!」

 

男は、ぐっと自身の腹抑えると、フラフラにも関わらず、精一杯の虚勢を張った

 

「……今のァ……屁だよ……アホダヌキ。いいから、メシ……持って来い」

 

 

 

 

 

「客じゃねぇ奴は、消え失せろ!!!」

 

 

 

 

 

パティがそう叫んだ瞬間、男をぼこぼこに蹴りだした

客も、「もっとやれ―!」と、歓声を送り出す

 

正直、見ていて気分がいい物では無かった

 

「さーどうぞ!“お客様”どもっ!食事をお続け下さーい!!」

 

ショーが終わったという風に、パティがエプロンをぴらっと持ち、笑みを浮かべた

すると、周りから拍手喝采が上がった

 

そんな中、サンジがひっそりとホールを出て行ったのをルフィはじっと見ていた

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

   ****    ****

 

 

 

 

 

 

 

 

 


ドサリと、パティは裏口から出ると、肩に担いでいた男を放り出した

 

一仕事終わった

という様に、ぱんぱんと手を叩くと

 

「おととい来てください」

 

それだけ、言い残しそのまま店内へ戻っていった

 

男は立ち上がろうとするが、身体が付いてこず

よろよろと手足を震えさせながら、それでも、尚立ち上がろうとしては倒れた

 

「くっそぉ……っ、あんな奴…いつもなら………っ、馬鹿にされねぇ……っ!!」

 

男が悔しそうにそう呟きながら、必死に立ち上がろうとする様を、ルフィとレウリアは上のデッキから覗いていた

 

「なぁ!お前、腹減ってんのか?」

 

ルフィがそう男に声を掛ける

 

「いや、どう見てもそうでしょうが!」

 

ルフィの阿保な質問に、思わず突っ込んでしまった

 

「……うるせぇ……腹なんか……減ってるもんか……っ!!」

 

と、男は虚勢を張るが、男の腹が盛大にぎゅるるるるると鳴いていた

 

その時だった

先程、パティが出て行った裏口の扉が開いた

 

思わず二人してそっちを見ると、サンジが手にトレイを持って現れた

そして、そのトレイを男の前に置く

 

男は、そのトレイに乗っている物を見て、はっとした

そこには、作り立てであろう山盛りのピラフと、コップに水が一杯

 

サンジはそのままデッキにドカッと座り込むと、タバコを一服

 

「食え」

 

サンジのその言葉に、男はごくりと唾をのみ込んだ

だが、男の矜持がそうさせるのか……

首をぶんぶんと振ると、精一杯の虚勢を張った

 

「……う、うるせぇ!向こうに行け!!……落ちぶれてもなぁ、施しは受けねぇんだよ……っおれは。……とっととこのメシを下げろっ!!」

 

そう言って、顔を背けた

 

サンジは、ふーと紫煙を吐くと

 

「四の五の言ってねぇで、さっさと食いやがれ。おれにとっちゃあ、腹空かしてる奴は誰でも客なんだよ」

 

「……悪いな…おれは、客じゃねぇ…」

 

男はそう言うが、またぎゅるるるると腹が鳴った

目の前には、作り立ての美味しそうな食事

それを求める様に鳴く、身体

 

食べてしまえばいいものを……

男の何が、そうまでさせるのか

 

中々手をだそうとしない男に、サンジは小さく溜息を付いた

そして、空を見上げ

 

「海は広くて、残酷だなぁ……この海の上で食料や水を失う事が、どれほどの恐怖か……。どれほど、辛い事か……」

 

男が、驚く様に目を見開いた

 

「腹減った奴の気持ちは、誰よりも分かるんだよ……」

 

サンジのその言葉は、“それ”を知っているかの様に聞こえた

 

「誇りで死ぬのも構わねぇが、食って生き延びれば、見える明日もあるんじゃねぇのか?」

 

男が、ふるふると震えながら大きく目を見開いた

そして、もう一度目の前のピラフを見る

ごくりと息を飲むと、その皿に手を伸ばした

と同時に、もの凄い勢いでピラフを食べ始めた

涙を流しながら、必死に口の中にかき入れた

 

「………っ!!面目ねぇ…っ面目ねぇ……っ!死ぬかと思った……っ!もう、駄目かと―――……っ!!」

 

ボロボロと涙を零しながら、皿の上のピラフを口の中にかき入れていく

 

「うめぇ…うめぇよぉ……。こんなにうめぇメシ食ったの…おれは初めてだ……っ!!」

 

その男の言葉に満足したのか、サンジがにやりと笑った

 

「クソうめぇだろ」

 

その様子を見ていたルフィは突然笑い出した

 

「はははははは。いいーコック見つけた!」

 

そして、にぃっと歯を出して笑うと、ぐいっと身を乗り出した

 

「ちょっ…!危ないわよ!ルフィ!!」

 

レウリアが止めようとするが、こういう時のルフィは止まらない

絶対、何か思いついたのだ

ルフィ的・名案が

 

「良かったな――、お前!メシ食わして貰えて。死ぬ所だったなぁ!ははははは」

 

「ちょっと、ルフィってば!」

 

そんな、レウリアを余所にルフィは爆弾発言をしだした

 

「おい! コック!! お前、仲間になってくれよ! おれの海賊船のコックに」

 

「「「はぁ?」」」

 

その場にいた、3人がそう口にしたのは言うまでもない

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

   ****    ****

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「お前、海賊なのか?」

 

「ああ」

 

サンジの問いに、ルフィがあっさり頷いた

ルフィと共に下に降りたレウリアは、横でその話をじっと聞いていた

 

瞬間、サンジが八ッとして驚愕の声を上げた

 

「まさか……!?リアさんも海賊なのか!?」

 

「あ、ううん。私は海軍だったの」

 

レウリアの、あっさりと拒否した反応に、サンジがほっとする

 

「なんだ、海軍か……「「「って!海軍―――っ!!?」」」

 

何やら、後半約2名混じっていた様な気がするが……

 

「あんた、海軍なのか……っ!?」

 

「リア、お前…海軍だったのか!?」

 

男が驚いていたのは普通なのだが……

 

「待って。どうして、知ってる筈のルフィまで驚くの!?」

 

何故か、知っているルフィまでもが驚きの声を上げていた

 

レウリアにそう言われて、ルフィはう~んと首を傾げた

 

「そうだっけか?」

 

「……貴方の、ノミ以下の頭に聞いた私が馬鹿だったわ…」

 

レウリアが脱力していると、サンジがピンポイントに鋭い所を突っ込んできた

 

「だった?」

 

「そう、“だった”。私、海軍辞めたのよね。多分、今日付け?」

 

「何だ?問題でも起こしたのか?」

 

「貴方と、一緒にしないで!!」

 

ルフィのボケに鋭く突っ込みを入れる

レウリアは、小さく息を吐きながら

 

「元々、海兵になりたかった訳じゃないもの。それに、もうお義父様との“約束”は果たしたからいいのよ。後は、私の“自由”にするわ」

 

存外あっさりしているレウリアに、ルフィとサンジは顔を見合わせた

 

「リアさん。ちなみに、階級はなんだったんですか?」

 

「大佐」

 

「おめぇ、大佐だったのかぁ!すげぇな!!」

 

サンジの問いに、レウリアがあっさり答えると、何故かルフィが嬉しそうに声を上げた

が、果たしてルフィが“大佐”がどの程度の位か知っているかは謎である

 

「大佐って…かなり上の位じゃないですか。何で、また辞めようなんて……」

 

まぁ、サンジのこの反応が普通だろう

だが、レウリアの反応は意外と淡泊だった

 

「だから、さっきも言ったでしょう? “海兵になりたかった訳じゃない”って。 私が、今まで海軍に席を置いていたのは、お義父様と“大佐になるまでは海軍にいる”っていう約束があったから。それは果たしたから、もう、いいでしょ? まぁ、お義父様的には、大佐になる頃に部下も沢山いるし、艦隊も率いているのだから、もっと海軍に愛着が持てる様になるんじゃないかと思っていたでしょうけど……、生憎、そうはならなかったのよね。 それに、私は何が何でも“偉大なる航路グランドライン”に行かなきゃいけないんだもの……」

 

「“偉大なる航路グランドライン”!?」

 

その言葉に、ルフィが飛びついた

 

「何だよーリアも“偉大なる航路グランドライン”目指してるのか!!」

 

と、益々嬉しそうに顔を綻ばせた

 

「“偉大なる航路グランドライン”って……海軍にいたなら、本部に行けばよかったんじゃないんですか?海軍本部は“偉大なる航路グランドライン”の中だって聞いてるぜ?」

 

サンジのその疑問に、レウリアはあっさりと首を振った

 

「それじゃ駄目なの。“海軍”として“偉大なる航路グランドライン”に入っても意味がないもの。リディ・レウリアとして入らなきゃ、意味がないの」

 

「何でまた……」

 

「……私、逢いたい人がいるの。 その人は“海賊”だから、“海軍”の私じゃ彼と敵になってしまうでしょう? それじゃ、駄目なのよ。 そして、彼は今“偉大なる航路グランドライン”にいる―――だから、追い掛けるのよ……って、サンジさん?」

 

何故か、サンジが涙を流して泣いている

 

「……どうして泣くの…???」

 

今の話に、そんな泣くシーンがあっただろうか……?

 

「そんな……っ」

 

ふるふると、サンジが震えだす

 

「えっと…あの……??」

 

恐る恐る、サンジに手を伸ばそうとした瞬間―――

突然、顔を上げたサンジが がしぃっとレウリアの腕を掴んだ

そして、目に涙をいっぱい浮かべて……

 

「まさか、その逢いたい野郎ってのはリアさんの男なんですかぁぁぁ!!!?」

 

「………………」

 

あ、そこなんだ……

何故か、激しく納得してしまった

 

「え、えとぉ……別に、私の男って訳じゃ……」

 

別段、告白された訳でも、恋人だった訳でもない

エースはレウリアに“約束”をくれたが、それだけだった

 

エースが、私をどう思ってるかなんて……聞けてないものね……

 

レウリアの気持ち的には、今も昔も彼以外を想った事は無い

彼だけが、レウリアの気持ちを温かいものにしてくれる

 

すると、レウリアの腕を持っていたサンジの手に何故かさらに力が篭った

 

「だったら……」

 

「え……?」

 

「だったら、そんな男忘れておれにしましょうよぉ~~v!!絶対、おれの方がいい男ですってばvv」

 

くねくねと身体をくねらせて、言い募ってくるサンジにレウリアが一言

 

 

 

「ごめん、それはない」

 

 

 

「ぐはぁ…っ!」

 

見事に一刀両断にされた

きっぱりすっぱり斬られたレウリアの言葉に、サンジがダメージを受けてそのまま沈む

 

「もしかして、リアが探してる男ってエースか?」

 

突如、空気読んだのか読まなかったのか、ルフィの間抜けな質問が飛んできた

レウリアは、はぁ…と頭を抱えながら

 

「そうよ」

 

そう答えると、何故かルフィが嬉しそうに笑った

 

「そっかぁ!なら、丁度いいじゃねぇか。おれもエースに久しぶりに会いてぇしな!リア、お前おれの仲間になれよ」

 

「はぁ!?」

 

突然の、勧誘にレウリアが素っ頓狂な声を上げた

 

「ちょっ……!冗談でしょう!?海軍大佐だった私に、海賊になれっていうの!?」

 

「ああ」

 

あっさり頷くルフィに、レウリアが脱力した

 

ルフィの事だ、間違いなく本気だ

本気と書いてマジで、言っているに違いない

 

「待って……。あのね、ルフィ。私が海軍で何て呼ばれていたか知っているの?」

 

「んにゃ?シラネ」

 

 

 

 

「“翔風のレウリア”。だよな、あんた」

 

 

 

 

 

その答えを言ったのは、他ならぬあの生き倒れていた男だった

 

「“翔風のレウリア”?なんだ、そりゃぁ?うめぇのか?」

 

本気で知らないらしく、ルフィが首を捻る

 

「“翔風のレウリア”って言えば、海軍始まって以来の天才だって言うぜ。 たったの4年で大佐の地位まで上り詰めたという、凄腕の女海軍将校だ。 その手にかけた賞金首の数はいざ知れず…。 海軍きっての賞金首狩りだ。 そして、そいつの持つ力から付いた名が―――“翔風”」

 

「へぇ~!なんか、すげぇんだな!リアは!!」

 

「いや、貴方、意味 本気で分かってないでしょう」

 

レウリアが、はぁーと溜息を付いた

 

「んだよぉ~おれだってちゃんと分かってるよー。つまり、あれだろ?

 

 

 

 

「リアは、強くて仲間にぴったりってことだ!」

 

 

 

 

 

「「違ぁう!!」」

 

 

 

 

 

何故か、サンジとハモった

 

「おめぇ、本気で分かってねぇんだな?」

 

サンジの問いに、やっぱりルフィは首を捻った

 

「おれも聞いた事あるぜ。 “翔風のレウリア”といやぁ、その戦闘能力もさる事ながら、一番怖ぇのは、彼女の持つ情報収集力だってな。 まるで、何処にでも耳と目があるんじゃねぇかってぐらいに、何でも知っているらしい。 どんなに上手く隠れようとも、彼女の前じゃ意味をなさねぇのさ。 狙った獲物は逃さないってな」

 

と言いながら、サンジが銃を撃つ真似をしてみせた

 

「あ、それちょっと違うから」

 

と、何故か本人から訂正の言葉が入った

 

「正確には、“興味のある事だけ”だから。 私、興味のない事まで調べる気全くないの。 面倒くさいし」

 

と、これまたどきっぱりと言い切られた

 

「……つまり、リアさんにとって“賞金首”は興味ある事だった…と?」

 

サンジのその問いに、レウリアがにっこりと微笑んだ

 

「うん、正解。ま、正しくは“賞金首”にじゃなくて、用があるのは“賞金”の方なんだけれどね」

 

「はは!ナミみてぇだな!!」

 

すると、ルフィが楽しそうに笑い出した

 

「ナミ?誰の事??」

 

「おれの仲間だ!航海士なんだ」

 

へぇ……

一応、仲間は集めているのね……

 

「で、リアとコックが仲間になるだろ―――」

 

「「勝手に数に入れるな!!」」

 

また、サンジとハモった

 

「っていうか、何でお前とおれのリアさんが知り合いっぽいんだよ。 仮にも海賊と海軍だったんだろう?」

 

「私、サンジさんの物じゃありません」

 

レウリアが、どきっぱりと言い切ったが、華麗にスルーされた

 

「ん?ああ、リアはおれのおばちゃ――――ぶへっ!」

 

言い終わる前に、レウリアの鉄拳制裁がルフィの顔面に直撃した

 

ルフィを沈めた後、レウリアはにっこりと微笑み

 

「ルフィの義姉です」

 

と、極上スマイルを作る

 

「なんだよぉ~お前はおれのおばちゃ――――ぐぇ」

 

また問題発言をしようとしたルフィに、レウリアの制裁が下った

 

義姉だっつってんでしょ!いい加減分かれ!!次に、それ言ったらただじゃおかないわよ!!

 

ギンッと、射殺すような目を向けられ、ルフィは身の危険を感じたのか…こくこくと頷く

 

改めて

 

「お、おおおおれの、ねーちゃんだ」

 

「ルフィの義姉です」

 

そう言いきらせたのだった

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ルフィが夢主の事との関係を何と言おうとしていたかは…

想像すれば、すぐに分かるけど…

だって、ルフィの祖父のガープの義娘という事は…??

あ、禁句です

それ以上、言ってはいけません!

 

とりあえず、夢主の経緯を語っておかないといけなかったので・・

存外、話が進まなかったぜ…

 

2011/09/27