MARIKA

-Blue rose and Eternal vow-

 

 Act.0 始まりの出会い 

 

 

東の海イーストブルー・ゴア王国 フーシャ村 裏・コルボ山 海岸―――

 

17歳になったばかりの1人の青年が、静かに出航しようとしてい

 

見送りに来ていたのは、義理の弟1人と少女が1人

そして、村の酒場の女店主・マキノに村長や、青年が世話になった山賊の手下が数人

 

彼らが見送る中、青年はやっと念願の海に出るのだと嬉しそうに笑った

 

7年前に、義兄弟の盃を交わした一人の少年が死に、少年達は誓った

“絶対に死なない”と

“くい”の無い様に生きるのだと

 

そして、いつか必ず海へ出て、思いのまま生きると

誰よりも自由に

 

出航は17歳になった時

少年達は、“海賊”になるのだ

 

「頑張れよー!!エース~~~~~!!!!」

 

青年の義弟の少年が、元気よく叫ぶ

青年はニッと笑い、大きく手をかざした

 

「待ってろ!直ぐに名を上げてやる!!!」

 

そんなやり取りをする彼らを、銀色の髪の少女が複雑そうな顔で見ていた

年の頃からして、青年の2つ下ぐらいか

そんなぶすくれた少女に気付いた、青年がふと少女の顔を覗き込んだ

 

「何、膨れてやがるんだ? レウリア」

 

「・・・・・・別に、ふくれてないわ」

 

少女は頬を膨らましたまま、ぷいっとそっぽを向いた

その様子に、青年がははーんと笑みを浮かべる

 

「何だ? おれが居なくなるのが、寂しいのか?」

 

青年の言葉に、少女がかぁっと頬を赤らめたかと思うと―――突然、キッと青年を睨みつけ―――

 

「違うって言ってるでしょう!!!」

 

ばち――――ん

と、思いっきりビンタをさく裂させた

それを受けた青年は、はははははと笑いながら平然としている

 

そんな二人のやり取りを見ていた、青年の義弟の少年が不思議そうに首を傾げた

 

「???? リアは、エースが海賊になるのに嬉しくねぇのか?」

 

「そんな事……っ! ……そんな事ないわよ」

 

少年の台詞に、少女が小さく呟いた

ぎゅっと右手を握り締める

 

「だって・・・・海賊になるのはエースの夢だもの・・・・・・。反対なんてしないわよ・・・・」

 

頭では分かっているのだ

海賊に―――海に出る事は彼らの“夢”であり、“希望”なのだ

それは、最初に海に出た彼らの義兄弟の少年・サボの“夢”でもある

 

最初は、サボ

二人目は青年

そして、三人目はきっとこの少年

 

皆、少女の側から離れていく

 

少女には、それを追い掛ける術も理由も無いのだ

だって、自分は彼らと“誓い”を交わした仲ではないから―――

それに、義父との“約束“もある

今の自分には、彼を追い掛ける“自由”すらないのだ

 

落ち込んでしまった少女に、青年が頬を掻きながら何かをポケットから取り出した

 

「リア」

 

ふと呼ばれ、少女がゆっくりと顔を上げる

上げた瞬間、視界に蒼い何かが目に入った

それが、ゆらゆらと目の前で風に吹かれて揺れている

 

「左手、出せ」

 

「え……?」

 

言われた意味が分からず、少女が首を傾げる

きょとんとする少女に、照れが頂点に達したのか、青年が「あ~~~~」と叫びながら頭をかいた

 

「いいから、左手出してみろ!」

 

そう言って、無理やり少女の左手首を掴んで引き寄せた

その手首に、蒼い何かを巻き付ける

 

「こ・・・れは・・・・・・?」

 

少女が、まじっと自分の左手首に巻かれたそれを見た

それは、蒼いリボンだった

美しい澄み渡った海の様な、蒼い蒼いリボン

 

「見て分からないのか? リボンだよリボン」

 

「いや、それは分かるけど……そういう意味じゃなくて……」

 

何故、これを自分に渡すのか

その理由が分からなかった

 

青年は、ニッと笑みを浮かべると

 

「それは、おれとお前の“約束”の証だ」

 

「やく・・・そく・・・・・・?」

 

「そうだぜ。 おれは必ずお前にまた会う。 その“約束”の証だ」

 

「・・・・・・・・・・」

 

「再会の証に、そのリボンと同じ色をした花を両手いっぱい持ってってやるから、楽しみに待ってろよ!」

 

「・・・・・・・・・・」

 

誇らしげにそう言う青年とは裏腹に、言われた少女は意味が理解出来ないのか・・・・・・

ぽかーんとしたまま、瞬き一つせず青年と左手首に巻かれたリボンを交互に見た

 

予想外の少女の反応の薄さに、青年は首を傾げる

 

「何だ? 嬉しくねぇのか?」

 

「・・・・・・・・・・」

 

やはり、少女は微動だにしなかった

 

「・・・おかしいなぁ。 マキノさんに女に物をやるなら花とリボンだって教えてもらったんだけどな・・・・・・」

 

などと、ぶつぶつ呟いている

 

「・・・・・・このリボンと同じ色って・・・蒼い花?」

 

ぽつりと、返ってきた少女の反応に青年がぱっと顔を明るくさせる

 

「ああ、蒼い花だ! お前が望むなら、チューリップでも、バラでも、何でも持って来てやる」

 

青年のその言葉に、少女が今日初めてくすりと笑みを浮かべた

 

「・・・・・・知らないの? エース。 蒼いチューリップも、バラも、存在しないんだよ?」

 

少女のその笑みに嬉しくなったのか、青年が顔を綻ばせた

そして、両の手を大きく広げ

 

「そんな事はねぇさ! 世界は広い! それこそ、“偉大なる航路グランドライン”に行けば、蒼い花だってあるさ!!」

 

自信満々の青年に、少女がやっと嬉しそうに笑った

 

「・・・・・・うん。 “約束”ね」

 

そんな二人のやり取りを見ていた、周りの大人がにやにやと笑みを浮かべた

 

「エース! 告白上手くいってよかったなー!!」

 

「ひゅーひゅー! アツいねぇ!」

 

「うるせぇよ! 外野!!」

 

周りからの野次に、顔を真っ赤にした青年が吠えた

 

少女は笑っていた

青年も笑っていた

 

そうして、青年は“夢”を追い求めて海へ出た

遙かなる大いなる世界へ――――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

MARIKA

-Blue rose and Eternal vow-

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

―――東の海イースブルー・とある北の海域

 

船の甲板を、白い制服にキャップを被った海兵達がデッキかけをしていた

船はゆっくり航行しており、海も穏やかだ

その船は、帆に“MARINE”と書かれている

そして、その後ろには幾つもの同じ帆船が何隻も続いていた

 

それは、この世界の三大勢力の1つ

世界政府直属の海上治安維持組織“海軍”の船だった

 

そして、その中でも“偉大なる航路グランドライン

世界中の正義の戦力の最高峰

マリンフォードに本部を置く“海軍本部”直轄の帆船・“艦風”の異名を持つ艦隊だった

 

そして、この艦隊を指揮しているのは―――

 

ざわりと、甲板に居た海兵に緊張が走る

コツリ…と足音が聞こえてきた

 

瞬間、その場にいた海兵達は一斉に掌を後ろに向け、挙手敬礼の姿勢を取った

 

コツコツ…と、ヒールの音が近づいてくる

 

海兵達はごくりと息を飲み、その瞬間を待った

ギィ…と、船室の扉が開いた瞬間

 

 

 

 

 

「おはようございます!! レウリア大佐!!!」

 

 

 

 

 

海兵達の声が、一斉に辺り一面に響き渡った

と、同時に船室から1人の美しい少女が姿を現した

年の頃からして18歳ぐらいか

彼女の金にも似た、長い銀色の髪が風に吹かれて揺れる

肩に羽織った白い海軍のコートがぱたぱたと風に靡いていた

 

少女が一度だけ、そのアイスブルーの瞳を瞬かせた後、ゆっくりとその薄紅色の唇を動かした

 

「おはよう。 皆さん、朝からご苦労様」

 

その声を聴いた瞬間、兵達が嬉しそうに笑みを浮かべる

 

コツリ…と、彼女のヒールが音を立てながら進みだした

 

「中将は、どこに来られているかしら?」

 

彼女からの問いに、兵の1人が「は!」と、背筋をびしっとさせた

 

「ガープ中将は、客室でお待ちとの事です!」

 

兵の答えに、少女がにっこりと微笑む

 

「分かったわ、ありがとう」

 

それだけ言うと、そのまま客室の方へ歩いて行ってしまった

 

彼女の立ち去る姿を見送った後、兵達は一斉にほぅ…と、感嘆にも似た溜息を洩らした

 

「ああ…相変わらずレウリア大佐はお美しいなぁ~」

 

「それに、とってもお優しい」

 

うんうん、と隣に居た海兵も頷く

 

「リディ・レウリア大佐。 若干14歳で海軍に入り、たった4年で大佐まで上り詰めた方だ」

 

「捕まえた賞金首は、数知れず」

 

「“翔風のレウリア”の名は伊達じゃないって事だな」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

      ◆      ◆

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

コンコンと、客室の扉をノックする

 

「入っとるよ」

 

何とも間抜けな返事に、少女は小さく溜息を付いた

それから、一度だけアイスブルーの瞳を伏せた後

 

「海軍本部大佐・リディ・レウリア。 入ります」

 

そう宣言した後、ガチャリと扉を開けた

中に入ると、中央の椅子に背を向けたままどっかりと大柄な男が座っていた

その顔には虎のマスク

 

少女は、ゆっくりとその中央の椅子に近づいた

 

「ガープ中将、ご無沙汰しております。 遠路はるばる御足労いただき、ありがとうございます」

 

少女の堅苦しい挨拶に、ガープと呼ばれた男はポリポリと頬を掻きながらくるりと椅子を回転させた

 

「久しぶりの再会に堅苦しい挨拶は無用じゃ。 のぅ、レウリア」

 

そう言って、にかっと笑った

 

レウリアと呼ばれた少女は、一度だけ小さく息を吐いた後

 

「では、そのふざけたマスクは取っていただけますわね? お義父様」

 

義父と呼ばれたガープは、にやりと笑った後、

突然、ぶわっはっはっはっは!!と笑い出した

 

「これの良さが分からんのか? レウリアは堅いのぅ」

 

「まったく分からないです。 分かりたくもないです」

 

きっぱりはっきり言われ、ガープがしゅーんとうな垂れた

 

「そうか・・仕方ない・・・・・・」

 

そう言って、少し残念そうにマスクを取る

すると、中から“父”と呼ぶには年が随分いっている素顔が姿を現した

どちらかというと、“祖父”と言った方が納得いく

 

「それで? 私からの報告書と辞表は読んで頂けたのですよね?」

 

レウリアがさっさと本題を切り出すと、ガープは胸元から2つの書類を取り出した

 

「読んだよ。また、賞金首を捕まえたそうじゃな。 大したものじゃ。 それで、こっちじゃが―――」

 

そこまで言い掛けて、ちらりと机に置いた文書を見た

そこには、“脱退 “の二文字が記されていた

 

「・・・・・・本気で海軍を辞める気か?」

 

「本気ですよ」

 

ガープの問いに、レウリアはきっぱりとそう答えた

だが、ガープの方ははっきりせず、う~~んと腕を組んだまま唸った

 

「せっかく大佐にまでなったといういうのに・・・・・・勿体ないではないか」

 

大佐というのは、海軍の中で左官クラスのトップである

実質的な、指揮権と大きな艦隊を任される

いわば、司令官だ

 

普通になりたくても、そうそうなれるものではない

ガープがそう呟くと、レウリアはくすりと笑みを浮かべた

 

「だからですけど? 私、お義父様との“約束”はきちんと守ったでしょう? そろそろ、“自由”になりたいんです」

 

そう―――“約束”だった

 

7歳の頃、ガープに救われたレウリアに取って、彼こそが親であり、尊敬に値する人だった

そんなガープの願いが“孫を立派な海兵にする”だった

だが、その孫はそれを拒み、あろう事か海賊になる事を夢見た

そして、その夢はそのままレウリアに向けられたのだ

 

だから、“約束”の期日までレウリアは海兵になる事にした

 

「お義父様は、私が海軍に入る時言いましたよね?“大佐になるまでは海軍にいる様に”と。 だから、私は“大佐になったら自由にしていいなら構わない”と言いました。 そして、私は大佐になった。 この4年もの間、ずっとそれだけの努力はしてきたつもりです。 まさか、海軍本部中将ともあろうお方が、約束を破るというのですか?」

 

レウリアの正論に、ガープがうっ・・・と、言葉を詰まらす

 

正直な話、ガープはもっと時間が掛かるだろうと思っていた

そして、大佐になる頃には彼女の考えもきっと変わるだろう―――と

 

だが、ここで大きな誤算が起きた

 

レウリアはたった4年でそれを成し遂げてしまったのだ

これには、ガープも驚いた

未だかって、こんな最速で大佐に上り詰めた者など存在しない

普通に考えて、あり得ない事だったのだ

 

それと同時に、彼女は“本気“なのだと思った

何が、レウリアをそこまで“自由”に縛るのか―――

 

それは、一目瞭然だった

 

ちらりと、彼女の左手首を見る

そこには、袖に隠れて少ししか見えないが、蒼いリボンが巻かれていた

 

「エースか・・・・・・

 

3年前に、海に出たもう1人の息子の様な、孫の様な存在―――

そして、レウリアにとって――――

 

ガープは小さく溜息を付くと、スッと真面目な顔でレウリアを見た

 

「決意は―――変わらぬ様じゃな」

 

ガープの言葉に、レウリアははっきりした口調で「はい」と答えた

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

      ◆      ◆

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――――東の海イーストブルー・海上レストラン 「バラティエ」

 

「・・・・・・ここ?」

 

ガープが辞める前に、どうしても一緒に行きたい所があると言って、レウリアを連れて来た場所は、有名な海上レストラン「バラティエ」だった

大きな魚の船の形をした、海の上のレストラン

 

何故、ここなのか

普通に、食事ならどこかの街のレストランでもいいんじゃないかとも思うが

尊敬する義父の最後の申し出なので、断る訳にはいかない

これが、最後の晩餐だと思えば、尚更だ

 

ドレスコード必須と言われたので、いつもの海軍のコートを脱ぎ蒼いチャイナドレスを着てきたが・・・・・・

ガープはちゃっかりいつも通りの姿である

※流石にあのマスクは問答無用で取り外させました

 

「何でわざわざここなのですか?」

 

レウリアのもっともな問いに、ガープはにかっと笑うと

 

「一度来てみたかったんじゃ!」

 

と、嬉しそうに笑った

 

船から降り、レストラン内へ入る

 

大きなホールに、青で統一された調度品

中央の大きな螺旋階段

そして、雰囲気の合った優雅な音楽

 

とても、ここが海の上だとは思えなかった

 

「凄い・・・・・・」

 

圧倒される、その雰囲気にレウリアは感嘆の声を洩らした

そこへ、黒いスーツ姿の1人の男がスッと手を優雅に前にしながらお辞儀をした

 

「ようこそ、美しいお嬢さん。 海上レストラン“バラティエ“へ。 お席の方へご案内します」

 

彼の金色の髪が、さらさらと揺れている

 

「さ、お手をどうぞ」

 

彼がスッと、左手を差し出した

レウリアは、少し躊躇ったが……

 

「ありがとう」

 

そう答えると、その手に自身の手を重ねた

 

窓際の一等良い席に案内されると、男はとても視線な仕草でレウリアの椅子を引いた

レウリアは軽く頭を下げると、彼が引いてくれた椅子に座った

 

「親切なのね、ウェイターさん?」

 

レウリアがそう尋ねると、男はにこりと微笑み

 

「これは申し遅れました。 私は副料理長のサンジです。 ちなみに、ウェイターは昨日で全員逃げ出しました」

 

その言葉に、レウリアはくすりと笑ってしまった

 

「あら、ウェイターが全員逃げたなんて、おかしな話ね」

 

レウリアがそう言うと、サンジと名乗った男はにっこりと微笑み

 

「いえ、うちじゃよくある事ですよ」

 

そう言って、流れる様な手つきでレウリアの前にあるグラスにワインを注ぎだす

 

「どうぞ、こちらはクヴァリテーツヴァイン・ミット・プレディカートのシュペートレーゼです」

 

「ありがとう。 お義父様にも注いでいただける?」

 

レウリアの言葉に、サンジが 「おお!」 と感極まった声を上げた

 

「こちらは、お嬢さんのお父上でしたか!」

 

そう歓喜の声を洩らすと、ガープの前のグラスにもワインを注ぎだす

ガープはふんっと鼻を鳴らすと、そのままワインを一気飲みしだした

 

そんなガープを余所に、またサンジがレウリアに近づいて来た

 

「そういえば、美しいお嬢さん。 私はまだ貴女のお名前を知りません。 どうぞ、このサンジめに教えては頂けませんか?」

 

「教える事はないぞ」

 

ガープがそうぼやいているが、レウリアはくすくすと笑いながら

 

「レウリアよ。 リディ・レウリア。 リアでいいわ」

 

あっさり名乗ってしまった

親の心子知らず・・・・とは、まさにこの事だ

 

レウリアの名前を聞いたサンジは、歓喜に震えながら天を仰いだ

 

「おお!何という美しい名前…っ! リアさん……っ!! 僕は今、喜びに満ち溢れている……っ!!」

 

どこからか、リンゴーンという鐘の音と、天使が舞い降りてきてそうだ

 

「その美しい銀色の髪に、透き通るような白い肌。 小鳥のさえずりの様な甘美な声、音楽を聞くよりも、貴女の声を聴いている方が僕の耳には心地良い……っ!
 そして、その蒼いチャイナドレスの隙間から除く魅惑の足……っ!素敵だ……!! 何という、運命の出逢いなのだろうか…! 今、この瞬間、僕と君は出逢ってしまった! この事を神に感謝しても、しきれない…っ!!」

 

何だか、凄い事を言われている様な気がするのだが・・・・・・

これはこれで、面白いので放っておく

 

ちらりとガープを見ると、何だか先程よりも機嫌が悪くなっている様だった

これは、早めに止めておくべきかもしれない

 

そう思ったレウリアは、にこりと微笑むと

 

「コックさん」

 

そう声を掛けただけなのに、すちゃっと素早く手を握られた

 

「サンジ、とお呼びください」

 

「・・・・・・・・・・」

 

流石のレウリアも呆れそうになったが、改めて呼び直す

 

「サンジさん。 お料理、持ってきて下さる?」

 

レウリアが名を呼んだのがそんなに嬉しかったのか、サンジは目をハートにさせると

「ただいま~すぐに~~~!!」と、叫びながら去って行った

 

サンジが去った事を確認してから、レウリアは改めてガープを見た

ガープはワインをヤケ酒よろしくで、がぶ飲みしながら

 

「なんじゃ、あの変なウェイターは……。 レウリアにべたべたしおって……っ」

 

と、ぶつぶつ言っている

 

事実なだけに否定出来ず、レウリアは苦笑いを浮かべながら

 

「ウェイターじゃなくて、コックさんよ。お義父様」

 

「どっちも一緒じゃ!」

 

どうやら、超ご機嫌斜めの様だ

レウリアが、仕方ないなぁ~という感じに溜息を付いた時だった

 

「おい!ウェイター!!!」

 

突然、店内に響くような馬鹿でかい声が響いた

何事かと思って、声のした方を見ると―――

 

「あれは―――」

 

その男には、見覚えがあった

そう、確かフルボディとかいう海軍大尉の男だ

 

どうやら、彼はプライベートでこの店に来ていたらしい

 

しかも、あの様子だとサンジと何やらあったっぽい

まぁ、連れの女性を見る限り、大体の予想は付くが・・・・・・

 

案の定、現れたサンジと何やら言い争っている…というか、フルボディが一方的にサンジを怒鳴っているが・・・・・・

サンジは、フルボディなど眼中にないのか・・・連れの女性を口説き始めた

 

しかも、どうやらスープに虫が入ってたらしく・・・・・・

それを文句言うフルボディに、サンジがあっさりかわしてしまった

 

どっと、店内に笑い声が響きだす

 

あ、馬鹿・・・・

 

流石のレウリアもそれは、まずいだろうと思ったが・・・・・・

 

 

 

 

 

 

「ふざけるんじゃ……ねぇ―――――!!!!!」

 

 

 

 

 

 

ガシャ―――――ン

 

突如

フルボディが怒気の混じった叫び声とともに、思いっきりテーブルをその拳で叩き割った

 

フルボディのその流石の所業に店の客も、表情を凍りつかせた

フルボディは、わなわなと震えながら

 

「このおれが、誰だか分かってねぇらしいな……!」

怒りの形相でそう言い募るが、サンジにはそれは聞こえてなかったらしく…
じっと、ぐちゃぐちゃに床にこぼれたスープを見ていた

それを見ていたレウリアは、はぁ…と面倒くさそうに溜息を付いた後

「仕方ないわね……」

そう言って、ゆっくりと椅子を後ろへ押した

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

サンジはゆっくりとしゃがむと、そのスープにそっと触れ

 

「……ちょっと、あの虫を取り除けば飲めたんじゃねぇのか? このスープは……。折角、三日三晩アクを取り取り作り上げたスープだぜ……」

 

瞬間、フルボディがサンジの手をぐしゃりと踏みつけた

そして、ぎりぎりその足に力を入れる

ざわり…と、店内に緊張が走った

 

「少々、態度がでけぇんじゃねぇのか!? こっちは、客だぞ!? 金を払う・・・・“客”だって言ってんだよ!!」

 

 

 

「はい、そこまで」

 

 

 

今にも殴りかかりそうなフルボディを止めに入ったのは、他ならぬレウリアだった

 

「誰だ!? 邪魔すんじゃ………っげぇ!? お、お前は……っ!!」

 

まさかのレウリアの登場に、フルボディが青ざめた

 

「しょ……“翔風のレウリア”!?」

 

フルボディのその言葉に、店内がざわりとざわめいた

 

「おい、“翔風のレウリア”って・・・・・・」

 

「海軍はじまって以来の最短記録を塗り替えて、たった4年で大佐まで上り詰めたっていう・・・・」

 

「賞金首狩りの海軍本部大佐、リディ・レウリア大佐!?」

 

ざわざわと店内がざわめく中、フルボディは顔を歪めながらレウリアを見ていた

恐らく、内心焦っているのだろう

何故なら、彼はここにレウリアがいるなど、万が一にも思ってなかったのだから

 

だが、ここで引けば沽券に係わる

レウリア相手でも、引くわけにはいかなかった

 

フルボディは、精一杯の虚勢を張り、自分が正しいと言い聞かせた

そう、自分が正しいのだ

間違っているのは、このコックの方なのだ

 

「お、おれは間違った事は言ってねぇぞ!! こいつが、コックの分際で生意気な事言いやがるから……っ!!」

 

「どうでもいいけど、その足・・・どけなさい」

 

レウリアがそう言い終わると同時に、それは起きた

 

「なっ・・・・・!?」

 

何かに足を掴まれたかのように、突然ふわりとサンジを踏みつけていた足が浮かぶと―――

そのまま、ぐるんっと身体が宙に浮き、その場に尻餅を付かされたのだ

 

「な、ん……っ」

 

フルボディは 一瞬、何が起きたのか分からなかった

知らぬ間に、こかされていたのだ

 

誰にも、それは何が起きたのか分からなかったらしく、ざわざわと店内がざわめいた

 

コツリ・・・・と、レウリアのヒールの音が響き渡る

 

「こ、これが・・・・まさか・・・・・・」

 

さらりと彼女の銀色の髪が風に吹かれた様に揺れた

「私が“翔風・・”と呼ばれる由縁・・・・知らない訳ではないでしょう・・・・・・?」

 

そう―――レウリアの異名“翔風”

それは―――

 

その時だった、不意にぐいっとレウリアの肩を誰かが掴んだ

 

「・・・・・・金ってのは、腹の足し・・・・になるのかい?」

 

「・・・・・・・・・・!?」

 

レウリアが、はっとしてその手の主を見た

 

「・・・・・・腹の足しになるのかって・・・・聞いてんだよ・・・・・・っ!!」

 

瞬間――――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ピチャン・・・ピチャン・・・・・・・・・

 

辺りは、しん・・・と静まり返ったまま、言葉を失っていた

 

「フルボディさん・・・・」

 

フルボディの連れの女性が、青ざめた様に両の手で口元を押さえていた

厨房にいたコック達も、様子を見に来て驚いた様に青ざめていた

 

ピチャン・・・・・・

 

床にこぼれたままのスープに、映っているその姿は――――

 

「食い物を粗末にすんじゃねぇ・・・・・・。 海でコックに逆らうって事は、自殺に等しい行為だって事を覚えておくんだな」

 

血だらけになったフルボディと、その顎を掴んで宙に浮かせているサンジの姿だった

 

誰もが、言葉を失っていた

 

 

 

 

 

 

「あ――――っ!!! お…お客様ァ――――っ!!!?」

 

 

 

 

 

 

が、その空気をものの見事にぶち壊す声が飛び込んできた

どこのKY!?

という感じに、皆がそちらを見る

そこに立っていたのは、随分と体格の良いタコ・・・じゃなく、イカ・・・・・? の様な顔に頭にはちまきを巻いた筋肉ムキムキのコック?が青ざめて立っていた

 

瞬間、イカコックは真っ赤に怒りの形相で、ずんずんとサンジとフルボディに近づいてきた

 

「また、てめぇか! サンジ!! お客様に、何してやがるっ!!」

 

その声に、サンジが「あ?」と呟きながらそちらを見る

 

「よりにもよって、その人は海軍大尉じゃねぇか!!」

 

イカコックは、鼻の穴を膨らませながら、がるるるるという感じに威嚇した

が、サンジには全く効果が無いらしく・・・・・・

横目で、一瞬だけイカコックを見た後

 

「何だ、てめぇかくそコック。 おれの名を気安く呼ぶんじゃねぇよ」

 

「くそコックに、くそコックと呼ばれる筋合いはねぇぜ!!」

 

それでも、まったく空気読まないイカコックは、ずんずんとサンジの真横まで近づいた

 

「“お客様”あってのレストランだぞ!! 大切な・・・お客様・・・”を傷付けるたぁ、どういうこった!!!」

 

サンジは、はっと乾いた笑みを浮かべると

 

「客がどうした。 こいつは今、大切な・・・食い物・・・”を粗末にした上に、コックを侮辱しやがったんだ」

 

持っているのもうんざりなのか、サンジがその手からフルボディを離す

 

「だから、思い知らさせてやってんのさ」

 

どさりと床に落とされたフルボディは、言い争う二人の横目にふるふると震えだした

 

「・・・・なンだ、この店は・・・・・・っ!! 客にこんな仕打ちする店があっていいハズない・・・・っ」

 

震える・・・というよりは、わなわなと怒り震えているのか・・・・・・

 

「潰してやる・・・・・・っ!! こんな店は潰してやる・・・・っ!! 潰してやる・・・っ!! すぐに政府に連絡とって———・・・・・・っ」

 

瞬間、サンジの空気が一変した

 

「・・・・・・じゃぁ、ここで息の根を止めとかなきゃぁな」

 

低くそう呟くと、サンジがフルボディに近づきだす

 

「・・・・・・は? ・・・・・・え・・・っ!!?」

 

まさかのサンジの発言に、流石のフルボディもぎょっとした

 

それを見たコック達が、慌ててサンジを止めに入った

 

「やめるんだ!副料理長……っ!!」

 

「頭に血が上るんだよ!!」

 

「抑えろマジで! 殺しちまうぞ……っ!!」

 

「てめェみてェな、つけ上がったカン違い野郎を見てるとよォ!!!」

 

「やめろ! やり過ぎだ、サンジ!!」

 

コック達が羽交い絞めになりながらサンジを慌てて押さえているが、サンジは怒りで頭に血が上っているのか、ぞっとするほど怖い顔で暴れていた

 

「おめぇが、どれほど偉いかってんだ・・・・・・っ!! ああっ!?」

 

「!!?ヒ・・・・・・・・・っ!!!」

 

フルボディが、身の危険を感じ涙目になりそうになっていた時だった

 

 

 

 

 

 

 

 

「うわああああああああああああ」

 

 

 

 

 

 

 

 

ドカァァッァン

 

 

と、今度は何やら叫び声とともに、何かが天井から降ってきた

 

「え? 何・・・・・・!?」

 

レウリアも、これは流石に予想に入っておらず、驚きの声を上げた

 

周りの客たちも「こんどは何だ!?」と騒ぎ出す

 

「あーびっくりした」

 

すると、その落ちてきた“それら”が突然むくりと能天気な声を洩らしながら起き上がった

その1人を見て、レウリアはぎょっとした

 

麦わら帽子に、赤いベストを着たその人物は・・・・・・

 

「ル……ルフィ!?」

 

それは、数か月前に海へ出た筈の海賊王を夢見る少年―――

義弟のルフィだった

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ついに、書いちゃいましたww

ワンピ夢!

恐らく、ここ最近の私のワンピ熱をご存じの方だったら、

まぁ、予想の範疇でしょうな(笑)

 

という訳で、.お相手はエースとなりましたが…

ぶっちゃけ、エースと絡み殆どナッシングで進みますのでww

そこん所、宜しく!

だって、エースめったに出てこないんだもーん

再会するのは、当分先だぜ…(-_-;)

基本的に、原作沿いで進みますのでv

 

 

 

 

 

2011/09/27