CRYSTAL GATE

  -The Goddess of Light-

 

 

 第四夜 霧の団 9

 

 

 

「アラジン・・・・・・君も“マギ”なのか・・・・・!?」

 

シンドバッド達が“それ”を見て息を呑む

彼の目の前には、顔のない青い肌の巨大な“ジン”がいた

 

それは、アラジンが持っている笛に宿っている彼の友人の“ウーゴ君”だった

 

思わず、シンドバッドがエリスティアを見る

エリスティアが肩をすくめると、小さく首を振った

 

本当ならば、シンドバッドに再会した折に、話すつもりだったのだが・・・・・・

あの日は王宮から戻った後、なし崩しのままシンドバッドに2日間も抱かれ続けていたので、もう話す気力などなかったのだ

その為、まだこの件は言っていなかったのである

 

アラジンが、シンドバッドの言葉に何か気付いた様に首を傾げた

 

「君“も”って・・・・・・おじさん、他にも“マギ”を知っているのかい?」

 

アラジンのその言葉に、シンドバッドが小さく頷く

そして、目の前に悠然と座っている“ウーゴ君”に触れた

その感触は、間違いなくシンドバッドの知っている“ジン”と同じものだった

 

「ああ、知っているとも」

 

「・・・・・・おじさんって、一体何者なの?」

 

ふと、シンドバッドがまるで“その言葉を待っていたかのように”ふっと笑い

 

 

 

「俺は、“シンドバッド”さ」

 

 

 

「――――・・・・・・っ」

 

アラジンが驚いたかのような一瞬大きくその瞳を見開くが――――

次の瞬間、きょと―――んとする

 

「・・・・・・?」

 

そして、“誰それ”的な風に目を点にして首を傾げた

 

「・・・・・・あれ?」

 

予想外のアラジンの反応に、迂闊にもシンドバッドの方が動揺した

今までの普通の反応ならば

 

「え!? おじさんが、あの・・シンドバッド!!?」

 

とか

 

あの・・シンドバッド!? うわぁ~僕、会ってみたかったんだぁ~」

 

的な言葉が来るかと思いきや・・・・・・

アラジンはきょとんとしまま、相変わらずその目を点にしている

 

「し、知らないの?! 『シンドバッドの冒険』とか―――――!!」

 

「・・・・・・?」

 

アラジンは知らないと言わんばかりに、やはり首を傾げた

 

「・・・・・・・・・・・・」

 

流石のこの未知の反応にシンドバッドが言葉を失う

傍から見ていた、エリスティアとジャーファルが「ぷっ」と吹き出しそうになる

 

シンドバッドは「んん!」と気を取り直す様に咳払いをすると

 

「幾重にも旅と航海を重ね、世界中の七つの海を冒険し! 七つの迷宮ダンジョンを攻略して自らの国をうち立てた男!! 7人の“ジン”の主! 七海の覇王! それが――――“シンドバッド”!!!」

 

アラジンが、シンドバッドの言葉に息を呑む

 

「ス、スゴイ・・・・・・!! ・・・・・・・・・・・・、・・・・・・・・・・・・、・・・・・・・・・・・・ンだよね????」

 

と、何故か疑問符を投げかけられ、シンドバッドの方が固まる

 

「僕には、よくわからないけど――――」

 

「・・・・・・分からないの? “マギ”なのに?」

 

思わず、シンドバッドがそう尋ねてしまう

すると、アラジンは少し寂しそうに

 

「・・・・・・うん、僕にはまだ分からないことが、多いんだ。 ジンの主とか、“迷宮ダンジョン攻略者”とかの話は最近聞いたばかりで―――・・・・・・」

 

「アラジン・・・・・・」

 

そうだ、アラジンは言っていた

「硬くてがんじょうな部屋」にずっといたのだと

その部屋は、話を聞くか限り「聖宮」に違いないとエリスティアは思った

だが・・・・・・

 

聖宮に“人間”がずっといるなんて、聞いた事もないわ

 

それに、“マギ”の事もそうだ

“ジン”である、アモンもアラジンの事を確かに“マギ”と呼んでいた

しかし、本来同じ時代に“マギ”は3人しか現れない

“ルシ”が1人であるのと同じで、“マギ”は3人と決められている・・・・・・・

 

今、現存する“マギ”は

レーム帝国のシェヘラザード

煌帝国のジュダル

そして大峡谷のユナン

 

この3人だと確認は取れている

それなのに――――・・・・・・

 

もし、アラジンも“マギ”だとしたら4人目になる

そんな事ってあり得るの・・・・・・?

 

何度もぶち当たった疑問だ

本当ならば、その事をシンドバッドに相談しようと思っていたのに―――・・・・・・

 

「ねぇ、おじさん。 “マギ”って何かな? 僕はまだ、自分の事もよく分からないんだよ」

 

「・・・・・・ふむ」

 

アラジンからの問いに、シンドバッドが少し考える

一瞬、その視線がエリスティアの方を見たのを、エリスティアは見逃さなかった

 

エリスティアは何も答えず、小さくかぶりを振った

答えようがないのだ

だが・・・・・・

 

「そうだな、ひとつ言える事は―――」

 

そう言って、シンドバッドが“ウーゴ君”の腕に触れる

 

これ・・が“マギ”という事だよ。 “ジン”を易々と実体化させ続ける程の魔力マゴイの出力。 もし、“マギ”以外の人間の攻略者たちが同じことをすれば一瞬で魔力マゴイが無くなってしまうよ」

 

「ううん、僕も出し続けられるワケじゃないよ? 笛をずっと使うとお腹が減るし、眠くなるんだ」

 

「ほぅ、なるほど。 “マギ”は魔力マゴイを使うと体力が減るのか。 面白いね」

 

アラジンの話はシンドバッドには大変興味深かった

 

「それでも、俺たち普通の人間からしたら、君の使える魔力マゴイは、無限の様なものさ。 “魔力マゴイ”とは、“ルフ”が生み出すエネルギーだ。 “ルフ”は知っているね?」

 

「“ルフ”?」

 

アラジンが首を傾げる

アモンの迷宮ダンジョンを脱出した際に辿り着いた黄牙一族の村の長老であるババが言っていた

アラジンの事を「ルフの子」と

そして、“ルフ”を「魂の故郷」とも

 

その時のアラジンには難しすぎてよくわからなかったが―――――・・・・・・

今なら、少し分かる気がした

 

「“ルフ”はね、空・海・大地 全てに生存しているの。 もちろん、生物の中にも宿っているわ」

 

エリスティアがそっと、付け加えてくれる

 

「本来ならば、普通の人間はその自分の中の“ルフ”が生む一定量の“魔力マゴイ”しか使えないのよ」

 

確かに、ババも似たようなことを言っていた気がした

 

「しかし、“マギ”は自分以外の“ルフ”を使役出来る・・・・・・簡単言いうと、自分以外が生むエネルギーを無限に使う事が出来るんだ」

 

シンドバッドの言葉に、アラジンが息を呑むの

 

「君は、“ルフ”達に愛されている。 いやぁ・・・・・・“マギ”ってのは、本当に凄いね。 エリスが俺を9ヶ月も放置して確認に行くわけだよ」

 

「はっはっは!」と笑いながらシンドバッドがそう言うが、目がまったく笑っていない

 

9ヶ月も内緒で放置されたことを、まだ根に持っているのか・・・・・・

と、ジャーファルとマスルールが思ったのは言うまでもない

 

エリスがなんだか居たたまれないのか、そのアクアマリンの瞳を泳がせながら

 

「シ、シン、その事は散々謝ったじゃない・・・・・・」

 

そう――――

2日間、何度ベッドの中で謝罪の言葉を言わされた事か・・・・・・

 

それなのに、まだ足りないっていうの!!?

と、なんだか逆にむかむかしてきた

 

すると、エリスティアの変化に気付いたシンドバッドが、にやりっとその口元に笑みを浮かべ

すっと、流れるような手つきで彼女の細い腰をかき抱いた

 

「ちょっ・・・・・・」

 

突然、シンドバッドから抱き寄せられ抗議しようとするが――――・・・・・・

そんな事でシンドバッドが放してくれずはずもなく

 

「エリス、そんな可愛い顔して。 逆効果って言葉を知らないのか?」

 

そう彼女の耳元で囁くと、エリスティアが かあああっとその頬を朱に染めた

 

「な、なに、言って――――」

 

しどろもどろになりながら、エリスティアがなんとか言葉を絞り出す

 

「ああ、もう知っているとは思うが―――――」

 

「え・・・・・・?」

 

何を? と、エリスティアが首を傾げる

 

「そんなの、決まってるだろう―――――」

 

そういうなり、ぐいっと力強く抱き寄せられたかと思うと、そのまま唇を奪われた

 

「んんっ・・・・・・」

 

突然の何の前触れも無い状態からの、シンドバッドの口付け

回避する事など困難に近かった

 

「ちょっ、待っ・・・・・」

 

なんとか、抗議しようとするが

そうやって口を開こうとすると、口付けが更に深くなった

 

「や、ん・・・・・・だ、・・・・・・ひと、が――――・・・・・・」

 

見ているのに・・・・・・

 

「エリス――――・・・・・・」

 

甘く名を囁かれ、エリスティアがびくんっと肩を震わせた

 

「お前だけだ、エリス――――俺に、ここまでさせる存在は」

 

「な、んの・・・・・・」

 

話をしているの・・・・・・?

次第に、意識がシンドバッドに奪われていく

 

「あ・・・・・・ン・・・・、ぁあ・・・・・・んん」

 

徐々に身体の力が抜けそうになる

それでも、シンドバッドは口付けをやめてはくれなかった

 

そう――――

まるで、誰かに見せつける様に・・・・・・・・・・

 

ちなみに、アラジンとモルジアナの視界は、ジャーファルとマスルールの手によって塞がれていた

 

「お、お兄さん~? 何も見えないよ~~」

 

と言うアラジンに、ジャーファルが

 

「子供は見てはいけません!!!」

 

と、シンドバッドを睨みながら、その光景をアラジンから完全にシャットアウトしていた

勿論、モルジアナも「あの・・・・・・」声を洩らしたが、マスルールの手は離れてはくれなかった

 

そんな事など、どうでも良さそうに

シンドバッドは、囁くように

 

「エリス――――愛してる、お前だけだ」

 

「シン・・・・・・? な、に・・・・・・を・・・・・・ぁ、はぁ・・・・・・」

 

囁かれる愛の言葉も

触れられる身体も

重なる唇も

 

全てが熱くて、そのまま酔いそうになる―――――

いっその事、全てを彼に委ねられたら、どのくらい楽だろうが・・・・・・

 

そんな事すら考えてしまう

が・・・・・・

 

ここは、外!

しかも、アラジン達もいるし、他のギャラリーの視線も感じる

 

絶対に、身体を委ねてはならない と何かが警告する

それと同時に――――

 

何の気配・・・・・・?

 

凄く、懐かしい様な、最近感じた様な

とても覚えのある“それ”に気付いた

 

誰かに視られている・・・・・・・・・・・・・・・?

 

いつから?

だらか、シンはわざと・・・・・・?

 

そんな考えも浮かぶが、他のギャラリーの雑念が酷すぎて、捕まえきれない

 

「あ・・・・・・」

 

そうこうしている内に、エリスティアに限界がきたのか

立っていられなくなり、がくっと足から力が抜ける

 

だが、そのまま崩れる事は無かった

すかさず伸びてきたシンドバッドの手が彼女を支えたのだ

 

「シ、シン・・・・・・も、もう―――――・・・・・・」

 

エリスティアが、懇願する様にそうシンドバッドに訴える

すると、シンドバッドは一度だけ、ジャーファルに視線を送ると

 

「そうかそうか、エリス。 お前がそう言うならば、今日はもう部屋に戻るか。 ――――勿論、続きはその後な」

 

そう言うなり、ひょいっとシンドバッドがエリスティアを横に抱きかかえた

 

「シ、シン・・・・・っ!」

 

エリスティアが、かぁ・・・・・・っと 頬を赤く染めて抗議しようとするが―――――・・・・・・

そんな、力すら出ないのか・・・・・・

そのまま、シンドバッドに身体を預けてしまう

 

本音としては、今すぐ降ろして欲しい

後、こういう人目の多い場所ではやめて欲しい

 

のに――――・・・・・・

 

何の意図があったのかは今のエリスティアには皆目見当がつかなかった

この時は、まだ――――・・・・・・

 

 

 

 

 

 

 

 

 

   ****    ****

 

 

 

 

 

 

 

 

 

シンドバッドがエリスティアを連れて去った後

ジャーファルはすっと、アラジンから手を離すと

 

「マスルール。 少し2人をお願いします」

 

それだけ言うと、一気にその場から姿を消した

残されたマスルールは、2人を見ると、そのまま椅子に座らせた

 

「あの、何が・・・・・・」

 

モルジアナが耐えかねてそう話しかけた時だった

何処かへ行っていたジャーファルが戻ってきた

 

「・・・・・・ジャーファルさん、どうでした?」

 

マスルールの問いに、ジャーファルは小さく首を横に振った

 

「逃げられましたね。 気配も痕跡も何も残っていませんでした。 もしかしたら、“迷宮道具ダンジョンアイテム”の可能性もあります。 一応、シンにも報告した方がいいでしょう」

 

「あ、でも、今は止めた方が・・・・・・」

 

直ぐに報告の向かおうとする、ジャーファルをマスルールが止める

すると、ジャーファルが首を傾げ

 

「何故ですか? もしかしたらシンやエリスに危険が――――あ」

 

そこまで言って気が付いたのか

ジャーファルが誤魔化す様に、咳払いをした

 

「そ、そうですね、少し時間を空けてからにしましょう。 いや、これは明日の朝まで待った方がいいのか?」

 

ジャーファルが今までにないくらい真剣な顔で、マスルールに尋ねた

だが、マスルールは淡々と

 

「さぁ? エリスさん次第では?」

 

とりあえず、報告はシンドバッドとエリスティアが部屋から出てきたらしよう

と言う事で同意したのだった

 

で、残されたアラジンとモルジアナは顔を見合わせると、首を傾げた

 

「シンドバッドおじさんと、エリスおねえさんはどうしたんだい?」

 

純粋な眼差してそうアラジンに問われて、ジャーファルが「ああ~」と言葉を濁す

こんなに純粋な子にあのシンの邪な感情など教えてはいけないという葛藤と、事実を言えない現実がひしめき合って、ジャーファルの中で、色々と・・・・・・

もう、これでもかという位 言い訳を考えてみたが

 

何も浮かばぬ・・・・・・っ!!

 

と、その時だった

不意に、マスルールが

 

「・・・・・・エリスさんが疲れてそうだったから、シンさんが部屋に連れて行った。 ・・・・・・だけだ」

 

と、淡々と表情一つ変えずにそういうマスルールにアラジンが「え!?」と驚きの声を上げる

 

「そうなのかい? エリスおねえさん、大丈夫なのかい? あ、そだ、後でモルさんとお見舞いに―――」

 

と、言い掛けたアラジンの言葉を遮るようにすかさずマスルールが

 

「いや、今近付くと危ないからやめた方がいい。 明日の朝、きっと元気な姿を見せてくれる・・・・と思う」

 

「(ナイスです!! マスルール!!!)」

 

マスルールの絶妙なまでのフォローにジャーファルが感動する

マスルールはそんなジャーファルを見て、小さく頷いたのだった

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

あれ・・・・・・?

ルシの説明も入れる予定だったんですけどねぇ~~~

何がどうしてこうなったwwww

 

・・・・・・あれだな、チャットしながら書くものではないなwww

 

 

2022.08.07