CRYSTAL GATE

  -The Goddess of Light-

 

 

 第四夜 霧の団 10

 

 

「ちょっ・・・・・・ちょっと、シン!! 一体、どうし――――・・・・・・」

 

エリスティアが止めようとシンドバッドに語りかけるが――――

険しい顔のまま、シンドバッドはエリスティアを抱き上げままホテル内のレストランからフロアを通って、最上階の自分たちが泊っている部屋まで戻ってくると

そのまま彼女をどさっとベッドの上に下ろした

 

「シン・・・・・・っ!」

 

抗議する様にエリスティアが叫んだ

が――――・・・・・・

 

不意に、シンドバッドが自身の口元に人差し指を当てて「静かに」と、合図を送てくる

 

「・・・・・・っ!?」

 

エリスティアが、慌てて口を閉じた

 

な、に・・・・・・?

 

シンドバッドからそのままでと手で合図を送られる

エリスティアは小さく頷くと、息を呑んだ

 

シンドバッドは、部屋の隅から隅まで確認した後、窓の外を影から見た

 

「・・・・・・・・・ちっ」

 

軽く舌打ちをしたかと思うと、エリスティアの元に戻ってきた

彼女の横に座り、「はぁ・・・・・・」と、疲れたかの様に息を吐く

 

「シン・・・・・・?」

 

エリスティアがそっと、シンドバッドの背に触れた

 

なにがいたの?・・・・・・・

 

そう尋ねると、シンドバッドは顔を上げると同時に、エリスティアの頬に触れた

 

「・・・・・・気配を感じたんだ」

 

「気配?」

 

それはもしや、“誰かに見られている”と先ほど感じた“あれ”の事だろうか・・・・・・?

だがその正体は、その手のものには敏感なエリスティアですら分からなかった

 

それと同時に、凄く馴染みのある気配な気もした

そう――――過去に感じた事のある気配・・・・・・

 

あれは――――・・・・・・

 

何かを思い出そうとした時だった

不意に、シンドバッドの手が伸びてきたかと思うと、エリスティアを優しく抱き寄せた

 

「シ、シン・・・・・・?」

 

シンドバッドの突然の抱擁に、エリスティアが戸惑いを覚える

だが、シンドバッドは“この気配が何か”分かったのか、そのままぎゅっとエリスティアを抱きしめる手に力を籠めた

 

「エリス・・・・・・エリスは俺を選んでくれた・・・・・・・・んだよな・・・・・・?」

 

「え・・・・・・シン? なんの――――」

 

話を――――・・・・・・と、言う前に、そのままベッドに押し倒された

 

「シ・・・・・・んっ・・・」

 

そして、「シン」と名を呼ぶ前に、そのまま唇を塞がれる

 

「ちょっ、ちょっと待っ――――――」

 

エリスティアが慌ててシンドバッドを押し退けようとする

だが、エリスティアの力でシンドバッドに敵う筈もなく――――・・・・・・

 

シンドバッドからの口付けが、徐々に深くなるにつれてエリスティアの意識がまどろみの中に引きずり込まれるように、おぼろげになっていく

 

「シ・・・ン・・・・・・んん、・・・・・・ぁ」

 

いつの間にか、降ろされた肩紐がしゅるっと音を立てて落ちていく

 

「だ、だめよ、シンっ・・・・・・」

 

なんとか、止めようとするが

シンドバッドは止めてはくれなかった

 

露になったエリスティアのふくよかな胸に触れてくる

 

「んん・・・・・・ぁ・・・・」

 

たまらず、エリスティアが声を洩らす

 

「エリス――――・・・・・・」

 

甘く名を囁かれて、エリスティアが羞恥のあまり、かぁっと頬を朱に染めた

 

「や、んん・・・・・・ぁ、は・・・・・あん・・・・・」

 

連日触れられて敏感になっていた肌が、過敏に反応する

ただ、胸に触れられただけなのに―――――・・・・・・

 

シンドバッドの舌が首から胸元へ動いていく

そのまま、エリスティアの胸の突起に舌が絡まっていく

 

「ん、はぁ・・・・・・エリス――――・・・・・・」

 

舌が突起を攻めるたびに、エリスティアがびくんっと肩を震わせた

 

「ああ、や・・・・ン、だ、だめ・・・・・・」

 

「何がダメなんだ・・・・・・?」

 

荒くなってく息の中で、シンドバッドがそう囁く

開いているシンドバッドのもう片方の手が、ドレスの隙間から中へと侵入していく

 

「あ・・・・・・っ」

 

その手が、もう片方の胸の突起に触れた

びくんっと、エリスティアが反応する

 

「は・・・・・・エリス、身体は正直だぞ・・・・・・?」

 

シンドバッドのその言葉に、エリスティアが かぁっと顔を赤く染めて、横を向いた

 

「シ、シンのせい、じゃ、ない・・・・・・っ」

 

「ふ、俺のせい、か。 ・・・・・・そんなに、俺に触れられるのが嬉しいのか?」

 

冗談交じりにそう言うシンドバッドに、エリスティアが更に顔を赤くさせて

 

「そ、そんなのじゃ――――・・・・・・」

 

「俺に、触れてほしかったんだろう? ――――こうして・・・・・・」

 

そう言うシンドバッドの手が、乱れたドレスの合間からそのまま彼女のももに触れる

 

「あっ・・・・・・んん、シ、シン・・・・・・っ」

 

微かに潤んだ彼女のアクアマリンの瞳が、シンドバッドを一層興奮させた

 

「ああ、エリス・・・・・・、俺の、俺だけのエリス――――・・・・・・」

 

そう言って、何度も愛らしい彼女の唇に触れる

 

「んん、シ・・・ン・・・・・・ぁ、はぁ・・・・ン・・・・・・」

 

知らず彼女の手がシンドバッドの首に回された

まるで、自分が彼女に―――エリスティアに求められている様な錯覚に陥る

 

「ああ、俺はここだ。 エリス―――・・・・・・」

 

「シン・・・・・・はぁ・・・んんっ」

 

何度も誓いの様に交わされる口付けが、いつしか身体の全てが支配されている様な錯覚を覚える

 

「愛しい、エリス―――お前だけは、お前だけが俺の――――・・・・・・」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

   ****    ****

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

シンドバッドは、ベッドの中ですやすやと眠るエリスティアの髪を撫でた

 

渇きが癒えない

9ヶ月もの間、触れられなかった渇きが関を切った様に襲ってくる

何度抱いても、抱いても 足りない

まだ、まだだと何かが囁く

 

彼女の・・・・・・エリスティアの心を繋ぎとめておかねば――――・・・・・・と、何かが囁く

 

この9ヶ月・・・・・・

彼女に出会って初めてだった

こんなに離れていた事はなかった

 

だからなのか

不安が、心の中に生まれた

 

どんな迷宮ダンジョンに、挑んだ時も、荒れ狂う海に航海にでた時も

感じた事のない不安――――・・・・・・

 

もし、万が一にも 彼女の心が離れてしまったら・・・・・・?

 

そんな事はないと信じたい

いや、彼女の事は信じている

だが―――――

 

人の心を一か所に繋ぎ留めておくことは出来ない――――・・・・・・

 

それが分かっているから、不安になる

 

いつか、彼女が・・・・・・

エリスティアが自分の元から離れていくのではないか――――と

 

そんな気がしてならなかった

 

そっと、エリスティアの髪をひとふさ指に絡めると、その髪に口付けを落とす

 

「エリス――――・・・・・・」

 

小さな声で、その名を刻む

彼女に聞こえないくらい、小さな声で

 

「・・・・・・俺を、置いて行かないでくれ・・・・・・・・。 お前だけは、お前にだけは――――俺は・・・・・・」

 

それは、まるで幼子が母にねだるかのような

恋人が彼女に懇願する様な

 

 

 

“恐怖”

 

 

 

そうだ

俺は恐れている

彼女が・・・・・・エリスティアが自分の傍から居なくなることを

俺以外の“誰か”にその心を砕くことを――――・・・・・・

 

“嫉妬”という名の悪魔が、己を支配していくのが分かる

 

この身体に半分残った“あの印”もエリスティアがいなかったら、きっとあの時暴走して、今頃シンドバッドのルフは“黒く”染まっていただろう

 

そう―――彼女が居てくれたからこそ、あの時 自分は自分を取り戻す事が出来た

 

だから

彼女の願いならば、なんだって叶えてやる

彼女が望むならば、どんな事も惜しまない

 

でも―――――

 

俺の傍を離れる事だけは駄目だ

絶対に、許さない

 

いっその事、大きな黄金の鳥籠に閉じ込めてしまって

誰の目にも触れられない様に

俺だけが彼女の・・・・・・エリスの美しい声と姿を手に入れる事が出来たなら――――・・・・・・

 

そこまで考えて、シンドバッドは、「ははっ・・・」と、渇いた笑みを浮かべた

 

そんな事をすれば、きっとエリスティアはシンドバッドを一生許さないだろう

掴もうとした手を振り払い、何処か手の届かない場所に行くに決まっている

 

そうなれば

きっと、俺はもう――――・・・・・・

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

   ****    ****

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

―――――翌朝

 

 

「・・・・・・・・・・・・」

 

ぼんやりとするまどろみの中、エリスティアは目を覚ました

外はまだ薄暗く朝日が昇り始めようとしている所だった

 

「私・・・・・・」

 

ああ、そうか・・・・・・

結局、昨日あのままシンドバッドにまた身を委ねてしまったのか・・・・・・

 

微かに残る、自分に触れたシンドバッドの感触

そして、「エリス――――」と甘く囁くように呼ぶ声

 

「・・・・・・・・・・・・っ」

 

そこまで考えて、エリスティアはどんどん顔が熱を帯びてくるのを感じた

 

 

 

わ、わ・・・・・・私の馬鹿―――――――!!!!

 

 

 

結局今回も、あのまま彼に流されてしまったのではないか

再会して、今日で4日目・・・・・・

 

最初の2日間は、ホテルに付いてアブマド達のいるバルバッドの王宮に直談判しに行った後、まるっと2日間シンドバッドと一緒にいて、離れていた分を取り戻すかのように、何度も何度もその彼の腕で抱かれた

そして昨日――――アラジン達を昼食に誘ってレストランで食事をしていた時、アクシデントが起きた為、急遽シンドバッドと部屋に戻って――――また抱かれた つい先ほどまで

 

だ・・・・・・

駄目すぎる・・・・・・っ!!

 

シンドリアならいざ知れず、よそ様の国にお忍び訪問中だというのに

3日間の内、5分の4ほどの時間もシンドバッドに抱かれていたってどうなの!!?

 

「お前はここに何しにきたんだ?」と、誰かに突っ込まれそうである

 

そのせいか、身体も無駄に重く感じた

疲労・・・・・・ともいうかもしれない

 

シンドリアにいた頃は、いつも一緒に寝ていたし、連日抱かれてもそこまで身体に負担はなかったが・・・・・・

約、9ヶ月 シンドバッド的に言えば「おあずけ」状態で、誰にも抱かれていなかったので

その反動が、一気に来た感じだった

 

とりあえず、今言える事は・・・・・・

湯あみがしたい

だった

 

どうしようかと考えあぐねていると・・・・・

 

「なんだ、百面相して」

 

不意に、頭上からシンドンバッドの声が聞こえてきた

顔を上げると、いつの間に起きたのか・・・・・・

エリスティアを抱きしめたまま眠っていたシンドバッドがくつくつと笑いながらこちらを見ていた

 

「百面相って・・・・・・そこまでしてないもの」

 

むぅ・・・・・・と、エリスティアが頬を膨らますと、シンドバッドがふっと柔らかく笑みを浮かべ

 

「湯あみに行きたいんだろう? なんなら、連れて行ってやろうか? どうせ、まともに立てないだろう」

 

さも当然の様に言うシンドバッドに、エリスティアがむっとしながら

 

「誰のせいだと思って・・・・・・」

 

と、ぶつぶつ文句を言いながら、起き上がろうとした瞬間――――

 

「きゃっ・・・・・・」

 

不意に、伸びてきたシンドバッドの手がエリスティアを抱き寄せた

 

「ちょっ、ちょっと、シン! 離し――――」

 

「駄目だ。 もう少しこうしていたい」

 

まるで、駄々っ子の様にそう言うシンドバッドに、エリスティアが小さく溜息を洩らす

 

「もう、何処のお子様ですか。 ここは他国なのですよ? 少しは危機感を――――」

 

「大丈夫だから、安心しろ。 今は誰も見ていない・・・・・・・・・

 

そう言って、ぽんぽんっとエリスティアの頭を撫でると、そのまま彼女に覆いかぶさるように体制を動かした

 

「あ、あの・・・・・・どいて欲しいのですけど・・・・・・」

 

「ん、それは聞けないお願いだな」

 

そう言うと、そのまま口付けが降り注いできた

 

「ん・・・・・・」

 

まるで、そうする事が“当たり前”の様に、口付けしてくるシンドバッドに、エリスティアが「あ・・・・・・」と、微かに声を洩らす

 

「あ、あの、シン・・・・・・? ま、待っ・・・・・・」

 

徐々に深くなっていく口付けに、危機感を感じたのか

エリスティアが、シンドバッドを押し戻そうとするが・・・・・・びくともしない

 

「んん・・・・・・っ、ぁ・・ン・・・・・・はぁ・・・・ぁっ・・・・」

 

息遣いが荒くなっていく

 

「エリス――――・・・・・・」

 

囁くような、シンドバッドの声

絡まる舌が、どんどんエリスティアの思考を麻痺させていく

 

「シ・・・・ン・・・・・・っ、おねが・・・・・・待っ・・・・・・ぁ」

 

いつの間にか、露になっている胸元にシンドバッドの手が添えられていた

その手が、次第にゆっくりと動き出す

 

「ぁ、ン・・・・・・、だ、だめっ・・・・・・」

 

なんとか止めようと、慌ててエリスティアがシンドバッドの手を抑える

だが、シンドバッドは余裕の笑みを浮かべながら

 

「駄目・・・・・・じゃない、だろう? こんなにここを立たせて、気持ちいいんだろう?」

 

「や、ん・・・・・・言わな、・・・・で・・・・・・」

 

口では駄目だと言っているのに、反応してしまうのが恥ずかしいのか

エリスティアが、かぁぁ・・・・と、頬を朱に染めながら、ぎゅっとそのアクアマリンの瞳を閉じる

そんな姿も、愛らしいと感じてしまうので、もうシンドバッドは止められそうも無かった

くすっと、口元に笑みを浮かべると

 

「・・・・素直になれ、エリス。 俺に触れて欲しいんだろう?」

 

挑発する様にそう言う

すると、エリスティアが小さく首を振った

 

そんな反応も、いじらしい

 

「可愛い。 俺のエリス――――・・・・・・」

 

耳もとでそう囁くと、エリスティアが今度こそ顔を真っ赤にさせた

シンドバッドのその声音だけで、エリスティアがぴくんっと反応する

 

「シ、シン・・・・・・」

 

たまらず、エリスティアがシンドバッドの名を呼んだ

その反応はやはり可愛すぎて、シンドバッドが再度彼女を腕の中に抱きしめた

 

「あ、あの、シン・・・・・・わた、し・・・・・・」

 

「ああ、分かってる」

 

そう言って、彼女の愛らしい唇に口付けをする

まるで、それを待っていたかの様に、エリスティアの手がシンドバッドの背に回された

 

「んん、・・・ぁ・・・・っ・・・・・・」

 

合間に洩れる彼女の吐息が、たまらなく愛おしく感じる

 

 

 

 

―――――このバルバッドで、何度目か分からないほど抱かれていても

それでも尚、求めてしまう

この渇きが癒える時が来るのかは、分からないが・・・・・・

 

今はただ、ずっとこうして触れて欲しいと思ってしまうのは

もう、末期症状なのかもしれないと思った

 

そして、勿論この後ジャーファルにこっぴどく怒られたのは言うまでもない

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

やべぇ・・・・・・

この人たち、いつまでいちゃこらしてる気かね??

そろそろ、真面目に霧の団対策するよ~~~!!!

 

 

2022.08.24