CRYSTAL GATE

  -The Goddess of Light-

 

 

 第四夜 霧の団 8

 

 

 

もし・・・・・・

 

「エリス?」

 

急に、静かになったエリスティアに気付き、シンドバッドがこちらを見る

 

「ねぇ・・・・シン・・・・・・・・・」

 

 

もしも・・・・・・

 

 

「私が・・・・・・」

 

 

貴方との子が欲しいと言ったら・・・・・・

貴方は、どんな反応を返してくれる・・・・・・・・・?

 

 

一瞬、そんな事が頭を過ぎる

自分でそう考えて、可笑しくなった

 

馬鹿ね・・・・・・

私が彼からの言葉を拒否しておきながら、何を考えているのだろうか・・・・・・と

 

「ううん、なんでもないの」

 

エリスティアはそう言って、小さくかぶりを振ると、そっとシンドバッドに身を寄せた

ふいに、甘える様にエリスティアから身体を寄せてきたことに、シンドバッドが一瞬驚いた風に見せたが、そっと彼女の頭を撫でながら

 

「どうしたんだ? 急に」

 

「・・・うん、少しだけ・・・・・・このままで――――・・・・・・」

 

もう少し

もう少しだけ、このままでいさせて欲しい・・・・・・

 

そうしたら、あの「夢」も全て

全て、忘れられるから―――――――・・・・・・

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

   ****    ****

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

―――― バルバッド・ホテル内レストラン

 

「うわぁ~~~」

 

アラジンとモルジアナは目の前に広がる豪華料理に、歓喜の声を上げた

中でも、大きな魚の焼き物が目を引いた

 

ジューシーな香りが食欲をそそる

 

「バルバッド名物・エウメラ鯛香草焼きだ!」

 

ウェイターが、エウメラ鯛が崩れない様に丁寧に取り分けてくれる

 

「エウメラ鯛はバルバッド近海にしかいない珍魚なの。 鯛だけれど骨まで柔らかく香草と併せて丸ごと焼くのよ」

 

エリスティアの説明に、アラジンとモルジアナがますます目を輝かせる

ウェイターから、取り分けた皿を受け取ると、アラジンとモルジアナの前に置いた

 

「さ、冷めないうちに召し上がって」

 

今か今かと待っていた二人は、エリスティアから渡された皿の上のエウメラ鯛にかぶりついた

 

「んんん~~~~おいしいい~~~~」

 

アラジンが興奮気味に嬉しそうに顔を綻ばせながらそう叫ぶ

モルジアナも言葉には発しないが、一心不乱に食べていた

 

その様子が微笑ましくて、エリスティアはなんだか笑ってしまった

ふと、夢の中で見た子供と彼らが重なった

 

あの子は、エリスティアの事を「ママ」と呼んでいた

シンドバッドとの間に子供が もし、居たとしたならば

こんな気分だったのかもしれない――――・・・・・・

 

そんな事を考えてしまったからだろう

知らず、アラジン達を見る目が優しくなる

 

エリスティアのそんな視線に気づいたのか、不意にシンドバッドが彼女の肩をそっと抱き、

まるで耳元で囁く様に

 

「どうした? エリス。 顔に子供が欲しいって書いてあるぞ」

 

そんな風に半分冗談で言ったつもりだった

が・・・・・・

 

その言葉を聞いた瞬間、エリスティアが「・・え・・・・・・」と声を洩らしたかと思うと、顔が真っ赤に染まっていた

 

「・・・・・・・・・・・・」

 

彼女のまさかの反応に、シンドバッドがその琥珀の瞳を大きく見開く

いつもなら「何言っているのよ!!」と怒るはずなのに、今日のエリスティアは違った

 

まるで考えていたことを言い当てられたような、図星だった様な

そんな反応だった

 

思わず、シンドバッドがにやりと笑みを浮かべた

そして、肩に抱いていた手をそのまま彼女の腰に回す

 

「そうか、エリスがそう思ってくれていたなんて・・・・・・俺は嬉しいぞ」

 

そう言って、彼女の腰を掻き抱いた

ぎょっとしたのは、エリスティアだ

 

シンドリア国内や、関係者だけの時ならいざ知らず、ここはバルバッド一の高級ホテル内にあるレストランだ

勿論、海路は封鎖されているとはいえ、ここに泊っているのは貴族や、諸外国の重鎮などばかりである

それなのに、こんな場所でこんな事をされれば、あっという間に噂が広まってしまう

 

「あ、あの・・・・・・ちょと、シン、離れ――――」

 

「なんだったら、今からでも俺達の子供を――――――」

 

「いや、あの、だから・・・・・・っ」

 

お願い離れて

周りの視線が痛い

 

アラジン達など、食べるのすら忘れて呆然とこちらを見ているではないか

恥ずかしすぎる・・・・・・

 

「んん! ごほん!!」

 

すると、突然場を割って入るように、ジャーファルがわざとらしく咳払いをした

そして

 

「シン、そういうのは、2人きりの時だけにして下さい。 ・・・・・・エリスが困っているでしょう」

 

言われてシンドバッドが腕の中のエリスティアを見ると―――

エリスティアは顔を真っ赤にして、俯いていた

 

それを見た、シンドバッドは「仕方ないな―――」と、溜息を洩らしながら、エリスティアを解放するが・・・・・・

瞬間、そっと彼女の耳元で

 

「・・・・・・続きは今夜、たっぷりと、な」

 

「~~~~~っ」

 

エリスティアがばっと耳を手で押さえる

その顔は、茹でたタコの様に耳まで真っ赤に染まっていた

 

その横でジャーファルが呆れた様な顔をしている

 

一昨日、このバルバッドに到着して、アブマドに謁見した後から今朝まで

ずっと、寝室から出てこなかったのはどこの誰ですか!!?

 

と、突っ込みたいのをぐっと呑み込む

正直、シンドバッドよりもエリスティアの身体の方が心配である

 

だが・・・・・・

すみません、エリス・・・・・・

世継ぎはシンドリア王国には必須!! これをなし得られるのは貴女しかいない!

その貴女がその気になったのなら、私が止める理由はない!

 

である

 

こうしてはいられないと、ジャーファルがぱぱぱっと、メニューを開く

そして、近くにいたウェイターを捕まえて、「こちらとこちらもお願いします!!」と、何か注文している

 

そして、程なくして運ばれてきた料理は・・・・・・

すっぽんのスープに、高麗人参とニンニクがたっぷり使われたジャンバラヤや、パテ・ド・カンパーニュ

 

次々と運ばれてくる料理に、エリスティアの顔色がますます赤くなる

 

「ちょっ、ジャーファル!! 待って待って!!」

 

流石に料理を見てジャーファルの意図に気付いたのか・・・・・・

エリスティアが立ち上がってストップをかけた

 

「こ、この料理どう見ても―――――」

 

「はい、滋養に良いものです。 エリスにはしっかり取ってもらわなければ」

 

そう言って、ジャーファルがにっこりと微笑む

 

「いや、あの、そうではなくて・・・・・・」

 

「このすっぽんスープなんてどうですか? あ、それとも高麗人参入りの―――――」

 

「だから、待って頂戴!!」

 

思わず、立ち上がって制止を掛ける

一瞬、ジャーファルが静かになるが・・・・・・

 

至極真面目な顔で

 

「嫌なんですか?」

 

 

「え?」

 

 

「嫌なんですか?!」

 

 

ずずいっと、ジャーファルの顔が押し寄せてくる

無意識にエリスティアが後退ったのは言うまでもない

 

エリスティアはまだ火照っている顔を押さえながら

 

「そういうのじゃ、なくて・・・・・・その・・・・・・」

 

その時だった

意外にもシンドバッドが間に入って来て

 

「まあまあ、ジャーファルも落ち付け。 今、抱いたってすぐに子が生まれる訳じゃないんだぞ? もっと気楽に――――」

 

「―――そうじゃなくて!」

 

待って、この人たちは先ほどから何を言っているのだろうか?

子供? 滋養の付く料理? それではまるで―――――・・・・・・

 

「あの・・・・・どうしてそういう話の流れに・・・・・・」

 

言葉にするのが憚られて、あえて遠回しに聞いてみる

が・・・・・・

 

ジャーファルは、さも当然の様に

 

「折角、エリスがその気になったというのに、このチャンスを逃す訳にはいきません!!」

 

シンドバッドはというと

 

「俺は、いつでも準備出来ている。 エリスは身一つで俺の腕の中にくればいい」

 

 

・・・・・・・・・・・・

・・・・・・・・・・・・・・・・・・

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

エリスティアが頭を抱える

 

ええっと、つまり・・・・・・?

 

「・・・・・・貴方たちの中で、今私はどうなっているのかしら?」

 

そう問うと、ジャーファルとシンドバッドがきっぱりと

 

「お世継ぎを産む決心が付いたんですよね!?」

 

「俺の子を産んでくれるんだろう?」

 

 

「ち・が・い・ま・す!!!」

 

 

この人たちは、一体何をどうとってそう言ってくるのか

しかも断定で

 

確かに、変な夢を見てしまったせいか、なんとなく、気になってはいたけれど

それとこれは、別である

 

エリスティアは、大きな溜息をついて席に座ると

目の前で唖然としたままのアラジンとモルジアナに

 

「ごめんなさい、2人とも。 あの人たちは気にしなくていいから、この料理も食べてしまっていいわよ」

 

「あ、えっと・・・・・・」

 

ふと、モルジアナが何か言いたそうに口をもごもごさせた

 

「どうしたの? モルジアナ」

 

エリスティアがそう尋ねると、モルジアナは少しもじもじしながら

 

「その・・・・・・エリスティアさんと、あの方は、ご、ごごご、ご結婚なされて・・・・・・?」

 

「え・・・・・?」

 

一瞬、エリスティアが固まる

が、次の瞬間、首を横に振りながら

 

「あ、ああ、シンの事? 違うわよ。 彼は―――私の“契約者”なの」

 

「けい、やく??」

 

その言葉に、エリスティアが表情に影を落とす

 

「―――そう、“契約”。 私は、“ルシ”だから・・・・・・・・」

 

「ルシ?」

 

初めて聞くその言葉に、モルジアナが首を傾げる

すると、にこっとエリスティアが笑って

 

「それよりも、モルジアナも早く食べないとアラジンに全部食べられちゃうわよ?」

 

そう言って、料理をすすめる

言われて、モルジアナが料理を見ると―――――

あれだけあった料理が殆どなくなっていた

 

びっくりして、アラジンの方を見ると

頬いっぱいにリスの様に詰め込んで、もしゃもしゃしているアラジンがいた

 

「モルひゃん・・・・、もぐ・・・・・・食べにゃひのかい? もぐもぐもぐ」

 

アラジンが「おいしいよ~~~」と満面の笑みで言うが・・・・・・

このままではすべてアラジンに食べられると悟ったのか・・・・・・モルジアナも慌てて食べ始めた

 

その様子が、おかしくてエリスティアがくすくすと笑いだす

 

「足りない様だったら、追加するから言って?」

 

と、その時だった

ふと、シンドバッドが思い出したように

 

「ああ、そういえば部下の紹介がまだだったな。 ジャーファルとマスルールだ」

 

そう言って、傍に立っていたジャーファルをマスルールに視線を送る

すっと、官服姿のジャーファルが軽く頭を下げた

 

「モルジアナ」

 

ふと、呼ばれてモルジアナが顔を上げる

すると、シンドバッドはふっと笑いながら

 

「マスルールはな、“ファナリス”なのだよ」

 

「・・・・・・え?」

 

言われて、モルジアナがマスルールの方を見る

 

「君もだろ? モルジアナ。 目元がそっくりだ2人とも」

 

「・・・・・・・・・・」

 

思わず、マスルールを凝視してしまう

すると、マスルールは何でもない事の様に

 

「・・・・・・どうも・・・」

 

「・・・・・・あ、はい・・・」

 

初めて会う自分と同じ“ファナリス”

そんなマスルールにどう返していいのか分からず、そう答えるしか出来なかったのだった

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

   ****    ****

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「・・・・・・・・・で、どうするんです? 今の貴方には“道具”も無いのに、あんな安請け合いして」

 

ジャーファルが半分呆れた様にそう洩らした

だが、シンドバッドはけろっとしたまま

 

「なんとかなるさ」

 

「おい」

 

すかさずジャーファルが突っ込んだ

だが、やはりシンドバッドは気にした様子もなく

 

「しかし、この内紛を最小限の被害で収める為にも、少数で片を付けるべきだろう。 ・・・・・・バルバッドには借りがあるからな・・・」

 

シンドバッドのその言葉に、ジャーファルもシンドバッドの隣に座っていたエリスティアも言葉を発する事が出来なかった

 

先王・ラシッド・サルージャ

彼には、色んな意味で世話になった

 

「シンドリア王国」を建国する前

右も左も分からない自分達に貿易について教えてくれた

 

「商会」の事もそうだ

それに必要な事も全て―――彼から教わった

 

もし、あの時先王に会っていなければ、今の「シンドリア王国」はなかっただろう

でも―――――・・・・・・

 

ぐっと、「思い出したくない何か」を思い出し、エリスティアが拳を握りしめた

それに気づいた、シンドバッドがそっとエリスティアの手に自身の手を重ねた

 

「あ・・・・・・」

 

思わず、シンドバッドを見る

すると、シンドバッドはふっと笑った

 

シン・・・・・・

 

本当ならば、辛いのはシンドバッドの方なのに

それなのに、貴方は―――――・・・・・・

 

「とにかく、先王には本当に世話になった。 ――――あの人は、もう死んでしまったが・・・・恩人の国・バルバッドを戦火に沈めさせはしな―――「―――― ぶはっ!!!」

 

「きゃあ!」

 

突然、話の最中にジャーファルが盛大に飲み物を吹き出した

すかさず、シンドバッドがエリスティアを庇ったので、エリスティア自身には被害はなかったが・・・・・・

 

だからと言って、普通ならこんな真面目な話をしている最中に吹き出す様なジャーファルではない

 

何事かと思って後ろを見ると――――――――・・・・・・

 

 

 

「あ」

 

 

 

それ・・は、エリスティアにとっては知っている事ではあったが・・・・・・

それを見たシンドバッド他1名が思わず叫んだのは言うまでもない

 

何故ならば―――――

 

シンドバッドの真後ろで

 

 

ウーゴ君の大きな両手がにゅっと伸びていたのだから――――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

なんか・・・・・・半分ギャグ????

な、展開にwww

とりま、子供の話はそこらへんにそっと置いておいてくださいww

 

2022.07.17