CRYSTAL GATE

  -The Goddess of Light-

 

 

 第四夜 霧の団 5

 

 

「この国を騒がしている“霧の団”のトップの名前は“アリババ”・・・・・・“怪傑アリババ”。 そして――――――私やアラジンが一緒に迷宮ダンジョンに入った人の名前も・・・・・“アリババ”なの・・・・・・」

 

そう告白するエリスティアの瞳には涙が浮かんでいた

 

「これって、偶然なのかな・・・・・・? それと、も、本当に・・・・・・」

 

エリスティアが思いつめた様に、ぎゅっと手を握る

 

「エリス・・・・・・」

 

そんなエリスティアにシンドバッドが、そっと肩に手を置いた

そして、そのまま彼女の身体を抱きしめた

 

「シン・・・・・・?」

 

「まだ、そうとは決まった訳ではないだろう?」

 

「それは・・・・・・そうだけれど・・・・・・・・・」

 

それでも、何故か嫌な予感が消えない

不安が押し寄せてくる

 

「俺は、許せないな・・・・・・。 他の男を思ってお前が泣くなんて」

 

そう言って、そっとエリスティアの涙を拭う様に、その瞼に口付けを落とした

 

「・・・・・・・・・・・・っ、シ、ン・・・・」

 

そのままゆっくりとシンドバッドがエリスティアのストロベリー・ブロンドの髪に触れる

 

「・・・ぁ・・・・・・」

 

そのまま、ゆっくりと口付けされた

 

「シ・・・・・・っ、ん・・・・・・」

 

「お前を泣かせていいのは、俺だけだ――――違うか?」

 

そう、甘く囁かれ

エリスティアが肩をぴくんっと震わせた

 

「シ、ン・・・・・・そういう――――あっ・・・んん・・・」

 

言葉を発しようとした瞬間、まるでそれを遮るかのように、更に深く口付けられた

まるで、エリスティアの全てを欲している様に――――——貪欲で、熱い 口付け

 

「んっ…ぁ、はぁ・・・・・・シ、ン・・・・・・」

 

どんどん深くなっていく口付けに、エリスティアが流石に身の危険を感じたのか

慌てて、シンドバッドを押し退け様とするが――――

 

シンドバッドがそれを許すはずもなく

さらに腰を抱き寄せられた

 

「ま、待って、シ―――――んんっ」

 

「シン―――」と、呼ぼうとしたが、シンドバッドがそんな余裕を与えてくれる訳でもなく

なし崩しのまま、そのままベッドに押し倒された

 

「だめ、だめよ・・・・・・シン、今は――――」

 

最後の悪あがきの様に、エリスティアが抵抗しようとするが

シンドバッドは余裕の笑みを浮かべて

 

「“待った”も、“駄目”も、無しだ。 俺はなエリス―――お前が居なくなった日からずっと、お前だけを求めてきたんだ。 この意味、わかるだろう・・・・・・? エリスティア」

 

「・・・・・・・・・・・・っ」

 

シンドバッドにそう言われて、瞬間的にエリスティアの顔が朱に染まる

が、ふいっとそっぽを向いて

 

「な、何言っているのよ・・・・・・、わ、私はまだ怒って――――」

 

「怒る? 何に対して怒ってるんだ?」

 

シンドバッドにそう尋ねられて、エリスティアがぐっと押し黙る

 

「それは・・・・・・シンが」

 

「俺が?」

 

「その・・・・・・」

 

「ん? どうした? 言ってみろ」

 

シンドバッドにそう促されると、エリスティアの顔がますます赤く染まった

そのアクアマリンの瞳を言い辛そうに、逸らす

 

「・・・・・・・・・・・・から」

 

「うん?」

 

「だ、だからっ!!」

 

言う事が躊躇われるのか・・・・・・

エリスティアが、何かを言いかけて言葉を切る

 

それから、じっとシンドバッドを見た後、ふいっとそっぽを向いた

エリスティアのその反応に、シンドバッドが微かに笑みを浮かべる

 

「エリス? ・・・・・・言わなければ何も通じないぞ?」

 

囁く様に、耳元で言われて

エリスティアがぴくんっと肩を震わせた

 

「・・・・・・・・・・・・言ったじゃない」

 

「ん? 何をだ?」

 

本当に分かっていないのか、シンドバッドが首を傾げる

その姿に、エリスティアがむっとした

 

 

 

「だから――――来賓のお客様方が沢山いらっしゃる中で、言ったじゃない!!」

 

 

 

―――そう、あれは シンドリアを訪れた各国の来賓の方々をおもてなしする為に開かれたパーティー

 

パーティーとなると、主催側とはいえ同伴者が必要になる

本来であれば、パーティーの準備や、来賓のおもてなし、同伴などは王妃の位についている者がする仕事だ

だが、シンドリアの王妃の座は未だ空席であり

それ故に、その役割はいつもエリスティアが担っていた

 

シンドリア国内では、それが当たり前の様になっていたが

他国の貴族などは、隙あらば シンドリアの王妃の座に娘を就かせたいと思うものは多く

その日も、シンドバッドの周りには美しく着飾った娘を連れてくる貴族や王族が後を絶たなかった

 

シンドバッドが、女好きなのは有名で知れ渡っており―――――

既成事実さえ作ってしまえば、こちらのものと虎視眈々と狙っているのが手に取る様にわかるのか・・・・・・

 

何故かそのパーティーの時、シンドバッドは片時もエリスティアを手放さなかった

それが嫌だとか、不快だとかではないのだが・・・・・・

 

王妃の座を狙って挨拶に来る賓客には、やはり面白くないのだろう

エリスティアをシンドバッドが溺愛しているのも、周知の事実でもあり、迂闊な事を言えば首と胴体が離れかねない

かといってこのままでは、娘を紹介出来ない

 

そこで、彼らはあえてシンドバッドに

「シンドリアの今度の発展には、王妃は欠かせないと思う」

「そろそろ、王妃を娶られてはいかがか?」

などと、言い始めた

 

本音半分建前半分の攻防を繰り返していくうちに

流石のエリスティアも、作り笑いに限界が来そうだった

彼らは口ではエリスティアへ賛辞を述べるが、その目が「邪魔だ」と言っているのが見て取れたからである

 

下がりたい・・・・・・

 

その時のエリスティアは、心底そう思っていた

エリスティアが下がれば、彼らは我先にと娘たちを紹介してくるだろう

 

わかっていた

自分は王妃になれない なる資格もない

なれるのならば――――あの日、シンドバッドの求婚を断ったりしなかった

 

でも、無理なのだ

自分が“ルシ”である限り、誰の手も取れない―――――・・・・・・

 

だから、いずれは直面しなければならない事なのだ

シンドバッドが自分ではない、別の女性を王妃に迎える事は―――――・・・・・・

 

そう――――仕方のない事だ・・・・・・

 

最初から分かっていた事

の、はず なのに・・・・・・

 

胸が苦しい・・・・・・

 

頭では分かっていても、心が付いてこない―――――

 

彼が、自分以外の女性をその手に抱き寄せる姿など―――――・・・・・・

見たくない

 

これは、エゴだ

我儘な事だと分かっている

 

自分から拒絶しておきながら、何をいまさらと思う

で、も――――――

 

「――――シン」

 

小さな声で、ぐいっとシンドバッドの腕に手を添える

 

「ごめんなさい、少し気分がすぐれないから・・・・・・下がるわね」

 

そう言って、去ろうとした瞬間だった

突然、シンドバッドがエリスティアを抱きかかえた

 

驚いたのは、エリスティアだ

まさか、賓客の前でこんな風にされるとは露とも思わず、咄嗟の事に反応が遅れた

恥ずかしさのあまり顔が真っ赤に染まる

 

「ちょっ、シン・・・・・・!?」

 

だが、シンドバッドはさほど気にした様子もなく、平然と

 

「エリス、疲れたのだろう? 俺が連れていこう」

 

「え・・・・・!? いや、あの・・・・・・」

 

それでは、意味がない

シンドバッドの後ろで、賓客たちがこちらを睨んでいる

それはそうだろう

これから、チャンスという時に当のシンドバッドまで居なくなっては意味がない

 

流石にこの程度で国家間の関係に亀裂が入ったりはしないだろうが―――――

それでも、不満は上がるはずだ

 

そんな事―——させるわけにはいかない!!

 

「シン!! 降ろし――――」

 

エリスティアが、そう言おうとした時だった

シンドバッドがさも当然の様に

 

「ああ、皆の者はパーティーを楽しんでいてくれ! 我が寵姫の気分がすぐれない様なので、少し席を外す」

 

「ちょ・・・・・・!」

 

寵姫って・・・・・・

こんな場所で何言っているのよ―――――!!!!

 

エリスティアが顔を真っ赤にして口をぱくぱくしていると、シンドバッドがふっと笑みを浮かべ

 

「安心しろ、エリス。 お前が眠るまで俺が傍に付いていてやる」

 

「そ・・・・・・」

 

そういう事を言っているのではなくて―――――

 

「ああ、そうだ」

 

ふと、突然シンドバッドが賓客の方々に向かって

 

「皆の心遣い感謝する。 美しいお嬢様方を残していくのはしのびないが、許してくれ」

 

そう言って、エリスティアを抱えたまま会場を後にしようとした時だった

 

「―――――お待ちください、シンドバッド王よ!」

 

1人の御令嬢が叫んだ

流石の、シンドバッドもぴたっとその足を止めた

 

「これはこれは、ルチア王国のユリエル王女。 どうされました?」

 

シンドバッドが そう丁寧に尋ねると、ユリエルと呼ばれた王女は、少しふらついた素振りを見せながら

 

「わたしくしも、気分がすぐれませんの。 ねぇ、シンドバッド王? わたくしの・・・・・付き添いをお願いしても宜しくて?」

 

そう言って、そっとシンドバッドに触れてくる

 

「・・・・・・っ」

 

ユリエルの言わんとする事は、明らかなるエリスティアへの挑発だった

普通ならば、自国の王妃でもない女と、他国の王女

どちらを優先すべきか――――――

 

そう、問うているのだ

 

もし、エリスティアが王妃の座に就いていれば、ユリエルに物申せただろう

だが、エリスティアがシンドバッドの求婚を断ったのは周知の事実であり、いまさら彼に「行かないで欲しい」というのは、お門違いだ

 

それに、このままではラチア王国との国家問題依なりかねない

 

シンドバッドと2人っきりになれば、きっとユリエルは―――――・・・・・・

 

「・・・・・・・・・・・・」

 

丁度いいのかもしれない

彼に王妃がいた方が、きっと気持ちの整理がつく

 

ユリエルは傲慢な所は少しあるが、人材としてはきっと悪くない

それに、ラチアとの国家間の海上貿易にもきっといい結果が出る

 

 

 

ワタシが、我慢すれバ イイだけ―――――・・・・・・

 

 

 

「シン・・・・・・」

 

そっと、シンドバッドに促す様にエリスティアが声を掛ける

 

「私の事はいいから、ユリエル王女様を―――――」

 

そう言い掛けた時だった

突然、シンドバッドがエリスティアを抱きとめる手に力を込めた

そして

 

「マスルール!」

 

シンドバッドが、護衛に付いていたマスルールに声を掛ける

 

「ユリエル王女を休憩室へお連れしろ」

 

「「!?」」

 

驚いたのは、他ならぬエリスティアとユリエルだった

ユリエルなどは顔を真っ赤にして怒りを露にしてこちらを睨んでいる

 

ああ・・・・・・

 

全くの予想外の展開に、他の賓客たちもざわめき始めた

すると、シンドバッドは、さも当然の様に

 

「良い機会だから、皆に言っておく。 我がシンドリアの王妃に迎えられる女性はエリスティア、ただ一人だ。 他の者を娶る気はない。 勿論――――彼女が望むならば今すぐにでも王妃に迎えたいと思っている。 分かっているとは思うが、私の世継ぎも彼女の子 以外には与える気はない」

 

会場が騒然とする

ユリエルなどは、わなわなと震えている

 

だが、エリスティアはそれどころではなかった

彼は今、何と言ったか・・・・・・

 

王妃? 世継ぎ?

 

あり得ない未来の話なのに、酷く頭がくらくらした

 

「シ、シン、何言って――――」

 

「ああ、愛しのエリス。 俺が愛するのはお前だけだ」

 

そう言い終わると、有無を言わさず唇が塞がれた

 

「・・・・・・っぁ、シ、ン・・・・・・」

 

人が・・・・・・、みている、の、に・・・・・・

 

まさかの、シンドバッドからの口付けに、思考が真っ白になる

その後の事は、どうやって会場を後にしたか覚えていない

 

覚えているのは、そのまま自室でシンドバッドに抱かれた事だけだ

何度も、何度も―――――・・・・・・

 

まるで、エリスティアが自分の物である事を確かめる様に

繰り返し、抱かれた

 

そして、「愛している、エリス―――・・・・・・」と、何度も囁いてくれた

 

 

そう――――・・・・・・

彼はその後、パーティー会場に戻らなかったのだ

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ほぼ、回想で終わったわwww

まぁ、とりあえず、喧嘩?の原因の話です

(喧嘩して出たという建前の設定は、私も忘れかけてたわwww)

YOU!くっついちゃえYO!! って感じですけどね~(T▽T)ノ_彡☆ばんばん!

そんな、私があっさり幸せに知ると思うか?(ΦωΦ)フフフ…

 

 

2021.11.13