CRYSTAL GATE

  -The Goddess of Light-

 

 

 第四夜 霧の団 6

 

 

「・・・・・・・・・・・・あの後、私がユリエル王女のラチアとの国家間問題を解消するのに、どれだけ苦労したか知っているでしょう・・・・・・?」

 

あの後は大変だった

3日間・・・・

3日間もだ

 

シンドバッドがエリスティアを片時も離さず、部屋から出ることすら叶わなかった

ベッドの上で、ずっと何度も何度も抱いてくるシンドバッドに、流石のエリスティアももう抵抗する気力すら湧かなかった

 

求められれば、身体が敏感に反応してしまう

いつしか、このまま快楽に溺れてしまうのではないかと錯覚しそうになった

 

彼の触れる手が、心地よく

彼の紡ぐ言葉が、優しくて

彼が自分の名を呼ぶたびに、泣きそうになった

 

求められることが嬉しくて

求められることが、ありもしない“未来”を願ってしまう―――――・・・・・・

 

いつしか、彼の子をこの手に抱き

その子と一緒に、シンドバッドと一緒に歩く

 

あり得ない 夢―――――・・・・・・

 

そう――――あってはならない、“夢” なのだ――――

それ、な、のに―――――・・・・・・

 

俯いたエリスティアにシンドバッドがくすっと笑みを浮かべた

そして、優しい手でエリスティアのストロベリー・ブロンドの髪を撫でる

 

「お前が望めは、その“夢” は、直ぐに “現実” に変えてやれる――――俺は、待っているんだ、エリス」

 

「ま、つ・・・・・・?」

 

エリスティアが一度だけ、そのアクアマリンの瞳を瞬かせた

すると、シンドバッドは小さく頷き

 

「ああ、何なら今すぐに叶えてやってもいい―――――。 俺は、お前と共に歩む未来しか見えない。 お前が願えば、すべて“現実”になる。 ――――そうだろう?」

 

それは―――――・・・・・・

 

彼の子を身籠り、彼の妻として、彼の隣を歩く

そう―――――

きっと、夢に描いたような未来――――・・・・・・

 

もし、それを叶えることが出来たら

どんなに嬉しかったか・・・・・・

 

でも、私は・・・・・・

 

エリスティアがそのアクアマリンの瞳を静かに伏せた

 

「シン・・・・・・、前にも言った通り、私が“ルシ”である限り――――その“未来”は一生来ないのよ・・・・・・? どんなに待ってくれても――――叶わないの」

 

そう

叶わない

 

私が“ルシ”である限り、その“未来”は来ない

 

シンドバッドだって、分かっているはずだ

私が“ルシ”の“使命”から逃れる術はないのだと―――――・・・・・・

 

それなのに、「待つ」だなんて・・・・・・

 

「馬鹿よ・・・・・・」

 

「エリス・・・・・・?」

 

ぽろりと、エリスティアの瞳から涙が零れ落ちる

 

「大馬鹿よ・・・・・・」

 

またひとつ、その瞳から涙が零れた

 

「エリス・・・・・・泣かないでくれ」

 

そう言って、シンドバッドがエリスティアの瞼に口付けを落とす

 

「お前に、泣かれたら俺はどうしたらいいのか分からなくなってしまう―――――」

 

そう言って、エリスティアの涙を拭う

だが、一度関を切った涙は、次から次へと溢れてきた

 

涙で潤んだエリスティアの瞳が、シンドバッドを見る

 

「シ、ン・・・・・・」

 

だめだと・・・・・・

 

「・・・・・・おねが、い・・・・」

 

だめだと、分かっているのに―――――・・・・・・

 

「私、を・・・・・・」

 

だめ、な、のに―――――

 

 

 

 

 

 

「貴方の、ものに・・・・・・して・・・・」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

   ****    ****

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――――― 翌日 ホテル内・とある一室

 

 

「ふぁ~~~~~」

 

アラジンが大きな欠伸をしながら背を伸ばした

眠そうに眼をごしごしと擦りながら

 

「おはよう、モルさん・・・・・・」

 

そう言いながら、もそもそとベッドから起き上がる

先に起きていたモルジアナは、水差しからグラスに水を注ぎながら

 

「もう、昼ですね・・・・・・」

 

そう言いながら、窓の外を見た

日はすっかり昇りきって、ホテルから見える、市場バザールには、人が沢山行き来していた

 

「フフフ、昨夜は はしゃぎすぎちゃったね」

 

アラジンがまくらにしがみ付きながら嬉しそうに言う

その言葉に、モルジアナも「ハイ」と答えた

 

ふかふかのベッドのスプリングが楽しくて、ウーゴくんと三人で夜中まで遊んでいたのだ

 

「でも、モルさんとウーゴくんが打ちとけてくれてよかったよ~! これでもう、ウーゴくんもモルさん相手なら緊張しないってさ!」

 

新たな「ともだち」がうれしくて、アラジンが楽しそうに笑う

モルジアナも感情表現は相変わらず乏しいが、心なしか嬉しそうに見えた

 

アラジンは、もう一度欠伸をした後、もそもそと頭にターバンを巻き始めた

 

「あの・・・・・・」

 

その時、ふとモルジアナが言い辛そうに口を開いた

 

「昨日の話は・・・・・・」

 

その言葉に、アラジンが「ああ・・・・・・」と思い出したように言う

 

「“怪傑アリババ”の話?」

 

昨日のベルスタッフの話を思い出す

“怪傑アリババ”という人が今バルバッドを騒がせている盗賊団・“霧の団” のトップだという

 

「エリスティアさんには―――――」

 

そう――――あの場にエリスティアはいなかった

というか、あの“シン”という男の人たちと一緒にどこかへ行ってしまったままなのだ

 

「う~ん、エリスおねえさんは、誰かとバルバッドで会う約束してるって言ってたよ?」

 

もしかして、昨日の彼がエリスティアの約束の相手なのだろうか?

確かに、最初にバルバッドへの街道で出会った時から、あの“シン”とい人に対するエリスティアの態度はおかしかった

知っている風だったのに、知らない人と言ったり

あの“シン”という人が何かを口走ろうとするのを、止めに入ったり

 

冷静に今考えると・・・・・・怪しい

まるで、彼との関係を自分たちに知られたくない風だった

 

まぁ、あの格好の人との関係性は、普通に考えてあまり知られたくないもしれない

 

「あれ?」

 

そこまで考えて、ふとアラジンはあることに気付いた

 

「モルさん、盗賊団のアジトだった砦でエリスおねえさんと一緒にいた、紅いおじさんの事 覚えてる?」

 

アラジンの問いに、モルジアナが小さく頷いた

 

「はい、実は、私もそれが気になっていました」

 

名前は分からないが、恰好からして一般人には見えなかったし

何よりも、雰囲気が一般人のそれとは異なっていた

 

そして、何よりもエリスティアの事を『エリスは俺の妻となる女だ。 丁重に扱え』と言っていた

 

「「・・・・・・・・・・・・」」

 

思わず、アラジンとモルジアナが顔を見合わす

 

これは、もしや・・・・・・・・

 

そこまで考えて、アラジンが「う~ん」と唸りながら、ベッドへ倒れ込んだ

 

「こういうの、何て言うんだっけ?」

 

ここまで出かかっているのに、上手く言葉では言い表せない

だが、なんだかモヤモヤしてすっきりしない

 

「モルさん、わかる?」

 

そうモルジアナに尋ねるが、モルジアナにもどう表せばいいのか分からないらしく・・・・・・

首を少し捻って

 

「すみません、私もこの手の事はよくわからなくて・・・・・・」

 

こういう時、アリババなら「これ!」という言葉を言ってくれるのに・・・・・・

 

「はぁ・・・・・・、早くアリババくんに会わなくっちゃ」

 

でないと、このモヤモヤを解消できそうになかった

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

   ****    ****

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「・・・・・・エリス・・・・」

 

まどろみのなかで、誰かが自分の名を呼ぶ声が聴こえてくる

 

「・・・・・エリス・・・・」

 

優しく、髪を撫でられる感触―――――

ああ、そうだわ・・・・・・私、昨夜―――――・・・・・・

 

ぼんやりと思い出すその感覚に、酔いそうなほど浸かっていた気がする

ゆっくりとアクアマリンの瞳を開けると――――そっと後ろから抱きしめられた

その手に身を委ねるのが不思議と心地よくもあり、懐かしくもあった

 

「シン・・・・・・?」

 

愛しい彼の人名を呼ぶ

名を呼ばれて気分を良くしたのか、シンドバッドがエリスティアを抱きしめていた手を少しだけ緩めた

ゆっくりと、エリスティアがそちらを見る

シンドバッドの美しい琥珀の瞳と目があった

 

瞬間、なんだか気恥ずかしくなり、エリスティアが視線を逸らした

それを見た、シンドバッドはくすっと笑みを浮かべ

 

「おはよう、エリス。 ―――――と言っても、もう昼だがな」

 

「そう・・・・・・昼、・・・・・・・・・・・、・・・・・・・・・・・・、・・・・・・・・・・・・昼!!!?」

 

瞬間的に、エリスティアが覚醒してがばっと起き上がる―――――が

 

「きゃっ・・・・・・」

 

不意に、ぐいっと腕を引かれて そのままシンドバッドの腕の中に引き戻された

 

「ちょっ、シン・・・・・・っ」

 

「まだ、大丈夫だ。 ジャーファル達も流石に今日は何も言ってこないと思うぞ?」

 

「いや、そう言う意味ではなくて――――――んっ」

 

言い終わる前に、シンドンバッドにその唇を塞がれた

 

「ちょっ、シ、ン・・・・・・っ、ぁ・・・・・・」

 

突然の口付けに、エリスティアが抵抗しようとするが――――

シンドバッドからの口付け酔う様に、身体の力が抜けていった

 

「エリス・・・・・・愛している」

 

甘く囁かれ、抵抗する力すら失われる

 

「シ、ン・・・・・・ぁ、っ・・・・・・んっ」

 

何度も、角度を変えて繰り返される口付けが、覚醒した筈のエリスティアの脳をまた まどろみの中へと引き戻していく

 

ゆっくりと、知らずエリスティアの手がシンドバッドの手に絡め捕られる

 

「あ、はぁ・・・・・・んんっ、あ・・・・・・」

 

口付けをしたまま、シンドバッドの手が露になっているエリスティアのふくよかで形のよい胸に触れられる

そのまま、まるで遊ぶかのようにシンドバッドの手がゆっくりと動いた

 

「あ、ん・・・・・・っ」

 

ぴくんっと過敏になっているエリスティアの身体が反応する

 

「ここがいいのか?」

 

そう言って、シンドバッドが自身の舌でゆっくりと、エリスティアの突起を転がすかのように動いた

 

「んぁ・・・・・・やっ、ぁ・・・・・・はぁ、待っ・・・・・・」

 

「待たない」

 

そう言って、シンドバッドがその舌で何度も、愛撫してくる

 

身体が――――熱い

彼にそうされるのは、初めてではないのに・・・・・・

まるで、初めて抱かれている様な錯覚に囚われる

 

「可愛いな・・・・・・エリス・・・」

 

そう言われて、エリスティアが恥ずかしそうに顔を赤らめた

 

「やっ・・・・・・ん、な、に・・・・・・言って―――――」

 

「ほら、もっと俺に見せてくれ――――お前のその姿をこの目に焼き付けておきたいんだ」

 

窓から差し込む太陽の光がカーテンの隙間から、エリスティアの身体を照らす

真っ白な四肢に

美しい輪郭

流れるようなストロベリー・ブロンドの髪がきらきらと光り

羞恥のあまり、頬を赤く染めている彼女は――――とても美しかった

 

「や、恥ずかしい・・・・・・みない、で・・・・・・」

 

そう言葉を零すエリスティアの表情は、とてもそそられる

どんな宝石も、黄金も、彼女の美しさには叶わない

 

自分だけが知る―――――彼女の、エリスティアの本当の姿―――――・・・・・・

 

「綺麗だ・・・・・・エリス」

 

そう言って、そっと彼女の身体に触れる

指でなぞり、舌で愛撫し、彼女の全てを自分のものにする――――――

 

「シ、ン・・・・・・っ」

 

求められるように口付けを交わし、彼女を抱きしめる

首に回された彼女の手が、たまらなく愛おしい

 

その手も、身体も、頭の上から足の爪の先まで―――――

何もかもが、愛おしい

 

彼女の全てが欲しくて溜まらない

 

「エリス――――俺の、エリス・・・・・・」

 

「シン・・・・・・ぁ、・・・・・・んん」

 

何度交わしたか分からない口づけを交わす

意識が朦朧としているか、とろんとした瞳のエリスティアが たまらなく可愛く見える

 

このまま、何もしないなんて選択肢はなかった

指と指を絡め、愛しい彼女の名を呼ぶ

 

「エリス―――――・・・・・・」

 

 

こんな時に――――

と、普段のエリスティアなら言っていただろう

 

だが、今のエリスティアは違っていた

拒否するという、言葉が浮かばないのか

それとも、シンドバッドに酔っているのか

 

彼女は、まるで誘う様な瞳でシンドバッドを見ていた

もっと、触れて欲しい――――と

もっと、一緒にいたい―――――と

 

そう言っているかのように

まるで、何かを確かめるかのように―――――――

 

この9ヶ月

離れていて分かったのかもしれない

彼女には自分が必要だという事が

 

だとしたら、この離れていた9ヶ月は無駄ではなかったと言える

 

少なくとも、煌帝国の第一皇子・練紅炎――――

あの男の思い通りにはなっていないという事だ

 

エリスティアは、最終的にシンドバッドを選んだ

 

今こうしてシンドバッドの手の中にあるのが、何よりもその証拠だ

エリスティアだけは渡せない―――――

 

たとえ、他の何を犠牲にしても

彼女だけは―――――絶対に

 

 

 

それが、煌帝国の第一皇子が相手だろうと――――――渡さない

 

 

 

 

絶対に――――――・・・・・・

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

まったく時間軸が進んでいません!!!笑

いや、ここはね9ヶ月のお預けを解消させるシーンなんで~仕方ない!

ちらちら出てくる、紅炎の存在がなwww

まぁ、あの人放っておくとず~~~~~~と先まで出番ないやん? 原作

というか、原作ではまだ出てきてないしね~~wwww

まぁ、またその内ゲスト出演させるかもしれんがな🤣🤣🤣

 

余談:この時点でアラジンたちは紅炎の名前知らないのよね~

名乗ってないからなw 盗賊の砦でww

 

 

2022.03.20