CRYSTAL GATE

  -The Goddess of Light-

 

 

 第四夜 霧の団 2

 

 

 

パチパチと、焚火の音が夜の森に響いた

先ほどまで、アラジンが目をきらきらさせながら、シンという男の話を聞いていた

二人して少年の様に“冒険”について語っていた

 

そんな二人を見ていると昔を思い出す―――――

 

バアルの迷宮で彼に初めて会った

とても、真っ直ぐで澄んだ瞳をした少年だった

 

彼の周りのルフ達が「ピイピイ」と鳴り響いていた

まるで“彼”と一緒にいるのが嬉しいとでもいう様に、ルフ達は喜んでいた

 

それからずっと――――――

共に、歩み、旅をした

時には、つらい選択を迫られた時もあったが、それでも・・・・・・

“彼”を選んだのは、“私”だ

他の誰でもない

世界で唯一の“ルシ”と呼ばれていた、“私”が“彼を契約する”事を選んだのだ

その事に、後悔はない

 

でも・・・・・・

時々、不安になる

“私”が“彼を選んだ”ことのより、“彼”を縛ってしまった

あの組織との関わらせることになってしまった

 

それは、正しかったのか―――――

 

その答えは、今でも出ていない

“本当にこれで、よかったのか―――――” と

 

そう思ってしまう

 

私は・・・・・・・

 

その時だった

 

「エリス」

 

不意に、名を呼ばれ顔を上げると、シンと名乗った男がこちらに歩いて来た

 

「・・・・・・アラジンは?」

 

てっきり、まだ話していると思っていたのに、よくよく見ると、彼の後ろで「すーすー」と寝息を立てて寝ているアラジンの姿があった

その横で、モルジアナのすっかり眠ってしまっていた

 

そんな様子をみて、エリスティアはくすりと笑みを浮かべた

 

「・・・・・・疲れているのね・・・・。 仕方ないわよ・・・・ここまで色々あったし」

 

そう言って、シンという男と入れ違いにエリスティアは立ち上がると、手持ちのブラケットを二人にかけた

二人とも安心しきった顔で熟睡している

 

その様子を見ていると、自然と笑みが浮かんだ

そんなエリスティアの様子を見ていた、シンという名の男はくすっと笑みを浮かべ

 

「エリスは、すっかり二人の保護者だな」

 

「・・・・・・・・・・? そう、かしら・・・・。 もし――――」

 

そこまで言いかけてエリスティアが言葉を切った

それから、小さくかぶりを振り

 

「・・・・・・ううん、なんでもないわ」

 

そう言ってそっと、眠る二人の頭を撫でながら、慈しむような瞳で二人を見ていた

 

そんな様子のエリスティアを見て、シンと名乗った男は

何かに気付いたかのように

 

「なぁ、エリス。 俺も少し思ったんだが・・・・・・」

 

「・・・・・・・・・・?」

 

「俺たちの間に子供がいたら、アラジンたちとは同じぐらいの年になってたのかもな」

 

彼の言葉に、一瞬エリスティアが心を見透かされたかの様に息を飲んだが

次の瞬間――――

 

「・・・・・・馬鹿な事言わないで。 私、まだ怒ってるんですから」

 

そう言って、シンという名の男の方を見る

だが、彼は不思議そうに首を傾げ

 

「・・・・・・何を怒ってるんだ???」

 

「何って・・・・・・」

 

この男は本気で言っているのだろうか?

そんな疑問すら浮かんでくる

 

「あの晩餐会の時の言葉・・・・・・忘れたとは言わせないわ」

 

「晩餐会???」

 

はて? 何の事だ? という風にシンと名乗った男は首を傾げた

 

「・・・・・・すっとぼけないで、貴方が皆の前で―――・・・・・ああ、もういいわ」

 

半ば諦めたかのように、エリスティアは溜息を洩らすと、シンと名乗った男のから少し離れた所に、腰を下ろした

 

それが何か不満だったのか、シンと名乗った男が

 

「何故、そんな離れた所に座るんだ? もっと、傍に来てくれエリス」

 

「・・・・・・嫌です」

 

きっぱりはっきり、エリスティアがそう答えると

次の瞬間、急に伸びてきた手がぐいっとエリスティアの腰に回されたかと思うと――――

あっという間に、シンと名乗った男の腕に中に引きずり込まれた

 

「ちょっ、ちょっと!!」

 

「し――――。 大声上げる二人が起きてしまうぞ?」

 

「―――――・・・・・・っ」

 

なんて、卑怯な手だと思った

これでは、声を上げたくとも上げられない

 

エリスティアは、むぅ・・・・・としたまま、シンと名の男の方は見ずに、そっぽを向いた

 

「エリス――――?」

 

彼の声が耳元で聴こえて、びくっとする

 

「あ・・・・・・」

 

いつの間にか、彼の手がエリスティアの美しいストロベリー・ブロンドの髪に触れていた

 

「俺は・・・・・もう、すっとお前を抱いてないんだ。 触れたくて触れたくて仕方ないんだよ・・・・・・お前は、違うのか?」

 

「そ、それは・・・・・・」

 

そう言う風に聞くのは、ずるい―――――

私だって本当―――――・・・・・・・・・

 

「シン・・・・・・」

 

思わず、その名をと呼ぶ

 

エリスティアのアクアマリンの瞳が潤んだように彼を見る

それを見た、シンと名乗った男は、そっとエリスティアの頬に触れ

 

「もっと、俺の名を―――呼んでくれ―――・・・その声で、エリスティア」

 

そう言って、彼はすっとエリスティアの頬をなぞった

 

「あ・・・・・・シ、ン・・・・・・・・」

 

「違うだろう? 俺はお前だけの―――」

 

ああ・・・・・・

そう―――彼は私の唯一の・・・・・・・・

 

「シンドバッド、王―――――・・・・・・」

 

その瞬間まるで何かに引き寄せられたかの様に、シンという名の男――――シンドバッドがエリスティアを抱きしめた

 

「あ・・・・・・」

 

突然の抱擁に、エリスティアが、かぁ・・・・と頬を赤く染める

 

「エリス―――エリスティア・・・・・・俺だけの、エリス―――――」

 

そのまま、まるで暗示にかかったかのように、エリスティアの唇に自身の唇を重ねた

 

「あ、ん・・・・・・」

 

突然のシンドバッドからの口づけに、エリスティアがぴくんっと反応する

 

「だ、め・・・・・・アラジンたちが・・・・・・・・」

 

そう言って、離れようとするが

シンドバッドがその手を放してくれるはずもなく―――――・・・・・・

 

「エリス―――今は、俺だけを、見ろ――――」

 

「あ、シン・・・・・っぁ、んん・・・」

 

どんどん深くなる口づけに、頭が朦朧としてくる

駄目だとわかっているのに

 

すぐそばにアラジンとモルジアナが寝ているのに

それなのに―――――拒めない・・・・・・

 

「シン・・・・・・っ、シ、ン・・・・・・っぁ・・・ん」

 

どんどん感覚が麻痺していく

頭の中が支配されていく――――――・・・・・・

 

シンドバッドのからの熱い口づけに、全てが敏感になっていく

瞬間、シンドバッドの手がしゅるっと、エリスティアのドレスの合間を縫って直に、素肌に触れてきた

 

「あ・・・・・・んん・・・・・・だ、め・・・・・・」

 

流石の、エリスティアもこれには抵抗した

今ここで

こんな場所で――――

 

アラジンとモルジアナが傍にいるのに―――――

 

それでも、シンドバッドの手は止まらなかった

直にエリスティアのふくよかな胸に手が伸びて、触れてくる

 

「あぁ・・・・・・ん・・・・」

 

久方ぶりのシンドバッドからの愛撫に一瞬、我を忘れそうになるが・・・・・・

はっと、我に返り、慌ててその手を拒んだ

 

「だめ・・・・・・駄目よ、シンっ 今は―――お願い」

 

なんとか、そう言うのが精一杯だった

本当なら、もっと触れてほしい

彼を感じたい

 

でも、今は駄目だ

今は―――――・・・・・・

 

「シン―――お願いよ・・・・」

 

エリスティアからの懇願に、シンドンバッドがやれやれという風に苦笑いを浮かべた

 

「まったく、エリスはどこでそんなテクニック覚えてきたんだ?」

 

潤んだそのアクアマリンの瞳でそう訴えられたら、流石のシンドバッドも強行できなくなってしまった

 

「仕方ないな―――――でも」

 

ちゅっと、音が聴こえる様な口づけをした後

 

「バルバッドのホテルに着いたら―――もう、止めてはやれないからな、覚悟しておくんだぞ?」

 

そう言われて、エリスティアが「うっ・・・・」と少し、不満そうに声を上げる

 

「当然だろう? 俺は数か月間“お預けを”食らっていたんだからな。 それをこんな絶好のシチュエーションで止めてやるんだ。 それなりの“覚悟”が出来てるんだろう――――?」

 

「何よ・・・・・・絶好のシチュエーションって・・・・・・」

 

むぅ・・・・と、エリスティアが不満そうに頬を膨らませる

前々から、人前は嫌だと言っているというのに――――

 

「それに、“そんな恰好”で言われても・・・・・・ちょっと、その・・・・・・」

 

何度も言うが

現在、シンドバッドは追剥に合い、アラジンの小さな服を無理やり着てぱっつんぱっつんである

どんなに甘い言葉を囁かれても・・・・・・流石に、誰もときめかないだろう

 

言われて、シンドバッドが自身の恰好を見て

 

「まぁ、確かにな。 いつもの俺よりは少しかっこよさが落ちるが、これはこれで、そそられるんじゃないか?」

 

冗談めかしてそう言うシンドバッドに、エリスティアは半ば呆れながら

 

「そそられません。 まったくこれっぽっちも」

 

と、きっぱりはっきりと言った

そこであることに気付いた

 

「シン? あの、今さらなのだけど・・・・・その身ぐるみ剝がされたって・・・・・・まさか、“あれ”も?」

 

「ああ!」

 

と、さも当然の様にきっぱりと言い切った

 

「う、うそでしょ・・・・・? “あれ”が何なのかわかっているの!?」

 

「もちろんさ、だが、全部持ってかれた」

 

どきっぱり言い切るシンドバッドに、エリスティアが眩暈を起こしそうだった

しかし、ここで倒れるわけにはいかない

 

「ど、どうするのよ!? “あれ”は―――――」

 

「まぁ、なんとかなるんじゃないのか?」

 

と、あっけらかんというシンドバッドを、一瞬殴り飛ばしそうになったのをぐっとこらえたのは言うまでもなかった

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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―――――早朝

 

モルジアナとアラジンが起きたのを確認して、4人はバルバッドへ入った

 

海洋都市国家・バルバッド

先王であるラシッド・サルージャ王が、最も栄えさえた国である

それに―――ラシッド王には、シンドバッドやエリスティアも世話になったことがあり、海洋貿易や、他のことなど、色々な事を教えて頂いた

いわば、「先生」とも呼べる人だ

 

その人が栄えさせたバルバッドが今では見る目もなくなるほど荒れているという――――

そのことは、通信でヤムライハから聞いていた

 

そして、それを放っておけるほど、シンドバッドもエリスティアも出来た人間ではない

だが、実際 現在バルバッドはほぼ「鎖国」状態だった

 

シンドバッドの話だと、ジャーファルが何度も書簡を送っているというのに、一切反応はなく梨の礫状態らしい

 

それで、今回は一応「お忍び」での入国となったらしいのだが・・・・・・

まさか、シンドバッド一人で来た・・・・・というのは、流石にないだろう

まず、ジャーファルが許さないのが目に見えていた

 

とはいえ、一体だれが随行したのだろか・・・・・・???

 

そもそも、何故シンドバッドはあんな道端で寝ていたのだろうか?
そこが疑問である

 

名目上は「商人」で通すらしい

まぁ、そうなると、同行人は多くて2人か3人だろう

 

どちらにせよ―――

これから、ここで起こる“出来事”と直面することになるとは

この時のエリスティアには思いもよらない事だったのだった―――――――・・・・・・・・・・・・

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

あらあら、うふふ~お預けですwwww

って、外はあかんねん!!!!(_๑òωó)_バァン

しかもアラジンとか寝てる近くでとか、駄目駄目!!

 

次回あたり、ジャーファル(生)で出てきそうですね~~~

 

 

 

2020.12.19