CRYSTAL GATE
－The Goddess of Light－
◆ 第四夜 霧の団 １
――――盗賊の根城跡
なんとか、逃げおおせた頭領のＳ・ナンド
そして、弟たちのＬ・ナンド、Ｍ・ナンドはとぼとぼと外道を歩いていた
巨漢のＬ・ナンドが半泣きになりながら
「にぃちゃん･･････ハラへったよ～～」
そうぼやくが、どうにもならない
なにせ、折角集めた財宝も手下も全て失ったのだから
「苦労掛けるな、弟たちよ･･････」
そう、Ｓ・ナンドが呟く
だが、彼には一計があった
「大丈夫だ･････バルバッドへ向かえば、また一旗あげられる。 あそこは今、現王政に反抗するテロリスト共がいる･･･それに乗じるのだ」
そうなのだ
少し前までは、貿易で栄えていた海洋国家だった
それが今では、テロリストの反発により国内は荒れていた
「しかし、それにしても先立つ軍資金が必要ですね･･････」
ふぅ･････と、一番下の弟、Ｍ・ナンドがそうぼやく
すると、その時だった
「あ！ にいちゃん、あれあれ！」
「ん？」
突然、Ｌ・ナンドがある一方を指さした
そこには、一人の男が木陰で呑気に寝ていた
どこの馬鹿かと思うほどの酒の匂いが辺り一面に広がっていた
「人だ･･････」
「酒臭っ！！」
「･･････酔いつぶれてますね」
よくよく見れば、身に着けている衣も装飾品も一級品ばかりだった
それを見たＳ・ナンドがにやりと笑み浮かべる
「にいちゃん、おれもお酒飲みたい･･････」
そうぼやくＬ・ナンドとは裏腹に、Ｓ・ナンドは「フフフ･･････」と不気味な笑いを浮かべ
「弟たちよ、ツキはまだ我々にあるようだぞ。 見ろ！ こいつの身に着けているものを！！」
言われて二人の弟が、その男の見る
「すっげぇ～高そうだぜ！」
「これ全部はぎ取って･･････売っ払っちまおう！！」
＊＊＊＊ ＊＊＊＊
商隊の皆と別れてから、アラジン、モルジアナ、エリスティアの三人はバルバッドに向けて歩いていた
「ここまでくれば、バルバッドまではもうすぐね」
エリスティアが日よけに頭からかけているショールを手繰りながらそう言う
「そうなのかい？ 楽しみだなぁ～、ね！ モルジアナさん！！」
そう言ってアラジンがモルジアナに話しかける
すると、まだ緊張が解けてないのか･･････
それとも慣れてないからなのか･･････
モルジアナは小さな声で「ハイ」と答えた
ふと、アラジンが何かに気付いたように
「ねぇ、“モルジアナさん”って長いから、なんて呼ぼうか？」
「･･････なんとでも･･･」
と、モルジアナが淡々と答えると、アラジンはにこっと笑って
「じゃぁ、‟モッさん“！！！」
「･･････････････････････････････」
モルジアナから無言の抗議が･･････
「えっと････アラジン。 それは、ちょっと････」
エリスティアが流石に間に入ると、アラジンは「ん～」と少し唸り
「･･････いやかい？」
「･･････････････････････････････」
モルジアナから二度目の無言の抗議が放たれる
･･････････････････
････････････････････････
･････････････････････････････
お願い、アラジン･･････
気付いて！！！
モルジアナからただならぬオーラが出ていることに！！！
「んん～～～、じゃぁ、もるもるるさんとかは？ もしくは、もももさんとか！」
「･･････････････････」
最早、それは名前なのかと突っ込みたい
エリスティアが苦笑いを浮かべて
「えっと････アラジン？ 普通に“モルさん”とかでいいと思うけど…？」
さりげなーく、そう言うと
横でモルジアナが激しく頷いていた
だが、アラジンはさらっと、それを逃しつつ
「じゃぁ、モルジアナさんは“モルさん”だね！ 後は･･････」
と言って、ちらりとエリスティアを見る
その視線に、ぎくりとしたエリスティアは、アラジンが何か変名前を言う前に
「あ、私は普通に“エリス”で構わないわ。 みんなそう呼んでいるし」
そう言って、ささっとその話題から逃げる
モルジアナの視線が痛い気がするが、気のせいだと言い聞かした
そして、話を逸らすように
「そういえば････モルジアナは、故郷へ行く船に乗る為にバルバッドを目指しているのよね？」
そうエリスティアが尋ねると、モルジアナが小さく頷く
「はい･･それと････ずっと会いたいと思ってたんです。 あなた方とアリババさんにお礼がしたくて･･････」
「おれい？？」
アラジンが、首を傾げる
エリスティアも何のことかわからず、首を傾げた
「あ････もしかして･･････」
ふとチ－シャンの人たちが言っていた事を思い出す
アリババが、宝を売って奴隷を全員解放したという話を
「お三方から、奴隷身分から解放していただかなければ･･････ゴルタスとの約束を果たしに、故郷を目指せはしなかたでしょう･･････」
故郷へ帰れと言って、鎖を断ち切ってくれたゴルタス
アリババが奴隷解放しいてくれなかったら、それすら叶わなかった
「自分の意思でやりたいことをやるなんて･････あなたたちに出会う前は、考えも出来なかった･･････」
ただ、領主の奴隷として、一生を終えるのだと思っていた
「モルジアナ･･････」
瞬間今まで笑顔を見せなかったモルジアナがふっと嬉しそうに笑みを浮かべ
「私に、自由な未来を与えてくださって･･････本当に感謝しています･･･。 ありがとう、アラジン、そして――――エリスティアさん」
そう言って、地に頭を当てるのではなく、立ったまま頭下げたのだった
それを見た、アラジンとエリスティアが思わず顔を見合わせる
それから、二人してくすっと笑みを浮かべ
「よかったわね、モルジアナ」
「うんうん、でも、僕らもそうだけど、アリババくんはお礼なんかいらないって言うと思うよ！ だって、アリババくんはそういう優しい人だから！ 」
二人のその言葉に、モルジアナが笑みを浮かべる
「あ～あ、僕も早くアリババくんに会いたくなっちゃったな～」
アラジンが、思わずそう呟く
すると、モルジアナがくすっと笑みを浮かべ
「会えますよ」
そう言って、バルバッドへ続く道を指す
「この道を辿れば――――――･･････」
そう――――この道に先に
アリババくんと、アリババくんの故郷が待っているんだ！！
この先に―――――――――
一瞬、アリババが両手を広げて待っている姿が見えた気がした
この、さき････････････
「････････････」
“それ”を見た瞬間、アラジン、モルジアナ、エリスティアが固まる
そこにいたいのは――――――
全裸（一部、葉をつけた）の男が一人――――――
男は、にっこりと笑って
「やぁ、君たち！ 今日は良い天気だね」
「「「････････････」」」
瞬間、エリスティアが慌てて頭からかぶっていたショールを深くかぶると、後ろを向いた
それとは逆に、アラジンとモルジアナの表情がどんどん“見てはならないもの”を見てしまった様な表情になる
あれは―――――――
「モルさん！！ エリスおねえさん、危ない！！ 下がって！！！」
「大丈夫です！！ ここは私に任せてください！！！！」
「駄目だよモルさん！！ 新手のモンスターかもしれない！！」
と、二人して戦闘態勢に入る
「え！？ いや、違うんだ！！ 話を聞いてくれ！！」
と、全裸の怪しい男が慌てて言葉を発する
ふと、後ろを向いているエリスティアの存在に気付くと、全裸の男が嬉しそうの
「エリス？ エリスじゃないか！！ こんなに早く逢えるなんて、俺はなんて運がいいんだ」
と、エリスティアを今にも抱き寄せようと手を伸ばしてる
すると、慌ててアラジンとモルジアナが間に入った
「エリスおねえさんには、触らせない！！！」
「そうです！！ ここは、やはり私が―――――」
「いや、だから違うんだ！ エリスと俺は――――――」
「･････････こんな変態の、知り合いはいません！！！ やっちゃっていいわよ二人とも！！」
「わかったよ！！ エリスおねえさん！！ 灼熱の――――！！！！」
「わ―――――待てくれ！！！」
＊＊＊＊ ＊＊＊＊
「服を貸してくれてありがとう、アラジン！」
「うん･･････僕の小さい服しかなくてごめんよ～」
「俺の名は“シン”。 バルバッドに向かう所だったんだが、泥棒に身ぐるみやられてね～」
そう言って、日も暮れてきたので焚火を囲んで、今夜はここで一夜を過ごすこととなった
この「シン」と名乗った、男と一緒に
全裸は流石に無理なので、一応アラジンの貸した服を着ているが･･････
小さなアラジンの服なので、もうどこもかしこも ぱっつんぱっつんである
「そっか、さっきは話も聞かずにごめんよ、おじさん･･････。 どうも僕は砂漠越えのせいで危険なものに敏感になっているようだよ」
「ほう、砂漠を超えたのかい？」
「そうだよ！ 黄牙の村がある北天山高原から、中央砂漠を超えてきたのさ！ 珍しい植物や生き物がたくさんいたよ！！」
「そうか！ いいねぇ････俺はそう言う冒険譚が大好きなんだ」
そう言って、焚火に木をくべる
「未知なる土地や知識に出会うあの高揚感。 何ものにも代えがたいね。 道を切り開くことで生まれる自信、経験、大切な仲間たちと命がけの絆･･････それらを折り重ねて、自分だけの壮大なストーリーを作り上げる快感！ 冒険はいい！ まさに、男の夢だよ！」
それを聞いたアラジンがわくわくした顔で
「わかる！ わかるよ！！ おじさんの、きもち！！」
その言葉にシンと名乗った男が頷く
「それに――――」
ふと、彼がエリスティアとモルジアナの方を見て
「君達のような、可愛らしいお嬢さんとの出会いも旅の楽しみのひとつだね！ そう思わないかい？ エリス」
そう言って、さりげなくエリスティアに話を振るが――――
エリスティアは、彼を見ようともせず
「･･････知りません。 黙秘権を行使します！！」
それを見ていたアラジンが、首を傾げて
「もしかして、エリスおねえさんとは知り合いなのかい？」
そう、シンという男に尋ねると、彼は嬉しそうに
「知り合いも何も、俺とエリスは――――･･････」
「こんっっっっな、変態に知り合いはいません！！！！」
と、頑として拒否をしていた
それを聞いたシンという男はにやりと、笑みを浮かべ
「つれないじゃないか、エリス。 俺がお前を何度 抱いたと―――「ストップ、スト―――――プ！！！！」
何かを言い掛けた、シンという男の口をエリスティアが慌てて手で塞ぐ
すると、シンという男はますます顔をにやつかせ
「ほう？ 何故ストップなんだ？ 俺は事実しか言っていないが･･････？」
「と、とにかく！！！！」
エリスティアが かぁ･･･と、頬を赤く染めながらそう叫ぶと、ばさっと自身がまとっていたショールを、彼に投げつけた
「とりあえず、それ羽織って！！ アラジンにも モルジアナにも教育的によくないわ！！！」
それだけ言うと、またふいっとそっぽを向いた
それを見て、シンという男が笑っていたのは言うまでもない
ついに、覇王ならぬ葉王登場～～～～笑
夢主、知らない人で突き通してます
まぁ、当然の対応可とwwww
2020.11.25