CRYSTAL GATE

  -The Goddess of Light-

 

 

 第一夜 創世の魔法使い 5

 

 

「その代り―――それ、見せてくれないかしら?」

 

そう言って、エリスティアが指さしたのはアラジンの金の笛だった

瞬間、アラジンがきょとんと大きな目を瞬きさせる

 

「これかい? 構わな―――――」

 

 

 

「あ――――――――!!!!」

 

 

 

「え?」

 

ふいに、アリババが大きな声で叫んだ

驚いたのは、エリスティアだ

いや、正確にはアラジンも驚いた様に目を瞬かせた

 

エリスティアは、そのアクアマリンの瞳を一度だけ瞬かせると

 

「なに? どうかしたの?」

 

「おにいさん?」

 

「え“!?」

 

エリスティアとアラジンの問いに、アリババがどきりと顔を強張らせる

 

「あ、あ~~いやぁ~、べ、別に何でもねえし…」

 

俺だって気になってたのに―――――!!!

 

先越された!!

と、一人ショックを受けている間にも、エリスティアがアラジンから笛を受け取ってしまった

 

「ただ、ウーゴくんはシャイだから…女の人が触ると、ときめきで気絶してしまうんだ」

 

ときめきで気絶というのがシャイとどう繋がるのか分からないが…

そもそも、それはシャイなのだろうか…

 

という、ツッコミはさておき

 

「ああ、ウーゴくんは出さなくて大丈夫よ。流石にここ狭いからね」

 

あの巨大な腕だけでも出されたら、大変な事になってしま

隠れている意味もなくなるだろう

 

エリスティアは、じっと笛に描かれている八芒星を見た

そして、その周りに書かれている古代文字

 

間違いないわ……

 

その印と文字は、ある“もの”が宿る事を記す

しかも、これは―――――………

 

その笛を見た後、じっとアラジンを見た

アラジンは、アリババと何か楽しそうに話をしている

 

そうなの?

やはり、彼が“探しもの”なの?

 

この笛の事もある

何よりも、彼の纏うルフが―――

そして、エリスティアの周りにいるルフ達が囁いている

 

“彼”だと

 

“彼“なのだと

 

やっと……辿り着いた

辿り着いたわ……シン…っ!!

 

普通ならあり得ない

今までの常識を覆す“存在”

 

だとしても、“これ”を持っていることこそ 間違いない

 

これは、紛れもなく金属器

“あれ”の宿る金属器だ

 

その金属器は、本来であれば迷宮攻略者に与えられる

だが、アラジンは違う

攻略者の筈が無い

何故なら、彼らは攻略者になり得ない・・・・・・・・・のだから

 

彼は

“ソロモン王の移し身”

“王の選定者”

 

エリスティアは、ごくりと息を飲んだ

 

「ねぇ…アラジン…この笛に宿るのは”ジン“でしょう? 貴方はこれを何処で手に入れたの?」

 

「え……?」

 

アリババと話していたアラジンが、きょとんと大きな目を瞬かせた

 

「うーん?よく分からないんだよ。部屋を出た時に拾ったんだ」

 

「拾った?」

 

どういう事だろうか……?

アラジンが、何処かで手に入れた物ではないのだろうか?

 

アラジンは、んーと少し考える様に首を捻った

 

「………なら、質問を変えるわ。貴方は今まで何処に居たの?」

 

「えっとね…“硬くて頑丈な部屋”にいたんだよ。でも、ウーゴくんが『外へ出るべき時』が来たって言ったんだ」

 

ウーゴくんが言った……?

 

「一緒にその“硬くて頑丈な部屋”に居たの……?」

 

ジンと?一緒に……?

 

その言葉に、アラジンが嬉しそうに微笑んだ

 

「うん!だって、ウーゴくんは僕の大事な友達だから!!でも、ウーゴくんは首から上は出られなかったんだ……」

 

「そう――――……」

 

少し分かった気がした

恐らく、その“硬くて頑丈な部屋”というのは“聖宮”と呼ばれる場所ではないだろうか

ただ、その“聖宮”は世界の何処にあるかは知られてはいない

 

アラジンはそこで守られていた……?

“時”が来るまで……?

 

そういう事・・・・・・・

だから、数か月前まで“存在に気付けなかった”のね

 

でも、外に出てしまったから“私”は気付いてしまった

“彼“の存在に―――――

 

という事は、もう―――――――

 

「なぁ……」

 

その時だった、不意にアリババが口を開いた

一瞬、考え事をしていた為反応に遅れる

 

エリスティアは、ハッとしてアリババの方を見た

アリババは、エリスティアとアラジンの方を見てごくりと息を飲むと

 

「やっぱ、それってジンの金属器…なんだよな?」

 

と、エリスティアの持つアラジンの金の笛を指さす

 

「………そのようね」

 

「そうか! じゃ、じゃぁ、もしかしてアラジンって迷宮ダンジョンに入った事あるのか!? だって、それって迷宮道具ダンジョンアイテムだろ!」

 

アリババが興奮した様にそう問いかけるが、当の本人はきょとんとしたまま

 

「僕?僕は入った事ないんだ」

 

「え……」

 

まさかのアラジンのあっさりした答えに、アリババが目を瞬きさせる

 

「で、でもよ、普通ジンの宿る金属器っていったら――――」

 

「違うみたいよ? 確かに、普通は迷宮ダンジョン攻略者に与えられる品だけれども、彼の持つのはそれとは別の品みたい」

 

「そう、な、のか?」

 

エリスティアの淡々とした答えに、アリババがハーと落胆した様に肩を落とした

その様子に、アリババの考えている事が手に取る様に分かる

 

エリスティアは、くすりと笑みを浮かべると

 

「気落ちする必要はないと思うけれど?別にジンの宿る金属器に間違いは無いもの。ちょっと攻略者とはカテゴリー違うけれど……ウーゴくんの力はさっき目の前で見たでしょう?」

 

巨大な腕

力強い圧倒的な力

 

全てが、常識を逸出していた

 

「ねぇ、おにいさん」

 

アラジンがゆっくりとアリババを見た

 

「僕は、ウーゴくんと約束したんだ。“ジンの金属器”を―――ウーゴくんの仲間を探すって」

 

「………?」

 

「ねぇ、“迷宮ダンジョン”に“ジンの金属器”があるって、前におにいさん言ってたよね!?それで、おにいさんは“迷宮ダンジョン“に行くんだよね!?」

 

「お、おお……」

 

「じゃあさ!僕をそこへ案内しておくれよ!」

 

「…………………」

 

願っても無い申し出だった

迷宮ダンジョン攻略は命がけだ
現に、アモンに入って出て来た者は一人もいない

だが、アラジンの持つ金属器さえあれば――――………

 

アリババは、ごくりと息を飲んだ

 

行ける!!

 

「分かった、一緒に行こう!」

 

アリババの答えに、アラジンがぱぁっと嬉しそうに微笑んだ

 

「うん!」

 

と、その時だった

 

迷宮ダンジョンか……懐かしいわね」

 

「え? 懐かしいって……もしかして、エリスは入った事あるのか!?という事は…もしかして、攻略者!?」

 

「エリスおねえさん、本当かい!?」

 

「………え?」

 

うっかり、昔を懐かんでポロリと出てしまった言葉に、アリババとアラジンが食いつて来た

 

しまった……

 

迷宮ダンジョンと聞いて、昔彼らと一緒に攻略して回っていた時の事を思い出してしまった

 

すると、アリババとアラジンがキラッキラの瞳で

 

「なぁ、エリス!一緒に行こうぜ!!」

 

「そうだよ、おねえさん!!一緒に行こうよ!!」

 

「え………?」

 

「よーし!アラジンのウーゴくんに、攻略者のエリスがいれば百人力だぜ!俺はやるぜ!アラジン!!」

 

「楽しみだねぇ!おにいさん!」

 

 

 

「………………………え“!?」

 

 

 

 

 

えええええ――――――――!!!!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

      ◆      ◆

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「………………」

 

何故、こんな事になっているのか……

 

エリスティアは、重苦しいぐらいの溜息をはぁーと洩らした

 

周りをみれば、無駄に落とされた照明

豪華な調度品に、煌びやかなカンテラとランプの数々

妖艶な曲に、無駄に焚かれた香

そして、これまた無駄に露出の激しい着飾った女性達

 

って……ここって……

どう見ても、男の人達が喜ぶ夜の店なのだけれど!!

 

何がどうして、女であるエリスティアがこの様な店に来なくてはならないのか

それもこれも全て……

 

「アリババくん……」

 

「なんだよー、ほら、エリスも飲めって!」

 

「アリババくん」

 

「ほら、アラジンも! 楽しめよ! 好きだろ?美 味いメシとか、キレーな女とか!」

 

「……ア・リ・バ・バ・く・ん!!」

 

般若の様な顔のエリスティアが、アリババをギロリと睨みつけた

 

「どうして、こういう店なの!? 何の意味があるの!!?」

 

半ギレ状態のエリスティアに、アリババが小さく溜息を洩らす

 

「仕方ねぇだろ?アラジンの奴が、急に機嫌悪くなりやがったんだから。 俺だって、生活費削って高い金出してんだよ」

 

「どうして、ひそひそ声なのかしら?」

 

ぴきりとエリスティアの眉間に何かが入った

 

「どうしてって……お、俺だってこんな店初めてで…き、緊張してんだよ」

 

言わせるなよ!的な風に、少し照れた様にそう言うアリババだが……

それとこれとは話が別である

 

正直、似た様な状況はいつもあったので、色々と思い出してしまうのだ

特に、最後の大喧嘩(と、こっちは思っているが…)の事とか!!

 

大体、こういう店や状況に女を連れ込む者の意味が理解出来ない

 

「それもこれも…すべて、あの後 家に来た社長さんとかいう方に、貴方がアラジンの事を家来とか言ったからでしょ―――――!!!」

 

事の発端は数時間前に遡る

誤解の解けぬまま、ようやく警吏を巻いてアリババの家に到着してみれば……

なんでも、アリババの所属している荷車組の経営者とか言う方がいらっしゃっていたのだ

そして、彼が言うには……

 

『ブーデル様は、賠償金の1000金貨ディナール払えと言ってきているぞ』

 

『お前、このままじゃ、奴隷にされるぞ』

 

そう言って来たのだ

 

それに対し、アリババは『“迷宮ダンジョン攻略”で成功して賠償金払いますから!』と言い切った

のは良いんだが……

 

よりにもよってアラジンの紹介を……

 

 

 

『彼は、俺の…一番の――――家来です!!』

 

 

 

 

と言ったのだ

何故、家来なのか……

意味が分からない

 

そのお陰で、アラジンは不貞腐れ いじけ しらけ 

最終的に、エリスティアにしがみ付いて放さなくなったのである

 

そのせいで、エリスティアもこういう店に来る羽目になったのだ

 

「大体ねぇ、どうして家来なのよ!! おかしいでしょう!!?」

 

「んなの、しかたねえだろ」

 

何が仕方かないのよ!!

 

全然、説明になっていない

 

アリババが、また溜息を付きながらエリスティアにしがみ付いているアラジンを揺さぶった

 

「おい……いい加減にしろよ。 文句あるなら口で言えよ。 つか、なんでエリスにしがみ付いてんだよ(しかもそんなオイシイ所に!)」  注:胸にしがみ付いてます

 

だが、アラジンはアリババに見向きもせず ぎゅ~~~とエリスティアの胸の谷間に顔を埋めたまま

 

「……だって、僕…おにいさの…家来なんでしょ……?」

 

「あんなの社長の手前、適当に並べただけに決まってるだろ。ったくよ……、はいはい、お前は俺の相棒ですよ。仲間ですよ。友だちですよ」

 

ピクッとアラジンが何かの言葉に反応した

 

瞬間、パアアアアアと涙で目を潤ませながら振り返る

 

「友だちかい……?」

 

キラキラの眼がアリババにそう訴えかけてきた

アリババはびくっとしつつも「お、おお……」と頷く

すると、アラジンはぱっとエリスティアから離れると、アリババの腕をがしぃ!と掴んだ

 

「ほんとうだね!?ほんとのほんとに友だちかい!?」

 

「あ、ああ…」

 

アリババの答えに、アラジンがぱぁぁと嬉しそうに顔を綻ばせた

 

あれ…機嫌直った…?

アリババがごくりと息を飲むと、もうアラジンはお店の綺麗なお姉さんたちやエリスティアの胸に顔を埋めながら楽しんでいた(エリスティアには攻撃くらっているが…)

 

どうやら、本当に何故かよく分からないが機嫌が直った様である

 

アリババは、ぐっと握っていた拳に力を入れる

今度こそ、俺は迷宮に行って大金持ちになる!

 

だから俺も、楽しんじゃおっかな―――――っ……

 

じーと、男の本能むき出しのアラジンを見つめる

あの綺麗なお姉さん達にの胸に顔を埋めてキャッキャウフフと楽しんでいるアラジンを見る

正直……うらやましい

 

その時、アナウンスが聴こえてきた

 

 

『まもなくサービスタイムです!!』

 

 

 

楽しんじゃおっかな―――――っ!!!  ※重要な事なので2回思いました

 

 

 

 

その時、曲調が変わったと同時に、コツコツ…と足音が近づいて来た

そして――――

 

 

「お待たせいたしました」

 

 

女神かと思う程の超絶美しい声が響いて来た

 

キッタ―――――――ッ!!!

 

その美しい声の持ち主は、すっと優雅にアリババの隣に座ると、透き通る様な白い肌の手でテーブルに置いてあった酒の入ったジョグを取った

 

「とても可愛らしいお友達ですわね」

 

何度聞いても美しい声に酔いそうになる

アリババは、ふっと目を細めると

 

「あいつは…友だちなんかじゃありません」

 

「あら、そうですの?」

 

「俺はもう―――友だちなんか作らないって決めてるんで―――――」

 

と、そこまで言ってはたっと反対に座るエリスティアと目があった

 

え………?

 

エリスティアが、今まで見た事もないぐらいものすっっっっごい顔で何かを凝視している

 

「え………?」

 

思わずその視線の先を見る

と―――――

 

「エリザベスでございます」

 

そこには、妖艶な美女が―――――ではなく、ものすっごいガタイの厳つい女…?がいた

 

 

 

 

え“………

 

 

 

思わず、アラジンの方を見る

どうみても、向こうは美女 美女 美女 美女揃い

加えて、エリスティアまでもいる

 

もう一度、自分の隣に座る女神の様な声の妖艶な美女――――な筈が…厳つい巨漢の女しかいない!!

だが、声だけはやはりあの女神の声だ

 

え“…………!?

 

エリザベスは、持っていた酒の入ったジョグの蓋を取るのではなく、手刀でズバッと横にぶった切るとそのままアリババのグラスに注いだ

 

「僭越ながら、当店一の実力派ホステスの異名を頂いております。以後、思知りおきを」

 

「………………」

 

 

 

 

 

さ……詐欺だぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!!

 

 

 

 

 

 

 

アリババの心の叫びを知る者は、誰もいなかった

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

立て続けに、5話目です

ようやく、次回 人気の砂漠ヒヤシンスの回がww

ええ、某所で大変有名な砂漠ヒヤシンスww

 

後、エリザベス様登場しましたw

素敵な女神声のお方です

声は…な!

というか、夢主を連れて行くとかどうよ!?

おかしだろう

 

そういば、うたプリの1話目にマギがいると言われてますwww

某所で、某キャラ登場時に「マギが」「マギが」言われてるんだよー

マジよww アレは、ウケたwww

 

2013/05/02