CRYSTAL GATE

  -The Goddess of Light-

 

 

 第一夜 創世の魔法使い 11

 

 

 

キシャアアアアアア

 

巨大なアリが叫んだ

瞬間、まわりの宝石の様な卵から大きな緑色のアリがパリン…パリンと生まれ落ちてくる

気が付いた時には、もう遅かった

アリババ達3人は、あっという間にあのアリのバケモノに取り囲まれていた

 

アリババは持っていたナイフと抜き取ると、構えた

 

アラジンは、とても戦える状態ではないし

頼みの綱のエリスティアは、アリを見て気絶してしまっている

 

俺がやるしかねえ!!

 

アリババが、ボスとおぼしき巨大なアリを前に、ギリッと奥歯を噛み締めた

瞬間、巨大アリがキシャアアアと吠えたかと思うと、その大きな前足をブンッとアリババ目がけて放って来た

 

「来るな!!」

 

アリババはそう叫ぶな否や、思いっきりナイフを振り斬った

瞬間、その巨大前足はあっさり分断される

 

「………!?」

 

その脆さに、アリババは違和感を覚えた

 

なんだ? 意外に脆いぞ!?

見た目は硬そうだったのに、その足はとても脆かった

 

これなら、いけるかもしれない!!

 

そう思うや否や、アリババはすぐさまナイフを振りかざすと、生まれてきた大きなアリに斬りかかった

ズバッとふた振りするだけで、アリが崩れ落ちていく

それを見た、他のアリたちが一斉にアリババに襲い掛かって来た

 

アリババは反転すると、そのアリどもをどんどん蹴散らかしていく

 

優勢―――

 

そう見えたかもしれない

だが―――

 

 

 

キイイイイ

 

 

 

巨大アリが叫んだ瞬間、斬った筈のアリたちが分裂してボコ…ボコ…と、復活していくのだ

 

「………っ、くそ!」

 

アリババは再度、ナイフを振りかざした

ブシャ…!という音と共に、アリは脆く崩れていく

 

だが、斬れば斬る程アリたちは分裂し増えていくではないか

 

キリが無かった

 

斬らなければ襲われる

斬れば増えていく

 

 

堂々巡りだ

 

「これじゃぁ、キリがねえ」

 

アリババがギリッと奥歯を噛み締めた時だった

突然、アリたちがキシャアアと叫んだかと思うと、ぐしゃっと崩れ始めた

 

「なんだ!?」

 

アリババが、警戒を一層強めた瞬間だった

アリ達は、徐々に集まりだしだす

そして、ぼこぼこぼこと不気味な音を立てて合体していくと、あっというまに三つ目の巨大なバケモノへと変貌したのだ

 

ぎょっとしたのはアリババ達だった

それを見ていたアラジンも、驚いた様に大きく目を見開く

 

最早、それにアリの容貌は無かった

巨大な緑色のバケモノと化したそれは、突然ヴォォォォォォと叫びだすと、突然身体中の穴という穴から一気に空気を吸い込み始めた

 

ビリビリビリと空気が振動する

アリババとアラジンは吸い込まれないように、必死に足を踏ん張った

耳がキーンという音がして、頭が割れそうになる

 

 

瞬間――――

 

バケモノは、その醜い口から巨大な炎の息を吹き放った

ゴオオオオオオ!!!!という音と共に、辺り一面炎の海と化す

 

地面が炎でズバンッ!と真っ二つに割れ、そこから、マグマの様に炎が吹き上げてくる

 

アリババはアラジンとエリスティアを抱えると、咄嗟に横穴に避けた

ギロリと、緑のバケモノがこちらを捉える

 

そして、再び息を吸い始めた

ここで炎を吹かれては逃げ場がない

 

「くっそ……!」

 

アリババは、ギリッと奥歯を噛みしめて その腕に抱くエリスティアを見た

エリスティアは、気を失ったまま目覚める気配がない

だが、それは幸いしていたかもしれない

 

あんなバケモノ

虫が嫌いなら尚更、見ただけで卒倒するだけではすまなかっただろう

下手したら、トラウマにもなりかねない

 

逆に、気を失ってくれていて良かったのかもしれない

だが、それと同時にエリスティアの力ならば対抗し得たかもしれないのだ

 

「何考えてんだ、俺は……」

 

またもエリスティアに頼ろうというのか

彼女は力をあまり使えないと言っていたのに――――

 

「エリス……」

 

俺はどうすればいい……?

 

その時だった、バケモノがヴオオオオオ!!!と叫んだかと思うと、アリババ達めがけて炎を吹きだしてきた

 

「…………っ!!」

 

瞬間的に、アリババはエリスティアとアラジンの頭を押さえしゃがみ込ませる

炎は、アリババの頭上を越え、横の岩肌にぶつかった

瞬間、ゴオオオ!とその岩肌が燃え上がる

 

その時だった

アラジンは、何とか最後の力を振り絞る様に、その胸にぶら下げている笛に息を吹き込んだ

 

「ウーゴくん……」

 

 

ピィ―――――――――――

 

 

笛の音が鳴ったかと思うと、笛の先から青い巨体が姿を現した

“ウーゴくん”だ

 

それを見たバケモノが逆上した様に、その鋭い手を振りかざしてきた

“ウーゴくん”はそれを避けたかと思うと、今度はその巨大な腕でバケモノの身体を貫いたのだ

 

ボコォ!とそこに空洞が出来る

だが―――――それは一瞬だった

バケモノの身体はボコボコと音を立てながら再生していくではないか

 

やはり、普通に攻撃するだけでは駄目なのだ

アラジンは、流れる汗を無視する様に、キッとバケモノを睨みつけた

 

「もう、“奥の手”を、使うっきゃないよね……!!」

 

そう叫ぶや否や、アラジンは大きく息を吸いこんだ

そして――――

 

 

ピィ―――――――――

 

 

笛に息を吹き込んだ瞬間―――――

 

ボオォォォ!と”ウーゴくん“の両の手が赤く光りだした

瞬間、ピイイイイイと何か白い何かが集まってくる

 

「なんだ? 鳥みたいな……」

 

それに気付いた、アリババが驚いた様に辺りを見渡した

それはまるで意思がある様に、アラジンに集まって来る

 

ピイイイイイイ

 

瞬間、“ウーゴくん”の手にある光が一層強さを増した

 

「ルフが……」

 

その時だった、エリスティアが目を覚ましたのか、ぽつりと何かを呟いた

それは、アリババにとって聴きなれない言葉だった

 

ルフ……?

何の事だ……

 

アリババが疑問に思っている内に、“ウーゴくん”の手の中の光は更に輝きをましていく

そして、ボゥ!!と音がはじけたかと思うと、巨大な熱球となって、“ウーゴくん”の両手を包み込んだ

 

瞬間、エリスティアの身体が光りだす

「お、おい、エリス!?」

 

普通でないその状況に、アリババはぎょっとしてエリスティアの身体を揺さぶった

アリババの腕の中のエリスティアは小さく何かを呟いたかと思うと、ゆっくりとそのアクアマリンの瞳を瞬かせた

 

「引きずられる……」

 

「え……?」

 

また、エリスティアが何かを呟いた

だが、それが何を意味するのか今のアリババには分からなかった

 

そう思った瞬間、エリスティアの身体からあの白い鳥の様なものが溢れだした

その鳥はピイイイイと鳴きながら、”ウーゴくん“に引き寄せられる様に集まっていく

 

“ウーゴくん”の両手の熱球は益々大きくなると、そのまま赤く燃え上がる様に輝きだした

 

ビリビリビリと、”ウーゴくん“腕の中の熱球が唸りだす

瞬間――――”ウーゴくん“は大きく跳躍すると、あの緑色のバケモノに向かって駆け出した

すると、あのバケモノは”ウーゴくん“めがけて口から炎を吹きだした

だが、“ウーゴくん”はその熱の籠った手であっさりそれを受け流す

それどころか、その炎を握り締めると 我が物とし、大きく手を交差させると、そのまま思いっきりバケモノめがけて振り下ろしたのだ

 

 

ギャアアアアアアという断末魔と共に、バケモノが跡形もなく消し飛ぶ

そこには、巨大なクレーターしか残っていなかった

 

もうもうと煙だけが、クレーターの中から立ち昇る

アリババは、その穴の中を見てごくりと息を飲んだ

 

「やった…すげぇ!!」

 

あの不気味なバケモノを、跡形もなく消し飛ばしたのだ

欠片一つ残っていない

 

アリババの歓喜の声に、アラジンが誇らしげに微笑んだ

 

「フフ……ウーゴくんは強いでしょ?」

 

そこまで言って、アラジンがふらりとふらつきだす

 

「がんばって一緒に…ゴール、しよう…ね」

 

それだけ言うと、そのままアラジンがぐらりと倒れ込んだのだ

 

「アラジン!?」

 

アリババが、慌ててアラジンに駆け寄る

その顔色は、今まで見た事もないぐらい酷かった

 

「力を…使い過ぎたのよ……」

 

その時だった、ふらりとエリスティアがふらつきながらアリババとアラジンに近づいてくる

 

「エリス? 力をって……」

 

アリババの言葉に、エリスティアは小さく首を振ると そのままアラジンの側でそっと手をかざした

 

「………………?」

 

だが、何も起きなかった

エリスティアの行動が分からず、首を傾げそうになるが 瞬間、エリスティアが小さく息を吐いた

 

「やっぱり、2つ外したぐらいじゃ駄目ね……」

 

そう言ったエリスティアの顔色も悪かった

今にも、倒れてしまいそうだ

 

「おい、エリス?なんか、お前も顔色悪いぞ」

 

アリババの心配をエリスティアは何でもない事の様に、小さく笑みを浮かべると

 

「アラジンの身体には、かなり負担みたいね……」

 

そう言って、そっとアラジンの髪を撫でる

 

「とりあえず、どこか休める場所に――――……」

 

そこまで言い掛けた瞬間、エリスティアの身体がぐらりと揺れた

 

「エリス!!」

 

倒れる寸前 アリババが咄嗟に手を伸ばした

エリスティアの身体が、そのままアリババの腕の中に倒れ込む

だが、エリスティアは何でもない事に様に、そのままアリババの手からするりと抜けだすと 一人で立ち上がった

 

「平気だから……」

 

「いや、平気ってお前……」

 

とても、平気そうには思えなかった

それでも、エリスティアは頑なにアリババの手を拒んだ

 

「私よりも、アラジンを休める所に……」

 

そう言って、エリスティアがアラジンを抱えようとする

それを見て、アリババは慌てて手を伸ばした

 

「俺が運ぶから!」

 

そう言って、アラジンを抱えるとエリスティアを見た

エリスティアは、小さく笑みを浮かべた後、ふと辺りを見渡した

ゆっくりとそのアクアマリンの瞳を閉じると、何かを呟きだす

 

瞬間、彼女の周りの”何か“がざわめき出した

さらりと、彼女のストロベリーブロンドの髪が揺れる

 

「………もう少ししたら、岩肌の切れ目の先に空洞があるわ……そこへ、行きましょう」

 

何を感じ取ってそう答えたのか、アリババには分からなかった

だが、今はエリスティアの言葉に従った方が得策だと言う事は理解出来る

 

アリババは小さく頷くと、先へ進みだしたエリスティアの後に続いのだった

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

すみません……

あまりにキリが悪すぎたので、ここらで切ったら随分と短くなってしまいました…(-_-;)

ここまで短いのは久しぶりだわww

 

まぁ、とりあえずアリババの活躍の回ですな!

…や、言う程活躍してないかもしれないが…

むしろどちらかというと、ウーゴくんの回だしwww

 

もう少しでモルさんですねー!

 

2013/07/02