CRYSTAL GATE

  -The Goddess of Light-

 

 

 第一夜 創世の魔法使い1

 

 

 

 

 

「俺と一緒に行こう」

 

少年はそう言って、手を差し伸べた

 

とても、とても真っ直ぐで澄んだルフだった

今まで目にしてきた者達とは違う

黒くもなく、歪んでもなく

 

とても―――・・・・・・とても美しいルフだった

 

彼は言った

 

「誰に頼まれたからとかじゃない。 俺は、お前に世界を見せたい。 全ての者がそうじゃないと言う事を、教えてやりたい。 だから、俺と一緒に行こう。俺がお前に、世界を見せてやる―――」

 

 

涙が零れた

 

ああ、どこまでも真っ直ぐな澄んだ瞳

迷いを知らない

己を信じる強き力 思い

 

今まで見てきた者達とは違う

もっと、ずっとずっと、大きな力

 

ぴくりと少女の肩が揺れた

小さく息を吐き、一度だけそのアクアマリンの瞳を瞬かせる

サラリ…と、肩に掛かっていたストロベリーブロンドの髪が揺れた

そして、ゆっくりと顔を上げると、目の前にいる少年を見た

 

彼―――になら・・・・・・

 

“彼“ ならば――――・・・・・・

 

「俺と来い。 エリスティア」

 

ゆっくりと手を伸ばす

そして、そのまま目の前に伸ばされた少年の手に重ねた

 

彼こそが、本物の――――・・・・

 

    遙かなる大いなる世界へ――――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

CRYSTAL GATE

  -The Goddess of Light-

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ガラガラガラガ

 

馬車が揺れる

 

  「風」

 

  「土」

 

  「火」

 

  「水」

 

  「光」

 

多くのルフ達が、呼び掛けてくる

ありがとう ありがとう と

生んでくれて、ありがとう――――……と

 

目を閉じるだけで感じる

大地が、川が、木々が呼び掛ける

 

嬉しいと 楽しいと 喜びの声を上げる

ああ、世界はこんなにも美しい

 

命が、生命の息吹が 歓喜の声を上げる

すべての“モノ”に宿るルフ達よ あなた達が幸せなら、私はそれだけで満たされる

 

ガラガラガラ

 

馬車が揺れる

 

「ねーおかあさん」

 

振り返ると、小さな女の子が母親に向かって話し掛けていた

 

「いつになったら、着くの?」

 

馬車での旅に飽きたのか、女の子はむぅ~~とふくれっ面をしながら母親を引っ張った

母親は、そんな我が子をなだめる様に優しく頭を撫でる

 

「もうすぐよ。もう少ししたら着くわ。そしたら、リリアの大好きな林檎を買ってあげるわね」

 

そう言って、にっこりと微笑んだ

リリアと呼ばれた女の子は、それを聴いてぱぁっと嬉しそうに顔を綻ばせた

 

「ほんと!? りんご大好き!!」

 

なんだか、その風景が微笑ましくて 見ているこっちも幸せな気持ちになる

リリアの纏っているルフも嬉しそうだ

 

それに気付いた母親が、こちらを見た瞬間 にっこりと微笑んだ

 

「こんにちは、一人旅なの?」

 

ああ、この母親の纏っているルフも綺麗だわ・・・・・・

そう思った瞬間、少女はにこりと微笑み返した

 

「ええ、今は一応、そう・・・・なりますね」

 

そう答えた少女に、母親が心配そうに顔を曇らせた

 

「そうなの?でも、女の子一人じゃ大変じゃない?」

 

そう問われた瞬間、清々しいまでに一言

 

「そんな事ありません。むしろ、面倒事を起こす者がいなくて精々します」

 

そう言って、ふふふと笑って見せる

一瞬、母親がきょとんっとした様に目を瞬かせたが、次の瞬間ぷっと吹き出した

 

「確かに、それはあるかもしれないわね」

 

そう言って、くすくすと笑いだす

と、その時だった

不意に、くいっと髪を引っ張られた

いや、引っ張ったは言い過ぎかもしれない

だが、誰かが触れる感触があった

 

一瞬、そのアクアマリンの瞳を瞬かせた後、その主を見る

すると、先程まで母親の膝に乗っていたりリアが少女の髪に触れていた

 

「おねーちゃん。 きれーな髪~~」

 

そう言って、少女のストロベリーブロンドの髪を撫でる

瞬間、母親が慌てて駆け寄ってきた

 

「これ、リリア!」

 

だが、特に不快だった訳でもなく、害があった訳でもないので、やんわりと今にもリリアを引き剥がしそうな母親を止めた

 

少女は、リリアに向かってにっこりと微笑むと

 

「ありがとう。でも、貴女の髪もブルネットですごく綺麗よ」

 

そう言って、リリアの頭を撫でた

すると、リリアは、ぱぁっとまた嬉しそうに顔を綻ばせ

 

「ほんと! リリアもおねーちゃんみたいになれる!?」

 

「勿論なれるわ。貴女は可愛いもの。私とは比べものにならないぐらい もっともっと綺麗になれると思うわよ?」

 

そう言うと、リリアは満面の笑みで少女に抱きついた

 

「おねーちゃん、だーいすき!」

 

「こ、これ! リリア!!」

 

流石に、その行動にはぎょっとしたのか

母親が慌ててリリアを引き剥がす

 

「す、すみません! うちの子が!!」

 

そして、何度も何度も頭を下げてきた

別段悪い事をされた訳でもないのに、何度も謝ってくる母親がおかしくて思わずくすりと笑みを浮かべてしまった

 

「気にしないで下さい。全然、構いませんから」

 

こんな小さい女の子が抱きついてくるのなど、可愛いものだ

むしろ、無意味に抱きしめてくるあの男の様ならまだしも

これが、あの人ならば……間違いなく制裁を食らわせたに違いない

 

そういえば……

 

ふと、出逢ってからずっと傍にいた あの人の事を思い出す

あの日、あの迷宮ダンジョンで出逢ってから ずっと14年間一緒だった

片時も離れた事は無かった

 

彼にどのくらい触れられていないだろう……

 

この14年間、そんな日は1日としてなかった

何処へ行くのにも、あの人は自分を伴っていた

 

だから、1日として傍を離れた事はなかった

でも

 

こんっかいばかりは、許せない

許容範囲を超えている!!

 

国を出てから、早3か月

こうして、一人で各地を回っているが、特に問題は無い

 

そうだわ

別に、彼がいなくても生きていけるもの

 

それに・・・・・・

 

気になる事もあった

どうしても、この目で確認したかった

 

この“疑問”の正体を見つけたかった

 

おそらく、その事を彼に告げれば、間違いなく一緒に来ると言ってきかなかっただろう

だが、仮にも一国の王としてそれは如何なものか

ジャーファル辺りが、止めに入るのは必然である

 

だから、黙って出た

 

怒ってるかしら・・・・・・

 

なにも告げずに出てしまった自分を

彼は怒るだろうか・・・・・・?

 

「・・・・・・・・・・・・」

 

いや、そもそも第一の原因は彼のあの酒癖と、それに伴って発動する女癖だ!

やっぱり、今回だけは許せるものではない!!

 

「・・・・・・もう、シンの馬鹿」

 

「おねーちゃん?」

 

思わず声に出てしまっていたのか・・・・・・

少女はハッとして、慌てて口を手で覆った

 

リリアが不思議そうに首を傾げている

 

「あ——・・・・えっと・・・・・・」

 

若干 口籠りつつ、少女は軽く咳払いした

 

「えっと・・・・・おねえちゃんはエリスティアって言うの。 親しいものは皆、エリスって呼ぶわ。 貴女のお名前は?」

 

名前を問われたリリアはぱぁっと嬉しそうに顔を綻ばせて

 

「わたし! わたし、リリア!!」

 

と、元気いっぱいに答えた

少女―――エリスティアは、にっこりと微笑むと ゆっくりとリリアの頭を撫でた

 

「じゃぁ、次の街に着くまでよろしくね? リリア」

 

「うん!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「おーい、積み荷を降ろせー!!」

 

ようやく街に着いたのか、馬車を降りると荷台から次々と荷物を下ろす男達が声を掛け合っていた

 

「ふー」

 

エリスティアは天を仰ぐ様に見上げると、小さく息を吐いた

 

「おねーちゃん、ばいばーい!」

 

遠くで、リリアが手を振っている

その横で、母親が頭を下げていた

 

エリスティアは、にっこりと微笑むと手を振り返した

そして、母親には小さくお辞儀を返す

 

「やっと、着いたのね・・・・チーシャンに・・・・・・」

 

チーシャン

冒険者であふれている、とても栄えたオアシス都市だ

その中心は、あの10年前に現れたという第7迷宮

 

迷宮ダンジョンとは、突如現れた謎の巨塔の事を指す

歴史上、それが初めて確認されたのは14年前だ

 

それが、第1の迷宮 「バアル」

 

それは異様な建造物だった

未知の文明の建築模様

決して壊れぬ不思議な素材

 

そして、入り口らしきものは一つだけ

中は一切見えず、不気味な光を放つのみ

 

誰もが恐れる中、歓喜に震えたのは科学者達だった

 

直ちに調査団が結成された

その規模数千人

 

帝国も軍隊を惜しみなく投入し、新たなる英知の発掘を願った

 

しかし、二千人の調査団 全滅

二万人の重装歩兵団 全滅

 

誰一人として帰って来る者はいなかったという

 

やがて塔は、人々に「死の穴」として恐れられる様になり・・・・・・

誰も、その塔を解明する事など出来ないと思われていた

 

 

が―――・・・・・・

 

 

一人の少年がその塔から生還したのだ

輝く財宝と、蒼い巨人を従えて

 

それ以来、迷宮ダンジョンは「死の穴」ではなくなった

冒険者は我こそはと挑み始める

 

そして、このチーシャンにある第7迷宮 「アモン」

 

10年もの間、挑戦者を退けてきた難攻不落の迷宮ダンジョンである

しかし、未だにその挑戦者は後を絶たない

そして、その挑戦者達によって栄えたのがこのチーシャンである

 

よくよく思えば、迷宮ダンジョンとはよく縁があった

自分を救いだし保護してくれたのも、“彼”が作り出した・・・・・迷宮ダンジョンだった

そして、そこから世界を見せてくれると、エリスティアを連れ出した”彼”と出会ったのも迷宮ダンジョンだった

それから、何度も迷宮ダンジョンには入った

 

なので、とりわけエリスティアにとって迷宮ダンジョンとは珍しいものでもなんでもなかった

むしろ気になるのは――――・・・・・・

 

 

 

 

 

 

 

 

「ふざけるなぁ―――――!!!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

突然、何処からともなく豚を圧し潰した様な叫び声が聴こえてきた

 

「え・・・・・・?」

 

何・・・・・・?

 

何かもめ事だろうか・・・・・・?

 

よくよく聞いてみると、目の前の路地に入った先から聴こえてくる

 

「・・・・・・・・・・・・」

 

だが、別に自分が関わる事でもない

放っておいても・・・いい、わ、よね・・・・・・

 

そう思い、そのまま素通りしようと反転する

が・・・・・・

 

・・・・・・・・・・・・

・・・・・・・・・・・・

・・・・・・・・・・・・

 

「~~~~~~ああ、もう!!」

 

くるりと反転すると、そのまま路地に駆け込んだ

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

曲がった先でそれを見た瞬間、エリスティアはぎょっとした

 

「すみませんで、すむかぁ!!」

 

そう叫ぶ、豚の様な男が少年の頭を足蹴にして何度も何度も蹴りつけていた

 

「ちょっ・・・・! ちょっと!! 何やってるのよ!!」

 

いてもたってもいられずに、思わずその広場に飛び出す

 

「ああん?」

 

ギロリと、豚の様な男がこちらを見た

 

う・・・・・・

 

思わず目を逸らしたくなるような男だ

だが、ここで目を逸らしていては飛び出した意味がない

 

「なんだ? 貴様は」

 

「誰だっていいでしょう。 それよりも、どういう事でそんな事になっているのかしら? どんな理由にしろ、人を足蹴にしていい筈がないわ」

 

エリスティアのその言葉に、カチンときたのか・・・・・・

豚の様な男が真っ赤になって吠えた

 

「そんなの決まっとる!! こいつらが、ワシの大事な商品に手出したんじゃ!!」

 

「ち……違います……っ!! それは―――・・・・・・」

 

「黙れ、このガキが!! 貴様が弁償しろ!! 弁償するまでタダ働きしろ!!」

 

少年が弁明しようとした瞬間、またあの豚の様な男が鬼の様な形相になり少年を蹴りつけた

 

「や、止めなさいって言っているでしょう!!」

 

エリスティアが慌てて、少年と豚の様な男の間に割って入る

 

「幾らなの!?」

 

「ああん? お前が払うと言うのか?」

 

そう言った瞬間、豚の様な男は小馬鹿にした様にはっと声を上げて笑った

 

「出来もせんことを言うな! お前の様な平民風情が一生働いても返せぬような額に決まって―――へぶぅ!!

 

そこまで言い掛けた豚の様な男の顔に、これでもかというくらい思いっきり“それ”を投げつけた

 

ズシャ!という音と共に、“それ”が地に落ちる

ぎょっとしたのは、豚の様な男だった

“それ”で殴られた事など忘れた様に、その落ちた“それ”に飛びつく

 

「足りるわよね?」

 

「おおおお!!」

 

中身の金貨の束を見た瞬間、豚の様な男が声を上げた

が、次の瞬間はっとして慌ててその金貨の入った袋を仕舞うと

 

「ふ、ふん!今回は、これで許してやるがな! だが、アリババ!! これで許されたと思うなよ!!?」

 

そう言い捨てると、そのまま去っていった

 

アリババと呼ばれていた少年は、あの豚の様な男が去ったのを見た後にはーと息を吐いて肩を下ろした

 

「くっそー・・・・・・ブーデルの野郎、・・・・最悪だ」

 

そうぼやくと、ぱんぱんと砂を叩いて立ち上がった

 

「大丈夫?」

 

エリスティアが心配そうにアリババを覗き込むと、アリババはハッとした様に顔を上げた

 

「ああ、平気だ。 悪いな、あんたに迷惑掛けちまった」

 

それが、代金の立て替えした事だと気付き、エリスティアは何でもない事の様に手を振った

 

「ああ、あれは別にいいのよ。 というか、あの男貰う物はちゃっかり貰って去るのねー捨て台詞は残すのに」

 

許さないなら、お金は置いて行くべきではないのか

と、突っ込みたい所だ

 

「でも、どうして商品に手を出したりしたの? 流石に、それは怒られても―――」

 

「商品に手を出したのは、俺じゃなくて――――ああ、いねぇ!!」

 

「こいつだ!」とアリババが指さそうとした場所には誰も居なかった

 

「えっと・・・・誰かいたの・・・・・・?」

 

と、いう事だろうか…?

 

「あんのガキ、バックレやがった・・・・っ!!!」

 

どうやら、真犯人は他にいる様だ

瞬間、何かを感じた様にエリスティアの回りのルフがざわめいた

 

え・・・・・・?

 

それは、アリババが指さそうとした場所を示していた

 

このルフの名残りは・・・・・・

 

それは、ここ3か月探していた“疑問”に近かった

 

 

まさか・・・ここにいるというの・・・・・・?

 

 

 

 

 

 

       このチーシャンに―――――・・・・・・・・・・

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

シンドバッド夢、開始ですww

 

まさか、自分がここまでマギにハマるとは…

誰が思ったでしょう~

や、私も予想してなかったわww

 

これもそれも、すべてシンドバッド=小野Dだったが為!!

やっぱ、小野Dもとい、シンドバッドは素敵だ…(´∀`)

 

しかーし!肝心の本人はまだ登場先ですけどねー(-_-;)

 

ちなみに、作中夢主が”少女”なっていますが…間違いじゃないよー?

え?計算が合わない??

いや、計算は合ってます合ってますよー

でも、”少女”だから

 

余談:でも、出逢った頃は12~3歳ぐらいかな?(笑)

 

2013/04/21