◆ 第1話 紅々莉姫 3
――――前回までのあらすじ
視察で回っていた鬼灯の元に茄子が慌てて現れ
「桃太郎が来た!!」
と、言い出し――――鬼灯と、その場にたまたま居合わせた伽耶も連行されたのであった
で、現在
鬼灯と桃太郎陣営が戦う(?)こととなった
の、だが・・・・・・
(「まっ・・・・まずは、お前たち試しに行ってくれ!」)
(「え? イヤだよー」)
(「どーして!?」)
(「アンタ行けよ」)
(「ずるい――――」)
と、小声で何やら揉めている様子だった
向こうは向こうで大変そう(主に、従者が)だなぁ・・・・と、なんとなく伽耶が思っていた時だった
桃太郎の従者の内の一人、犬が 仕方なさそ~にとことこと出てきた
「あ、犬が出てきた」
茄子がぽつりとつぶやく
犬は、「はぁ~~~~~~」と、重い溜息を付き
「ウ~~~~~~~自信ないなぁ・・・・・・」
などと、ぼやいている
ちなみに、その後ろの岩場の影で桃太郎が
(「シロ!! なんでもいから、挑発しとけ―――――!!!」)
と、小声で声援を送っていた
犬―――改め、シロは「え―――・・・・、う、う~~~んと・・・・・・」
と少し考え・・・・・・・・・・・・
キッと鬼灯を見て威勢よく
シロ:「かっ、亀みたいなつり目!!!!!!」
鬼灯:「ソ●トバンクのお父さん!」
瞬間、がくっとシロが倒れる
「そ、それだけは、言われたくなかった・・・・・・でも、上●彩なら娘に欲しい・・・・・・」
が、そこへ追い打ちをかける様に
「・・・・・・それどころか、もうお嫁に行かれましたよ」
「ぐはぁ!!!」
チ―――――――ン
「ワアァアアアア!!!! シロが撃沈したァァァ!!」
「クッ・・・・・・クソッ! 今のはひどいっ!!」
「負け犬、シロの仇!! 我らが!!」
と、猿と雉は意気込んで現れる
その後ろでシロが「・・・・・負け犬、言うな・・・・・・」と、ぼやいているが、スルーである
「チームのプレーン! 猿の柿助!!」
「ロケットランチャー! 雉のルリオ!!!」
シャキ――――――――ン!!
と、二匹が鬼灯の前に現れる
不意に、鬼灯がすっと伽耶に手を差し出した
すると、伽耶はあたかも分かっていたかのように、・・・・・すっと鬼灯の手に閻魔帳の写しを渡す
すると、鬼灯はその閻魔帳の写しをぱらぱらとめくり
「柿助・・・・・・? ・・・ああ、貴方、確か600年前にカニの御一家から傷害罪で訴えられてますよね? ―――――謝りましたか?」
チ―――――――ン
「過去の・・・・過去のあやまちはゆるして・・・・・・」
柿助、撃沈
そして、残るは・・・・・・
「おのれぇ~~~~シロと柿助の仇!!」
キラー―――――――――ン!! と、雉のルリオがその羽根を広げる
が―――――
それを見た鬼灯がひと言
「貴方は――――“思ったよりデカイ鳥だなぁ・・・・・・”以外に、特にありません」
チ―――――――ン
「雉って・・・・・・」
ルリオ撃沈
「うわあああああああ、同志イイイイイイイイ!!!!」
桃太郎がそう叫びながら撃沈された三匹に駆け寄った
それを見た伽耶があまりにも、桃太郎が不憫に思えたのか・・・・・・
「鬼灯様、もう少しソフトに言ってあげられなかったのですか? ―――あれでは動物さんが可哀そうです」
「ソフト・・・・・・? そうですか? 充分、優しく応えましたが? 伽耶ならんと対応したのですか?」
いきなり、そう問われて伽耶が「それは・・・・・」と、少し言葉を詰まらせた後
「例えば―――犬さんには」
「白い毛並みの犬って、どこにでもいるので、珍しくもなんともないですね。 ソ●トバンクのお父さんと比べるには、いささか役不足ですね」
シロ:「ぐはぁ!!」
「では、猿さんには?」
「傷害罪で訴えられているのに、英雄の部下とか笑ってしまいますよね。 出直してきてください(にっこり)」
柿助:「過去は・・・・過去に触れないで・・・・・・」
「では、雉さんには?」
「大きい鳥なら、孔雀の方が良かったのでは?」
ルリオ:「雉・・・・・・なの、に・・・・・・」
し――――――――ん
「ああああああああああ、同志イイイイイイイイ――――――!!!!」
「伽耶・・・・・・」
鬼灯が伽耶の方見て、微かにその顔に笑みを浮かべると
「よくできした、見事なトドメっぷりでしたよ」
そう言って、伽耶の頭を撫でた
「え・・・・・? 普通の事しか言っていませんが・・・・・・?」
伽耶がなぜ褒められたのか分からないという風に、首を傾げる
それを見ていた、茄子達は・・・・・・
伽耶にだけは逆らうまい
そう誓ったのだった
一方―――――桃太郎チーム
「桃太郎よぉ・・・・・やっぱ鬼は強ええよ・・・・・・」
「ムダな喧嘩売るもんじゃないね・・・・・・」
と、シロとルリオが涙ながら訴えていた
それを見た、桃太郎はくっと歯を食いしばり
「おのれ・・・・・・鬼めっ! 所詮は、血も涙もない奴よ・・・・・・」
ゆっくりと立ち上がると、鬼灯と伽耶をキッと睨んだ
そして、ゆっくりとした動作で剣を抜くと――――――
「いざ! 桃太郎の剣術受けてみよ!!!!」
そう言って、剣を構える
すると、鬼灯がすっと持っていた金棒を構え――――たかと思うと
ひゅん!
ぱき―――――――ん
「あ」
ものの見事に、桃太郎の剣が折られた
「イヤアアアアアアアア!!!!!」
桃太郎がそう叫ぶが・・・・・・
後ろで三匹が
「まぁ・・・・そりゃぁな・・・」
「たとえ剣豪でも金棒一振りされたら剣折れるよね・・・・・・」
ズ――――――――ン
と、その場に打ちひしがれる桃太郎
まぁ、当然の結果といったら、当然の結果なのだが・・・・・・
伽耶がはぁ・・・と、ため息を洩らし
「この方、どうして鬼ヶ島で勝てたのでしょう・・・・・・?」
「さぁ・・・・・・?」
と、鬼灯がぼやくと
「いやぁ~正直、あの時 鬼はべろっべろに酔ってて・・・・・・」
「バラすな――――――!!!!」
「若さと、勢いと、ビギナーズラックだよな」
「オイッ!!」
「そりゃぁ、村のみんなは喜んでくれたし、俺達も誇らしかったけど・・・・・・」
「その後、うぬぼれちゃったよなぁ~」
「!!? くっ――――――!!!」
桃太郎が三匹の言葉にわなわなと震えだす
そして、今にも怒鳴りそうになった時だった
ばしいいい!!!
思いっきり、頬を叩かれた―――――鬼灯が手を出す前に 伽耶に
「あ・・・・・・」
思わず、茄子たちが声を洩らす
叩かれた桃太郎は、赤くなった頬を押さえて 今にも泣きそうになっていた
だが、伽耶はそれだけではとどまらず
「さっきから見ていたら、貴方何様のつもりなのですか!? 自分を慕ってくれた仲間の忠告も聞かず、挙句の果てに怒りに任せて鬼灯様に手を出す始末。 これ以上の蛮行、許せません!!!」
そう言って、どこから取り出したのか、小さなハサミを取り出した
「申し遅れました。 私、紅々莉 伽耶と申します」
「くく・・・・り・・・・・・?」
初めて耳にしたその名前に桃太郎がきょとんとする
すると、伽耶は「はい」と答え
「その名の通り、人や人、ものやものとの“縁”が見えるのです。 ですから―――貴方がこれ以上抵抗するというのなら―――・・・・・・」
すっと、伽耶が何かを持つ仕草をして、“それ”を持っているハサミを構える
そして―――――・・・・・・
ぱちん・・・・・・
という音がした途端それは起きた
「あれぇ? あのひと誰?」
「しってるか? あの暑苦しそうなやつ」
「いや、見た事ねェ顔だな・・・・・・」
と、突然シロと柿助・ルリオが桃太郎を見てそう言い始めた
驚いたのは他ならぬ桃太郎だ
「え? ど、同志!? 何言って―――――」
そう言って、桃太郎が三匹に駆け寄った
「うっわ、なんかきたよ」
「逃げよう、逃げよう~」
「逃げるが勝ちだな」
そう言って、桃太郎から距離を取り出す
「同志イイイイイイイイイ!!!!」
遠巻きにこちらを見る三匹
桃太郎が、わなわなと震えだし
「お前っ!! 同志に何をしたんだ!!!!?」
そう言って、伽耶に折れた剣を向けた
だが、伽耶はその表情一つ変えず
「貴方と、お仲間さんの“縁”を切っただけです」
「えにし、を、きる???」
「はい」
にっこりと極上の笑みで伽耶が笑う
それはつまり―――
桃太郎と三匹はまたっく関わり合いにない事に―――・・・・・・
桃太郎にとっては笑い事じゃなかった
「同志達を返せエエエエ!!!!」
そう叫びながら、伽耶に食って掛かろうとした時だった
刹那、鬼灯の拳が桃太郎の頬にめり込んだ
「ごふぅっ!!!」
突然の、鬼灯からの攻撃に、桃太郎が吹き飛ぶ
「貴方、せっかく英雄として生きてきたのに・・・・・・死後、こんな事してて。 情けなくないんですか?」
「―――――・・・・・・っ」
悔しくて、悔しくて、思わず桃太郎の瞳に涙が滲み出る
その時だった
「そうだよ、桃太郎・・・・・・もう、やめようよ。プライド守るのに必死だったんでしょ?」
「シ、シロ? 俺がわかるのか・・・・・・?」
桃太郎が信じられないものを見る様にそう言う
「桃太郎・・・・・・俺も色々言ったけど、本当はアンタが好きで・・・・・・だから、一緒にいるんだ、でもな」
「うん・・・・・」
「でもな、過去の栄光にさァ・・・・・いつまでもすがってちゃダメなんだよ・・・・・」
「柿助・・・・ルリオ・・・・・・・」
「“桃太郎だから鬼に固執する”なんて、間違ってる」
「お、お前たち・・・・・・・・」
桃太郎が、その目を涙一杯にして、三匹を見た
そして、感動の――――と思いきや
「あの、よければ犬猿雉さんは、不喜処地獄へ就職しませんか?」
「え?」
「最初は、契約社員。 三か月後は正社員で」
「いいんですか!!?」
「鬼灯様――――――!!!!!」
と、一気に三匹は鬼灯側になつく
「コラ―――――――ッッ!!」
桃太郎がそう突っ込むが、鬼灯はシロの頭を撫でながら
「貴方にもぜひ就職して頂きたい就職口があります」
「え?」
地獄には二百七十二の部署がある
その中には獣による地獄もあるのだ
「亡者の血の味を覚えるのだ!! 新人!!」
「ハイ! 先輩!!!」
どうやら、シロたち三匹は不喜処(つまり獣による地獄)に就職が決まったようだ
「不喜処の従業員不足はこれで解消しましたね?」
「ハイッ!」
ちなみに、桃太郎はというと――――・・・・・・
「どうですか? 調子は」
「あっ・・・・おかげさまで~柴刈りは家業でしたし、天職です」
と、とげがなくなり、まるくなっていた
―――――その後、天国の桃源郷で頭角を現したという
「ところでさ~」
唐瓜がぽつりと、呟いた
「あの時、伽耶さんがなんかやってたのって・・・・・・なんだったのかな?」
「ん? さぁ、なんだろ~?」
茄子が上の空で、絵を描いていた
「ほんっと、お前、興味ない事には無沈着だよな~」
「ん~? うん」
「認めんのかよ」
結局、あの時伽耶が何をしたのか、分からないままだったのだった
夢主が何をやって、どうして元の戻ったかは
次の回あたりでわかる・・・・・かな??
どこかでバラしますwwww
2020.10.17