紅蓮の炎 揺れる鳥籠
      ~夢幻残宵~

 

 第1話 紅々莉姫 4

 

 

 

――――あの世には「天国」と「地獄」がある

そして、「あの世」には「この世」にない動植物もある

 

それが――――・・・・・・

 

ぴち・・・・・・

 

  ぴち、ぴち・・・・・・

 

目の前に広がるのは、「謎」の「植物」なのか

はたまた「動物」なのか・・・・・・

 

紅々莉 伽耶は、じ―――――――と、目の前に広がる赤い謎の生物(?)を眺めながら首を傾げていた

 

茎は地にあり、枝先には何故か謎の金魚もどきがらんらんと花咲き(と言っていいのか悩むが)ゆ~らゆ~ら揺れていた

 

「あの、これは・・・・・・?」

 

思い余って、目の前で上機嫌で“それ”に水をやる鬼灯に話しかける

すると、鬼灯はしれっとしたまま

 

「伽耶は、金魚草を見るのは初めてですか?」

 

「金魚・・・・・・“草”?????」

 

草ということは、やはり植物なのか・・・・・・

そんな事を考えていると、鬼灯は「それはいけませんね」と言うと

 

「私の、おもっちゃ・・・・・・いえ、助手なのですから、金魚草の事はしっかりと、理解していただかなくては」

 

この人、今、さらっと「おもちゃ」って・・・・・・

 

などと考える暇もなく、いきなり鬼灯に謎のホースとバケツを渡された

 

「あの・・・・・・これは?」

 

「水をやる道具です」

 

「水・・・・・・?」

 

バケツからぶっかけるのだろうか????

そんな疑問を余所に、鬼灯はバケツにホースを繋げた

 

すると、バケツの側面に無数の小さな穴が開いていたらしく・・・・・・

そこから、シャーという軽快な音とともに、水が出てきた

 

「あ、これ・・・・・・」

 

それは、まるでじょうろの様だった

それから出る水を、言われるがままに金魚草にやると・・・・・・

 

金魚草がぴちぴちと嬉しそうに横に揺れ出したが

 

うっ・・・・・か、可愛くない・・・・・・

 

「まんべんなくお願いしますね」

 

「は、はぁ・・・・・・」

 

まんべんなくって・・・・・・

目の前に広がるのは、広大なまでに咲き広がった金魚草の群れ

 

どう考えても、奥地に水をやるにはこの中に足を踏み入れなくてはならない

正直、むちゃくちゃ嫌である

 

ど、どうしよう・・・・・・

 

そんな事を考えあぐねる伽耶とは裏腹に、鬼灯は「うーん」と唸りながら金魚草を眺めていた

その時だった

 

「お~増えましたね! 品種改良されてた金魚草」

 

という声が聴こえてきた

声のした方を見ると、獄卒の1人であろう鬼が片手に弁当と持って歩いていた

 

誰・・・・・・?

 

伽耶がこの閻魔庁に出入りし始めて、そこまで月日は経っていない

伽耶の知らない鬼の方が殆どだろう

 

その獄卒も、その内の一人だった

すると、伽耶を見その獄卒は、何故か微笑ましそうに

 

「おや、紅々莉さんもご一緒ですが、ご苦労様です。 相変らず仲睦ましいですなぁ~」

 

伽耶は、その言葉に首を傾げた

「仲間睦ましい」??? どこが???

 

という、疑問しか浮かんでこない

どうみても、これは鬼灯に「使われている図」である

これのどこをどうみたら、「仲睦ましい」になるのか理解不能だった

 

とりあえず、当たり障りなく・・・・・・

 

「あ、はい、ご苦労様です」

 

とだけ、返しておく

だが、その獄卒は気にも止めず

 

「お二人とも、お昼はもう?」

 

まだです

と言いたいが、それを察した様に、鬼灯が

 

「いえ、何せ忙しくて・・・・・・お昼休みぐらいしか、世話の時間が取れませんので」

 

その言葉に、獄卒はにこにこ笑いながら、目の前に広がる金魚草を見た

そして

 

「活きがいいですね~。 今じゃ、愛好家も多くて・・・・おおきさを競う大会もあるんでしょう?」

 

は・・・・・・?

 

一瞬、何の!? と、伽耶が振り返る

だが、鬼灯も獄卒も気にする様子もなく

 

「僕のイトコも没頭しすぎて、嫁さんに怒られてますよ」

 

そう言って、笑っていた

 

「私も似たようなものですよ。 旅行の予定も立てられない身ですので・・・・つい、趣味にのめり込んで――――あ、伽耶、水やり終わたのならば、その道具はこちらにお願いします」

 

「あ、はい・・・・・・それはいいのですが―――――」

 

そう言い掛けるが――――ちらりと金魚草の中央にある“それ”を見なかった事にして

 

「・・・・・・やっぱり、なんでもありません」

 

と言い切った

 

見えない 何も見えてない

 

そう自分に言い聞かす

そう――――――中央にあるあの馬鹿みたいに大きな金魚草など―――・・・・・・

 

気のせい、気のせい、気のせい

と心の中で10回ぐらい数えた時だった

 

突然、鬼灯の手が伽耶に伸びてきたかと思うと――――

不意に頭の上に手を載せられ

 

「伽耶・・・・・・」

 

「鬼灯、さ、ま・・・・・・?」

 

一瞬、どきりと跳ねた事のない心臓が跳ねるが―――――

何故か、その手がぐわしっと伽耶の頭を鷲掴みにした

 

「いたっ! 痛い痛い痛いっ!!」

 

そのまま、ぎりぎりと締め上げられた

そして、すっと鬼灯の顔が近づいてきて・・・・・・

 

「伽耶、現実から目を逸らしてはいけません」

 

ぎくり

 

鬼灯が何を指しているのか、瞬時に分かった伽耶は、思いっきりすっとぼけた様に

 

「ナ、ナンノ、コトデショウ」

 

「いいから、さぁ! 現実を見るのです」

 

 

 

 

 

「い、いやぁあああああああああああ!!!!!!!」

 

 

 

 

 

金魚草の咲きほこる、庭先に伽耶の叫び声が響いたとかなんとか・・・・・・

その様子を見ていた獄卒は

 

「やっぱり、仲睦ましいいですね。 将来が楽しみです」

 

とか言っていたそうな

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

   ****    ****

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

―――――昼休憩後:閻魔庁

 

それは、突然起きた

 

 

 

『非常警報! 非常警報!!』

 

 

 

突然、全館に流れる緊急事態宣言

 

流石の伽耶もその手を止めた

 

「なんでしょう?」

 

そう言って、伽耶が鬼灯に尋ねる

すると、鬼灯は澄ました顔で

 

「どうせ、ろくでもないことですよ・・・・・・」

 

そう言って、何事もなかったかの様に目の前の書類に視線を戻す

 

 

 

『等活地獄より、亡者一名が逃亡!! 直ちに全獄門を封鎖してください! 繰り返します――――等活地獄より――――・・・・・・』

 

 

 

一瞬、鬼灯の纏う空気が変わったのを伽耶は見逃さなかった

知っている――――こういう時の鬼灯は、限りなくエグイ

関わってはいけないと、伽耶の中の何かが囁いた

 

その時だった

 

 

 

「鬼灯様ァァァァァァァァァ!!!!!!」

 

 

 

いつぞやと同じく、警報の鳴る中鬼灯を呼ぶ声が響いた

それは、桃太郎事件で騒いでいた鬼――――と、その鬼に首根っこ捕まえられている茄子の姿だった

 

「茄子くん?」

 

それに気づいた、伽耶が二人に駆け寄る

 

「一体、どうし――――――」

 

伽耶がそう尋ね様とした時だった

茄子を捕まえていた鬼が叫んだ

 

 

 

 

 

「この新人がうっかりワンセグ持ち込んで・・・・・・悪霊サダコが逃げました!!!!」

 

 

 

 

 

 

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・」

 

 

 

・・・・・・・・・・・・・

・・・・・・・・・・・・・・・・・・

・・・・・・・・・・・・・・・・・・…

 

 

「あの・・・・サダコって・・・・・・・・・」

 

ちらりと、鬼灯の方を見る

すると、鬼灯の瞳が一段と細くなり

 

 

 

 

 

―――――ゴッ!!!

 

 

 

 

 

 

何処からか持ち出したいつもの金棒で、茄子が吹っ飛んだ

 

「茄子くん!!!?」

 

伽耶が慌てて駆け寄る

だが、鬼灯はその三白眼の瞳でキッと茄子を見ると

 

「新人研修で、ちゃんと注意した筈ですよ! そうでなくとも、何かするときは 報告ホウ連絡レン相談ソウ!」

 

「もっ、申し訳ございません・・・・・・」

 

いや、この場合 そういう問題ではない

 

と、突っ込みたいが、相手が鬼灯なので黙っておく

 

「ふええええ、伽耶さ―――ん。 俺、うっかりしてて・・・・・・」

 

茄子が伽耶に泣きつく

それを見た鬼灯が更に苛っとして、もう一発茄子の脳天に金棒がヒットした

 

「ちょっ・・・・・・」

 

流石に今のは――――と、伽耶が抗議しようとすると

鬼灯は、まるで正論の様に

 

「伽耶に泣きつけば許してもらえると思ったら、大間違いですよ! さぁ! 今すぐその手を離しなさい!!」

 

そう言って、びしっと茄子を金棒で指さした

 

「いや、あの、今はサダコが・・・・・・」

 

と、修羅場と化しそうな場面に、茄子を連れてきた鬼が恐る恐る口を開く

だが、鬼灯はつかつかと、伽耶と茄子の方に行くと

 

「茄子さん・・・・・・鬼は時には命に係わる決断も大事という事をおしえてあげましょうか?」

 

ズ――――ンと、冷え冷えした声が響いた

 

瞬間―――――

 

しゅぱっ! と何かを察したかのように、茄子が伽耶の傍を離れる

そして、自分を連れてきた鬼の背に隠れた

 

「・・・・・・鬼灯様・・・」

 

伽耶が、半ば呆れた様に名を呼んだ

が――――鬼灯は、まるでそんな事何も無かったかのように

 

「伽耶、むやみやたらに私の側を離れるのは、いささか感心いたしませんね」

 

「は、はぁ・・・・・・」

 

「貴女を、観察していいのも、使っていいのも、おもちゃにしていいのも、私だけです。 ――――忘れたとは言わせませんよ」

 

「・・・・・・今、さらっと“おもちゃ”とか言ってなかったか?」

 

と、その場にいた鬼がぼやく

 

だが、伽耶は鬼灯のその言葉に、「うっ・・・・・・」と、言葉を詰まらす

ずいっと、鬼灯の顔が近づく

 

覚えていますよね?・・・・・・・・・

 

まるで何かを強調するかのように、そう繰り返した

伽耶は「うう・・・・・・」と、口籠り

 

「・・・・・・す、すみません」

 

ぷるぷると震えながら、伽耶がそう口にする

すると、それで満足したのか・・・・・・鬼灯が微かにその瞳を微笑ませ

 

「わかればいいのです」

 

そう言って、伽耶の頭を撫でた

 

「さて・・・・・・」

 

この問題は解決したとでも言わんばかりに、すくっと鬼灯が立ち上がり

 

「問題のサダコですが・・・・・・」

 

「(あ、話もどった)」

 

と、茄子が小声でつぶやく

が、鬼灯は気にした用もなく、半ば呆れた様に

 

「ワンセグから逃げるって・・・・・・どんだけガッツのある亡者なんですかね」

 

「いや、もう、それは、すっごい頑張ったみたいです!」

 

いや、その前に

「貞子」とは、あの「映画」の中の人物ではないのだろうか・・・・・・?

 

という、素朴な疑問が浮かぶが・・・・・・

どうやら地獄ここは、“亡者のサダコ”が存在するらしい

 

「サダコ・・・・・あの亡者はテレビさえあれば逃げるのです・・・」

 

鬼灯が少し考え

 

「今すぐ近隣のテレビ画面全てお札で封鎖しなさい! そして、ブルーレイ内蔵の62型4Dのテレビをここに設置するのです!」

 

 

 

 

 

 

・・・・・・・・・・・・数分後

 

最新のテレビ画面の前に獄卒が待ち構えていた

そして、ものの数分で サダコが釣れた

 

罠と知ったサダコがぶるぶると震えながら

 

「くっ、くそっ・・・・・おのれ、謀ったな!! かくなる上は、貴様ら全員の鬼の角 へし折ってやる! 腹いせに!!」

 

そう言ってくわっと唯一見えている目を見開くと、その手をゆらりと上げた

 

「日本中、霊感させた割にやることがせこいぞ!!」

 

 

 

 

 

 

「うるさい!!! 女のタタリは蛇の千倍と思い知れ!! まずは、そこの男に護られてる女だ!! 覚悟ぉ!!!!」

 

 

 

 

 

 

そう言って、ぐわっと目の前の鬼灯・・・・・・ではなく、その後ろに控えていた伽耶の方をターゲットにした様に襲い掛かってきた

 

 

 

「あああ!! 鬼灯様! 紅々莉さん! 危なっ・・・・・・」

 

 

 

瞬間――――――

 

 

 

 

 

―――――ゴッ

 がぶうううううう

 

 

 

 

 

何処からともなく現れた、シロがサダコに嚙みついた

 

 

「ギャアアアアアア!!! 何この白犬! 超怖い!!!」

 

 

サダコが、突如乱入したシロに攻撃されて、カサカサカサと、まるで某黒い物体の様に床を逃げようとするが

―――――あえなく御用となったのだった

 

 

 

続く(笑)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

前半と後半で話が違います

アニメの場合、サダコの話はカットされてました

(多分、大人の事情と思われる)

こっちもカットしようかとも思ったのですが・・・・・・

この後、地獄の説明が入るので、追加しましたwww

というわけで、次回はきっとのほほ~~んとした感じになる、の、かな??

 

 

2021.01.16