雪華の願い ~月詠梅花~

 

 一章 残雪 2

 

 

チリン……

 “――――ミコ……”

 

 

「―――え?」

ゆきは、はっとして辺りを見回した

 

気のせい……?

 

ゆきの立っている公衆電話の周りには、別段怪しい人は居なかった

空港の中なので、行き交う人は居るが…

普通と変わらない

館内アナウンスが聞こえるぐらいだ

 

『もしもし?ゆき?どうかしたの?』

 

受話器の向こうから、日本に居る母の声が聞こえてくる

 

「あ、ううん…何でもない。ごめんなさい、お母さん。何か……聞こえた様な気がしたの。でも、気のせいだったみたい」

 

相変わらず、館内アナウンスが聞こえている

別段、おかしなことは何も無い

 

受話器の向こうで母がくすりと笑った

 

『もう……この子ったら……。しっかりしてね?久しぶりの帰国なんだから』

 

そう、普段は仕事で留守がちな両親から離れ、ゆきの家―――蓮水家で一緒に育った兄弟同然の桐生兄弟―――兄の瞬と弟の祟

そして、隣の神社の二つ上の従姉妹の都と一緒に海外留学しており、一時帰国は久しぶりだった

クリスマスは、日本で家族と過ごすのだ

 

『ちゃんと飛行機に乗るのよ?パスポートは持ってるわね?……不安だわ…』

 

受話器の向こうで、母が小さく溜息を付くのが分かった

ゆきは、笑みを浮かべながら

 

「大丈夫。みんなも一緒だし……平気だよ」

 

『瞬と都ちゃんの言う事しっかり聞いてね。祟にも言っておくのよ』

 

「はーい」

 

すると、母が嬉しそうに

 

『ほら、そろそろ祟の誕生日でしょう?早いわね、もう何年になるかしら…瞬と祟がうちに来た日から…。ご馳走作って待ってるから。皆でお祝いしましょ』

 

「うん、楽しみにしてる。お母さんのご馳走も、お父さんと会うのも。……久しぶりに、皆一緒に祟くんのお誕生日とクリスマスお祝い出来るの嬉しい」

 

ゆきは一人娘で、両親はもっと子供が欲しかったらしい

でも、それが叶わなかった……

 

そんなある日、二人の男の子を蓮水家に引き取る事になった

それが、兄の桐生瞬と弟の祟だ

 

ゆきにとって瞬は兄であり、祟は弟だった

ずっと幼い頃から一緒に育ってきた、兄弟だ

 

『お父さんと、お母さんもよ。あら?いけない……そろそろ時間じゃないかしら?』

 

母に言われて、時計を見る

そろそろ、搭乗手続きをしないといけない時間だ

 

「あ……本当だ」

 

ゆきがそう呟くと、受話器の向こうで母が溜息を付いた

 

『もう、しっかりしなさい。それじゃぁ、切るわね。日本で待ってるわ』

 

「うん……また、日本で」

 

そう言って、受話器を置く

すると、丁度搭乗手続きを告げる館内アナウンスが流れた

 

「あ……、早く戻らないと―――」

 

慌てて振り返った時だった

どしんっと、前から来た人にぶつかりそうになってしまった

 

ゆきが慌てて謝罪の言葉を述べた

 

「ご、ごめんなさ……」

 

「ゆき、何をしているんですか」

 

振って来たのは、知っている声だった

ゆきが、声のした方を見ると―――

 

「瞬兄」

 

そこに立っているのは、瞬だった

 

「ゆき」

 

向こうの方からゆきを呼ぶ声が聞こえた

そちらの方を見ると、従姉妹の八雲都と、瞬の弟の祟が歩いて来た

 

「早く並ばないと、カウンターで時間取られちゃうよ―!」

 

祟が、手を挙げながら大声で叫ぶ

 

「もーお姉ちゃんが遅いから、誰かさんがキャビンアテンダントをナンパしてたんだよー。見てよ!こんなの貰っちゃってるんだよ!?」

 

と、ぶーぶー文句を言う祟の頬を都がこれでもかというくらい、ぎゅーとつねった

 

「誰がナンパだ。以前にも世話になった人にお礼がてら挨拶してただけだろーが。大体、話し掛けてきたのは向こうからだ」

 

「ちょっ…!いひゃいってば…っ!都姉!!」

 

祟が抗議するが、都はお構いなしの様だ

 

「何か貰ったの?」

 

ゆきが尋ねると、都がピッと何かメモの様な物を差し出した

 

「―――これ。…ケータイとメールの連絡先だな」

 

「「……………」」

 

「―――都…。記録更新したね…女の人に誘われるの」

 

「流石に、年上は初めてだ」

 

都が平然とした顔で言う

 

都が女の人に声掛けられるのはいつもの事で……

向こうに居た時も、日本でも、よく声を掛けられていた

都はゆきから見ても、男顔負けのかっこよさなので、それは理解できる

……生物学上は“女”だけれども…

 

ゆきが、苦笑いを浮かべている時だった

 

「ゆき」

 

不意に呼ばれ、瞬の方を見る

 

「怪我はありませんか?」

 

「え?うん、大丈夫だよ。瞬兄が支えてくれたから、殆ど当たってないし…」

 

「って!ちょっとぉー!早くってば!!ボク、並ぶの嫌だからね!!」

 

「で、おばさん何だって?電話してたんだろ?」

 

祟と都がいっぺんに話し掛けてくる

 

「あ、うん…あのね……」

 

ゆきが答えようとした時だった

 

「話は後にして下さい。もう、搭乗が始まっています」

 

瞬がバッサリそう斬ると、ゆきのカートを持ってすたすた歩き出した

 

「あっ……瞬兄。荷物、私、自分で持つ―――」

 

「貴女が持つより、俺が持った方が早い。乗り遅れたくなければ、急いで下さい」

 

それだけ言うと、瞬はそのまますたすたと歩いて行ってしまった

ゆきが、慌てて走り出す

 

「あ、待て!危ないから走るなって。ったく…ほら、祟も行くぞ」

 

都がそう言いながら、ゆきを追い掛ける様に走り出した

その後を、祟がずるずると荷物を持ちながら付いて行く

 

「あ!ボクだって荷物重いんだから、少し待てよ――!」

 

そう叫ぶが、誰一人戻ってこない

 

「ズルイなぁ~お姉ちゃんばっかり……。瞬兄、どうせならボクの荷物も持ってくれたらいいのに――」

 

 

 

冬休みを利用して、皆と一緒に果たす事となった日本への一時帰国

見知ったいつもの顔ぶれ

久しぶりに踏む日本の地

そして、旅行という少しの非日常

 

 

さらさらと、砂時計の砂が緩やかに流れ落ちる様な―――

 

 

そんな、穏やかな日々だった

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『―――……まもなく着陸いたします。座席のリクライニングは……』

 

「んっ……」

 

機内アナウンスが聴こえてくる

ゆきは、ゆっくりと目を覚ました

 

「……瞬兄……?」

 

ぼんやりと、視界に入る瞬を見て呟く

 

「……目を覚ましましたか、ゆき」

 

「ん……ごめん、寝ちゃった」

 

隣に座る瞬にそう言いながら、ゆきは目を擦った

 

「いえ、起こす必要もなかったので。疲れていたのでしょう。……よく、眠っていた」

 

ゆきは目を擦りながら、窓の外を見た

雲の下の方に、日本が見える

 

「もう着きそうなの?準備しなきゃ……」

 

ゆきがそう呟いた時だった

 

「ああっ!お姉ちゃん、やーっと起きたの?もう、寝過ぎだよ!ボク、ずっとつまらなかったんだから!

 

後方の席から祟が身を乗り出して叫んだ

 

「瞬兄は相手してくれないし、都姉はずっと席順の事文句言ってるしさー」

 

祟がそう文句を言っていると、同じく後方に座っていた都も身を乗り出した

 

「文句ぐらい言わせろよ!ったく、なんで私が祟と隣なんだ!?兄弟で瞬と一緒に座ればいいだろ?そしたら、私達も女同士、仲良く喋れたのにさ」

 

「それを言うなら、ボクだってお姉ちゃんの隣がよかったもん!瞬兄ばっかり、ズルイよ!」

 

後ろで騒ぐ二人を見て、瞬が小さく溜息を付いた

 

「……都、祟、静かにしろ」

 

瞬の注意に、二人が横暴だと言わんばかりに瞬を睨む

そんな二人を見ぬ振りをして、瞬はゆきにシートベルトをする様に促した

 

「うん、もう直ぐ着くんだもんね。早く皆に会いたいって、お母さん言ってたよ。祟くんの誕生日に、クリスマス…きっと、騒がしくなるね。楽しみ]

 

もう直ぐ――会える

 

「おじさんとおばさん、空港に迎えに来てくれるんだっけ?」

 

都の問いに、ゆきが頷く

 

「うん、そう言ってた。後、お母さんがご馳走作って待ってるって」

 

ゆきがそう言うと、祟が嬉しそうに声を上げた

 

「うわ~、楽しみ!母さんの手料理、久しぶり。早く食べたいなー」

 

「そうだね」

 

もうすぐ……

 

『シートベルト着用のランプが点灯致しました。この飛行機は、ただいまからおよそ30分程で空港に着陸する予定です。天候は晴れ 気温は摂氏―――……』

 

 

もうすぐ……日本に―――…

 

 

 

 

――――チリン……

 

 

「―――え?」

 

 

 

ゆきが、はっとした様に顔を上げた

 

「ゆき?」

 

鈴の音が―――聴こえる……

 

ゆきが、頭を押さえta

 

「おい、どうした?」

 

ゆきの異変に気付いた都が、身を乗り出す

 

 

   ミ……コ

 

   ―――――……ミコ

 

 

どこからか、苦しそうな声が聴こえてくる

 

「……みこ……?」

 

「ゆき!?今、なんて―――……]

 

 

瞬が、何かに気付いた様に声を鋭くさせる

 

 

 

我ガ……

 

   神子……ヨ………

 

 

 

 

―――ガタンッ

 

瞬間、飛行機がぐらぐらと揺れ始めた

 

「うわぁっ……!」

 

「くっ!いきなりなんだ……!?」

 

揺れは収まる所か、どんどん酷くなっていく

 

『……は、気流の悪い中を……ます。どうぞベルトを………』

 

「ゆき!伏せて下さい!!」

 

瞬が叫んだ

だが、ゆきは頭を押さえたまま瞬き一つせずに、何もない空間を眺めた

 

 

 

我ガ声ニ……

 

  応エヨ………

 

 

頭に、声が響く

 

  チリ———————ン……

 

鈴が―――鳴る

 

「……聞いているんですか、ゆき!」

 

「声に応える……?あなたは、誰………?」

 

ゆきが、そう呟いた時だった

 

「ゆき、危ない……っ!!」

 

 

「――――――…………っ」

 

 

 

 

 

――――………チリン

 

 

 

 

 

鈴の音と共に、身体が宙に浮く感覚に囚われる

と思った瞬間、大きな音とともに足元が消えた

 

 

そして、ゆきの身体はそのまま真っ暗な暗闇に落とされていった―――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

―――真っ暗……

 

何も見えない

聞こえない

感じない……

 

地面も空もない………

 

無限に広がる深淵の闇―――

 

ゆきは、一人そこに立っていた

 

いや、立っていたという表現は語弊があるかもしれない

何故なら、そこには足を付ける地が無いのだから

 

どこまでも続く、闇の世界―――

 

なんて寂しい所……

人は居ないの……?

 

チャリ……

 

「え……?」

 

何処からか、音が聞こえた

 

チャリ…

 

音をたどる様に視線を送ると―――ぼんやりと光が見えた

 

あれは……

 

 

「鎖……?

 

 

真っ暗な空間に、怪しい光を放つ無数の鎖が張り巡らされていた

 

「何…これ………」

 

ゆきが、その鎖に触れた時だった

ビリリッと触れた手に電流が走ったような感覚に囚われる

 

 

瞬間

 

 

世界が白く光った

 

 

「―――……っ」

 

 

 

 

 

 

 

 

「秘密主諸法無相……謂虚空相……」

 

グ……ググ……!

 

………神…子……

 

 

…我が声に……応えよ………

 

    ………我を救え…神子よ………

 

「ククク……龍の神子を呼ぶか、白龍。よかろう……」

 

「もがけ!叫べ!時空を引き裂き、神子をこの戦国乱世に呼び込むがいい!!」

 

……グ、ググァァァァァ………!!!

 

おのれ……南光坊!

 

……不遜なる人の子よ!

 

神子……我が声を聴け……

 

    南光坊の呪詛より我を…救え……

 

 

来タレ……ミ…コ…………

 

 

 

 

 

 

 

「――――………っ」

 

また、世界が光った

瞬間、ゆきは先程と同じ闇の中にいた

 

「……………」

 

今、見たものが何なのか分からず瞳を瞬きさせる

 

え……?

今の、何……?

幻……?

 

ゆきが、困惑する様に表情を変えた時だった

ふと、誰かに見られている様な気がして、はっとした

 

目を細めて遠くを見ると―――

そこには、ぽっかりと空いた空間があった

そして、そこに誰かが居た

 

 

「……あなた……誰?」

 

 

「―――――………」

 

ゆきがそう呼びかけると、その人影は何かに気付いた様にゆっくりと口を開いた

だが、それは音にはならなかった

 

その時だった

 

 

………神子…………

何処からか声が聴こえてきた

 

ゆきが、はっとして振り返ると―――

突然、禍々しいほど大きな手が、ゆきを飲み込む様に襲いかかってきた

 

神子よ……

さぁ、龍の選びし娘よ

 

我が手に………

 

 

「!?」

 

 

真っ暗な闇から這い出てきた様な恐ろしい声が頭に響く

 

ゆきは、ぎょっとして後退ろうとした

が、それは叶わなかった

 

何かは分からない強い力で引っ張られたのだ

 

「きゃあ……っ!」

 

抵抗する事も出来ず、どんどん引き寄せられていく

そこには何もない―――闇

 

 

「誰か…っ、助けて!都!瞬兄!」

 

 

ゆきは、拒む様に声を張り上げた

 

手が伸びてくる

 

「いやぁ!!」

 

その時だった

不意に後ろからぐいっと肩を引っ張られると、そのまま後ろにどんっと押された

 

「――――え?」

 

視界に入る人影

流れる様な肥後煤竹に黒の長い髪が揺れた

 

瞬間、その人影に幾重にも連なった鎖が絡みついた

 

「――――……っ」

 

その人影が、顔を顰める

彼の者は、一度だけ目を閉じるとゆっくりと振り返った

 

顔はよく見えない

だが、その蒼と紫の瞳がこちらを見ているのが見えた

 

「――――………」

 

その者が、何かを呟く

 

「え?何……?」

 

音が聴こえない

ゆきには、その者が何を言ったのか聞こえなかった

 

その時だった

ジャララという音と共に、あの者を捕まえている鎖があの手に引っ張られた

ぐんっと吸い寄せられる様にその者が、強い力に引っ張られていく

 

 

「あ……っ!」

 

 

ゆきは、咄嗟に助けなければと思い手を伸ばした

が、その手は彼の者には届かず、宙を切る

 

 

その者が、苦しんでいるのが見える

 

 

あの人……っ

私を助けて代わりに―――っ!

 

 

そう思った瞬間、また強い力に引っ張られた

 

「――――………っ」

 

飛ばされる……!

 

 

神子……

 

頭に響く、微かな声

 

 

これは…

  ……夢…なの………?

 

 

 

 

 

     神子……………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「………ん」

 

風が頬を撫でる

ゆきは、ゆっくりと目を覚ました

 

ぼんやりとする頭を何とか覚醒させようと、辺りを見回す

 

そこは山の中だった

樹々が青々と生い茂り、山間から海が見える

 

「え……」

 

一瞬、自分の目を疑った

もう一度、辺りを見回す

 

空には太陽が昇り、雲が動いている

遠くの方に海が見えて、周りは樹々に囲まれてい

 

「ええっと……ここは、何処…?」

 

確か、瞬や祟、都と一緒に飛行機に乗っていて

そうしたら、急に飛行機が揺れだし……

その後、真っ暗な所で何かに捕まりそうになった所を助けてもらい

 

目が覚めたら……知らない山の中

 

「………………」

 

どう考えても、おかしかった

 

「……一体、何が起きたの…?」

 

周りの雰囲気を見る限り、日本……ではある様だが……

 

「飛行機…まさか、落ちた…とか?」

 

瞬間、はっとした

 

「瞬兄?都?祟くん……?いないの?いたら返事をして……お願い!」

 

 

…………………

 

返事は無い

人の声、ひとつしない

 

乗っていたのは自分達だけではない

他の乗客も居た筈だ

 

「……探さなきゃ…」

 

三人は無事なのだろうか

 

ゆきは慌てて立ち上がると、樹の間を歩き出した

 

「窓から空港見えてたし…だとしたら、ここは空港の外?……でも…」

 

何かが変だ

違和感を感じる

 

ゆきは、もう一度辺りを見回した

 

樹が茂って緑の葉を付けている

太陽も眩しい

 

 

「……季節が違う?」

 

 

今は冬の筈

クリスマス前で、普通なら葉など茂っていない

だが、ここは……

 

「少し肌寒いけど冬じゃない…。緑も茂っててお花も咲いて…五月か六月みたい…」

 

その時だった

 

 

 

 

――――……チリン

 

 

 

 

 

「鈴の音…?」

 

何処からか鈴の音が聴こえてきた

 

「この音、確か飛行機の中でも聴いた様な……」

 

 

ザザザザ…と、不意に生暖かい風が吹いた

瞬間、周りの空気が淀みだす

 

――ずる…ぺた……

  ――――ずる……ぺた……

 

「え?」

 

不意に、何かの音が聞こえた

 

――ずる…ぺた……

 ――――ずる……ぺた……

 

嫌な感じのする音だった

それに、生臭い変な匂いが漂い始める

 

――ずる…ぺた…

  ――――ずる……ぺた……

 

その音は、後ろからどんどん近づいて来た

 

ゆきはごくりと息を飲んだ後、恐る恐る振り返った

 

ぼぅ…と光る光の玉

そして、そこにいたのは―――

 

 

「いやっ!」

 

 

異形の形をした化け物だった

餓鬼の様に下腹だけが膨らみ、がりがりに痩せ細った身体の小さな化け物がこちらに近づいて来ている

彼らの通った後には、生臭い水の様なものがぼたぼたと落ちている

その目をらんらんと光らせ、その化け物はゆきを見るとにたりと笑った

 

「何か…何かないかな?木の枝とか、棒でもいい。身を守れそうな―――」

 

ゆきは慌てて辺りを見回した

これでも、向こうではフェンシングを習っていた

何も無いよりはましだ

 

だが、棒などどこにもなかった

 

「ど、どうしよう―――……っ」

 

頭が混乱する

 

こんな時、瞬が居てくれれば―――……

 

 

――――ずるり

 

化け物が近づいてくる

 

 

そして、手に持っていた刃がこぼれた獲物を振り上げてくる

 

 

「―――いやっ……!助けて、誰か―――っ!!」

 

 

 

    瞬兄!都……っ!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

完全ゆき視点ですな…(-_-;)

いや、まぁ、仕方ないのよ…

ストーリーテラーなので、こうしないと話が進まないんですものー

一章は…ね

 

あ、瞬と祟の経緯が曖昧なのは、わざとなのでww

あしからず

 

とりあえず、龍馬――!早く―――!!(笑)

 

2011/06/02