櫻姫抄乱
 ~散りゆく華の如く~

 

 四章 虚実の馨り 22

 

 

しん…と、静まり返った部屋に、原田の声だけが響いた

 

 

 

 

 

「今日、風間に会って来たんだ」

 

 

 

 

 

“風間”

 

聞きたくもない、その名を聞いた瞬間 ぴくりと微かに土方の眉が動いた

今、原田は何と言ったか……

 

「“会って来た”……だと?」

 

原田は“会って来た”と言ったのだ

偶然“会った”ではなく

“会って来た”―――と、そう言ったのだ

 

「ああ、薩摩藩邸に行ってきたんだ」

 

そう告げる原田の表情は、とても真剣なものだった

土方の菫色の瞳が、俄かに鋭くなる

 

「………どういう意味だ」

 

数段低くなった土方の声音が、原田を射ぬく様に響いた

 

きっと、これが藤堂や永倉だったら、たじろいでいただろう

だが、原田は肯定する事も、否定する事もせず、ただ静かにその瞳を閉じた

 

「言葉の通りさ。風間に用があったから、薩摩藩邸に行った。嘘も偽りもねぇよ。でも―――……」

 

そこまで言うと、ぐっと唇を噛んだ

だが、それ以上は言うのを阻まれるのは、それとも言い辛いのか

中々、言葉にしなかった

 

土方は一度だけその菫色の瞳を閉じると、呆れにも似た溜息を付いた

 

「後悔すんなら最初から行くんじゃ――――用……?」

 

ぴくりと、何かに気付いた様に眉をしかめた

 

用だと?

原田が?風間に用?

 

そんな筈はない

戦うでもない、用事の為にわざわざ新選組幹部の原田が敵地である薩摩藩邸に乗り込む様な真似するとは思えない

この男は、そこまで軽率ではない

 

ならば、何故だ

 

「………………」

 

土方は、小さく息を吐いた

 

答えは一つ

原田がそこまでする相手

そして、原田の最初の言葉

 

『……さくらの事で、ちょっと話があるんだ』

 

確かに、原田は“さくら”と言った

 

原田がさくらを気に掛けている事には気付いていた

それが、いつもの善意からなのか、はたまた好意からなのかははっきりとは分からない

少なくとも、千鶴や他の隊士達以上の好意を持っている事は明らかだった

それぐらい、流石の土方も気付いた

 

別段、それを土方に止める理由がある訳でもないし

さくらもそれを望むのならば、土方にはどうしてやる事も出来ない

何故なら、そんな権利は自分には無いからだ

 

それに―――

 

数日前、この西本願寺に風間が現れた時、あの男は何と言った

 

『八雲道雪の事を知りたければ、俺の元へ来い』

 

確かに、あの男はそう言った

“俺の元へ来い”――――と

 

ここ数日、さくらがその事を気にしていた事は知っていた

本当ならば、風間に問いただせれば彼女の知りたい答えが聞けるのかもしれない

だからといって、風間の元へ行く事を許可してやる訳にはいかなかった

それだけは、絶対に許可したくなかった

出来る事なら、二度と風間に関わらせたくはないのに、何故許可出来ようか

 

これは、新選組副長としての判断なのか、それとも土方個人の望みなのか

そんな事は、最早どうでもよかった

 

ただ、風間に関わらせたくない

風間に会わせたくない

 

その想いだけが、先走った

 

風間に会えば、さくらが行ってしまうかもしれない―――

今度こそ、さくらは風間を選ぶかもしれない―――

 

その不安だけが消せない

 

自分でも、どうしていいのか分からない

 

だから、あえてその話題には触れなかった

それに、さくらもそれを分かっているからか、“行かせてくれ”とは自分から言っては来なかった

 

 

 

だが――――

 

 

 

土方は、また小さく溜息を付いた

 

「……・さくらも一緒だったんだな?」

 

土方の言葉に、原田がぴくりと肩を震わせた

だが、押し黙ったまま何も答ようとはしなかった

 

最早、それは肯定以外のなにものでもなかった

 

土方は、はぁ……と 大きな溜息を付いた

そして、頭を抱える様に額に手を当てると、そのまま文机に肘を付いた

 

「……ったく、あの馬鹿が」

 

あまりのも予想通り過ぎて、笑みすら浮かばない

 

「土方さん……っ!」

 

その時だった、原田が慌てた様に口を開いた

 

「勘違いしないでくれ……っ! 最初に行こうって言い出したのは俺なんだ。……ほら、さくらの奴 ここ最近ずっと悩んでるみてぇだったからよ、少しでも何か分かれば気が晴れるんじゃないかと思って―――」

 

そこまで言って、原田は開いていた口を閉じた

 

「………………」

 

土方は、一度だけその菫色の瞳を瞬かせた後、また小さく息を吐いた

 

相変わらず、嘘が下手な男だ

その言い方では、さくらが言い出したのだと言っている様なものだった

 

まぁ、実際の所、さくらから十中八九言い出したのであろう事は、容易に想像付いた

いや、正確には恐らくさくらは一人で行く気だったのだろう

せいぜい、原田がそれを知り同行した―――といった方が正しいだろう

 

妙な所で、頑固な女だ

こうと言いだしたら、梃子でも動こうとしない

 

人に迷惑を掛けるのをひと一番嫌うさくらが、一人で行こうとする事など考えそうな事だった

 

逆に言わせてもらえば、一人で行かれて何かあれば後から面倒なのだが…

それ以前に、そこで助けを頼まない所が彼女の性格でもある

 

“頼る”という行為に、酷く不器用なのだ

 

そのくせ、他人には頼れと言う

酷く矛盾した言い分だ

 

でも、今それを言っても仕方のない事だ

土方は、もう一度小さく溜息を付いた後

 

「行っちまったもんは仕方ねぇ。無事に帰って来たんだったらそれで――――」

 

 

 

 

「土方さんっ!すまねぇ!!!」

 

 

 

 

そこまで言い掛けた土方の言葉を遮るかの様に、突然原田が頭を下げた

 

一瞬、何事かとぎょっとする

原田は、何かを悔やむ様にぐっと床に付いた拳を震わせた

 

それだけで全てを悟った

 

土方の表情がみるみる険しくなる

 

「お前……っ!!」

 

思わず言い詰め寄りそうになるが、はっとなり押し黙る

そして、乗り出し掛けた身を戻すと、己を落ち着かせる様に息を吐いた

 

「……話せ」

 

土方の一等低くなった声が響いた

 

原田はごくりと息を飲んだ

それから、一度だけ土方を見た後、そのまま目を伏せた

ぎゅっと膝の上に置いてた握り拳に力を入れる

 

「藩邸まで一緒に行ったのはいいが…風間の野郎が、さくら一人じゃなければ会わねぇって言い出しやがったんだ。 今思えば、あの時 絶対行かせるべきじゃなかったんだ」

 

今、思い出しても悔やまれる

あの時、どんなにさくらが望んでも、絶対に一人で会わせてはいけなかったのだ

 

ぐっと、握った手が微かに震えた

 

「どうしても行かせてくれって言うさくらに、俺は少しでも危険を感じたら、絶対俺を呼ぶ事を約束出来るならっていう条件で行かせたんだ……でも……」

 

さくらから、原田を呼ぶ声は聞こえなかった

だが、胸騒ぎだけが止まらなかった

 

そして、業を煮やして風間とさくらのいる部屋へ向かった原田が見たものは――――

 

ギリリっと奥歯が軋む音が聴こえる

 

「あいつが……っ、風間の野郎がさくらに―――………っ!!!」

 

口にするのもおぞましい

絶対に、あいつだけは許せない

 

殺してやりたいと思った

きっと、千姫が止めなかったら 原田の剣は風間を斬っていただろう

 

「―――あいつが、風間がさくらに何をしただと?」

 

今まで黙っていた土方が、静かに呟いた

 

原田がはっとして顔を上げるが、土方の表情からは何も読み取れなかった

 

鬼の様に怒っている訳でも、悔やんでいる様にも見えない

ただ、無表情で―――いや、虚無に近いぐらい“表情”というものが一切無かった

 

だが、彼の纏う空気がまったくそれとは正反対に感情を表していた

それは明らかな “殺気”

原田に向けられている訳ではないと分かっているのに、身体が震えそうになる

 

だが、こうなる事は承知の上で話したのだ

原田はごくりと息を飲み

 

「それは――――「―――もういい」

 

原田が口を開いた途端、土方が原田の言葉を遮った

 

「…………っ」

 

原田が息を飲み再度口を開こうとしたが、それは土方を見た瞬間言う事は叶わなかった

話してもいないのに、全てを悟ったのか……

土方は、一度その菫色の瞳を閉じると

 

「用件はそれだけか?なら、さっさと出て行け」

 

そうきっぱりと言い切られてしまった

 

そう言われては、これ以上この室に留まる訳にはいかない

原田は少し後ろ髪を引かれる思いで小さく息を吐いた後、立ち上がった

そのまま障子戸に近づくと、一度だけ土方の方を見た

 

「最後に一つだけいいか?」

 

原田がそう言うと、土方がゆっくりと瞳を開けた

そして、そのまま原田を見る

 

その菫色の瞳からは、一切何も感じ取れなかった

 

だが、これだけは言わなければならなかった

何故なら、その為にここに来たのだから―――

 

「俺は、さくらに少しでも危険を感じたら、絶対俺を呼ぶ様に約束させた。 けれど、あいつが呼んだのは俺じゃなかった……俺じゃなかったんだよ……っ」

 

室の方から聞こえた声

さくらの“彼”を呼ぶ声が今でも耳に残っている

 

ゆっくりと土方を見る

そして、すぅっと息を大きく吸った

 

 

 

 

 

 

「―――あんただよ」

 

 

 

 

 

 

しん…と、静まり返った室内に、その声だけが響いた

そう―――さくらが呼んだのは原田の名ではなかった

 

「あいつが……さくらがあの時呼んだ名は、一番傍にいた俺ではなく、あんたの名だったんだ……っ。 土方さんっ!あんたの名だったんだよ!!」

 

原田は、吐き捨てる様にそう叫んだ

瞬間、土方が驚いた様に菫色の瞳を見開いた

 

 

  『土方さん……っ!!!』

 

 

そう呼ぶ、さくらの声が頭から離れない

 

さくらが求めたのは、原田では無かった

傍にいたのも、約束したもの原田なのに

原田ではなかったのだ

 

ただ、聴こえる筈のない

居る筈のない土方の名を必死に呼んでいた

 

「………あんたならその意味、分かるよな」

 

「………………」

 

土方は何も答えなかった

ただ、その菫色の瞳を少し伏せた後、小さく息を飲んだ

 

原田にとっては、それだけで十分だった

 

「……さくらは今、意識を手放して部屋で眠ってる。 あいつが今、必要としているのはあんたなんだ、土方さん」

 

そう―――さくらが今、必要としているのは土方なのだ

―――原田ではなく

 

原田はぐっと、手を掛けた障子戸を持つ手に力を籠めた

 

「だから、今回はあんたに譲る。 あいつの―――さくらの、傍にいてやってくれ。 俺が言いてぇのはそれだけだ」

 

それだけ言うと、原田はそのまま室を出て行ってしまった

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

原田が出て行った後、しん…と静まり返った室内に土方だけが残っていた

遠くで風に吹かれ葉がざわめく音が聴こえる

 

その時だった

 

 

 

「………………っ」

 

 

 

 

 

ガジャ―――ン

 

 

 

 

 

瞬間、物凄い音が室中に響いた

土方の手が、力任せに文机にあった湯呑や硯などを思いっきりなぎ払ったのだ

 

それは、まるで行き場のない怒りを何かにぶつける行為の様にも見えた

 

ポタポタ…と、割れた湯呑から 飲み掛けであったであろう茶が零れ落ち 畳に波紋を広げていっていた

投げ出された硯から、ころころと筆が転がって行く

 

表情は見えない

見えないが、彼の纏う気が恐ろしい程に怒気に満ちていた

 

『あいつが……っ、風間の野郎がさくらに―――………っ!!!』

 

原田の先程の言葉が、頭から離れない

風間………っ!!

 

 

ギリリッと、奥歯を噛み締める

 

先を聞かなくとも分かる

以前、桜の樹の下で見た、ボロボロに着物が乱れた状態で現れたさくらの姿が脳裏を過ぎる

 

まただ

また、あの男は……っ

 

風間が、さくらに触れたと思うだけで、怒りで身体中の血が沸騰しそうになる

 

あの男にだけには、触れられたくない

あの男にだけには、会って欲しくない

 

あの男だけには……っ!!

 

『さくらがあの時呼んだ名は、一番傍にいた俺ではなく、あんたの名だったんだ……っ。 土方さんっ!あんたの名だったんだよ!!』

 

さくらが、土方の名を呼んでいたという

助けを呼んでいたという

 

その時、自分は何をしていた?

何も知らずに、ここで仕事に没頭していたではないか!

 

さくらが、どんな目にあっているかも知らずに

そんな事、、微塵も考える事もなく

ただ、呑気に仕事をしていた

 

 

そんな自分に腹が立つ

 

 

どうして、傍にいてやらなかったのか

どうして、自分ではなく原田を頼ったのか

 

行かせたくなくて、話を避けて

結果がこれだ

 

ふと、湯呑をなぎ払った手を見た

 

破片で切れたのか、ぽたぽたと指先から血が流れ落ちていた

 

「はっ……こんな傷…」

 

あいつの…さくらの痛みに比べたらどうという事は無い

 

土方は、ぐっと拳を握りしめた

そして、耐える様な苦痛の声で

 

 

「………さくら…」

 

 

ただ、そう呟いたのだった

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

                        ◆          ◆

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

気が付くと、さくらは真っ暗な暗闇に立っていた

 

「ここは……」

 

辺りを見渡せど、見えるのは闇のみ

自分は、一瞬どうしていたのだろうと疑問に思う

 

その時だった

 

 

 

 

  「さくら」

 

 

 

 

不意に名を呼ばれ、さくらはぎくりとした

慌てて振り返ると、そこには風間が立っていた

 

「…………っ、千景…」

 

何故か、本能的に風間を見た瞬間 身体が後退さった

だか、何も無い筈なのに壁の様な物にどんっと辺り、それを阻まれる

 

瞬間、風間の口元に笑みが浮かんだような気がした

そして、ゆっくりと近づいてくる

 

さくらは、慌てて横へ逃げようと駆け出すが―――直ぐに壁にぶち当たった

反対に行こうと身体を反転させるが、やはり見えない壁にぶち当たる

 

どうして……!?

 

壁などない

手をかざせばすり抜ける

 

なにの、行こうとするとそれ以上先に進めない

 

「どうした? 何故、逃げる」

 

風間が徐々に近づいてくる

 

逃げなくては……!!

そう思うのに、逃げ道がない

 

でも、何故そう思うのか…

それすら理解出来ない

 

だが、本能が“逃げろ”と言っている

 

逃げ場をなくして、困惑している内に風間がすぐ目の前まで迫ってきた

ぬっと手が伸びてきたかと思うと、瞬く間にさくらの身体を拘束する

 

「………っ、やめて……!」

 

さくらが抵抗する様に身をよじるが、風間にはさほど効果は無かった

 

顎に手を当てられ、背けた筈の顔は いとも簡単に風間の方に向けさせられ

ゆっくりと風間の顔が近づいてくる

 

「どうした?何故、顔を背ける。こちらを見ろ」

 

「や……っ」

 

尚も抵抗しようとするさくらに業を煮やしたのか、急に顎を持つ手に力が籠められた

ぐいっと上を向かせられると、今にも口付けされそうなぐらい風間の顔が近づいてくる

 

「やめ……て……っ」

 

何とか言葉を発するが、風間はただ口元に笑みを浮かべた

 

「止めろ? く……っ、おかしなことを言う。さくら、お前は“俺の為の人形”なのだぞ? 俺がどうしようと俺の自由であろう?」

 

“人形”

 

その言葉に、さくらは小さく首を振った

 

「そ、んな……っ。私は……っ、人形じゃないわ……っ」

 

一瞬、何処かで同じ様な会話をしたような気がしたが、よく思い出せない

 

「人形ではないと? くっ…おかしなことを言う。 さくら、お前は我が鬼の郷で人形の様に育てられたではないか。 “俺の為の人形“にな……忘れたとは言わせぬぞ?」

 

「それは……っ」

 

さくらは今度こそ言葉に詰まった

 

風間の言う事は正しい

そうだ―――自分は、あの郷で―――………

 

そこまで考えた瞬間、突如 何かが脳裏をよぎった

 

切れ長の、力強く凛とした美しい菫色の瞳

たなびく、長い漆黒の髪

 

それは―――

 

「あ………」

 

振り返り、ゆっくりと手をかざしてくる

そして、優しげな声音で―――

 

 

 

 

 

 

   『――――さくら―…』

 

 

 

 

 

 

「ひ………」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「土方さん………っ!!」

 

そう叫んだ瞬間、はっとさくらは目を覚ました

慌てて飛び起き、辺りを見渡す

 

すっかり夜の帳が降り、真っ暗な部屋

一瞬、まだあの闇の中にいるのかと錯覚しそうになるが、そこは自分が西本願寺で与えられている部屋だと気付く

 

「わ、たし……の、へや………?」

 

見知った場所に、思わず安堵の息を洩らす

 

今のは、夢だったのか……

 

そう思うが、ふと自分は何故こうしているのかと疑問に思った

が、次の瞬間 自分の身に何が起きたのかを思い出した

 

そうだわ……私、薩摩藩邸で千景に………

 

無理矢理掴まれた手首が痛い

首にも風間に触れられた感触が、今でも鮮明に残っている

 

「あ………」

 

さくらは、無意識的にぎゅっと手を握り締めた

そして、震える手でそっと唇に触れる

 

私……あの時 千景に――――

 

何度も交わされた風間の口付けの感触が、嫌なほど唇に残っている

さくらはぎゅっと無意識的に腕を掻き抱いた

そして、そのまま突っ伏す様に顔を布団に埋めた

 

「………初めて……だったのに…………」

 

初めてだった

 

何度か、強引に抱かれそうになった事はあったが

一度として、口付けをしようとした事などなかった

 

あんな風に、無理矢理など―――無かったのだ

 

なのに……

 

「また、怒らせたんだわ……」

 

きっとそうだ

また知らぬ間に、風間の怒りを買ってしまったのだ

 

怒らせたい訳じゃないのに

そんなつもりなどないのに……

 

 

 

 

どうして、いつも―――………

 

 

 

 

暗い

真っ暗だ

 

先が真っ暗で何も見えない――———

 

「……………っ」

 

涙が出そうになるのを、なんとか堪える

 

闇は怖い

嫌な事ばかり思い出す

 

ここにはいたくない

 

 

 

私は、どうすれば――――

 

 

 

 

そう思った時だった、突然何処からか光が見えた様な気がした

何処から見えているのかは分からない

 

ただ、その光はゆらゆらと揺れながら ゆっくりとこちらに近づいて来ている様だった

 

ひ、かり……?

 

その時だった、さくらの耳に今一番聴きたかった声が聴こえてきた

 

「さくら?」

 

え……

 

一瞬、自分に都合の良い幻聴かとも思う

だが、その声は益々鮮明になった

 

「……起きたのか?」

 

そう問われた瞬間、そっと肩に優しげな手が触れられた

 

「……………っ」

 

さくらが、ぴくっと肩を震わせた

確かに、その手はさくらの肩に触れていた

 

間違うはずがない

 

この声も、この手も、ずっと欲しかったあの人の―――

さくらはゆっくりと顔を上げた

 

「ひ…じか、た……さ…ん……」

 

そこには、手燭を持った土方がいたのだった

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

何話ぶりの邂逅ですかね(笑)

多分、かる~く 5話ぶりぐらい???

それぐらい、この二人会話所か、会ってませんよwww

おかしいわ~土方夢なのにねぇ~~~(-_-;)

まま、よくある事よ!←おい

 

そんな訳で、やっと?やっと、あのシーンに突入~~の一歩前ですv

あのシーンととは、ナンゾww

 

しかし、そろそろ本筋に戻りたいわ~

 

2012/06/28