櫻姫抄乱
 ~散りゆく華の如く~

 

 四章 虚実の馨り 21

 

 

「そうだ。八雲の鬼は過去一度として人には手を貸さなかった。かの関ヶ原の折も中立を保った。だが、変わったのだ―――道雪の手によりな」

 

“青天の霹靂”

 

言葉にするなら、人はそう口にするかもしれない

その位、さくらにとっては信じられない事だった

 

変わっ、た……?

お父様の手で………?

 

今まで無干渉を貫いていた八雲家が、道雪の言葉により方針を変えた

 

それは、ある様でない様な

酷く、現実味を帯びていない出来事だった

 

どうして……

 

何故、今更 人と干渉しようと考えを改めたのか

それが、どうして“今“なのか

 

父が八雲家に連れ帰られたのも、母を追いだしたのも、さくら達が住んでいた家を焼き払ったのも

すべて、“人”と干渉を良しとしないからではなかったのか……っ

 

それなのに……

 

今更、方針を変えるなんて……

しかも、幕府の敵になるであろう討幕派に付くなんて……

 

風間の唇が、耳から首へ――

そのまま、いつの間にか露わになったさくらの白い肩へと移動する

 

「今では、道雪の意は八雲の総意。八雲の鬼は、いずれ幕府を――あの男の居る新選組を潰すのだ」

 

「……………」

 

以前のさくらだったならば、何故とは思っても、ここまで悲観的にはならなかったかもしれない

そう―――以前のままならば―――……

 

でも……

 

“今”は、違う

 

今はもう、私は薩摩に属していない

薩摩の者ではない

 

では、何処かと問われれば、それは―――……

 

 

 

 

  “お前の居場所は、新選組ここだろう”

 

 

 

 

 

頭の片隅で、あの人の声が聴こえた気がした

 

あの日、さくらを抱きしめ囁いた言葉

 

 

 『俺がお前の”居場所”になってやる』

 

 

あの言葉が、どれほど嬉しかったか……

 

 『さくら……』

 

どれほど、心強かったか……

 

 

 『ここに、居ろ』

 

 

どれほど――――……

 

瞳を閉じれば、浮んでくる

 

切れ長の、力強く凛とした美しい菫色の瞳

たなびく、長い漆黒の髪

 

トクン…と、静かに音を立てる

 

 

 

 

      土方さん……

 

 

 

 

あの人が、居てもいいと言ってくれたから―――……

だから、私は―――……

 

ぐっと、握る拳に力が入る

 

“ここ”じゃない

 

私の、居場所はもう“千景の隣ここ”じゃない―――

 

「……して」

 

ぴくりと、風間の動きが止まった

ゆっくりと顔を上げ、さくらを見る

 

さくらは、今度は目を逸らさなかった

じっと風間を見据えたまま、その真紅の瞳に力を込める

 

「……離して、千景。私、帰らなきゃ…」

 

一瞬、風間の赤い瞳が驚いた様に見開かれたが――……

次の瞬間、面白い物でも見るかの様に細められた

 

「“帰る“だと?何処に帰るというのだ。お前の帰る場所などここ以外にあるまい。まさか、あの幕府の犬どもの所にでも帰るとでも言うのではあるまいな?」

 

「それは………っ」

 

さくらが言葉に詰まる

言い返したいのに、上手く言葉が見つからない

 

くっと風間が喉の奥で笑った

 

「……お前は、まだ理解出来ておらぬ様だな」

 

そう言った瞬間、突然風間がぐいっとさくらの手首を掴んだ

 

「きゃ……っ」

 

そのまま、さくらが抵抗をするのも許さずに引きずり上げると、壁にだんっと押し付けた

はらりと、乱れた着物がはだける

だが、それに気を取られる余裕は無かった

 

「さくら」

 

そう囁くと、風間は空いているもう片方の手でさくらの顎をぐいっと持ち上げた

 

「……お前は、誰のものだ? 言ってみろ」

 

「………っ」

 

さくらがキッと風間を睨む

だが、風間は気にした様子もなく、平然としたままにやりと口元に笑みを浮かべた

 

「……ふん、言えぬとみえる。 なら、俺が言ってやろう」

 

ぐっと風間の顔が近づく

 

「お前のその髪も、肌も、声も、瞳も…いや、その身全て、そして心も、命も、全て“俺の物・・・”だ。 “俺の為”にお前はここまで生かされてきたのだ。 お前の帰る場所など、俺の元ここ以外にあり得ぬ。……なぜ、他の男の元へ帰さねばならぬ。 理解出来んな」

 

「…………っ」

 

さくらは息を飲むと、声を吐き捨てる様に出した

 

「そ、んな……っ。 私は……っ、人形じゃないわ……っ!」

 

さくらの精一杯のその言葉に、風間が面白そうにくっと喉の奥で笑った

 

「人形ではないと? くっ…おかしなことを言う。 さくら、お前は我が鬼の郷で人形の様に育てられたではないか。 “俺の為の人形“にな……忘れたとは言わせぬぞ?」

 

「それは……っ」

 

さくらは今度こそ言葉に詰まった

 

風間の言う事は正しい

さくらは、あの郷でただ風間の為だけに、“風間家頭領の相応しき妻・・・・・・・・・・・”となる為だけに育てられたのだ

礼節も、教養も、身だしなみも、立ち振る舞いも、全て風間の為だ

風間の――ひいては、風間家の為に身に付けさせられた

そう―――風間の言う事は正しいのだ

 

 

でも―――……っ

 

 

「………っ、わ、たしを……拒絶したのは、千景…貴方よ? なのに…どうして―――……っ」

 

瞬間、風間の眉間の皺がピクリと動いた

そして、今までにない位に鋭い声で

 

「違う」

 

ビクッとさくらが肩を震わせた

その真紅の瞳を大きく見開く

 

氷の様な冷たい赤い瞳がさくらを見ていた

 

「――――最初・・に拒絶したのはお前だ、さくら」

 

「―――え…」

 

一瞬、風間が何を言っているのか分からなかった

 

私が、最初に拒絶した……?

 

だが、そう言われても記憶にない

思えば、天霧も似た様な事を言っていた

 

“そういう事になっていましたね”――――と

 

けれど、どれだけ考えても分からなかった

 

「千景……っ、何を言っているのか……っ」

 

さくらが苦しそうに小さく首を振った時だった

 

「――――だったら、分からせてやろう」

 

「……え…? ちか――――ん……っ!」

 

それは、突然だった

さくらが抵抗する間もなかった

風間は強引にさくらを引き寄せると、そのまま唇を重ねてきたのだ

 

「ん……ぁっ……ちか……っ」

 

な…に……?

 

突然の風間からの口付けに、頭が真っ白になる

自分が、何をされているのかすら理解不能だった

 

さくらが拒む様に身をよじると、風間はぐいっと空いている手でさくらの腰を引き寄せた

そして、そのまま更に深く口付けた

 

口付けが深くなった事により、次第にさくらの中で状況が理解出来る様になってきた

頭が鮮明になり、脳が物凄い速さで動きだす

瞬間、さくらは抵抗する様に更に身をよじった

 

「ちか……っ…ぁ…や、め……ん……はぁ……」

 

だが、抵抗すればするほど、口付けは深くなっていく

どんどん、強く引き寄せられ身動きすら取れなくなっていく

 

風間の手がさくらの頬に掛かり、更に深く深く引き寄せられた

 

「さくら……っ、他の男の名など…ん、呼ぶな……。 俺の…名だけを呼べ……」

 

嫌……

い、や………

 

頭の中で、警報が煩く鳴り響く

手が震える

 

脳裏に過ぎる、菫色の瞳―――

 

 

 

 

       ――――土方さん……っ

 

 

 

さくらはぎゅと目を閉じると、その震える手で渾身の力を籠めて風間を突き飛ばした

 

 

 

 

 

   「いやっ……!!」

 

 

 

 

さくらのまさかの抵抗に、一瞬風間が驚く

その瞬間を、さくらは見逃さなかった

素早くその場から逃げようと、もつれる足で風間の横をすり抜け様とする

が―――

 

 

「さくら……っ!!」

 

 

「――――あっ」

 

それは、瞬く間に後ろから伸びてきた風間の手に阻まれた

そして、そのまま引き寄せられると、後ろ手に絡め捕られた

 

「放して……っ! はなし――――あ…っ」

 

瞬く間に、引き寄せられた身体は言う事をきかず

後ろから伸びてきた風間の手がさくらの顎を引き上げるのは同時だった

 

「口を開けろ」

 

「や……っ、あ……! んんっ……ぁ…っ……」

 

強引に口を開けさせられ、再び口付けられると、今度はそのままぐいっと更に顎を引き寄せられた

 

「んっ……あぁ……っぁ……」

 

「さくら……」

 

風間に名を呼ばれると、麻酔の様に頭が麻痺してくる

それに身を任せたら、どれ程楽か―――

 

でも、出来なかった

“今”のさくらには出来なかった

 

無駄だと分かっていても、がむしゃらに暴れた

 

 

 

 

 

 

 

「やっ……! いやぁ……っ!! 土方さんっ! 土方さん……っ! ひじか――――ん……っ!」

 

 

 

 

 

 

必死に土方の名を呼んだ

それは、無意識にも近かった

でも、土方はここには居ない 居ないのだ

 

応えてくれないと分かっているのに、それが風間の行使を更に増徴させると分かっているのに、呼ばずにはいられなかった

 

だが、最後の言葉は音になってはくれなかった

三度塞がれた唇は、もう感覚も麻痺しかかっていて何をされているのかすら理解出来なかった

 

「他の男の名など……呼ぶな……っ」

 

風間の絞り出した様な声が、反響する様に木霊する

 

三度目は、今までのそれとは違っていた

腰を強く引き寄せられ、頭を押さえつけられ、身動きすら取れない

そして、口付けは徐々に激しくなり、角度を変え何度も何度も降り注いできた

貪る様な風間の行為は、更に激しさを増していった

 

「……ぁ……っ、は…ん……ち、か……やっ……め………っ」

 

「逃がすと……ん、思う…か。 お前は…俺の物だと…言ったで、あろう……?」

 

にやりと不敵に笑う風間の顔が涙で霞む

 

どうして――――……

どうして どうして と、そればかりが頭を支配する

 

拒みたいのに拒めない

抵抗したいのに、抵抗出来ない

何かにからめ捕られた様に身体が動かなかった

 

徐々に、思考も感覚も麻痺していき、何も考えられなくなる

抵抗する力すら吸い取られる様な激しい口付けは、さくらの思考を益々鈍らせていった

 

そのまま、どんっと壁に押し付けられると、頭を更に引き寄せられた

口付けが一層深くなり、このまま逃れられないのではないだろうかと錯覚すら覚え始める

 

「さくら………、さくら………っ」

 

風間が名を呼ぶたびに、思考が麻薬の様に麻痺していく

 

だが、何故だろう……

その声音が悲しげに聴こえるのは……

 

 

「俺の…さくら………っ」

 

 

ツゥーと、さくらの瞳から一滴の涙が零れ落ちた

 

それが合図とでもいう様に、さくらが不意にがくりと膝を折った

立っていられないのだ

そして、そのまま風間に寄り掛かる様に倒れ込んだ

 

風間はそれをそっと抱き寄せると、慈しむ様にさくらの瞳から零れ落ちた涙をぬぐった

そして、愛撫する様に彼女の髪を優しく撫でる

 

「ふ……そうだ、それでいい」

 

「……………」

 

さくらは何も答えなかった

というより、答える程の意識がなかった

 

視界はおぼろげで、思考も上手くまとまらない

自分が今、起きているのか、気を失っているのかすらも理解出来ない

 

「さくら……」

 

一等優しく響いた風間の声音と同時に、風間の唇がさくらのそれに重なったが……

――――さくらは、それを受け入れるしか出来なかった

 

 

その時だった

 

 

 

 「さくらっ!!!」

 

 

 

突然の叫び声と共に、茶室に走り込んできた影があった

 

風間はうんざりした様に息を洩らすと、その者達を軽蔑の眼差しで見やった

そこには、血相を変えて息を切らした原田と千姫がいた

 

風間の腕の中でぐったりとしているさくらを見て、原田の表情がみるみる変わっていく

 

「お前……っ!さくらに何をしたっ!? 風間ぁ!!」

 

「何をしただと……? 笑わせる。貴様らこそ何をしに来た。 俺の邪魔をしないでもうらろうか」

 

そう言って くっと喉の奥で笑うと、風間はゆっくりとさくらの頬を撫でた

そして、そのままゆっくりと口付けた

 

原田が大きく目を見開く

千姫が、「あっ…」と口を押えた

 

風間が、澄ました表情の向こうで勝ち誇った様に笑っているのが見える

 

 

「か、ざま……っ」

 

瞬間、原田の纏う気が変わった

手がわなわなと震えだし、瞳が怒りの色へと変貌する

 

「原田さん…っ! だめ………っ」

 

 

 

 

 

 

 

 「ぶっ殺してやる――――………っ!!!!!!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

千姫がはっとして声を張り上げるのと、原田が腰の刀を抜ききって風間に斬りかかるのは同時だった

 

風間は余裕の笑みを浮かべたまま、さくらを抱えひらりとそれをかす

原田が鬼の様な形相で風間を睨みつけると、再び斬りかかろうとした

 

「だめ……っ!駄目ですってば……っ!!原田さん、落ち着いてっ!!」

 

千姫が、慌てて原田の腕にしがみ付いて必死に止めようとする

 

だが、所詮女の力

 

力では、原田には敵わない

それでも、必死でしがみ付いた

 

「放してくれっ!! これが、落ち着いていられる訳ないだろう!!? あいつが……っ! 風間の奴が、さくらに……っ!!!!」

 

「ふん、俺の物を俺がどうしようと勝手であろう」

 

風間が当然の様にそう言い切る

それが原田の怒りに拍車を掛けた

 

 

 

「何言ってやがる……っ! さくらはお前の物じゃねぇ!!!」

 

 

 

「原田さん……っ!!」

 

今にも斬りかかりそうな原田を、千姫は必死になって抑えた

 

「気持ちは分かりますけど……っ! ここは、薩摩藩邸なんです!! 薩摩の重臣が沢山いるこの場所で斬り合いなんかしたら、困るのは原田さんなんですよ!?」

 

原田は新選組の幹部だ

その幹部が、薩摩の藩邸内で騒ぎを起こせば、薩摩はここぞとばかりに新選組の上にいる会津藩の監督不行き届きを訴えるだろう

薩摩に、付け入る隙を与えてしまうのだ

 

それが分からない原田ではない

原田はギリッと歯を軋ませながら、風間を睨みつけた

 

その様子を見てほっとした千姫は、今度は風間にその視線を向けた

 

「風間! あんたも、変に煽る様な事言わないでよね!! 問題が起きて困るのは、あんたも一緒でしょ!?」

 

千姫のその言葉に、風間が興味なさ気に息を吐いた

 

「ふん、俺は騒ぎになっても構わんが?」

 

「口では何とでも言えるわね。 あんたが、薩摩でどういう立場かぐらい私だって知ってるんだから! それから、あんた最低ね! さくらちゃんを、自分の所有物みたいな言い方しないで!! 彼女は、あんたの物じゃないのよ!! というか、その手を離しなさい!!」

 

風間は、今度は呆れたにも似た溜息を洩らした

 

「離せと言われて、離すと思っているのか?」

 

風間のその言葉に、千姫がむっとする

 

そのまま原田から離れると、ずんずんと風間に大股で近づいた

 

そして、むんずとさくらを抱いている風間の腕を掴んだ

 

「いいから…は・な・し・な・さ・い・よっ!!!」

 

そのまま、ぐぐぐぐぐと力の限り風間の腕を引っ張る

 

千姫のその諸行に、風間がうんざりした様な表情になる

そして、息を吐くと 観念したのか

さくらを抱えていた、手を緩めた

 

瞬間、支えを失ったさくらの身体がぐらりと傾く

 

「さくらちゃ―――」

 

千姫が慌てて手を伸ばそうとした時だった

 

 

「さくら……っ!!」

 

 

それよりも早く、原田がさくらの身体を奪う様に抱きかかえた

原田のあまりの素早さに 一瞬、呆気に取られた千姫だったが……

何かに気付いたかの様に、一度瞳を瞬かせた後、息を吐いた

 

「さくら……?」

 

原田がさくらにそっと触れると、微かに彼女の真紅の瞳が瞬いた

その様子に安堵したのか、原田は抱き締めると、そのまま横抱きに抱え上げた

 

「こんな胸糞悪い所に長居する必要はねぇよ。さっさと帰ろうぜ」

 

原田の言葉に、千姫がこくりと頷く

 

「そうね、早くしましょ。 こんな場所、ちょっとでも居たくないわ」

 

千姫が鼻息荒くそう言うと、そのまま原田の後に続いた

 

その様子を見ていた風間が、小さく息を吐いた

 

「ふん、逃げるのか? 原田とやら。命拾いしたものだな」

 

瞬間、ぴたりと原田の動きが止まった

一瞬、間があった後

ゆっくりと視線だけを風間に向け

 

「……逃げるとかそんなんじゃねぇよ。 さくらを優先してるだけだ。 ……第一、命拾いしたのはお前の方だぜ、風間。ここがお前らの藩邸じゃなかったら、叩き斬ってやってる所だ」

 

それだけ言い捨てると、振り返る事無くそのまま茶室を出て行った

千姫が少し困った様に顔を捻った後、そのまま原田の後に続いた

 

「……………」

 

風間は、原田に対してそれ以上は何も言わなかった

ただ、小さな声で一言

 

 

「―――さくら」

 

ピクリと、微かにさくらが反応する

ゆくりと、原田の腕の間から見える風間の姿をその真紅の瞳に捉えた

 

にやりと風間の口元が笑みを浮かべる

 

 

 

「覚えておけ。 ―――何処にいようとお前は俺の物だ」

 

 

そう呟くと、そのまま踵を返して行ってしまった

さくらは、ただただその姿をじっと見続けていた―――……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

                        ◆          ◆

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

土方は、文机に向かて書類をしたためていた

 

日も傾き、窓の隙間から月の光が零れ落ちていた

ジジジ…と、燭台の火が音を立てる

 

昼前から進めていた仕事がやっとひと区切りが付きそうになり、土方は小さく息を吐いた

筆を置き、ぐっと目を抑える

 

ずっと書類整理をしていた為、流石に目に疲労が溜まったらしい

だが、あともう少し仕事が残っている

一気にこれを片付けてしまった方が、後々楽だ

そう思い、仕事を再開しようとした時だった

 

「土方さん、ちょっといいか」

 

不意に、障子戸の向こうから原田の声が聴こえてきた

 

「原田か…、何の用だ?」

 

確か、原田は今日の昼の巡察の当番だった

もしや、何か問題でもあったのだろうか?

 

そう思い、持ちかけた筆を置いた

すると、スッと障子戸が開き、原田が室に入って来た

そして、一度だけ辺りの様子を窺った後にそのまま障子戸を閉める

 

「…………?」

 

珍しい行動だと思った

普通の報告や、雑談ならば、辺りを窺う必要も、用心深く戸を閉める必要も無い

 

何か、人に聞かれたくない話なのか、それとももっと重要な案件なのか―――……

 

とにかく、原田の話が“真面目な話”だと悟り、土方は片手を文机に置いたまま、原田の方に向きなおした

 

「どうした?問題でもあったのか?」

 

土方がそう尋ねると、原田が一瞬躊躇った様な表情を見せた

言い辛そうに、「あー」と声を洩らし、視線を泳がせる

 

それから少し考え込んだ後、真っ直ぐに土方の方を見た

 

「……さくらの事で、ちょっと話があるんだ」

 

「さくら? あいつが、どうした」

 

何か問題でも起こしたのだろうか?

いや、さくらに限ってそれはないだろう

 

では、何だ?

 

土方が訝しげに首を傾げると、原田はふーと小さく溜息を付いた

 

「本当は、さくらには言わないでくれって頼まれてたんだけどな。でも、あんたには伝えた方がいいと思ったんだ」

 

「………? だから、何の話だ?」

 

いまいち、原田の言いたい事がよく分からない

一体、彼は何を伝えたいのか…

 

「言っておくが、これはあくまでも俺の自己判断だし、俺の責任でもある。 俺も納得した上での行動だから、あいつを責めるのだけはやめてくれ。 頼む」

 

そう言って、原田は頭を下げた

 

原田のまさかの行動に、土方もぎょっとした

普段の原田なら、もっと軽く言うか、男らしくきっぱり言い切るかどちらかだ

間違っても、こんな風に真面目な顔で頼みごとをして、頭を下げるなんて滅多にしない

 

どうやら、これは相当真面目な話の様だ

それも、原田が頭を下げる程の―――

 

土方は小さく息を吐くと、一度だけその菫色の瞳を瞬かせた

 

「ああ、分かった。 何を聞いてもあいつを責めたりしねぇよ」

 

土方のその言葉にほっとしたのか、原田がパッと顔を上げた

そして、安堵した様に顔の表情を和らげる

 

「そうか……やっぱり、あんたはすげぇよ」

 

まるで土方の言葉に感服したとでもいう様に、そう呟いた

 

土方は何も聞いていないのに、原田の言葉を聞いて“約束”をしてくれたのだ

それが、ひどく心に感じた

 

この人なら、大丈夫だ

そう思える

 

原田はゆっくりと目線を土方に向けると―――

 

 

 

「今日、風間に会って来たんだ」

 

 

 

たとえ、これをきっかけに土方とさくらの距離が今よりも近くなったとしても

そのせいで、自分が不利になったとしても―――

 

 

 

      ――――言うべきだと思ったんだ

 

 

 

               あいつの……さくらの為に――――――…………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ぎゃぁ~~~~~~!!

ちーがっ!!ちーがぁぁぁぁぁぁぁっΣ( ̄ロ ̄lll)!!!!!

し、仕方なかったんや………

仕方なかったんやぁぁぁぁぁ!つД`)・゚・。・゚゚・*:.。

だって、某友人に聞いたら、「襲われるよりも、キスの方がマシ」

って言われたんだも~~~ん(T^T)

だから、こっちにしたんだけど……だめ…だったか……?

 

とりあえず、すこ~~~しですが…4話?5話?ぶりの土方さんが登場!

良かった…ちゃんと、出てきてくれて……っ!

もう、マジ入らなかたらどうしようかと思ったっ!( ;・∀・)

って言っても…夢主との絡みは次回までおあずけ

スミマセン…

でも、次回がっつり絡みま~すv

期待?してて下さい

 

そしてそしてーついに…っ!?

な、展開もある?かも?しれない(笑)←どっちだよww

いや、あるが…あるのよ?あるの!あるけど、入るかなぁ~と

もう、ちーは当分休んでればいいよ!

 

次回は、土方さんと左之の優しさが身に染みる回

……の、予定ww

 

2012/02/11