櫻姫抄乱
 ~散りゆく華の如く~

 

 三章 散る花 9 

 

 

屯所を移転してから間もなくして――――

藤堂が江戸から帰って来た

 

千鶴は今日は、藤堂の八番組の巡察に同行していた

 

ごった返す人の波を、藤堂と一緒に抜けていく

千鶴の目に映る京の大通りは、今日も普段通りに賑わいを見せていた

 

「そういえば、久し振りだね。平助君と巡察に出るの」

 

「ん?ああ、そっかもなー。オレ、長い事江戸に行ってたし。オレが留守中、新八っつぁんや左之さんにいじめられたりとかしなかったかー?」

 

「されてないから、大丈夫だよ」

 

彼の口調に釣られて、千鶴は思わず頬を緩めた

 

「巡察の時も気に掛けてくれたし…父様の手掛かりはまだ見つかってないけど…」

 

落ち込む千鶴を見て、藤堂はバシバシと千鶴の背を叩いた

 

「ま、元気出せって!その内、ひょっこり会えるかもしれねぇし」

 

「う、うん」

 

思いっきり、叩かれて思わず咽る

ふと、藤堂が辺りを見回して、神妙な顔になった

 

「?平助君?どうしたの?」

 

「……しばらく見ない内に、町も、人も結構変わった気がする……」

 

「平助君……?」

 

彼の表情には、さっき千鶴を励ましてくれた時の笑顔はない

どこか藤堂らしからぬ、懐かしそうな、寂しそうな表情に千鶴は首を傾げた

 

「……ん?いや、別に!」

 

千鶴の表情に気付いたのか、藤堂はニッと笑って「なんでもない」と言った

そして何かに気付いたらしく、通りの向こうへ手を振った

 

「お、総司ー!」

 

ふと、そちらの方を見ると、沖田が一番組の隊士を連れて歩いていた

千鶴もそれに気付き、ぺこっと頭を下げた

 

「そっちは、どうだった?」

 

「……ん?別になにも。普段通りだったよ?」

 

沖田も別の順路で巡察だったらしい

挨拶する千鶴に返礼の視線を向けてから、面白い事を期待する子供みたいに、沖田はくすりと微笑んだ

 

「でも、将軍上洛の時には、忙しくなるんじゃないかな?」

 

「上洛って……将軍様が京を訪れるんですか?」

 

「そう。だから近藤さんも張り切ってるよ」

 

将軍が訪れれば、京の警護をする新選組は、自然と目に留まる事になるだろう

近藤が張り切る姿が容易に想像出来て、千鶴は頬を緩ませた

 

「あー、うん、近藤さんはそうだろうな……」

 

………?

 

だが藤堂は、気の無い相づちを打ったきり沈黙する

 

……なんだか今日の藤堂は、不思議と彼らしからぬ反応をする

千鶴は、それに違和感を感じ首を傾げた

 

困惑した千鶴は、助けを求める様な心地で沖田に視線を向けたのだけれど……

 

「……げほっ……ごほっ」

 

「沖田さん……!?」

 

彼は苦しげに顔を顰め、小さな咳を繰り返していた

 

「沖田さん……っ?大丈夫ですか?」

 

千鶴が思わず駆け寄る

 

沖田はこちらに目を向けたが、彼の視線はそのまま千鶴を飛び越して―――

何を見出したのか、不意にその眼光が鋭くなる

 

―――と、その目が俄かに細められ、急に横へと投げられた

 

「おい小娘!断るとはどういう了見だ!?」

 

「止めて下さい、離してっ!」

 

「民草の為に日々攘夷を論ずる我ら志士に、酌のひとつやふたつ、むしろ自分からするのが当然であろうが!」

 

何があったのか分からないが、撫子色の着物を着た少女1人が、浪士達3,4人に絡まれている

……どう見ても、楽しそうな雰囲気じゃない

 

「助けなきゃ……!」

 

思わず呟いた千鶴に、藤堂の声が応える

 

「分かってるって!千鶴、お前はここで待―――」

 

―――千鶴達が、言葉を交わしている時だった

 

「その手を離してあげて下さい。みっともないですよ?仮にも攘夷を論ずる浪士として、そんな嫌がる女の子を無理強いしようだなんて…恥かしくないのですか?」

 

人垣から1人の少女が歩み出て、浪士達に言葉を発した

 

桜色の着物に、長い漆黒の髪―――そして、忘れられない真紅の瞳

あれは―――

 

「さくらちゃん……?」

 

千鶴は信じられないものを見る様に、震える声でその名を呼んだ

 

あの日、あの晩

姿が掻き消えて、ずっと探していた彼女が今、そこに居る

 

良かった…無事だったんだ……

感極まって、涙しそうになるのを堪える

 

その時だった

 

「このアマァ!なにしやがる!」

 

怒声が聞こえたかと思うと、浪士の1人がドンッとさくらを突き飛ばした

 

「危な……っ!」

 

思わず駆け寄ろうとした瞬間、浅葱色の風が彼等の間に分け入っていく

 

「やれやれ。攘夷って言葉も、君達に使われるんじゃ可哀想だよね」

 

関わるまいとする人の波に逆らって、1人沖田は浪士達の前に立っていた

 

「大丈夫? さくらちゃん。よく頑張ったねー偉い偉い」

 

「え……?」

 

「浅葱色の羽織……新選組か!?」

 

そこには、沖田がにっこりと微笑み立っていた

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

さくらは、いまいち自体が掴めずに居た

信じられない気持ちで、自分を支えてくれた男―――沖田総司を見る

 

沖田は目が合うと、にっこりと笑った

 

な、なんで沖田さんが……?

 

状況が理解出来ず、その大きな真紅の瞳を瞬きさせる

 

「あ、あの……!」

 

「んー?何?」

 

「どうして、沖田さんが……」

 

さくらがそう問うと、沖田は一瞬驚いた様に目を見開き、次の瞬間吹き出した

 

「ぶはっ!はははは!面白い事言うね~」

 

「そ、そうですか?」

 

笑われた意味が分からず、さくらが困惑する

沖田は、目に浮かんだ涙を拭きながら

 

「巡察のついでだよ、巡察の」

 

「あ……」

 

ああ…そうか、幹部は巡察するんだったわね……

ひとしきり笑うと、沖田はトントンとさくらの肩を叩いた

 

「1人で立てるよね?そろそろどいて欲しいんだけど?」

 

「え……?あっ!す、すみません」

 

未だに沖田に支えられていた事にハッと気付く

慌てて、自分の足で立とうとしたその時だった

 

「………っ」

 

ズキッと右足首に痛みが走る

さくらは思わず、顔を顰めた

 

もしかして…さっき、突き飛ばされた時に足を捻った……?

 

「どうかしたの?」

 

沖田が不思議そうに声を掛けてきた

さくらはハッとして、慌てて沖田から離れた

 

「な、なんでも……ありません!」

 

ズキズキ痛む、足を庇いつつ平静を装う

 

「ふぅん?」

 

沖田がじっとさくらを見た

 

き、気付かれてない…わよね?

まじまじと見られる気恥ずかしさと、居た堪れなさて、思わず視線を逸らした

 

「何で、目逸らすの?」

 

「え、えっと…それは……」

 

どうして、今日はこんなに絡んでくるの……!?

 

いつもの、沖田ならここまで絡んで来ないと思っていたのだが……

どうやら、今日は違うらしい

 

その間も、右足がズキズキと痛む

立っているのも正直、辛い

 

早く、ここから去りたいのに……

 

そう思っている、時だった

 

「さくらちゃん!!」

 

いきなり、呼ばれガバッと抱きつかれた

 

「……え?ち、千鶴?」

 

それは千鶴だった

千鶴は半泣きになりながら、さくらに抱きついてきた

 

「もう!さくらちゃんの馬鹿馬鹿馬鹿!今までどうしてたのー!?」

 

「……え、あ、ご、ごめんね?」

 

どう言って良いのか分からず、思わず謝る

それでも、千鶴はぎゅとさくらを抱きしめた

 

さくらが観念した様に、溜息を付く

そして、ポンポンと千鶴の背を叩いた

 

「千鶴、ごめんね」

 

「……本当に、そう思ってる?」

 

千鶴が少し、むぅ…と頬を膨らませながら、じっとさくらの顔を覗きこんだ

さくらはクスッと笑って

 

「ふふ、思ってるわよ」

 

その時だった

 

「おお~い!千鶴!!お前が行ったら危な……うぉ!? さくらじゃん!?」

 

向こうの方から藤堂が翔って来たが、さくらを見て驚いた様な声を上げた

 

「うっわ~久し振りじゃん!元気してたか?」

 

「ええ、平助も元気そうで何よりだわ」

 

にこっと微笑みそう言うさくらに、藤堂が照れた様に少し赤くなって頭をかく

 

「あのさぁ~感動のご対面はいいんだけど、状況分かってる?」

 

不意に、沖田が呆れた様な声を上げた

 

「あ……」

 

藤堂が間抜けな声を上げた

千鶴とさくらも、思い出した様にそちらを見る

彼等の目の前では、怒りで顔を真っ赤にした浪士がぷるぷると震えていた

 

「貴様らぁ~俺達を無視してんじゃねぇ!!」

 

「あちゃぁ~めちゃくちゃ怒ってるじゃん」

 

藤堂がさほど気にした様子もなく、そうぼやいた

 

「全く、君達には”緊張感”って言葉ないのかな?」

 

「「すみません」」

 

沖田の言葉に、さくらと千鶴が小さくなって謝った

 

その様子に益々怒りだした浪士が刀に手をやった

それを見て、沖田がにやっと笑う

 

「ふ~ん?抜いちゃうんだ?ま、僕はいいけど?」

 

そう言って唇に三日月を刻むと、沖田はゆっくりと刀の柄に手を伸ばす

……こういう時の沖田は、笑顔だから逆に恐ろしい

 

冷や水を浴びせられた様な顔をしながらも、浪士の1人が悔しげな声で悪態を吐く

 

「くそっ、幕府の犬が……!」

 

「……。いいからとっとと失せろっての!」

 

同じ、浅葱色の隊服を着込んだ藤堂が歩み出る

流石に不利を悟ったのか、浪士の1人が舌打ちをして「行こうぜ!」と吐き捨てながらその場から立ち去る

 

「お前は、どうする?」

 

沖田が残った浪士を見やる

すると、浪士達は今度こそ色を失い、「覚えてろ!」と言い捨てると、尻尾を巻いて足早に逃げて行った

 

「あれ?捕まえなくていいんですか?」

 

千鶴が疑問に思いそう口にすると、沖田はクスッと笑って

 

「どんな罪で?君は意外と過激だなぁ」

 

「……………」

 

確かに、彼らは未遂だった

今は止める必要があったにせよ、何かの罪を犯した訳じゃない

 

「私……、過激なのかなぁ……?」

 

「何しょげてるんだよ、千鶴?……それより、ほら」

 

藤堂が指差すと、先ほど絡まれていた少女がにっこりと微笑んだ

 

「助けて頂いてありがとうございます。私、南雲薫と申します」

 

そう言って、沖田に向かってぺこりと頭を下げた

所作ひとつ取っても洗練されていて、いかにも女の子らしい仕草だった

 

「……南雲?」

 

その名を聞いて、さくらが俄かに眉を寄せた

南雲って…確か、土佐の……

 

先ほどの千姫との会話を思い出す

 

『後ね、どうも彼女だけじゃないみたいよ?生き残り。詳細は不明だけどお兄さんが居たみたい』

『兄?』

『確か…土佐の南雲家に引き取られたんじゃないかな?』

 

「……………」

 

「さくらちゃん?どうかした?」

 

千鶴が不思議そうに、さくらの顔を覗きこんだ

さくらはハッとして、取り繕う様に微笑んだ

 

「平気よ、何でもないわ」

 

「そう?」

 

それで納得したのか、千鶴は首を傾げて引いてくれた

 

「それにしても、綺麗な子だね」

 

千鶴が薫を見て、そう呟く

そして、自分の姿を見て

 

「……私が男装してなくても、あそこまで優雅には振舞えないんだろうなぁ…」

 

ちょっと、しょんぼりした様に呟く千鶴がおかしくて、さくらはクスッと笑った

 

「そんな事無いわよ、千鶴も綺麗になると思うわ」

 

「そ、そうかな?」

 

さくらの微笑みに、千鶴が少し頬を赤く染めながら答える

それから、ちらっとさくらを見て

 

「……さくらちゃんも綺麗だよね…仕草とか、振る舞いとか、気品があるっていうか。なんか、どっかのお姫様みたい。羨ましい」

 

心底羨ましそうに、千鶴はほわ~と顔を赤らめながらそう言った

 

「そう、かしら?」

 

さくらには少し実感が湧かないのか、頬に手をあてながら首を傾げた

 

「そうだよ!だって、私、女の子相手に赤くなったの初めてだもん!」

 

千鶴が力説する

 

「まさか、実はどこかの藩のお姫様…とか言わないよね?」

 

千鶴が、不安そうにそう訊ねる

その様子がおかしくて、やっぱりさくらは笑ってしまった

 

「ふふ、残念ながら違うわよ」

 

そんな会話をしている時だった

不意に、沖田が千鶴の腕を横から掴まえて引っ張った

 

「わっ……!お、沖田さん!?」

 

「いいから。この子の隣に立って」

 

「え……?」

 

薫と名乗った少女と千鶴を並ばせると、沖田は2人へと交互に視線を向けた

 

「あ、あの……、沖田さん?」

 

千鶴が少しオロオロしながら、薫を見る

薫は、さして気にした様子もなく、千鶴に微笑んだ

 

それはとても艶やかな微笑だったが、千鶴は何故か違和感を感じた

 

「やっぱり……よく似てるね、2人とも」

 

独り言の様に呟かれたその言葉に、千鶴はようやく違和感の正体に気付いた

 

「似て…る……?」

 

さくらがぽつりと呟く

いや、似すぎている

 

鏡の様に―――とはよく言うが、まるで千鶴がもう1人居て、彼女の意志とは関係なく勝手に動いている様な

 

『後ね、どうも彼女だけじゃないみたいよ?生き残り。詳細は不明だけどお兄さんが居たみたい』

 

再び、脳裏に千姫の言葉が過ぎる

 

『確か…土佐の南雲家に引き取られたんじゃないかな?』

 

南雲、似ている2人

 

「……………」

 

これは偶然?

 

でも、千姫は確かに”兄”と言った

ちらっと、薫を見る

 

この子はどう見ても、女の子だ

男には見えない

 

どういうこと……?

 

さくらが思案していると、藤堂の声が響いた

 

「そっかぁ?オレは全然似てないと思うけどなぁ」

 

「いや、似てるよ。きっと、この子が女装したら、そっくりになると思うなぁ」

 

薫は、じっと千鶴を見つめている

まるで沖田達の会話など、耳に入っていないかの様だ

 

「あ、あの……」

 

何か言わなきゃ―――

千鶴はそう思うのに、なんの言葉も見つからない

 

そんな千鶴の心境を知ってか知らずか、彼女はゆっくりと沖田に歩み寄り

 

「もっときちんとお礼をしたいのですけれど、今は所用がありまして。……ご無礼ご容赦下さいね」

 

薫は沖田へ一礼し、着物の裾を翻す

 

「このご恩はまたいずれ。……新選組の沖田総司さん」

 

どこか不思議な雰囲気の少女の背が、雑踏に紛れて見えなくなる

彼女が消えると同時に、意地の悪い顔をした藤堂が沖田を肘で突っついた

 

「おいおい、ありゃぁ総司に気でもあるんじゃねーの?」

 

「今のがそう見えるんじゃ、平助、君は一生、左之さんとかには勝てないよ」

 

「ど、どういう意味だよ!?」

 

藤堂が抗議すると、沖田はそ知らぬ顔で

 

「ま、平助は置いといて……ちょっといいかな?」

 

「は……?」

 

沖田がさくらに歩み寄る

そして、不意にしゃがむとさくらの右足首を掴んだ

 

「痛っ……!」

 

ビリッと掴まれた右足首に痛みが走った

 

「ちょ、ちょっと沖田さん!?」

 

千鶴が顔を真っ赤にして、2人に駆け寄る

 

「なにしてるんですか!?よりにも寄ってこんな場所で、そんな所を……!」

 

「やっぱり、痛めてるね」

 

「え?」

 

沖田は肩を竦めながら

 

「千鶴ちゃん?言っとくけど、これは善意だから。決して、痴漢行為とかじゃないよ?」

 

「ち、ちか……っ!?」

 

千鶴が真っ赤になりながら口をパクパクさせる

 

沖田はスッと、さくらを見て

 

「これ、いつやったの?」

 

「な、何の事ですか?」

 

さくらは顔を強張らせながら、そ知らぬ振りをする

それを見た沖田が「ふーん」と呟き、再びギュッと右足首を掴んだ

 

「いっ……!」

 

今度は先程よりも、鋭い痛みが走る

立っていられなくなり、思わずよろけた

 

「おっと、危ない」

 

沖田が平然として、それを支える

 

「ほら、こんだけ痛いのに、”知らない”で通ると思う?」

 

「……………」

 

さくらはキッと沖田を睨んだ

すると、沖田は一瞬目を見開くと、次の瞬間ケタケタと笑い出した

 

「そんなにすごんでも、全然怖くないから」

 

「さくらちゃん、もしかしてどこか怪我してるの?」

 

千鶴が心配そうに、訊ねてきた

 

「そ、それは……」

 

千鶴の顔に、居た堪れなくなりさくらは口ごもる

 

「ほらほら、白状しちゃいなよ」

 

沖田がクスクス笑いながら言う

さくらは一瞬ムッとしたが、千鶴を見て観念した様に、小さく息を吐いた

 

「……多分、さっき突き飛ばされた時に……」

 

「ふ~ん、やっぱりその時か」

 

沖田が見下ろす様にさくらを見た

 

「だ、大丈夫なの!?」

 

千鶴が慌てて駆け寄ってくる

心配かけまいと、さくらは笑みを浮かべ

 

「へ、平気よ。少し捻っただけだと思うし……帰って冷やせば」

 

不意に、ギュッとまた沖田に右足首を掴まれた

 

「痛っ……!」

 

痛みで思わずよろける

 

何度、この男は同じ事をすれば気が済むのか

痛みで半分涙目になりながら、さくらは沖田をキッと睨んだ

 

「や、止めて下さい!痛いじゃないですか!」

 

「ほら、やっぱり痛いんじゃない。見れば、立ってるのもやっとみたいだけど?それで、どうやって帰るの?」

 

沖田は悪びれた様子もなく、にやりと笑ってそう言った

 

「そ、それは……どこかで少し休めば……」

 

「休めば歩ける様になるの?これ、結構酷いと思うけど?」

 

「………っ」

 

言われてグッと言葉に詰る

ジンジンと掴まれた所が痛い

 

「はーい、患者さん一名ご案内~」

 

そう言って、沖田はひょいとさくらを担ぎ上げた

 

「ちょ、ちょっと!」

 

そのまま、肩に担がれる

 

「お、降ろして下さい!!」

 

横抱きとか、肩を貸すではなく、正真正銘肩に俵担ぎされた

 

「お、降ろして!降ろして下さい!!沖田さん!?」

 

沖田の背を思いっきり叩くが、当の沖田は平然としていて

 

「全然、痛くないから」

 

そう言って、そのまま歩き出す

 

「「……………」」

 

千鶴と藤堂はポカーンと口を開けて、その様子を見ていた

 

「ハッ!」

 

不意に、千鶴が覚醒する

 

「ちょ、ちょっと沖田さん!女の子にその担ぎ方はどうかと!!」

 

さくらを担いだまま歩く沖田を、千鶴は慌てて追いかけた

 

「って、千鶴!突っ込む所そこじゃないから!」

 

藤堂もハッとして、慌てて皆を追いかけた

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

どうやら、足を捻っていた様子です

 

って、俵担ぎって・・・総司(-_-;)

いやー当初はお姫様抱っこの予定だったんですけどー

それは、ね、今やったら後で困るから止めたの

やっぱり、姫抱っこは土方さんに・・・もごもご

 

って、土方さん出なかったなー

 

2010/07/12