CRYSTAL GATE
-The Goddess of Light-
◆ 第一夜 創世の魔法使い 10
「うわああああああああああ!!!!」
ごんごろごろごろごろ!!
と、物凄い勢いで巨大は岩がアリババ達めがけて転がって来た
アリババ達は必死になって走った
上手く脇道があれば避けられるのだが…
生憎と、その様な物はなかった
たたの細い一本道
もう、只管走って逃げるしかなかった
「エリス!!!」
「何―?」
アリババ達の横を一緒に走るエリスティアは、何故か汗1つかいておらず、平然と走っている
その様子に、慌てた感じも全くない
「なんでそんなに落ち着いてんだよぉ!!」
まったくもってその通りであり
だが、当のエリスティア本人は平然としたまま
「えーだって、結構安易なトラップだもの、慌てる程じゃないと思うけれど?」
と、しごく当然の様に言い放つが
「そういう問題じゃねぇ!!!」
確かに、何度も迷宮攻略をしているエリスティアにとっては、安易なトラップなのかもしれない
アリババやアラジンにとっては、とて安易なトラップでは無かった
というか、人生でこんな巨大な岩に襲われた事など一度も無い
「楽しいねぇ~~」
と、アラジンが ぜーぜー息をしながら笑って言いだす
「また、そりゃぁ楽しい……じゃなくて!!」
思わずちょっと楽しいかな?などと思っていた矢先の言葉に頷きそうになるが、アリババはすかさず突っ込んだ
「俺達、今、絶体絶命なの!!ピンチなの!!あの岩に潰されたらぶちっとなってひらひら~となっちゃうの!!」
と、何かを力説していが……
それを聴いていたエリスティアは、くすくすと笑い出した
「なんだ、アリババくんも結構余裕あるじゃない」
「いや、余裕マジないから!!」
などと繰り返している内に、巨大な岩はどんどん迫って来ていた
やばいやばい……!!
このままじゃ、俺達本当にあの岩に潰されちまう…!!
そこまで考えて、アリババはハッとした
「そうだ、エリス!さっきの風のやつ使ってくれよ!!そしたら逃げきれるじゃねえか!!」
名案だ!とアリババが言いだしたが、言われた当の本人は、一度だけアクアマリンの瞳を瞬かせた後
「それはいいけれど…またアリババくんはコントロールできなくて、その辺の岩肌にぶつかった挙句に、あの岩が襲ってきてぶちっと……」
「やっぱやめとこう」
恐ろしい例えをもち出され、アリババが即答したのは言うまでもない
「じゃあどうすんだよぉ!!」
アリババが、うがーと吠えた時だった
アラジンが、う~んと少し唸った後
「あの岩って壊せたりしないのかな?たとえば、エリスおねえさんが砂漠で使った様な力とか…」
その言葉に、アリババがはっとした
確かに、あの砂漠ヒヤシンスに放った大技は凄かった
雷と炎の龍がアリババ目がけて(注:語弊があります)襲ってきた
あれを食らった(注:食らってません)アリババは死んだとさえ思った
「そうだよ!良い事言うじゃないかアラジン!!」
あの力なら、あの岩も木端微塵に出来る
「エリス!あれもう一回撃ってくれよ!」
アリババとアラジンのキラキラの期待に眼差しにエリスティアが困った様に苦笑いを浮かべた
「この狭い所であんな魔法放ったら大参事よ。駄目です」
「魔法? 魔法ってなんだい?」
何故か、アラジンにそこに食いつかれた
エリスティアは、失言した…という風に、「あー」と言葉を洩らした後
「その話は、落ち着いてからしましょ? 今はとりあえず……」
「この岩をなんとかしなきゃなんだよぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!」
と、間に割って入る様にアリババが叫んだ
アリババもアラジンも会話はしているが、もう限界だ
流石のエリスティアも体力はある方ではないので疲れてきた
「エリス! 頼む!!」
アリババが一生のお願いだと言わんばかりに、懇願してきた
そこまで頼まれたら流石のエリスティアも断り辛い
エリスティアは、諦めにも似た溜息を付きながら
「仕方ないわね…ただし、どうなっても責任持てないから知らないわよ?」
そういうと、ピイイイイイイとエリスティアの周りのルフ達がざわめき出した
それに反応したのは、他ならぬアラジンだった
「エリスおねえさん、それ……」
「後で説明してあげる」
アラジンの問いにそう答えると、エリスティアはしゅっと片手を大岩に向けた
「大気よ叫びたまえ、ルフ達よ我が声に応えよ――――水神の刃槍!」
そう叫んだ瞬間だった
彼女の周りの温度が一気に下がったかと思うと、何処からともなく水の槍が現れた
そして、一気に大岩に向かって襲い掛かったのだ
ドドドドドドド
という音と共に、水の槍で突き刺さった大岩が砕け散る
「よっしゃああああ!!」
喜んだのは他でもない、アリババだった
はーと一息ついた様に、その場にどっど座り込む
「もう、限界だぜ……」
そう言って、天を仰いだ
「僕も、お腹すいちゃった……」
アラジンも疲れたのか、へなへなとその場にへたり込んだ
だが、エリスティアだけは一切その緊張を解かなかった
「アリババくん、アラジン。座ってる場合じゃないわよ。今のうちに行かないと……」
「いや、ちょっと休もうぜ。ほんと、マジ限界なんだって」
ここまでほぼ全力疾走だったのだ
それは疲れるだろう
特に、アラジンは身体も小さい分体力も無い
もう、へとへとに違いない
だが、ここは迷宮の中なのだ
そんな甘い考えは許されない
「いいから、立って!」
そう言って、エリスティアは2人を無理矢理立たせた
「この際だから、言っておくけれど…私がさっき何って言ったか覚えてる?」
エリスティアの言葉に、アリババとアラジンが首を傾げる
「えっと…おねえさんは、魔法って……」
「その話は後でね。 私言ったわよね? “どうなっても責任持てないから知らないわよ”って」
「……………」
言われてみればそんな事を言われた気がする
2人は顔を見合わせた
「なんか…あるのか……?」
エリスティアの真面目な顔に、思わずアラジンとアリババも息を飲む
「何かって……」
そこまで言いかえて、ふとエリスティアが岩が砕けた方を見た
と、その時だった……
ごんごんごんごんごん
「「……………」」
何やら来た方の穴から聴こえてくる、不吉な音にアラジンとアリババが顔を見合わせた
「おいおい……まさか………」
「ほら、2人とも走って…!!」
エリスティアが、ぐいっと2人の手を取る
その瞬間、穴の奥から炎に巻かれた大岩がいくつもごんごんごんと音を立てながら襲ってきた
「きたあああああああああ!!!!!」
ぎゃあああああ!!と叫びながら、アリババは飛び跳ねる様に立ち上がると、脱兎のごとく走り出した
アラジンは、とっさに首にかけていた金色の笛を吹き始める
ピィ―――――――
という音と共に、足元から“ウーゴくん“が現れ
そのまま“ウーゴくん”は3人を肩に乗せたまま、物凄い勢いで走り出した
そして、トンネルを抜けたと思った瞬間―――
細い橋に差し掛かり、“ウーゴくん”が走った後の橋を火だるまの大岩たちがそのまま通ろうとするが、幅がはみ出し橋がガラガラと 音を立てて崩れてい
それは、3人が乗っている”ウーゴくん“にも影響をもたらした
大岩のせいで崩れていく橋は、瞬く間に“ウーゴくん”の所まで伸びてきた
「落ち―――」
アリババがそう声を洩らした瞬間、”ウーゴくん“はその先にあった大穴に落ちて行ったのだ
ズゥウウウンという音と共に、“ウーゴくん”が底に着地する
瞬間、“ウーゴくん”はアラジンの笛の中にしゅるしゅると戻って行った
アリババは、地に足が付いた瞬間、ガクッとその場にへたりこんだ
「はぁ……はぁ……はぁー」
なんとか息を整える
「危なかったな―――アラ 「アラジン!!」
アリババの「アラジン」という声が、エリスティアによって見事にかき消された
「エリス?どうし――――アラジン!?」
そこまで声を掛けた後、尋常でないアラジンの様子に、アリババは慌ててアラジンに駆け寄った
先に、アラジンの異変に気付いたエリスティアは、アラジンの側で彼の額に手を当てている
「熱は無いみたいだけれど……顔色悪いわ」
「おい、アラジン……どっか悪いんじゃ……」
2人の言葉に、アラジンはお腹を押さえながらなんとかにっこりと微笑んだ
「だいじょうぶだよ……ちょっとお腹が減っちゃっただけなんだ」
「……………」
「ウーゴくんを呼びだすには、僕のお腹の力が必要なんだよ。だから―――……」
ぎゅるるるるるるるる
その時だった、アラジンのお腹の音が鳴った
アラジンがお腹を押さえて、小さく息を吐く
「お腹…へったなぁ………」
その様子を見て、エリスティアもアリババも困った様に顔を見合わせた
「ごめんなさい、今は私何も食べられるもの持ってないのよ……」
本当に、申し訳なさそうに言うエリスティアに、アラジンは笑って見せた
「だいじょうぶだよ、エリスおねえさん……少し休めば楽になるから……」
そう言って、エリスティアに気を遣わせまいとするアラジンが痛々しい
いくら、力があったとしても、こうして必要な時に仕えなければ意味がない
サッと、ティーセットでもランチでも出せればよかったのだが…
エリスティアの力とは、そんな便利なものではなかった
しかも、これ以上彼の保護下以外で力を使うのは危険だ
”彼ら“に気付かれてしまう
それ以前に、すでに2つの制御装置を外してしまっている
あの制御装置は彼のジンの力によって付けられたもの
外せば、一発で彼には気付かれるだろう
力があっても意味ないわ……
「ごめんね、アラジン」
もう一度謝るエリスティアに、アラジンは笑って見せた
そんな2人の様子を見ていたアリババは、小さく息を吐いた
やべえよな……
着の身着のままで飛び込んじまったから……
だか、こんな時だからこそ明るく振る舞わなければならない
アリババは、あはっと微かに笑みを浮かべた後
「慌てんなって!食料はなんとか調達するからさ。いきなり食いついたりすんなよ」
そう言って、アラジンの頭をポンッと叩いた―――――筈だったが……
「え…………」
その先にいたのは、アラジンとは似ても似つかない緑色の大きなアリだった
アリはキキキキキと笑いながら歯をガシガシとしつつ、6本中4本の足をキシャーと威嚇する様に上げて見せた
「あ、あ、あ、アアアアアラジン……!?」
え!?ええええ!!!?
まさか、アラジンがお腹の空き過ぎで変化したとか!!?
いや、いやいやい、人間がアリに変わるとか聞いた事ねーし!!
その時だった
「いやああああああああ!!!!」
突然、エリスティアの叫び声が聴こえてきた
「エリス!?」
慌ててエリスティアの方を向こうとした時だった
「ア…アリババ…くん……?」
何処からともなく、アラジンの声が聴こえてた
ハッとしてそちらの方を見ると――――……
ぴくぴくとアラジンの手がぴくついていた
その上から、紫色の液体がたら~りと流れている
「えええええええええ!!!!?」
それを見た瞬間、アリババはまさしく固まった
その後ろでは、エリスティアが化石の様にカチカチになっている
そしてアラジンはというと―――
何故か、巨大な緑色のアリの口の中に顔が入っていた
「たすけて……たすけて…おくれよう……」
「ギャアアアアアアア――――――!!!!」
アリババは奇声を発するや否や、猛スピードで駆け寄ると、アラジンを思いっきり引っ張った
ずぼっと抜くと、そのまま再び後ろへと走り去る
「からだじゅうが…ひんやりべとべとするよう……」
「アラジン!アラジン、生きてるか!?」
よろめくアラジンを、アリババは必死に揺さぶった
その時だった
キシャアアアアアアア
巨大なアリが叫んだ
瞬間、周りの卵と思しき物体がぴしぴしと音を立てて割れだす
次から次へと大きな緑色のアリたちが生まれだす
そして、瞬く間に3人を囲ったのだ
「くっそ……囲まれた…!!」
アリババは、とっさに持っていたナイフを抜き取ると構えた
「アラジンは休んでろ!ここは、俺とエリスで―――エリス?」
エリスティアの反応が無い
まさか、エリスティアまでアラジンの様に食われてるんじゃないかと思い、慌てて振り返ると――――
そこには、エリスティアがいた
完全に固まって白くなったエリスティアが
「お、おい?エリス?一体、どうし――――」
「虫………」
「は?」
「虫が……あんなに……いっぱ、い……」
そう呟いたかと思うと、ふら~と突然倒れた
「お、おい!」
慌てて抱きとめるが――――エリスティアは顔を顰めたまま完全に気を失っていた
まさか……
まさかとは思うが……
虫が駄目なのか―――――――!!!!
「くそ……っ」
頼みのエリスティアも今は駄目だ
こうなったら―――――
アリババは、巨大なアリに向かてナイフを構えた
俺がやるしかねぇ!!!
大岩と巨大アリの回
若干、脚色されていますww
というか、夢主は虫嫌いらしいですよー
うん、虫が嫌いならアレは怖いww
というか、魔法に関してはまだ触れないでおこうな!
2013/03/21