MARIKA
-Blue rose and Eternal vow-
◆ Act. Ⅱ アーロンパーク 28
――――アーロンパーク・プール内
辺りは轟々と海底の土煙が上がっていた
クロオビを沈めた場所だけが、明らかに抉られておりその最下層にクロオビがいるのは必至だった
どおん! どおおん!
と、下から音がすぐに聞こえ始めた
「・・・・・・時間がないわ」
予想よりもずっと早い
数分ぐらいはもつかと思ったが―――――
もちそうにないわね・・・・・・
これだから、丈夫な魚人は嫌いなのだ
でも、今を逃せばきっともう後はない
「――――ウンディーアローズ!」
レウリアがそう呼ぶと、傍にいたウンディーアローズが、すいっとやってきた
『――――主、如何なさるおつもりで? これ以上は――――・・・・・・』
「・・・・・・分かっているわ。 今のうちに“断絶結界”を組むから、もしあの魚人が出てきたら、さっきの応用で逆に地上にやつを押し上げて。 グラビティーアと協力して海中から叩き出すのよ!」
『――――畏まりました』
ウンディーアローズの返事を聞くと、レウリアは素早く銀のナイフで手首を切ると、途中だった結界用の血紋を展開させていく
素早く媒体にした、武器と銀のナイフをレウリアの位置から丁度左右の岩肌に投げた
それらは、弾かれることなく岩肌に突き刺さる
瞬間―――――そこに媒体に描いた血紋が現れた
「――――我は命じる。 我が血に応えし眷属達よ――――今、ここに切り裂く“門”を現したまえ!!!!」
刹那、それは起きた
海底に巨大な八芒星の血紋が現出する
その上をネフェルティがきらきらと飛んだ瞬間――――――
ごごごごごごご
という、物凄い轟音と共に、プールの海水が真っ二つに割れたのだ
まさに、“巨大な剣で水を斬った”かの如く、ゲンゾウ達がいる一角から海水が一気に消える
「――――今のうちのその、足の岩を!!!」
レウリアが叫んだ
ゲンゾウが頷くと、持ってきてたハンマーを構えた
その時だった
「―――――小娘がァ!!!!」
その声に気付いたが、時すでに遅く
いつの間にここまで上がって来たのか―――――あのクロオビがレウリアめがけて拳を振り上げてきたのだ
「―――――っ!!」
『―――――主!』
ウンディーアローズの声が聞こえる
が、間に合わない
クロオビの拳がレウリアの背めがけて放たれる
「―――――っぁ!!!」
もろに直撃を受けて、レウリアがそのまま後方へと吹き飛んだ
どおおおおん!!! と、大きな音と共に、レウリアの身体が海底だった岩にめり込む様に突っ込んでいく
「――――おい、大丈夫か!!?」
ゲンゾウが慌ててレウリアの方に駆け寄ろうとするが――――
「ココヤシ村の連中か、舐めた真似をしてくれたなァ!!!」
「・・・・・・・・・・・・っ、駐、在さ・・・・、に、げ―――――かはっ!」
「逃げて」と言おうとしたが、口から血が吐き出た
もしかしたら、内臓系をやられたかもしれない
でも、ここでココヤシ村の人に犠牲者を出す訳にはいかなかった
「・・・・・・っ、ウンディーアローズ、ネフェルティ・・・・」
レウリアが名を呼ぶと、すぐさま2体の精霊がゲンゾウとクロオビの前に立ちはだかった
ウンディーアローズが水を起こし、ネフェルティが竜巻を起こすが――――
クロオビはそんなもの、ものともせず突っ込んできた
『――――主、お逃げくださ・・・・・・ああああ!!!』
ウンディーアローズがクロオビを抑え切れずにその場から消滅する
ネフェルティだけがなんとか竜巻で耐えていたが――――
「――――このぉ、羽虫ごときがァ!!!」
その風に逆流する様に、クロオビがネフェルティを視界に取った
――――ダメ!!!
ウンディーアローズはあくまでも“仮契約”だ
役目を果たせば消えてしまう
しかし、ネフェルティは違う
“本契約”の精霊が消えれば“契約”は自然消滅し、その精霊の存在自体も消滅してしまう
「―――――くっ」
武器も結界の維持でない
仮契約の精霊を呼び出す銀のナイフも、同じく結界の維持でない
残っているのは、この身体のみ
それならば――――
「―――――させないわ!!!」
そう叫ぶな否や、レウリアはクロオビに向かってネフェルティとゲンゾウを庇う様に間に立ちはだかった
「――――死ねェ! 小娘!!! 恨むんだったら貴様の愚かさを恨むんだな!!!」
「――――ネフェルティ!!!」
ごうっ!!! っと、レウリアが叫んだ瞬間、ネフェルティの風の壁がクロオビの前に現出した
しかし、魚人に風が通用するはずもなく―――――
「――――愚かなり!!!」
そう言って、そのまま拳がレウリアの腹めがけて放たれた
「――――っ」
――――――――エース!!!!
**** ****
――――アーロンパーク・地上
「生きて着地はさせねェぞ!!! ――――“六刀流”奥義!!!!」
6本の刀をぐるぐると上空に向かって回転し始めた
にやりと、アーロンが笑う
「――――“六刀の円舞曲”!!!!」
ハチがゾロにとどめを刺そうとしていた
終わりだ
アーロンも、他の者もそう思っただろう
だから、気づかなかった
ゾロの身体が微かに動いた事に――――
「―――一瞬でも触れれば、お前はミンチだ! ひき肉になれ!! だははははは!!!」
ハチがグルルルルルと六本の刀を風車の様回転する
そこへゾロの身体が―――――
ぎゃんぎゃんぎゃんぎゃん!!!!
「ぎゃああああああああ!!!!」
ゾロがその風車に巻き込まれたかのように、斬れる音が辺り一帯に響いた
「兄貴イイイイイイイ!!!!」
ヨサクとジョニーが叫ぶ
―――――が
「え!!?」
一瞬、何が起きたのか・・・・・・
そこにいる誰しもがわからなかった
その場に立っていたのは斬られてミンチになったはずのゾロと
刀を持つ指を斬られて「痛でええええええ!!!!!」と叫びながら慌てふためくハチの姿だった
「!」
流石のアーロンも、これは予想だにしていなかったらしく、顔を険しくさせた
「ニュアアア・・・・・・!!!!」
ハチがそのまま指を押さえながら、涙目でその場をのたうち回る
「な、何で!!?」
「一体、どうなったんだ!!?」
ジョニーとヨサクは何が起きたか分からないという風に叫んだ
ハチはわなわな震えながら
「あの野郎・・・・・・っ、回転に合わせて剣の上を転がりやがった! おまけに、おれの手を斬りつける出血代サービス! おれは曲芸師じゃねェんだぞ!!! もォー怒った! お前許さん!! 本気で、ブッ殺してやる!!!」
そう言ってハチが刀を構える
が、ゾロは背を向けたまま、肩で荒く息をして、ふらつくのを何とか堪えている様だった
「兄貴・・・・・・辛そうだ・・・・・・っ!!」
「・・・・・・さっきので傷口が開いてしまったのかもしれん」
ドクターの言葉に、ヨサクも涙を流しながら
「ああ、変わってやれるもんなら、変わってやりぇ・・・・・・」
自分達では歯が立たないのは百も承知だ
でも、見ているだけでも、ゾロがそれ以上に辛いのだと分かる
「はぁ・・・・・・、はぁ・・・・・・」
息が上がる
視界も霞む
バラティエで受けたミホークからの傷がじんじんと痛む
それでも――――
たとえ、普通は気絶する程の傷でも、おれは倒れちゃいけねェ
脳裏にミホークの顔が浮かぶ
あの鷹のような目が
「“六刀流”・・・・・“タコツボの構え”!!! これで、殺す!!!」
たとえ、普通は死んじまうほどの傷でも、おれは死んじゃいけねェ
「この技は100%破れねェのだ!!! おめェが、さっきくらった様にな!!!」
普通じゃねェ“鷹の目”に勝つためには――――
普通でいる訳には、いかねェんだ!!!
「ぬおおおおおおおお!!! “新・春”・・・・・・」
「鬼・・・・・」
すっと、ゾロが刀を構える
そして――――
「―――――――斬り!!!!」
がきいいいん!!!
という音と共に、ゾロの剣戟がびりびりとハチの方に伝わってきたと思った瞬間――――――
「ニュ!!!?」
ぱきいいいん!!!
と、ハチの持つ6本の刀がバラバラに砕けたのだ
「ニュ――――――!!!!?」
驚くハチを余所に、ゾロは続けざまに刀を左右に構えると
「これで、おれとお前の剣の重みの違いが分かったか? タコ助!! ――――気が済んだろ―――――“龍”」
「――――――“巻き”!!!!」
どごおおおおん!!!
という音と共に、ハチの身体に刀がめり込みそのまま上空へ吹き飛ばされる
「―――――!!!!」
だれしもが
ココヤシ村の人たちだけではない、アーロンすらも言葉を失った
ハチの身体が上空へ舞い上がったまま、砂煙がはけてくるとそのまま真っ逆さまに地上に落ちてきた
「な、んで・・・・・・」
一緒に巻き上げられバラバラの刀がきらきらと太陽の光を浴びて光る
上空に掛かっていた雲が張れ、光が差し込める
「三刀流、なん、か、に・・・・・・」
どさああああ
と、そのままハチが地上へ落下してきた
最早そのハチに意識はなかった
「ハチ・・・・・・」
アーロンが信じられない物を見るような目で、その光景をわなわなと震えながら見ていた
「・・・・・・っ、は、はぁ、はぁ・・・・・・」
がくっとゾロが膝をつく
このまま倒れられたらどんなに楽か――――
だが、そんな悠長な事を言っている暇はなかった
いつまでたっても上がってこないレウリアにルフィ
「・・・・・・早く、ルフィを、たすけ、に・・・・・・行かねェ、と・・・・・・」
そう言って、よろよろとプールの方に向おうとした時だった
突然、目の前の海水が かっ! と光を放った瞬間―――――巨大な八芒星の血紋が現出したかと思うと
ごごごごごごごご!!!
と、凄まじい轟音を上げながらプールが真っ二つに割れたのだ
「なんだ!?」
アーロンがぎょっとして立ち上がる
だが、ゾロにはそんな事に驚く気力は無かった
何が起きているのかはわからない
だが・・・・・・そんな事を考えている悠長などなかった
「ルフィ・・・・・・」
ただ分かってることは1つ
これは多分レウリアがやったのだろうという事だった
だが、プールの底が遠すぎて何が起きているか分からない
レウリアがどの程度戦えるかもわからない
「いか、ね・・・・・・と・・・・・・」
そう言いながら、プールに入ろうとした時だった
「待てよ、このくそマリモ。 そんな身体で海になんか入ったら死んじまうぞ!」
聞き覚えのある声が響いてきた
視線だけで見ると、クロオビに吹きとばされたはずのサンジがそこには立っていた
「コックの兄貴ィ!!!」
ヨサクとジョニーが叫ぶ
サンジはタバコをふかしながら、額から垂れる血をそのままで、そこにいた
サンジはちらっと、意識を失っているハチを見た
そして、クロオビを探すが居ない
まさか・・・・・・
「おい、あのエイの魚人はどうした?」
「・・・・・・そん、な、こと、よ、りも・・・、はあ、はぁ、早く・・・・・・いかねェと・・・・・・」
「ああ、分かってる。 もう時間がねェことぐらい分かってるよ。 そんな事百も承知で止めてんだ。 てめェこそ黙ってろ。 クソ野郎が!!」
「!?」
ゾロがサンジを見る
倒れたハチ
姿の見えないクロオビとレウリア
そして、真っ二つに割れた海面
それは即ち―――――
「・・・・・・リアさんは、下か」
ちらっと海底を見て悟ったのか、そう呟くとネクタイを緩めスーツの上着と靴を脱いだ
そして――――
「――――お前はそこで待ってろ!! おれがいく!!!」
そう言うなり、プールの中へ飛び込んだのだ
それを見たアーロンが面白いものでも見たかのように
「面白い、魚人と水中戦を選ぶとはな!!」
「バカ野郎!! 無茶だ!! 水中戦に持ち込む事がこいつらの狙いなんだぞ!!?」
ゾロがそう叫ぶが、サンジにはルフィの他にも飛び込まなくてはいけない理由があった
見えたのだ
レウリアがあのクロオビに攻撃を食らっている姿が
―――――リアさん!!!
「シャーハハハハハ!!! よく思い知れ!! てめェらが、たかだか“人間である事”を!!!」
シャーハハハハハハ!!!
シャーハハハハハハハハ!!!!
どこまでも――――
アーロンの笑い声だけが響いていた
さてと・・・・・・やっと、ゾロのターン終わった~~
夢主のターンもほぼほぼ?終わったので~
後は、サンジとウソップやなwww
2023.03.01