群青-蒼嘩月影-

 

 我は欲す 闇夜の瞳を

 

 

「アレが欲しい」

 

それは、彼にとって初めての”慾”だった

今まで、一度として口にした事の無い言葉…

 

それは”慾望”という名の言葉

 

「アレが手に入れば他は何もいらぬ・・・・」

 

彼の声だけが辺りにこだまする

 

ただ、一点にその視線を注ぎ 見る

そこに在るのは、漆黒の髪を靡かせる少女が1人――――

槍を持ち、戦場を駆ける 戦女神

 

「アレを私に元に持ってくるが良い」

 

彼は呟いた

 

欲しい と――――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「はぁ!」

 

ザシュ…

 

ザン!

 

槍がブンと唸り目の前に居る敵をなぎ払った

敵が宙を舞い吹き飛ぶ

 

バサッ…と少女の漆黒の髪が横に靡いた

シャランと髪飾りが音を鳴らす

 

「朔夜!」

 

不意に後から声を掛けられた

朔夜と呼ばれた少女は声のする方を見た

 

向こうの方から槍を持ち髪を束ねた青年が翔って来る

 

少女はふぅ…と息を漏らし、にっこりと笑った

前に出てきた髪を無造作にバサッと後にやる

 

「子龍様」

 

子龍と呼ばれた青年は朔夜の無事な姿を見て安堵の息を漏らした

青年 趙子龍こと趙雲は朔夜の傍までやってきて彼女の頭の上に手をポンと置いた

 

「?」

 

朔夜が意味が分からず首を傾げる

 

「朔夜。無事だったんだな?」

 

「勿論ですよ! こんな所で負けるような槍術は習ってませんよ?」

 

自らの師である趙雲に当然!という感じで朔夜は答えた

 

「分かってるよ。 それでも心配ぐらいさせてくれ」

 

そう言って、趙雲は朔夜の頭を撫でた

それが嬉しくて朔夜の顔が笑顔になる

 

「お前等…そこでくたばれ!!」

 

突然側面から声が聞こえてきたと思ったら剣が2人の間に振り下ろされてきた

すかさず朔夜と趙雲がそれを避ける

と、同時に朔夜が剣を振り下ろしてきた男に槍を突き立てた

男がそれを間一髪で避けるが、そこは計算していた事なのか、朔夜がにやりと笑う

 

男は単なる威嚇と取ったのか気にも留めず、そのまま朔夜に斬りかかって来た

が…それは朔夜に当たる寸前で止められた

いや、正確にはそこで動きが止まった

 

「おま…え……」

 

男の震えるような掠れた声だけが聞こえた

朔夜が剣を素手で持ち男から奪い取った

 

「馬鹿ね…私は単なる囮なのに」

 

「ぐっ………」

 

ズン…

 

男がその場に倒れた

背には1本の槍が突き刺さっていた

 

趙雲が表情を変えず、男の背から自分の槍を引き抜く

 

「朔夜」

 

「流石、子龍様! 鮮やかな槍捌きですね」

 

「ありがとう」

 

趙雲がふぅ…と息を漏らしながら朔夜の頭を撫でた

 

「さて、ここいらの敵は一掃できたな」

 

「そうですね」

 

朔夜が地に槍を突き立て、髪を靡かせながら答える

 

「私達の任務はここの敵の一掃でしたけど…どうします?進軍しますか?」

 

「そうだな…また魏軍が来ないとも限らないからな…」

 

「趙雲様!!」

 

兵士の1人が翔って来た

 

「どうした?」

 

「関羽将軍からの伝令が参っている様です」

 

「分かった」

 

趙雲は伝令の話を聞く為に、朔夜に「気をつけろよ」と言い残し、その場を去って行った

残った朔夜はふぅ…とため息を漏らし周囲の兵士に集合を掛ける

 

作戦ではこの拠点を占拠した後に、ダムの関を決壊させて魏軍を水攻めにする予定だ

この角度からの水攻めに合えば、下流の砦に本陣を構える魏軍はひとたまりもないだろう

 

恐らく、関羽将軍からダムの関を切れとの伝令が来たのではないだろうか

 

そんな事を考えながら、朔夜は自分の髪に触れた

背の中ほどまである髪を髪飾りで一束に纏めているがどうも気になる

髪の長さがばらばらだから高く結い上げる事は流石に出来ないが・・・かと言って、紐で結い上げるだけでは味気ないと思い髪飾りで纏めているのだが・・

 

どうにも、こうにも邪魔だった

 

短く切ろうかとも思ったが、以前趙雲が髪が綺麗だと褒めてくれて以来どうにも切れずにいた

それが、嬉しかったからだというのは己でも分かるが・・・

単純というか・・・我ながら恥ずかしい

切りたい気持ちはあるが、切りたくない気持ちの方が勝っているのだろう

 

この髪だけが唯一自分が”女”である証の様なものだった

城の女官の様に着飾ることも無い

私は将だ 戦に出て戦うのが仕事であり、私の生き方だ

そう・・・・将として子龍様に…劉備様に認めてもらえさえすれば それで良い――――

 

「朔夜!」

 

趙雲が戻ってきた

 

「関を切るんですよね?」

 

それが当たり前の様に朔夜は訊ねた

趙雲が一瞬呆気に取られた顔をしたが、ふっと笑い

 

「ああ」

 

と答えた

 

朔夜はすぐさま、近くに居た兵にダムの関を切るように伝令する

兵がこくりと頷き、数人の兵をつれてダムの方に向かった

 

後は関が切れるのを待つばかりだ

 

「任務完了ってとこですかね?」

 

「まだ、油断はできないがな」

 

腕を組み様子を見ながら趙雲が答えた

朔夜もダムの方を見る

 

今夜は月も雲に隠れて出て居ない

きっとこちらの動きは魏軍には悟られていないだろう

 

この作戦は成功する

そう思われていた、その時だった

 

「伝令!」

 

1人の兵士が2人の元に翔って来る

 

「どうした?」

 

「ダムの決壊しばし待たれよ!との事です!!」

 

「!? どういう事だ!?」

 

突然の意外な伝令に2人が顔を見合わす

 

「趙雲! 朔夜!」

 

下の方から槍を持った派手な男が翔って来る

 

「馬超?」

 

「孟起様・・・・」

 

馬超は2人の所に来ると。息を整える間も無く

 

「2人ともすぐ本陣へ戻れ! 関羽将軍がお呼びだ」

 

ますますもって訳が分からない

 

「どういうこと? 孟起様」

 

朔夜は首を傾げながら、馬超に訊ねた

馬超も伝令から聞いただけで、理由までは聞いていないらしく「さぁ?」と首を傾げる

 

「?」

 

何か想定外の事でも起こったのだろうか?

 

朔夜はすぐさま兵に命じ、関を切るのを中止させるように伝令を送った

そして、護衛兵長に伝令が来たらすぐに関を切れるように伝達する

 

「戻りましょう。2人とも」

 

朔夜が趙雲と馬超の手を引っ張った

 

「ああ…」

 

「そうだな。急ぐぞ」

 

そして、3人はその場を後にした

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「朔夜。趙雲殿。馬超殿」

 

「姜維」

 

「姜ちゃんも戻ってきたの?」

 

姜維が3人の元に翔って来た

 

「関羽殿がお呼びと聞いたんですけど…なんでしょうね?」

 

「さぁな。俺様も知らん」

 

馬超がふんぞり返って言う

 

「私も聞いてないぞ」

 

「はーい。 私も」

 

馬超に賛同する様に、朔夜が手を上げた

見れば、本陣には4人の他にも、主だった武将が戻ってきていた

 

「何か・・・あったのかな?」

 

朔夜が首を傾げながら言う

 

「さぁな。 じゃなけりゃぁあそこまで攻めといて、戻って来いとは言わねーだろう」

 

そう言いながら、馬超が朔夜の頭をぐしゃぐしゃとする

 

「ちょ・・・孟起様! 髪が崩れる!!

 

抗議するが、馬超は聞いちゃいない

さらに、ぐちゃぐちゃとした

 

2人がじゃれ合ってるのを見て、趙雲がふっと笑った

 

「も~3人とも和んでる場合じゃないですよ!!」

 

姜維が3人に注意する様に指を立てながら言うが…聞いてないらしい

 

「聞いてるんですか!?」

 

「俺様は今、忙しい」

 

「忙しい!? 人の頭をぐちゃぐちゃにする事のどこが!?」

 

「わはははははは」

 

「孟起様~~~~!!」

 

「聞いてくださいよ…」

 

戦場だというのに…この和み様

 

「お願いですから…聞いてください~~じゃないと、僕が丞相に怒られます~~」

 

泣きそうな声を上げながら姜維が訴えている

 

「姜維」

 

不意に後の方から今、一番聞きたくない声が聞こえてきた

ギクーとして姜維はかちこちになりながら振り返る

 

そこには、蜀軍軍師 諸葛亮孔明の姿があった

 

「じょ…丞相…」

 

冷や汗をかきながら姜維はごくりと息を飲んだ

諸葛亮は3人の様子を見てはぁ…と大きくため息を付き

 

「馬超殿、朔夜殿。遊ぶのは程々にしなさい。趙雲殿も見守らない」

 

「すみません」

 

くすくす笑いながら趙雲が答える

 

「遊びたくて遊んでるんじゃありません!!先生!!」

 

「お前っ…逃げる気か!?」

 

「孟起様が勝手に私に悪戯してるんでしょー!!」

 

諸葛亮が2度目の盛大なため息を付いた

 

「もう、いいから4人とも来なさい」

 

「? はい」

 

趙雲が返事をしながら、べりっと馬超と朔夜を引き剥がす

 

「子龍様~」

 

「よしよし」

 

自分に泣きついてくる朔夜の頭を、趙雲はよしよしと撫でた

朔夜が趙雲の腕の中で、馬超に向かってあっかんべーをする

 

「こらー!!」

 

「まぁまぁ、馬超殿」

 

怒る馬超を姜維が必死で宥めた

 

諸葛亮が無言で怒りのオーラを出している

4人ははっとして慌てて諸葛亮に付いて行った

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「は?」

 

それは寝耳に水だった

 

「ですから、関平殿が囚われました」

 

「平ちゃんが!?」

 

朔夜が声を荒げる

そう言えば、関平が戻ってきていなかった

 

その時点で気が付けば良かったのだが…見落としていた

 

「魏の総大将は曹丕」

 

「…曹丕は何と要求してきたんですか?」

 

ごくりと息を飲む

 

「関を決壊すれば、関平殿を殺す――――と」

 

ザワッ

 

周囲がざわめいた

 

平ちゃんを殺す!?

 

「そんなの駄目!!」

 

朔夜は知らず叫んでいた

助けを求める様に関羽の方を見る

関羽は関平の義理とはいえ義父親だ きっと助け出すと言う筈

だが、関羽の出した結論は過酷なものだった

 

「諸葛亮殿。関平1人の為に作を中止する必要はありません。関平も一将。自分がどうすべきか分かっているでしょう」

 

「関羽将軍!!」

 

朔夜が抗議するが関羽は目を瞑った

関羽は関平を…自分の義息子を見捨てる気なのだ

 

「――――…っ!」

 

朔夜は走り出していた

が、その行く手を趙雲によって遮られる

 

「離して子龍様!! 私が平ちゃんを助けてくる!!」

 

「朔夜! 落ち着くんだ」

 

「でも――――っ!」

 

見捨てるなんて…そんなの………っ!!

 

「趙雲殿。曹丕はもう1つ要求してきました」

 

諸葛亮が静かに言う

朔夜と趙雲の動きが止まった

 

「要求…ですか?」

 

趙雲が諸葛亮を訝しげに見る

何故、そこで趙雲の名を出したのか…

 

すっ・・・・と諸葛亮が今にも走り出しそうな朔夜の元にやってきた

 

「?」

 

諸葛亮の意図が掴めず、朔夜は首を傾げる

 

「曹丕が要求してきた物。 それは・・・貴女です。 朔夜殿」

 

「え…?」

 

 

わた・・・し・・・・・・?

 

 

目が点になる

 

今、先生は何と…

ソウヒがワタシをヨウキュウしてきた・・・・?

 

身体の力がすとんと抜けた

倒れそうになるのをすかさず趙雲が支える

 

「諸葛亮殿! それはどういう事ですか!?」

 

趙雲が声を荒げる

諸葛亮はぱさりと羽扇を鳴らし

 

「言葉の通りです。 曹丕は朔夜殿と関平殿の人質交換を要求してきています。 しかも、朔夜殿と交換が成立した後は軍を引く――――と」

 

「軍を引く!?」

 

辺りがざわめいた

 

「正直、どちらに転んでもこちらに得るものはありません。 関平殿を見殺しにし、ダムの関を決壊させるか、関平殿と朔夜殿を交換し軍を引かせるか。 選択肢は2つです」

 

「冗談じゃありません!!」

 

抗議したのは趙雲だった

趙雲にしてみれば、朔夜は自ら教えてきた弟子であり、妹の様な存在だ

一番反対するのなら趙雲だろうと諸葛亮は踏んでいた

だから、趙雲に言ったのだ

 

「朔夜は渡せません!!」

 

「では、関平殿を見殺しにしますか?」

 

「――――っ!!」

 

趙雲が言葉を詰らす

 

そう――――選択肢は2択

関平を見殺しにして軍を進めるか

朔夜を引き渡すか

 

「――――私が、関平殿を助けてまいります」

 

趙雲が諸葛亮の前に出て言った

 

「諸葛亮殿。私にそう指示して下さい」

 

「趙雲殿・・・・・

 

「私が単騎で助けに行きます」

 

「子龍様…」

 

朔夜は頭を横に振った

 

このままでは趙雲が生きて帰れるか分からない戦いに行ってしまう

それは駄目だ――――!!

 

「駄目ですよ・・・・」

 

趙雲の腕の中の朔夜が呟いた

 

「朔夜?」

 

趙雲も関平もこれからの蜀には必要な人材

ここで失う訳にはいかない・・・・・

 

朔夜はぐいっと趙雲の腕を押しやった

そして、趙雲を見てにこっこりと笑う

 

「朔夜?」

 

趙雲が不安そうな声を上げる

 

駄目だよ・・・失えない・・・・・・

 

「先生」

 

朔夜の静かな声が陣内に響いた

 

 

 

 

 「・・・・私、行きます」

 

 

 

 

「朔夜!?」

 

朔夜はぷるぷると首を横に振った

 

「いいんです子龍様。 子龍様も平ちゃんもこれからの蜀には必要なんです。 犠牲になっちゃいけない」

 

「それはお前だって一緒だ!!」

 

「いいえ。 私は殺されると決まった訳じゃない。 でしょ?先生」

 

「・・・それは・・・・・・」

 

諸葛亮が言い淀む

 

そう――――魏の曹丕が要求してきたのは私自身

なんの意図で要求してきたのかは分からないけど…ある意味、それは私の身の安全は保障される筈

 

趙雲なら、単騎で関平を助ける事が出来るだろう

でも、無傷とはいかない――――

 

そんなの耐えられなかった

殺される可能性だってある

 

「私・・・・曹丕の元に行きます」

 

「朔夜・・・・」

 

朔夜はくすりと笑って趙雲の頬に触れた

 

「子龍様。 そんな顔しないで?生きていればいつか会えるから」

 

「朔夜・・・私は・・・・・・」

 

「子龍様。 将がこんな所で涙を見せてはいけません」

 

泣きそうな趙雲を宥めるように、朔夜は優しく言った

そして、諸葛亮の元に歩いていく

 

「先生。交換場所は? 指定・・・・してきてるんでしょう?」

 

諸葛亮は目を一度瞑り

 

 

「――――中央砦です」 と答えた

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ヒュゥゥゥゥゥ・・・・

 

風が吹いて朔夜の漆黒の髪を揺らした

シャランと髪飾りが音を鳴らす

 

 

中央砦――――

 

 

朔夜は馬に乗り、1人砦の前に立っていた

 

「曹丕! 居るんでしょ!? 私は倣 朔夜!! 約束通り1人よ! 平ちゃんを返して!!」

 

朔夜の声が夜の森にこだまする

 

辺りは静まり返り、人の気配すら無かった

 

「・・・・・・・・・・・」

 

居ないの・・・・?

 

だが、そんな考えはすぐに打ち消された

不意に背後から人の気配を感じる

 

朔夜は素早く槍を構えた

 

すると、砦の奥から1人の男が現れた

紫紺の衣装に身を纏い、長い漆黒の髪を1つに束ねた目つきの鋭い男だった

 

「女」

 

男は低い声でそう呟き朔夜の元に近づいてきた

 

「・・・・・・・・・・っ」

 

朔夜はバッと槍を構えた

だが、男は近づくのを止めなかった

 

「・・・・貴方が、・・・・曹丕・・・・?」

 

「・・・・・・・・・・・・」

 

男がそのまま朔夜に近づいてきて彼女の構えていた槍の攻撃範囲に入ってくる

 

「――――っ」

 

男の鋭い瞳が朔夜を捕らえて離さなかった

 

動けない・・・・・

 

息が上がる 心臓がどくどくと脈打っていた

男はすいっと槍を手で避け、朔夜の腰に触れる

 

「やっ・・・・・・っ!!」

 

抵抗する間もなく、朔夜は男の手によって馬から下ろされた

すとんと地に足が付く

 

「・・・・・・・・・・?」

 

男のする意図が分からず朔夜は首を傾けた

男はにやりと笑いそっと朔夜の頬に触れた

 

「・・・・・・・・・・っ!」

 

ひやりとした手が朔夜の感覚を鈍らせた

そのまま男が手を横にずらし髪に触れる

サラ・・・・と朔夜の髪が男の指から零れ落ちた

 

「いいだろう。 約束だ・・・・」

 

男がサッと手を上げると、砦の奥から縄で縛られた関平が連れ出されてきた

 

「平ちゃん!!」

 

「朔夜?」

 

関平が虚ろな瞳で朔夜の名を呼ぶ

傷だらけで縄に縛られているが、生きている

良かった…生きてる…

 

「お前はその男を砦の外まで連れて行け」

 

「はっ!」

 

男が兵に指示を出す

関平を連れていた兵士は 「ほら、歩け!」 と言いながら関平を砦の外に連れ出した

そして、縄を解く

 

「その馬はやろう」

 

朔夜の乗ってきた馬だ

 

「朔夜・・・・・・」

 

「この女の事は忘れろ」

 

 

男が関平の言葉を遮った

 

「朔夜!」

 

「平ちゃん・・・・ばいばい」

 

朔夜がぼそりと呟いた

関平には聞こえないだろうが・・・・・

 

男はフンと鼻を鳴らし、朔夜の肩をぐいっと抱き寄せた

 

「あ・・・・・・」

 

「来い」

 

 

「朔夜――――!!」

 

 

 

 

 

           ズゥゥゥゥ………ン…

 

 

 

 

 

 

 

重い砦の扉が、音を立てて閉められたのだった―――・・・・・・

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

曹丕夢始めちゃいました(笑)

お付き合い下さい

 

2008/07/18