㭭ノ題 言葉の題

 

◆ 77:禁断の果実 / 甘い誘惑

 (エリオスR:『スノーホワイト』より:ビームス兄弟)

 

 

  スノーホワイト3

 

 

 

【Chapter1-3】

 

 

もう!!

もうもうもうもう!!!!

 

恥ずかしい~~~~~~~~!!!!!

 

アリスは顔を真っ赤にしてHELIOSエリオス館内の廊下を走っていた

今思い出しただけでも、恥ずかしい

穴があったら駆け込みたいぐらいだ

 

でも・・・・・・

 

思わず、その足を止める

さきほどのブラッドの行動を思い出す

 

触れられた手が、髪が・・・・・・彼の感触が未だに残っている

あの時――――

もし、誰もこなかったら・・・・・・?

 

「・・・・・・・・・・・・っ」

 

考えただけで、頭が沸騰しそうだった

 

そんな――――

きっと、私の思い違いよ・・・・・・

 

そうだ

ブラッドに限ってきっとそれはない

まさか、あのブラッドが自分に――――――・・・・・・

 

「あれ? アリス?」

 

ふと、そこまで考えた所で、誰かに呼び止められた

はっとして振り返ると―――――

 

ブラッドと同じ、ルビーの瞳にブルネットの髪の青年が立っていた

その青年の顔を見た瞬間、アリスがじわりと涙を浮かべる

 

「フェイスくん~~~」

 

思わず、泣きついてくる彼女に、何かを察したのか・・・・・・

彼女の柔らかいキャラメルブロンドの髪に触れる

 

「なに~? また・・、ブラッドになにかされたの?」

 

フェイスのその言葉に、アリスが小さく首を振る

だが、それとは裏腹に彼女の顔は真っ赤だった

 

それで、全てを察したのか・・・・・・

フェイスは よしよし と、アリスの髪を撫でながら

 

「もう、ブラッドなんてやめて、俺にしたら? 俺だったら、アリスを泣かせたりしないよ?」

 

冗談めかしてそう言うが

アリスは、む~と頬を膨らませ

 

「フェイスくん・・・・・・、いつもそうやって女の人を口説いているのね・・・・・・」

 

アリスがそう言うと、フェイスは心外そうに

 

「まさか、俺からこうして言うのはアリスにだけだよ?」

 

「・・・・・・でも、“彼女達”が沢山いるじゃない」

 

そこ突かれると、フェイスが何でもない事の様に

 

「“彼女達”は、俺から誘たんじゃないよ? みんな自分から俺の“彼女”になりたいって言ってきたんだ」

 

「・・・・・・だからって、複数と同時に付き合うのはどうかと思うわ」

 

アリスのその言葉に、フェイスが「ふぅん?」と意味深に笑みを浮かべた

そして、不意に顔を近づけてきて

 

「だったら・・・さ、アリスが“俺だけの彼女”になってくれる・・・・・・?」

 

「え・・・・・・?」

 

一瞬、何を言われたのか理解できず、アリスのそのライトグリーンの瞳を瞬かせる

 

「だから、ブラッドなんてやめて俺にしてよ・・・・・・ね? アリス」

 

「な・・・・・・」

 

やっと問われた意味が理解出来たのか・・・・・・

アリスが、かぁっと顔を赤らませた

 

「も、もう! 冗談はよしてよ・・・・・・。 心臓に悪いわ」

 

どきどきと鳴り響く心臓を押さえたくて、アリスがふいっとそっぽを向く

だが、その顔は朱に染まっていた

 

馬鹿だなぁ・・・・・・アリス

そういう態度が“余計にそそられる”のに・・・・・・

 

などと、フェイスが思っているなど当の本人は微塵も思っていないだろう

アリスは、「んんっ」と、息を整えると

 

「もう、フェイスくんの話は真に受けていたら身が幾つあっても足りません!」

 

はぁ・・・・と、小さくため息をそう言って洩らす

そんなアリスをみたフェイスが、くつくつと笑いだし

 

「でも、ブラッドと何かあった時、いつも俺の所に来るのはアリスのほうだよ?」

 

「うっ・・・・・・」

 

痛いと所を突かれて、アリスが口籠る

 

「それは、その・・・・・・だって、こんな話聞いてくれるのは、フェイスくんだけだし・・・・・・」

 

もごもごと、小さな声でそう呟く

それを見たフェイスは、満足げに笑った

 

「ありがと」

 

「・・・・・・お礼を言われるようなことはしてないと思うけど」

 

と、その時だった

 

 

 

 

 

「アリス」

 

 

 

 

 

不意に、誰かに呼ばれた

はっとして顔を上げると、いつの間に来たのか・・・・・・

そこには、フェイスの兄・ブラッドが立っていた

 

驚いたのは外でもないアリスだ

ぎょっとして、思わずフェイスの影に隠れようとするが―――――

伸びてきたブラッドの手にあっという間に捕まってしまう

 

「あっ・・・・・・」

 

そのままぐいっと肩を抱き寄せられる

まさかの展開にアリスが付ていけないでいると

 

フェイスが「へぇ・・・・・・」と少し、怒気の、混じった声でブラッドを見た

だが、ブラッドは平然したまま

 

「アリス、行くぞ」

 

そう言って、そのままアリスの肩を抱き寄せて歩き出す

アリスがおろおろとブラッドとフェイスを見た

 

瞬間、フェイスの声が響いた

 

「―――――邪魔しなでくれる? ブラッド。 アリスは俺と話してたんだけど」

 

フェイスのその言葉に、一瞬 ブラッドが一瞥する

が、そのまま何でもない事の様に

 

「――――そうか。 アリスが世話になったな」

 

その言葉に、フェイスがカチンと頭にくる

まるで、アリスが自分の所有物の様なその言葉に、苛立ちを抑えきれなかった

 

 

 

 

「あんたが!! そうやってアリスに期待持たせる態度だけして流してっから、アリスが泣くんだろ!!!」

 

 

 

 

ふと、ブラッドがこちらを見た

だが、ひと言

 

「――――お前には関係ない事だろう」

 

と、返すとそのままアリスを連れて去って行ってしまった

 

残されたフェイスはぎりっと奥歯を噛みしめた

握った両手の爪が手に食い込む

 

 

 

「――――――あんたのそういうところが、嫌いなんだよっ」

 

 

 

吐き捨てる様に呟いた声は

そのままかき消えたのだった――――・・・・・・

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

今回は、フェイスとの話

フェイスの彼女達って何人いるんだろうなぁ・・・・・・

 

次回は、きっとブラッドかな~

 

※元々、ぷらいべったーに掲載していたものです

 

 

べったー掲載:2021.08.15

本館掲載:2022.12.14