㭭ノ題 言葉の題
◆21:歪んだ想い / 捩じれた感情
(薄桜鬼:『櫻姫抄乱』より、風間千景)
――――時は、五年に遡る
ある日、風間の里に見知らぬ少女が連れて来られた
年の頃からして十二ぐらいだろうか
ずいぶんと、やせ細った身体に
それには、似合わない美しい面持ちと真紅の瞳をした少女だった
名を、「八雲 さくら」と言った
あの「八雲家」の血筋のものだという
しかし、彼女は純血種ではなかった
――――人と交わった「混血」
それが、彼女だった
それも、この「風間家当主」の嫁にする為に連れてきたのだという
最初、「何故」と思った
だが、その謎は直ぐに解けた
彼女は鬼族が、望んで止まない“原初の鬼”だったのだ
誰しもか欲しがる“原初の鬼”それが、今目の前にいる――――・・・・・・
それだけで、心が高揚していくのが分かった
ついに!! 風間家が“原初の鬼”を手に入れたのだと
誰しもが、そう思った
だが、現実は彼女にとっては過酷なものだったのだろう
何度も花嫁修業から逃れようと、あがき、もがいたが
結果が変わる事はなく――――・・・・・・
毎日の様に行われる習い事に馴染めないまま
日が経つにつれて
どんどん、まるで「人形」の様に彼女の顔から表情が消えていった――――
それを里の「純血」の鬼達はあざ笑いつつも
それでも、彼女に――――さくらに目を奪われていた
それほど、彼女は美しかった
絶世の美女と伝承で聞く呉葉姫よりも、ずっともっと 美しかった
そんなある日――――
風間は、目の前の川をぼんやりと眺めるさくらを見つけた
何をするでもない、ただただぼんやりと川を眺めていた
「・・・・・・こんな所で何をしている」
風間がそうさくらに話しかけると
ぴくんっと何かに怯えるかのように、彼女が肩を震わせて振り返った
「あ・・・・・・」
一瞬だけ、声を洩らしたかと思うと
また、俯いてしまった
「・・・・・・・・・」
はぁ・・・・と、小さく息を吐くと、風間はさくらに近づいた
「おい」
そう声かけると、さくらがびくっとしたかと思うと、さっと手を隠した
「・・・・・・その手・・・」
「あ・・・・・・、だ、だめっ!」
ぐいと、無理やりさくらの手を掴んで引っ張った
みると、彼女の手は傷だらけだった
白い手に幾つもの鞭で打たれたのか
赤く腫れた跡が残っていた
さくらが、慌てて風間から手を隠そうとする
だが、さくらの力で風間に敵う筈もなく――――
「・・・・・・お前、この手はどうした?」
「・・・・・・・・・」
そう尋ねるが、言いにくいのか 彼女は押し黙ったままだった
大体の予想は付いていた
おそらく、さくらを妬んだ女達が彼女に難ぐせ付けて鞭打ちにしたのだろう
よく見ると、手だけではない
腕も、足も傷だらけだった
「・・・・・・あいつらっ」
風間が今にもさくらを傷付けた輩の元に行きそうになるのをみて
さくらが慌てて風間の手を引っ張った
「や、やめて下さいっ!!」
そう言って、止めようとする
風間にはそれは理解出来なかった
「お前に傷付けたやつが、お前は憎くないのか」
「それは――――・・・・・・」
そこまで言いかけて、さくらが押し黙る
だが、直ぐに首を振って
「私の事はいいのです。 ですから・・・・・・」
「なに?」
さくらの言葉に、風間が訝しげに顔を顰めた
「いい」? なにがいいのだ
こんな目にあっても、彼女は自分に非があると思っているのか
だから、甘んじて受け入れると?
馬鹿馬鹿しい
「―――さくら。 勘違いするな」
「え?」
「貴様はこの俺の花嫁―――つまりは、風間家当主の嫁になる身だ。 それなのに、里の者に軽んじられることを俺に許せと言うのか?」
「・・・・・・そ、れは・・・・」
「お前は俺のモノだ。 俺は自分のモノを他の手の者に傷付けられているのを見過ごす程 寛容ではない」
「・・・・・・・・・」
風間のその言葉に、今度こそさくらが押し黙る
さくらのその様子に、風間が小さく息を吐いた
「さくら」
不意に、伸びてきた風間の手がさくらを抱きしめる
余りにも突然の事に、さくらは大きくその真紅の瞳を見開いた
「あ、の・・・・・・?」
戸惑った様にさくらが声を洩らす
すると、風間は再度確認するかのように
「忘れるな、お前は俺のモノなのだ。 この先もずっと、何が起ころうとも――――な」
「・・・・・・・・」
まるで、呪の様に繰り返されるその言葉に、さくらは何も言い返せなかった
否、言えなかったのだった――――・・・・・・
それが、遠くない未来
たとえ、風間に「要らぬ」と言われたのだとしても――――・・・・・・
途中で寝てましたwww
あああああ~~~3本か4本ぐらい書こうと思ったのに・・・・・・
2022.12.12