㭭ノ題 言葉の題

 

◆ 08:夢は終わらず / 明日を願う

 (薄桜鬼:『櫻姫抄乱』より、土方歳三)

 

 

気が付くと、さくらは大きな桜の大樹の下にいた

 

「あ・・・・・・」

 

一瞬で、これは“いつもの夢”を見ているのだと気づく

 

はらはらと舞う桜の花弁が、まるで雪の様に降り注ぐ

さくらはそっとの花弁に手を伸ばした

 

が、まるで幻の様にするりとさくらの手をすり抜けていった

 

ああ、やっぱり・・・・・・

 

と、さくらは思った

これは夢

触れられそうで、触れられない――――夢

 

この夢を視始めたのはいつからだっただろうか・・・・・・

 

そうだ

風間の里に連れて来られた日に初めて視たのだ

 

最初は、夢の意味が分からなくて 怖くて泣いていた気がする

そして、風間の大奥様に「夢程度で」とよく怒られ、躾をされた

 

それから、誰にも夢の話をしなくなったのだ

 

内容が分からず、意味も理解出来ず

ただただ、じっと耐える前日――――・・・・・・

 

気が狂いそうだった

それでも、口を閉ざし 目も閉じて じっと耐えた

 

でも、いつからだろうか・・・・・・

その“夢”に変化か訪れた

 

一人の見知らぬ男性が現れ始めたのだ

それは、漆黒の長い髪に菫色の瞳をした人だった

 

最初は誰か分からず、困惑した

なぜならば、今まで一度も「ひと」が“こちら側”に現れた事は無かったから・・・・・・

 

“視る対象”としては、色々な人が現れた

風間の大奥様も、風間の里のひと達も、そして・・・・・・風間も

 

でも、“視る側”には誰一人

さくら以外はいなかった

 

それなのに――――・・・・・・

 

いつからか、その人はいた

何か話すわけでもなく、ただいるだけ

 

それだけでも、さくらにはよかった

不思議と、彼が傍にいると安心出来た

 

会話などなくても、傍にいてくれるだけでよかった

 

いつもその人は、桜の大樹の下でさくらを待っていた

さくらが夢の中に来ると、彼は微笑んでくれた

 

それだけで、嫌な事も全て忘れる事が出来た

 

風間の大奥様や、里のひと達からどんな仕打ちを受けても

彼と会えた日は笑う事が出来た

 

時折、彼の手がさくらの頭を撫でてくれた

それだけで、嫌な事は全て忘れられた

 

貴方様は、どこに住んでいるのですか?

貴方様は、鬼なのですか? それとも人なのですか?

 

 

 

貴方様のお名前はなんというのですか?

 

 

 

聞きたい事は沢山あった

でも、聞いてはいけない気がして、聞くことはしなかった

 

聞けば、彼が困るだろうと思ったから

困らせたくはなかった

 

だから、聞かなかった

聞けなかった

 

それでもいいと思っていた

彼が

 

 

――――来なくなる日までは

 

 

いつからそうだったのだろう

気付けば、彼はいなくなっていた

 

待てども 待てども

彼が夢に現れる事はなかった

 

もしや、彼の身に何か起きたのだろうか

それとも、もう彼は――――・・・・・・

 

そんな風に、悪い方向へと思考がいってしまう

 

こんな事ならば、もっと沢山お話しておけばよかったとか

勇気を出して声をかけてばよかったとか

 

後悔ばかり浮かんだ

 

でも、もう――――・・・・・・

 

そんな時だった

風間が京へ上るのに随行する事になった

 

なんでも、薩摩からの要請だとか

薩摩に関ケ原の借りのあるのだという

故に、断る事は不可能だった

 

さくらに拒否権はなかった

否、風間のいない里になど一人残りたくはなかった

 

だから、付いていくことにした

 

 

 

その先に、誰がいるかも知らずに――――・・・・・・

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

超々短くて、スミマセン

これ以上無理やったwwww

時間軸的には、風間の里にいた頃~上京して土方さんに会う前ですね

実は・・・・・・な話www

 

 

 

2022.12.29