色彩の題

 

 15:夜の訪問 / 蒼白き月夜の逢瀬 

(刀剣乱舞:『華ノ嘔戀』より:三日月宗近)

 

 

「ふぅ……」

 

沙紀は湯浴みを終わらせ、本丸の廊下を自室に向かって歩いていた

建物自体は武家屋敷風の本丸だが、ここを拠点とする様に用意した小野瀬の手腕のお陰で、電気も水道もガスも全部通っている

 

この時空のどこにそんな施設が…?

と何度か思った事はあったが、あくまでも2205年がベースになっているだけあり

不自由な所は特になかった

 

ただ、買い出しに出た時空に目的の品がない…

と言う事は度々あり、小野瀬が用意してくれる――――と言う事はあったが

鶴丸や山姥切国広曰はく

「小野瀬は信用ならない」

との事なので、極力最低限の事以外は頼らない方向でやっていた

 

ただ、この本丸のある時空自体、不可視な所にあるので

過去とも現代とも未来とも呼べない場所にある

遠征や出陣の折には、審神者である沙紀が時空を開かない限りここからは基本出られない

 

だからと言って、沙紀は皆を隔離する気はないし、自由にして欲しいと思っている

自分がそうだったからか、余計にそう思った

 

庭の方を見ると、綺麗な青白い満月が昇っていた

不思議な空間だと思った

 

時間の概念もあるし、四季も一応もある

だが、本丸の周りは常に桜が舞い、真っ白な雪が降っている

初めて見た時は、なんと幻想的な空間だと思った事か…

 

普通ならばあり得ない二つがひとつの場所に点在しているのだ

それに、東西南北の部屋にそれぞれ四季があり、色とりどりの花を咲かせている

 

中央の間の沙紀の部屋は特に別格で

桜と雪が舞う本丸の周りが見渡せる仕様になっている

何故、そうなっているのか分からないが――――

どうやら、これも小野瀬の考案らしい

 

そんな摩訶不思議な部屋に向かう途中の出来事だった

突然、廊下の端から話し声が聴こえてきた

 

楽しそうに談話している声は、短刀達のはしゃぐそれとは異なっていた

誰かと思いふと、通りすがりに見てみる

すると、そこには本丸に来た折

沙紀達を出迎える様に桜の樹の下に立っていた三日月宗近の姿があった

 

どうやら、月を肴に酒を口にしている様であった

もう一人は見えないが、どうも三日月と一緒に酒を飲んでいる様である

 

未成年の沙紀にはお酒の美味しさは分からないが、大人な刀たちには人気の様であった

 

邪魔しては…駄目よね

 

そう思い、立ち去ろうとした時だった

ふと、団子を手にした三日月と目が合った気がした

 

え……

 

と、思ったが…それは一瞬の出来事だった

三日月は沙紀に気付いた素振りは見せず、隣にいるであろう人物に団子を勧めていた

 

気の…せい、よね……

 

そう思い、そのままその場を後にしようとした時だった

 

「時に、鶴よ」

 

不意に三日月の声が聴こえてきた

が、沙紀はその事ではなく、その相手が鶴丸である事に酷く動揺した

 

今、自分は湯浴み上がりでとても人前に出られる格好ではない

こんなあられもない姿を鶴丸に見られるなど、耐えられなかった

が、三日月の声は更に続いた

 

「そなたは、主をどう想っておるのだ?」

 

え……っ!?

 

まさかの三日月の問い掛けに、沙紀がぎょっとする

すると、大好きなあの人の声が聴こえてきた

 

「ん? 沙紀の事か? 俺は―――――……」

 

やだ……聞きたくない……っ!!

 

聞いてしまったら何かを決定付けられそうで、沙紀は慌ててその場を後にした

だから、気が付かなかった…三日月がこちらを見ていた事に

 

 

 

 

 

 

***

 

 

 

 

 

部屋に戻って、はぁ…と息を吐く

先程の三日月と鶴丸の会話が気になる

 

「りんさん……何て答えたのかな……」

 

気になるが、知りたくないのが現状で

でも、気になるのも確かで

 

矛盾する二つの想いに、沙紀はまた はぁ…と溜息をついた

 

その時だった

 

「主」

 

不意に障子戸の向こうから三日月の声が聴こえてきた

 

「は、はいっ!」

 

思わずびくっとして大声で答えてしまう

慌てて口を塞ぐも時遅し

恐る恐る振り返ると、三日月がにっこりと微笑んで立っていた

 

「み、三日月さん…」

 

だが、三日月は気にした様子もなくそのまま沙紀の部屋に入ってくると

とん…と、沙紀との距離を詰めてきた

 

突然間近に迫って来た美しい顔に、思わず沙紀が息を飲む

三日月の美しい三日月色の瞳から目が離せない

 

次第に顔が高揚していくのがわかり、沙紀は慌てて「あ、あの…っ」と声を上げようとした

が、それは しっ と三日月の長い指に止められた

 

「主、先程の俺と鶴の会話を聴いていただろう?」

 

突然本題を切り出され、沙紀がぎくりと顔を強張らせるが

次の瞬間、小さくかぶりを振った

 

「聴いて…ま、せん……っ」

 

嘘は言っていない

怖くて、聴けなかった

 

だが、それすらも三日月にはお見通しなのか…

くすりと笑みを浮かべると、更に顔を近づけてきた

そして、耳元で囁く様に―――――

 

「鶴の答え…気にならぬのか?」

 

「三日月さ、ん……っ」

 

耳元で甘く囁く様に言われ、沙紀がぴくんっと肩を震わす

慌ててその場を逃げようとするが、それは三日月が許さなかった

するりと回された手が沙紀の腰に触れる

 

「あ……」

 

「主…俺も主を名で呼びたいと言ったらどうする……?」

 

「え……そ、れは……」

 

それはどういう意味だろうか

頭が朦朧として考えがまとまらない

 

すると、ふと三日月の手が沙紀から離れた

やっと解放されたかと思うと、沙紀は腰が抜けた様にその場にへたり込んだ

 

三日月はその沙紀の様子を見て、ふっと微かに笑みを浮かべた

 

「はは…主は俺が嫌ではないらしい」

 

「み、三日月さん…っ!!」

 

かぁ…と、沙紀が顔を真っ赤にして抗議すると

三日月は満足した様に

 

「よいよい、今宵はこれで許してやろう」

 

そう言って、するりと沙紀の美しい黒髪に触れると口付けを落とした

沙紀がその行為に言葉にならない叫び声を上げる

 

顔を真っ赤にして口をぱくぱくさせる沙紀を見て、三日月は「はは…っ」と笑みを浮かべるとそのまま去って行った

 

残された沙紀は、真っ赤な顔を押さえてその場から動けないまま

心の中で叫んだのだった

 

「三日月さんの馬鹿―――――!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

はれはれ、初三日月ですねw

(※本編ではまだ夢の中でしか出て来てないのでw)

 

なんか、私的三日月イメージ

あの人はきっとエロ担当wwww

攻めるのきっと得意ww

 

です

 

2015/08/05