色彩の題
◆ 13:花浅葱の衣 / あなたのために美しく
(刀剣乱舞:『華ノ嘔戀』より:加州清光)
「ふんふんふ~ん」
その日、加州清光はご機嫌だった
嬉しさのあまり、鼻歌交じりに廊下を歩いていた
と、その時だった
「沙紀?」
ふと、目の前を歩く沙紀を見つけた
加州が思わず駆け寄よろうとすると、沙紀はよろよろしながら大量の書物を持ち運んでいた
が――――・・・・・・
次の瞬間、何かに躓いたのか 沙紀が体制を崩した
「沙紀!!」
すかさず、加州が手を伸ばす
あわや倒れるという寸前で、何とか支えられたが――――
彼女の持っていた書物は、ばさばさばさーという音と共に雪崩の様に落ちた
「あ・・・・・・」
思わず、沙紀が声を洩らすが
誰かに自分が支えてくれていることに気付き、振り返る
「加州、さん・・・・・・?」
予想外だったのか
加州を見て、沙紀が不思議そうに首を傾げた
それを見た加州が、呆れたように
「なにやってんのさ~沙紀。 危ないだろ~? こーいうのは!」
そう言いて、沙紀から手を放すと、落ちた書物を拾い始めた
「あ、あの・・・・・・自分で――――・・・・・・」
「あ~いいのいいの、どうで俺 暇だったし? 使えるものは使えってね」
そう言いながら、あっという間に落ちていた書物を全部拾ってしまった
そして、3冊ほど沙紀に渡すと
「で? これ、どこに持っていくの?」
突然、そう投げかけられた言葉に沙紀が「え?」と声を洩らす
「あ、あの、加州さん。 自分で――――「却下」
「運ぶ」とか言いそうだったので、沙紀が言い終わる前に口を挟んだ
それから、くるっと沙紀の方を向き
「いいから、行くよ。 で、どこ? あんたの部屋に持っていったらいい?」
「・・・・・・あ、はい」
沙紀が申し訳なさそうにそう頷く
「・・・・・・沙紀さ」
すると、加州は突然右手を沙紀の方へ伸ばしたかと思うと
そのままぴんっと彼女の額を弾いた
「???」
突然、額を弾かれた沙紀は訳も分からず、その躑躅色の瞳を瞬かせた
「前々から思ってたけど・・・・・・沙紀は頑張り過ぎ。 頑張るのはいい事だけれど、たまには息抜きもしても誰も咎めたりしないってね」
加州の言葉に、沙紀が図星を突かれたかのように一瞬押し黙る
それからややあって、沙紀は
「でも・・・・・・皆様、出陣や遠征、内番でお忙しいのに、お手を煩わせるわけには――――」
「だから、そ~いうとこ!」
「え・・・・・・?」
「あんたに頼られて、嫌がるやつはこの“本丸”にはいないよ。 勿論、俺も含めてね」
「・・・・・・・・・」
その言葉に、沙紀が驚いたかのようにその目を大きく見開いた
「そう、で、しょうか・・・・・・」
半信半疑なのか、沙紀が自信なさげにそう言う
だが、加州はそれを肯定する様に
「そうだよ! 俺がそう言ってんの、信じられない?」
「あ、いえ、そういう訳では――――」
そう返してきたものの、きっと沙紀の性格的に頼まないだろうというのは容易に予想できた
だから、何となくわかってしまった
鶴丸や燭台切や一期一振が沙紀に構う“理由”が――――・・・・・・
放っておけないのだ
そう――――今の、加州の様に
「とりあえず、あんたの部屋行こ」
そう言って、書物を持ったまま加州が歩き出す
「あ、あの・・・・・・」
すると、沙紀が足を止めて声を上げた
「ん?」
「・・・・・・ありがとうございます」
何事かと振り返ると、沙紀が少し恥ずかしそうに、感謝の言葉を述べてきた
「・・・・・・・・・」
まさか、書物を運ぶ程度でここまで感謝されるとは思わなかったのだろう
加州も一瞬驚いた様にその瞳を瞬かせたが、次の瞬間ぷはっと吹き出した
「いいって、いいって! これぐらいお安い御用だよ!」
そういってにかっと笑う
「あ、そだ」
不意に加州が声を上げて
「俺さ、今日すっごくいい事あったんだ~へへ、何だと思う?」
嬉しそうのそういう加州に、沙紀が首を傾げる
「いい事・・・・・・? ですか?」
「そ! めっちゃいい事!!」
うずうずしているのが見て取れて、沙紀がくすっとわらってしまった
「なにがあったのですか?」
そう尋ねると、加州は待ってました!! という風に
「へへ、実はさ――――」
この事実を沙紀は後で知る事になる
加州や大和守の様に、新選組の刀達が用意したサプライズに
それはとても綺麗な浅黄色の着物だったのだという事に――――・・・・・・
なんとか、今年中にリク全消化目指して頑張ります
いや、もうマジでそろそろ片さんとあかんと思ってwww
2022.12.10