仲間的10のお題4

 

 08:指摘はずばっと。 

(マギ:『CRYSTAL GATE』より:八人将)

 

 

エリスティアは、居辛そうに視線を泳がせた

目の前には、エリスティアを睨む様に凝視するピスティと、困り顔のヤムライハ

 

どうしてこんな事になったのか…

先程まで、楽しくお茶を飲んでいたというのに…

 

その時だった

ダンッとピスティがテーブルを叩いた

 

「もう! この際だからずばっと言っちゃってよ!!」

 

「それは……」

 

言えと言われても返答に困る

何故なら、内容が内容だからだ

 

だが、その煮え切らないエリスティアの態度が、更にピスティの怒りを買った

 

「んも――――そんな事言ってたら、王サマ取られちゃうよ!?」

 

事の始まりはこうだ

シンドバッドとエリスティアの仲は周知の事実なのだが

結婚している訳でもなく、恋人宣言している訳でもなく…いわば宙ぶらりんな状態なのだ

でも、寝食共にしている二人だ

いつかは、結婚するだろうと噂されているし、事実婚とも言われている

それぐらい、深い仲なのは皆の知る所だった

 

だが、どうやらピスティ情報によると、とある新人女官がシンドバッドに大変お熱らしく…

はっきりしない、エリスティアよりも自分の方が王に相応しいと豪語しているらしい

しかも、その女官

事もあろう事に、シンドバッドに何かと言い寄っているらしい

 

それでピスティは、おかんむりなのだ

 

「そもそも、エリスがはっきりしないから、ああいう女が出てくるんだよ!?」

 

「う…はい……」

 

ピスティの言う事は最もだ

結局、エリスティアが首を縦に振らなかったから今の関係が続いている

 

あの時――――

建国の時、シンドバッドの申し出に首を縦に振っていれば今頃は違った関係になっていただろう

だが、振れない 振れないのだ

 

「その……もし、シンがその女官さんがいいって言うならば、私は―――――」

 

「何言ってんのよぉ!! 王サマの隣にはエリスじゃなきゃ駄目でしょう!!! 身を引くとかありえない!!」

 

そうは言われても、事実エリスティアにはシンドバッドの想いに答える事が出来ない

先の時間を約束出来ないのだ

 

きっとシンドバッドが欲しいのは、一緒に歩む時間だ

でも、エリスティアにはそれだけはあげる事が出来ない 出来ないのだ

 

それなら、もしシンドバッドが他の女性に心を傾けるのなら、その方がいいんじゃないかと思う

それでも、自分はシンドバッドのルシという事には変わりない

今までと変わりなく、全力で彼を支えるだけだ

 

「ほら、ピスティ…エリスも困ってるし……」

 

ヤムライハが助け船を出してくれるが…

ピスティの怒りは収まらなかった

 

その時だった

 

「どうしたんだ、お前ら?」

 

シャルルカンがスパルトスとマスルールを連れてやって来た

すると、ピスティはがばっと立ち上がり

 

「ちょっと聞いてよー! エリスが身を引くとか言ってんだよぉ!?」

 

「身を引く?」

 

何の事だと、シャルルカンが首を傾げた

だが、スパルトスとマスルールには通じたらしく

 

「ああ、もしかして最近王に言い寄っているという女官の話か?」

 

「…そういえば、いますね」

 

「そう! それ!!」

 

ビシィィィィ!!! と、ピスティが指さした

それで、シャルルカンもピンッと来たのか

 

「ああ、あの女か~そういやぁ、近頃王サマの周りをうろちょろしてるやつだろ? あの女、結構可愛い感じだよな!」

 

あはははーと、悪気無さそうにそう言ったシャルルカンだが

瞬間――――びゅんっとカップがシャルルカンめがけて飛んできた

 

スコ―――――ン と、景気の良い音と共に、シャルルカンの顔にヒットする

いきなりの攻撃に勿論怒ったのはシャルルカンだ

 

「なにすんだよ!!」

 

「シャルの馬鹿! 裏切り者!!」

 

ピスティが二発目のカップを手に取って怒鳴った

 

「あんな女よりも、エリスの方がずっとずっと可愛いし美人だもん!! 王サマだって、わかってるもん!!!」

 

そう言うなり、ポロポロと泣き出した

ぎょっとしたのは、シャルルカンだ

慌てた様に、後ろのスパルトスとマスルールを見る

 

「な!? なんで泣くんだよ!!」

 

「お前の発言のせいだな」

 

「先輩のせいッスね」

 

うわあああんと泣きだしたピスティをヤムライハとエリスがなだめる様に背中を摩った

 

「もう、この筋肉バカ!! 女の子泣かすなんて本当にデリカシーないわね!!」

 

「俺かよ!?」

 

ヤムライハが、キッとシャルルカンを睨みつける

心外だとばかりにシャルルカンが抗議するが、誰も味方になってくれなかった

 

「その…ごめんなさい…私のせいで―――――」

 

エリスティアがいたたまれなさそうに謝罪の言葉を述べるが

ヤムライハが小さく首を振った

 

「エリスのせいじゃないわよ」

 

「でも……」

 

元はと言えば、事の発端は自分がはっきりしない態度を取っているからだ

その時だった

 

「なんだなんだ?」

 

「どうした」

 

ヒナホホと、ドラコーンが通りすがりに騒いでいる彼らを見つけて話し掛けてきた

 

「おいおい、なんでピスティは泣いてるんだ?」

 

そうヒナホホが言った瞬間、ビシッと三人(ヤムライハ・スパルトス・マスルール)がシャルルカンを指さした

 

それを見て、ははーんとヒナホホは事態を把握したらしく…

 

「例のシンドバッドに言い寄っている女官の件で言い争いになったんだろう?」

 

流石…というべきか…

だが、これぞ大人の貫録なのか、ヒナホホは笑いながら

 

「安心しろ、シンドバッドがあの女官になびく事は無いと思うぞ」

 

「うむ」

 

その意見に同意見なのか、ドラコーンもこくりと頷いた

 

「何故そう思われるのですか?」

 

スパルトスがそう尋ねると、ヒナホホは ははっと笑いながら

 

「お前らは知らねぇだろうが、シンドバッドとエリスの仲は10年以上の仲だぞ? 俺と出会った時から、すでにそうだったからなぁ…どう見ても、シンドバッドはエリスにべた惚れだったし、エリスも、シンドバッドには心許してたしたなぁ」

 

「そうだな、私から見てもそう見えた。バアルで出逢った時からそうだったな」

 

「古参の俺達から見てそうだったんだ、だから安心しろ! シンドバッドが他の女に本気でなびく事はねぇよ」

 

そう言ってにかっと笑って見せた

その言葉に、ピスティがぐすんと涙を拭き

 

「そうですよね! 私、エリス以外が王サマの隣とか嫌です!! 流石ヒナホホさん、良い事いいますね!」

 

「はっはっは! 褒めても何も出ないぞー?」

 

「本当に、どっかの馬鹿に爪の垢煎じて飲ませたいぐらいですね」

 

ヤムライハのその言葉に、シャルルカンが食いついた

 

「どっかのバカって誰の事だよ!!」

 

「あら、自覚あったのね。このデリカシーゼロ男!」

 

「なんだとぉ!!」

 

「あの…喧嘩は……」

 

今にもヒートアップしそうな二人にエリスティアが止めに入ろうとした時だった

 

「どうした? 皆して集まって」

 

「何事ですか!?」

 

当の張本人シンドバッドがジャーファルを伴って現れた

事の発端の登場に、皆が一斉にシンドバッドを見る

 

突然の、皆からの視線にシンドバッドがたじろぎながら

 

「な、なんだ?」

 

「んーお前に、言い寄ってる女官の話だよ」

 

ヒナホホがにまにましながらそう言うと、ジャーファルが はぁ…と重い溜息を付いた

 

「あの女官ですか…あれには、私も少々困っておりました」

 

「そうか? 可愛いじゃないか」

 

シンドバッドの何気ないその一言にピスティがカッ!と怒鳴りだす

 

「王サマ!! まさか、心変わりとかいうんじゃないですよね!?」

 

「こころがわり…? 何の話だ?」

 

意味が分からないという風に、シンドバッドが首を傾げる

そのはっきりしない態度に、ピスティが益々苛々を募らせた

 

「だから、まさかエリスじゃなくて、その女を妃に迎えるとかしないですよね!?」

 

その言葉でピンッと来たのか、シンドバッドは ははーんと笑みを浮かべると

 

「なるほど…そういう事か」

 

それだけ言うと、突然ずいっと皆の前に歩み寄るとそのままエリスティアの前にやってきた

そして、 「エリス」 と優しげに名を呼んだ瞬間、ぐいっと彼女の腰を引き寄せた

 

「あ……」

 

突然の抱擁に、エリスティアが声を洩らす

 

「つまり、お前らは俺がエリスをどれだけ愛しているか知りたいんだな?」

 

「え…ちょっ……」

 

一瞬、嫌な予感を感じエリスティアが慌ててシンドバッドの手から逃れようと身をよじった

が――――

 

次の瞬間、エリスティアの唇はシンドバッドのそれに塞がれた

 

「シン――――っあ……ん…」

 

突然の口付けに、エリスティアが抵抗の意を示す様に肩を叩いた

だが、腰をがっちり掴まれていてびくともしない

 

「エリス―――………」

 

エリスティアを確かめる様なその口付けは、どんどん深くなっていく

 

「シ……ン……や……んん………み、んなが……」

 

「駄目だ…見せつけてるんだから」

 

目の前で繰り広げられる熱い口付けに、見ていた八人将から「おおー」と歓声を声が上がる

ちなみに、ヤムライハとスパルトスは顔を真っ赤にし、ジャーファルは呆れた様に溜息を付いていた

 

やっと解放された時は、エリスティアはもう疲労困惑状態だった

言い返す、気力すらない

 

だが、シンドバッドは満足気に

 

「これが、俺のエリスへの想いだ。納得したか?」

 

シンドバッドのその言葉に、ピスティが嬉しそうに 「はい!!」 と答えたのは言うまでもない

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

なんとか、全員出た…よね?

八人将というよりも、結局はシンドバッドな気がしない事も無いww

 

やっぱり、八人将のやり取りは楽しいねぇ~

 

2014/02/15